第30話 姉の企み
サイエスに戻ってきたよ!
全員揃っているよ! 欠員ゼロ、従魔も健在、テンションは最高潮――と言いたいところだが。
「……宥子よ」
私はじと目で姉を見る。
「蹴り飛ばした尻がまだ痛い」
「時間切れだったからでしょ」
にべもない。
メディションホームから強制排出された瞬間のあの衝撃。手加減してくれても良かったのに。乙女の臀部は繊細なのだ。
だが落ち込んでいる暇はない。
私はビシッと手を挙げた。
「ドワーフの洞窟で鉱石を発掘したい!」
キリッ。
しかし。
「その前に、ポーション作りでしょう」
即・却・下。
「手持ちのポーション無いし。作ってからじゃないと身動き取れないよ。幾らheelが使えると言っても、大怪我したら治らない」
正論パンチ。
ぐぬぬ。
「ポーション材料調達のためにフィールド出るんだから、狩りはそこでして。作成終わったらドワーフ洞窟行こう」
「ブーブー」
「文句言うならサイエス活動無期限停止ね?」
脅しまでセット。
「……分かったよー」
渋々従う私。
◆◆◆
「まずはポーション素材探すぞ!」
オーッ!
掛け声と共にセブールの街を出る。
索敵と隠密を展開。周囲に人影無し。
私は原付を、宥子は電動スクーターを出した。
ブロロロロ……!
森を駆け抜ける文明の暴力。
その間、轢かれた魔物はもれなくメディションホール行き。回収も楽々。
「便利すぎる……」
◆◆◆
草原に到着。
ここで問題発生。
鑑定スキルを持っているのは宥子だけ。
「皆、スキル見せてくんない?」
「何で?」
「鑑定あるか確認するのと、レベル把握」
そして開示されたステータス。
……。
……。
私、琴陵容子、レベル49。
姉、62。
サクラ59。
赤白62。
紅白61。
楽白63。
「……私以外チートだね」
本気で放逐されても生きていけるメンバー構成。
特に赤白の幸運193872って何?
桁バグってない?
ボーナスポイント45,134,918ptって国家予算?
私はそっと視線を逸らす。
「皆、鑑定取ろう」
決定事項。
「確かにあった方が良いね」
ポイントにはケチだが、必要とあらば出す姉。
「赤白ちゃん、pt統合っていうスキル取って」
<ええけど、何で?>
「pt共有化出来る。一番少ない容子も不足で困らない」
チラッ。
私を見るな。
<分かった。その代わり大吟醸の魔王の誘いな>
ちゃっかり蛇。
「良いよ。ちゃんと取得してね」
<取れたで>
早い。
あっという間にpt統合完了。
私の寂しさはどこへ。
「じゃあ楽白以外、鑑定取得ね。あと隠蔽持ってない子も取得」
姉、完全にギルドマスター。
ポイントが次々振り分けられていく。
私のボーナス5,484ptが霞む。
◆◆◆
準備完了。
役割分担。
採取係:宥子と私。
探索報告係:サクラ、赤白、紅白、楽白。
「採取するぞ!」
私は丁寧に根元から刈り取る。
品質を落とさぬよう、土を払い、分類。
横を見ると――
ガツガツガツガツ。
姉が刈り尽くす勢いで収穫している。
目が笑ってない。
口元だけがにやけている。
「ひ、宥子……?」
「これ全部ポーション原液になるんだよ? 金貨の山だよ?」
怖い。
完全に収穫マシーン。
サクラがぽよんと跳ねる。
<こっちにもあるよぉ>
赤白が木陰から念話。
<群生地発見や>
紅白も報告。
<ちょい毒草混じっとる>
鑑定スキル、大活躍。
楽白は高速移動で索敵し、敵接近を察知すれば看破。
幼体なのに有能すぎる。
◆◆◆
数時間後。
メディションホールの素材フォルダは薬草でパンパン。
私は疲労困憊。
だが姉は――
「まだいける」
目が¥。
「十分じゃない?」
「Bランク依頼分くらいは確保しないと」
誰か止めて。
サクラ達も若干引いている。
<主様こわぁい>
<目が光っとるで>
<商人の顔やな>
私は生温い視線を送る。
姉は気付かない。
ひたすら刈る。
刈る。
刈る。
◆◆◆
日が傾き始めた頃、ようやく終了。
「よし、帰って調合だね」
満足そうな宥子。
私は小さく呟く。
「洞窟……」
「ポーション終わったらね」
笑顔。
でも目が本気。
これは徹夜コースだ。
こうして私達は大量の薬草を抱え、サイエスの拠点へ戻るのだった。
なお、その夜。
調合釜の前で再び目を¥にする宥子を、私と一人と四匹は再び生温い視線で見守ることになるのだが――それはまた別の話である。




