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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第58話 聖光逆襲

 王都への最短距離は、山腹を貫く洞窟だった。


 脳内マップに表示されるルートは、明らかに危険地帯を示している。魔力濃度は高く、青白い光点が密集している。


 アンデットモンスターの巣窟。


 だが距離は大幅に短縮できる。


 私は原付を降り、洞口を睨んだ。


 「行くで。時間短縮優先や」


 宥子(ひろこ)は肩を竦める。


 「訓練にもなるしな」


 その言い方、なんか含みあるやろ。



 洞窟内部は冷気がまとわりつく。


 脳内マップを暗視補正に切り替えると、青白い点がゆらりと動いた。


 スケルトン三体。


 私は前に出る。


 今回はまず物理だ。


 肉球斧を借りるのではなく、自分の武器で斬り込む。


 ガキン、と骨が弾ける。


 反撃。


 剣が肩を掠める。


 「ちっ」


 私は即座に自分へヒールをかける。


 淡い光が傷を包む。


 ……じわ。


 ほんの少し塞がる。


 下級ポーション劣より劣る回復量。


 だが無いよりマシ。


 再び斬る。


 骨が崩れる。


 もう一体。


 被弾。


 ヒール。


 じわ。


 時間がかかる。


 後方を見る。


 宥子(ひろこ)達はまだ戦闘態勢だ。


 アンナが風刃を放ち、サクラが補助を展開している。


 だが次の集団が現れた瞬間、状況が変わる。


 レイス、ゾンビ、スケルトンメイジ。


 数が増えた。


 私は前で奮闘する。


 斬る。


 殴られる。


 ヒール。


 じわ。


 効率が悪い。


 気付けば、後方は静かだった。


 振り返る。


 宥子(ひろこ)が腕を組んでいる。


 アンナも止まっている。


 サクラも様子見。


 紅白(こうはく)赤白(せきはく)は地面に伏せ、楽白(らくはく)は天井で待機。


 完全傍観モード。


 「は?」


 私は骨の一撃を受けながら叫ぶ。


 「なんで止まっとんねん!」


 宥子(ひろこ)は涼しい顔。


 「訓練やろ?」


 ぶちっと何かが切れた。



 私は敵を弾き飛ばし、怒鳴る。


 「ほな見とけや!」


 自分へヒール。


 じわ。


 効率悪い。


 アンデットは減らない。


 苛立ちが頂点に達する。


 私はやけくそで、目の前のスケルトンへヒールを放った。


 「ヒール!」


 浄化を強く意識する。


 光を濃く、強く。


 聖属性を叩きつけるイメージ。


 瞬間。


 スケルトンの体が真っ白に染まり、粉のように崩れ落ちた。


 一発。


 撃破。


 脳内マップの青点が一つ消える。


 洞窟に一瞬の静寂。


 私は目を見開く。


 「……は?」


 宥子(ひろこ)が口元を歪める。


 「やっと気付いたか」


 「最初から言えや!」


 「自分で気付いた方が伸びる」


 ムカつく。


 だが今はそれどころではない。


 私は次のレイスにヒールを叩き込む。


 「ヒール!」


 光が弾け、レイス消滅。


 ゾンビも浄化。


 アンデット特効。


 私の微妙回復魔法が、攻撃魔法へと変わった瞬間だった。



 囲まれる。


 数が多い。


 私は意識を拡張する。


 さっきの光は一点集中だった。


 なら、広げればいい。


 「ヒール!」


 円形に広がる光。


 洞窟内が白く染まる。


 アンデット達が一斉に煙を上げ、崩れ落ちた。


 脳内マップの青点がまとめて消える。


 エリアヒール。


 私はゆっくり振り返る。


 「……なんで教えへんかったん?」


 宥子(ひろこ)は平然と言う。


 「もう使えとったで」


 「はぁ!?」


 「さっき無意識で広がっとった」


 私は頭を抱える。


 怒り半分、達成感半分。



 洞窟を抜ける頃には、私はアンデットを次々と浄化していた。


 物理より早い。


 効率が段違い。


 外に出た瞬間、宥子(ひろこ)がぽつりと言う。


 「ちなみに今の敵、あんたと同レベルやで」


 空気が凍る。


 「……同レベル?」


 「せや」


 私は無言で脳内ステータスを開く。


 確かに同等。


 つまり。


 私は同レベル帯相手に物理で苦戦していた。


 聖魔法を使えば一撃だったのに。


 傍観していた姉。


 怒り再燃。


 私は静かに告げる。


 「今日から缶パンと野菜ジュースの刑」


 「待て待て待て!」


 聞かない。



 休憩地点。


 テーブルを出す。


 私は温かい食事。


 宥子(ひろこ)の前には缶パンと野菜ジュース。


 沈黙。


 〈自業自得や〉と紅白(こうはく)


 〈反省せい〉と赤白(せきはく)


 〈かわいそうですのぉ。でもしかたないですのぉ〉とサクラ。


 楽白(らくはく)は無言で缶を軽く叩く。


 カン、と虚しい音。


 宥子(ひろこ)は絶望顔で缶パンを齧った。


 「まずい……」


 「当然や」


 私は満足げにスープを啜る。


 聖魔法はアンデットに特効。


 エリアヒールも取得。


 成果はあった。


 だが。


 姉への刑は続行。


 王都までは、まだ少しある。


 その間、缶パン生活やな。

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