表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/61

第44話 半分寄越せ


 ――半分。


 それが今回、私容子(まさこ)が掲げた至上命題である。


 ドロップアイテム五割。


 譲歩なし。遠慮なし。情け無用。


 副社長としての威厳?

 そんなものは知らない。


 素材は力だ。

 素材は正義だ。

 素材は未来だ。


 そして未来は、作る者の手にある。


 ◆


 サイエスのアトリエに戻った瞬間から、私はヒーヒー言いながら作業台に張り付いていた。


 「バック系、残り二つ……アクセはあと四セット……」


 魔力補強糸を通しながら、縫い目を均一に整える。


 ディゼニーで見たあの格好良いコート。

 街灯の下で翻るシルエット。

 風を孕むロングライン。


 あれを戦闘仕様に落とし込む。


 軽量化。

 耐刃加工。

 魔力循環効率の最適化。


 見た目だけじゃ意味がない。

 機能美こそ至高。


 「うん……これは売れる」


 <自画自賛はタダやで>


 「うるさいわよ赤白(せきはく)!」


 作業台の端でだらけていた赤白(せきはく)が尻尾をぱたぱた揺らす。


 <せやけどホンマ、出来ええわ。これ高値つくで>


 「高値って言うな、即物的!」


 でも心の奥では同意している。


 だって完成度が高いんだもの。


 ◆


 ギルドへ行った宥子(ひろこ)はまだ戻らない。


 きっと依頼書を吟味し、討伐効率を計算し、報酬単価とリスクを天秤にかけている。


 社長は中身担当。


 魔法理論も戦闘計算も抜群。


 でも金策モードに入ると目が輝くのは何故なのか。


 ……いや、分かるけど。


 ◆


 「衣類系も少し作っとくか」


 私は新素材の布を広げる。


 魔物の鱗繊維を混ぜ込んだ特殊糸。


 しなやかで、強くて、しかも可愛い。


 戦闘服としての耐久値は高いのに、シルエットは細身。


 女性向け市場、絶対取れる。


 <今はぁ、魔石ないですぅ>


 サクラの現実指摘が心を抉る。


 「分かってるってば」


 だからこそ、半分なのだ。


 ◆


 その頃、ギルド。


 扉が勢いよく開き――


 「ただいま」


 帰還した宥子(ひろこ)


 腕に抱えた依頼書の束。

 目はキラキラ。

 口元は悪い笑み。


 「あ、これ東の森を更地にする顔だ」


 「明日、東の森制圧するわよ」


 「制圧って何!?」


 「群生地ごと刈る」


 やっぱり。


 ◆


 私は咳払いを一つ。


 「その前に話がある」


 社長が眉を上げる。


 私は背後に並ばせた。


 赤白(せきはく)

 紅白(こうはく)

 サクラ

 そして静かに雰囲気を飛ばす楽白(らくはく)


 四体の圧が空間を満たす。


 「……何この包囲網」


 「ドロップ五割」


 静寂。


 空気が凍る。


 ◆


 「は?」


 低音。


 「五割」


 私は繰り返す。


 「装備開発にも容器改良にも素材がいる。副社長権限よ」


 <せやせや>


 <欲しいですぅ>


 ズルズル……


 楽白(らくはく)がパンフレットを差し出す。


 ニャローケティのマシュマロクッション。


 無言で踊る。


 「買収済み!?」


 「協力体制です」


 私は胸を張る。


 ◆


 交渉開始。


 「四割」


 「五割」


 「四割五分」


 「五割」


 「鬼」


 「鬼婆って言った?」


 <言うてへん言うてへん>


 赤白(せきはく)が笑う。


 ◆


 最終的に――


 「分かった、五割。ただし高額素材は要相談」


 勝利。


 私は心の中でファンファーレを鳴らす。


 ◆


 翌朝、東の森。


 魔物の群れ。


 空気が震え、魔力が渦巻く。


 「行くわよ!」


 宥子(ひろこ)が魔法陣を展開。


 爆裂光。


 衝撃波。


 群れが吹き飛ぶ。


 私は新作戦闘服で駆ける。


 軽い。

 可動域が広い。

 補助ポケットが便利。


 「最高!」


 投擲補助具を放つ。


 <右や!>

 <後ろぉ!>

 <上ですぅ!>


 カルテットの支援。


 楽白(らくはく)が雰囲気を飛ばし、魔物の動きを鈍らせる。


 連携完璧。


 ◆


 戦闘終了。


 地面に散らばるドロップの山。


 魔石。

 希少鱗。

 強化布。


 私は腕を組む。


 「五割ね」


 「分かってるわよ」


 社長はきっちり分配した。


 副社長権限、行使完了。


 ◆


 アトリエに戻り、素材を並べる。


 これで次の装備ラインを作れる。


 容器も改良できる。


 魔石を組み込んだ保護ケース。

 戦闘用コスメキット。


 夢が広がる。


 宥子(ひろこ)は椅子に沈む。


 「疲れた……」


 「社長、まだ序章よ」


 私は笑う。


 金も素材もブランドも。


 全部、取りに行く。


 副社長容子(まさこ)の野望は尽きない。


 次は七割?


 いや、それは命の危険。


 でも――


 半分取れたなら、次も勝てる。


 サイエスの空気の中、私は新しい設計図を広げる。


 物作りは止まらない。


 そして戦いも、まだまだ続くのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ