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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第117話 遠征始動?

 朝食の席で、宥子(ひろこ)が何気ない顔で爆弾を落とした。


「アンナ、暫くハルモニア王国を離れるわ。その間、悪いんやけどCrema(クリマ)の社長代理になってくれん? 勿論、手当は出すし」


 味噌汁を啜りながら、まるで天気の話でもするような口調。


 一瞬、空気が止まる。


 アンナの手が固まった。


「……はい?」


 数秒後、解凍。


「行き成り何を言い出すんですか!? 折角軌道に乗り始めたばかりなんですよ!」


 ギャウッと吠える。


 私はパンを齧りながらニヤリ。


「一度軌道に乗ってしまえば、後は操縦を誤らなければ大丈夫。それに、化粧品セットの後任は育ってるし問題はないやろう。最悪、念話を使えば万事解決や」


 ズズッと音を立てる宥子(ひろこ)


 ちらりと私を見る。


「あんた、神職スキル持ちも育て終わっとるやろ。前からドワーフの洞窟に行きたい言うてたやん。各地に自宅購入して拠点増やせば、いつでも行き来出来るやろ? それに神社建て捲ったら面白いことになりそうやん?」


「あー……アーラマンユ嫌いやもんな。威光を削りつつ神社を増やす魂胆か」


「当たり前や」


 即答。


「でもドワーフの洞窟、場所分からんやん。この世界、人間至上主義やし」


「イスパハンなら知っとるんちゃう?」


 振られたイスパハンは渋い顔。


「知ってはいるが……案内は難しい。彼らは閉鎖的だ」


 まあ、そうやろな。


 私は頬杖をつき、想像する。


 知的好奇心旺盛なドワーフが機械を分解し、構造を解析し、改良する姿。


「手土産は技術書か? 分解可能な機械か?」


 胸が高鳴る。


「人種差別が激しい世界で、いきなり押し掛けたら警戒されるわな」


 宥子(ひろこ)が続ける。


「でも基本拠点はここ。他にも拠点を作ればええ。一ヵ所潰れても崩壊せん基盤をあっちこっちに作る。それが長期戦略や」


 慈善の延長で建てた神社は予想以上の成果。


 特に力作の御神体。


 身分問わず無礼者に天罰覿面。


 アーラマンユの信徒が吹っ飛ぶ様は実に爽快や。


「人間至上主義が気に食わん。他者との違いを攻撃材料にする連中は、信仰ごと叩き直す」


 私は拳を握る。


「出国前に各領を回って神社兼家を建てまくる。本格的遠征はその後や」


「どうしても付いてきたいなら、自分の後任を育てることやで。私はアンナが後任やから」


「アンナ、諦め。姉は言い出したら聞かん」


 私の追撃。


 アンナ絶望。


 だが――。


「分かりました。早急に代わりを務められる者を探します!」


 目が本気。


 私は内心で拍手。


(姉よ、アンナ甘く見過ぎや)


 ◇


 一ヶ月後。


「見つけました」


 ドヤ顔のアンナ。


 連れてきたのはキャロルとルーシー。


 ルーシーは暗記スキルが進化し《完全記憶》。


 キャロルは暗算が《演算》へ昇華。


 数字と情報の化物コンビ。


 商人ノウハウを叩き込み、二人で一人前。


 社長代理補佐の肩書きが与えられた。


「これで私も同行出来ますね!(キラッ☆)」


 宥子(ひろこ)の顔が固まる。


「あ……うん、ソウダネ」


 ざまぁ。


 ◇


「移動はどうする?」


「車が欲しいな」


 私は腕を組む。


「日本で免許取る合宿行くか? 公道走るの嫌やけど」


「免許あれば購入出来る。長距離移動が楽や」


 ワンボックスカー。


 最悪、大型免許取得してバス。


「免許年齢の者は全員行くで!」


 決定。


「チルドルとジャックは連絡係。スラムは義勇兵が巡回しとる」


 憲兵は信用せん。


 金で募集したら大量応募。


 実地訓練名目のブートキャンプで篩。


 残った六十名が私兵。


 スラム治安維持担当。


 私と宥子(ひろこ)に目をかけられる=出世コース。


 灰汁強い連中だが、アンナが纏める。


 本当に優秀。


 ◇


「孤児院は?」


 宥子(ひろこ)が問う。


「リオンおるから平気や」


 私は平然。


「スマホ渡しといた。1時間で使いこなした。ソーラーパネル充電器も完備」


「何で勝手に渡すねん! この世界でスマホは超文明やぞ!」


「ええやん。リオンは私の下僕や。構造分からんと分解してもガラクタやし、軽率な奴やない」


 姉、肩を落とす。


 ◇


 夜。


 神社の屋根。


 王都を見下ろす。


 各領に建設予定地のリスト。


 資材、神職、警備。


 遠征準備は進む。


 アーラマンユの影は未だ強い。


 だが、恐れはない。


 信仰は奪うものやない。


 示して、選ばせるものや。


 ドワーフの洞窟。


 新拠点。


 各地の神社。


 Crema(クリマ)の販路拡大。


 全部、繋がっとる。


「面白くなってきたやん」


 私は笑う。


 遠征は始動した。


 世界を相手に、神社と商売と改革。


 潰れるのは――アーラマンユか、旧い常識か。


 どっちでも構わん。


 光は拡がる。


 私、容子(まさこ)が動く限りな。

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