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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第30話 姉の企み

 サイエスに戻ってきたよ!


 全員揃っているよ! 欠員ゼロ、従魔も健在、テンションは最高潮――と言いたいところだが。


 「……宥子(ひろこ)よ」


 私はじと目で姉を見る。


 「蹴り飛ばした尻がまだ痛い」


 「時間切れだったからでしょ」


 にべもない。


 メディションホームから強制排出された瞬間のあの衝撃。手加減してくれても良かったのに。乙女の臀部は繊細なのだ。


 だが落ち込んでいる暇はない。


 私はビシッと手を挙げた。


 「ドワーフの洞窟で鉱石を発掘したい!」


 キリッ。


 しかし。


 「その前に、ポーション作りでしょう」


 即・却・下。


 「手持ちのポーション無いし。作ってからじゃないと身動き取れないよ。幾らheelが使えると言っても、大怪我したら治らない」


 正論パンチ。


 ぐぬぬ。


 「ポーション材料調達のためにフィールド出るんだから、狩りはそこでして。作成終わったらドワーフ洞窟行こう」


 「ブーブー」


 「文句言うならサイエス活動無期限停止ね?」


 脅しまでセット。


 「……分かったよー」


 渋々従う私。


 ◆◆◆


 「まずはポーション素材探すぞ!」


 オーッ!


 掛け声と共にセブールの街を出る。


 索敵と隠密を展開。周囲に人影無し。


 私は原付を、宥子(ひろこ)は電動スクーターを出した。


 ブロロロロ……!


 森を駆け抜ける文明の暴力。


 その間、轢かれた魔物はもれなくメディションホール行き。回収も楽々。


 「便利すぎる……」


 ◆◆◆


 草原に到着。


 ここで問題発生。


 鑑定スキルを持っているのは宥子(ひろこ)だけ。


 「皆、スキル見せてくんない?」


 「何で?」


 「鑑定あるか確認するのと、レベル把握」


 そして開示されたステータス。


 ……。


 ……。


 私、琴陵(ことおか)容子(まさこ)、レベル49。


 姉、62。


 サクラ59。


 赤白(せきはく)62。


 紅白(こうはく)61。


 楽白(らくはく)63。


 「……私以外チートだね」


 本気で放逐されても生きていけるメンバー構成。


 特に赤白(せきはく)の幸運193872って何?


 桁バグってない?


 ボーナスポイント45,134,918ptって国家予算?


 私はそっと視線を逸らす。


 「皆、鑑定取ろう」


 決定事項。


 「確かにあった方が良いね」


 ポイントにはケチだが、必要とあらば出す姉。


 「赤白(せきはく)ちゃん、pt統合っていうスキル取って」


 <ええけど、何で?>


 「pt共有化出来る。一番少ない容子(まさこ)も不足で困らない」


 チラッ。


 私を見るな。


 <分かった。その代わり大吟醸の魔王の誘いな>


 ちゃっかり蛇。


 「良いよ。ちゃんと取得してね」


 <取れたで>


 早い。


 あっという間にpt統合完了。


 私の寂しさはどこへ。


 「じゃあ楽白(らくはく)以外、鑑定取得ね。あと隠蔽持ってない子も取得」


 姉、完全にギルドマスター。


 ポイントが次々振り分けられていく。


 私のボーナス5,484ptが霞む。


 ◆◆◆


 準備完了。


 役割分担。


 採取係:宥子(ひろこ)と私。


 探索報告係:サクラ、赤白(せきはく)紅白(こうはく)楽白(らくはく)


 「採取するぞ!」


 私は丁寧に根元から刈り取る。


 品質を落とさぬよう、土を払い、分類。


 横を見ると――


 ガツガツガツガツ。


 姉が刈り尽くす勢いで収穫している。


 目が笑ってない。


 口元だけがにやけている。


 「ひ、宥子(ひろこ)……?」


 「これ全部ポーション原液になるんだよ? 金貨の山だよ?」


 怖い。


 完全に収穫マシーン。


 サクラがぽよんと跳ねる。


 <こっちにもあるよぉ>


 赤白(せきはく)が木陰から念話。


 <群生地発見や>


 紅白(こうはく)も報告。


 <ちょい毒草混じっとる>


 鑑定スキル、大活躍。


 楽白(らくはく)は高速移動で索敵し、敵接近を察知すれば看破。


 幼体なのに有能すぎる。


 ◆◆◆


 数時間後。


 メディションホールの素材フォルダは薬草でパンパン。


 私は疲労困憊。


 だが姉は――


 「まだいける」


 目が¥。


 「十分じゃない?」


 「Bランク依頼分くらいは確保しないと」


 誰か止めて。


 サクラ達も若干引いている。


 <主様こわぁい>


 <目が光っとるで>


 <商人の顔やな>


 私は生温い視線を送る。


 姉は気付かない。


 ひたすら刈る。


 刈る。


 刈る。


 ◆◆◆


 日が傾き始めた頃、ようやく終了。


 「よし、帰って調合だね」


 満足そうな宥子(ひろこ)


 私は小さく呟く。


 「洞窟……」


 「ポーション終わったらね」


 笑顔。


 でも目が本気。


 これは徹夜コースだ。


 こうして私達は大量の薬草を抱え、サイエスの拠点へ戻るのだった。


 なお、その夜。


 調合釜の前で再び目を¥にする宥子(ひろこ)を、私と一人と四匹は再び生温い視線で見守ることになるのだが――それはまた別の話である。


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