第103話 強制昇華
――やってもうた。
それが最初の感想やった。
日輪商店組合の加盟数は四百を超え、自衛団は実働一五〇〇規模。
数字だけ見れば頼もしい。
せやけどな。
「質が足りん」
宥子が低く言う。
屋上の会議。
朝日を背に、私・姉・アンナ・班長格が並ぶ。
「このまま規模だけ膨らんだら、烏合の衆や。いざという時、守れへん」
自衛団は元スラム民や職人や商人。
志はある。
けど、実戦経験は薄い。
組織訓練も足りない。
そして何より――。
「教会側が動く可能性あるで」
アンナが静かに告げる。
サイエス女神勢力は、まだ直接手を出していない。
けど情報は集めている。
もし圧力や武力が来たら?
守れるか?
答えはノーや。
だから姉は言った。
「強制レベリング、やるで」
……出たわ。
嫌な予感しかしないワード。
「強制って何やねん」
「文字通りや」
笑わない姉。
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◆方針決定
日輪商店組合職員と自衛団を分けて訓練する。
商店組合職員は“補助職”。
結界、回復、補給、情報。
自衛団は“前衛職”。
近接、弓、盾、制圧。
問題は効率。
普通に鍛えたら何年もかかる。
せやから。
「ダンジョン使う」
私は頭を抱えた。
「待て待て待て」
この世界には天然ダンジョンがある。
魔物湧く。
経験値稼げる。
危険。
死人出る。
「強制ってまさか、初心者放り込む気ちゃうやろな?」
「段階踏む」
姉は冷静。
「まずは安全階層で集団狩り。私らが護衛入る」
それでも怖い。
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◆第一段階:基礎昇華
対象は自衛団五十名。
武装は統一。
日輪紋章入り軽鎧。
支援班十名同行。
私と姉、前後衛。
アンナは後方管制。
ダンジョン一階層。
ゴブリン程度。
「一対一は禁止!三人一組!」
私は怒鳴る。
連携を叩き込む。
恐怖で足が止まる者もいる。
そこで私は言う。
「太陽は平等や!でも守るのは自分の足や!」
鼓舞というより喝や。
最初の戦闘。
震えながら槍を突く青年。
倒れるゴブリン。
経験が流れ込む。
顔が変わる。
“出来た”顔。
これがレベル上昇の実感や。
それを繰り返す。
安全圏ギリギリで回す。
一日で全員が一段階上がる。
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◆第二段階:商店組合昇華
戦えない職員はどうするか。
「補助でも経験は入る」
結界維持。
回復魔法。
補給指示。
魔物探知。
役割を明確化。
実戦環境で支援経験を積ませる。
恐怖を知る。
それが大事。
「机上の信仰は弱い」
姉が言う。
「現場を知れ」
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◆強制の意味
三日目。
離脱者が出た。
「怖いです」
正直や。
私はそいつを見た。
「抜けるか?」
「……嫌です」
歯を食いしばる。
ここが強制の核心や。
逃げ道はある。
でも仲間が前にいる。
後ろには日輪圏の家族がいる。
守る対象がある。
それが人を前に出す。
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◆事故
四日目。
二階層で想定外のオーク出現。
油断。
一人吹き飛ぶ。
血。
悲鳴。
私は即座に割って入る。
叩き伏せる。
支援班が回復。
命は助かった。
だが全員が青ざめる。
「これが現実や」
姉が言う。
「守りたいなら、強くなれ」
その夜。
誰も笑わなかった。
でも翌朝、全員揃った。
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◆数値の変化
二週間。
自衛団平均戦闘力、倍。
商店組合補助班、安定稼働。
結界展開速度向上。
回復魔法成功率上昇。
連携が滑らかになる。
号令一つで動く。
もはや寄せ集めではない。
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◆思想との融合
朝日。
ダンジョン入口で整列。
「天照大神様、今日も光を」
祈り。
単なる精神安定ではない。
恐怖の制御装置や。
信仰は武器になる。
私はそれを実感した。
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◆外部の視線
噂は広がる。
「日輪自衛団、強い」
「商店組合、統率がある」
教会側も察する。
もはや思想だけではない。
戦力を持った勢力。
それでも私達は攻めない。
防衛。
徹底的に守るための強化。
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◆一個旅団規模
一ヶ月後。
実働二千。
うち戦闘可能一二〇〇。
支援五百。
予備三百。
編成が完成する。
小隊制。
班長育成。
指揮系統明確化。
「……やり過ぎちゃう?」
私は姉に聞く。
「やり過ぎてから止める方が楽や」
怖い。
でも正しい。
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◆副社長の自覚
夜。
私は一人で屋上に立つ。
着服から始まった話。
孤児二十一名。
館。
日輪商店組合。
自衛団。
そして強制レベリング。
全部繋がってる。
「ブラック企業副社長が、軍団育成って何やねん」
苦笑する。
でもな。
朝日が昇る。
団員達が並ぶ。
迷いのない目。
あの目は、守る者の目や。
「……しゃあない」
私は深呼吸する。
「次は指揮官育成やな」
日輪の下。
思想は組織へ。
組織は戦力へ。
強制昇華は終わらない。
守るために。
削られないために。
そして、光を絶やさないために。




