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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第118話 免許遠征

 姉――宥子(ひろこ)が、ある朝いきなり宣言した。


「運転免許、全員で取りに行くで」


 唐突すぎる。


 味噌汁を飲んでいた私は、危うく吹きそうになった。


「は?」


「取得可能年齢の者は全員参加。強制や」


 にっこり。


 嫌な笑顔である。


 安全性を考慮し、一気に送り出すのは危険と判断したらしく、三班編成になった。


 一班はヘレン・ニック・レナ・ハンス・アンナ。


 二班はジョン・マリー・イスパハン・姉こと宥子(ひろこ)


 三班はボブ・キャロル・ルーシー――そして私、容子(まさこ)


 順番に合宿へ送り込み、新年初の課題は「全員免許取得」。


 無事取得出来た者には毎月特別手当が加算。


 費用は会社経費。


 太っ腹というか、長期戦略というか。


「じゃあ、アンナ班からやな。全員大型免許目指すで!」


 私は露骨に面倒臭い顔をする。


「アンナ班終わったら、容子(まさこ)班や。最後が私の班」


「全員に免許取らせて意味ある?」


 素朴な疑問。


 誰か一人二人でええやん。


 だが姉は指を横に振る。


「チッチッチ。全員取れたら、全員が車買えるやろ? 大移動出来るやん。運転交代も可能。これ重要」


 ドヤ顔。


 私は蛆虫を見る目で返す。


「要するに、楽したいんやな」


「せや!」


 即答。


 清々しい。


 ◇


 サイエスと地球の行き来は、パンジーがスペアキー管理。


「準備出来次第、出発します」


 アンナが真面目に答える。


「何かあったら携帯に電話して。容子(まさこ)は今日どうするん?」


 神社は大盛況。


 治癒院も兼ねているが、それは公にはしていない。


 鑑定とお守り目当ての参拝者で毎日長蛇。


「付与師育ってきたけど、需要過多や」


 お守りは全完売。


 毎日補充。


 それでも足りない。


 アーラマンユ信徒も紛れているが、御神体が弾く。


「解決策は?」


「ハルモニア王国全土に神社建てる」


 私の即答。


「各領主都に一社ずつ」


「天罰下された貴族の領は?」


「置かん。罰当たり領主として領民の恨み買えばええ」


 お守り不足も緩和。


 信仰網も拡大。


 一石二鳥。


 ◇


「今日はキヨちゃん連れて神社視察」


「私はリオン達と不用品回収」


 不用品――名ばかり。


 宝の山や。


 没落貴族屋敷、夜逃げ商家、曰く付き邸宅。


 浄化後に回収。


 若手細工師、鍛冶師見習いに改良させる。


 全品にCrema(クリマ)刻印。


 流石に「容子印」は無理やけど。


 元が良い品なので高値で売れる。


 見習い達には衣食住+給与。


 薄給だが貯蓄可能。


 独立も、Crema(クリマ)正規雇用も自由。


 夢がある。


 ◇


 さて、今日の回収先。


 リサイクル品として出された元貴族屋敷。


 当然、曰く付き。


「瘴気、残っとるな」


 門前で足を止める。


 リオンが頷く。


「二階中央が濃い」


 私は神主装束を整えた。


「ほな、浄化からや」


 祝詞。


 鈴。


 光。


 黒い靄が天井から滴る。


 人型になる。


「……アーラマンユに救いを……」


「無理や」


 即断。


 光を圧縮。


 放つ。


 怨霊は霧散。


 残滓も酒で清める。


「完了」


 ◇


 屋敷内部。


 高級家具、彫刻、銀器。


 宝の山。


「運べるもんから運べ」


 若手達が目を輝かせる。


 だが私は別のことを考えていた。


 免許取得。


 遠征。


 拠点増設。


 神社網構築。


 アーラマンユ勢力圏への楔。


 点と点が線になる。


 ◇


 夜。


 屋敷は空。


 浄化済。


 商品候補は山積み。


 私は縁側に座る。


 風が通る。


 この国は人間至上主義。


 だが、それは脆い。


 恐怖と無知で成り立つ思想。


 神社が増えれば、救われる者も増える。


 アーラマンユの威光は削れる。


 ドワーフ遠征も控える。


 免許があれば機動力は跳ね上がる。


「全部繋がっとる」


 商売も、信仰も、改革も。


 ◇


 翌朝。


 アンナ班出発。


 大型免許合宿へ。


「絶対取ってきます!」


 気合十分。


 私は手を振る。


「落ちたら笑うで」


「落ちません!」


 頼もしい。


 次は私の番。


 大型免許。


 バス購入。


 神社遠征団。


 各地に社を建て、信仰を根付かせる。


 アーラマンユの影を削る。


 そしてドワーフの洞窟。


 新拠点。


 新技術。


 新商品。


 Crema(クリマ)の販路は世界へ。


 私は笑う。


「面白くなってきたやん」


 免許取得はただの資格やない。


 それは――機動力。


 機動力は、力や。


 容子(まさこ)は止まらない。


 神主として。


 商人として。


 改革者として。


 この世界を走り回るために。

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