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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第102話 日輪拡軍

 私は副社長や。


 なのに何でこんなに働かなあかんの!?


 しかも一般社員より給料低いって、どんなブラック企業やねん!!


 ――と叫びたいが、叫んだところで現実は変わらん。


 私は今日もアトリエに缶詰や。


 クリスマスコフレ用の容器を削り、研磨し、魔力を通し、最後に刻印。


 さらにサコッシュバッグ。


 見た目は可愛い布製やけど、中身はマジックアイテム仕様。


 軽量化、耐水、耐火、簡易防犯結界。


 地味に大変。


 キッチンに立つ時間はゼロ。


 炊き出し組の女性陣が料理スキル爆上がりしてるのだけが救いや。


 ……トントンやと思いたい。


 そんな私の首根っこを、突然鬼の形相の宥子(ひろこ)が掴んだ。


「ちょっ!?何!?」


 そのままリビングへ強制連行。


 ソファーにドン。


 仁王立ち。


容子(まさこ)、私に何か言うことないか?」


「いきなり何やねん。ノルマ残っとるんやけど?」


 そう言った瞬間、姉のこめかみがピクリ。


 帳簿を叩く。


「白金貨四枚、足りん」


 冷たい声。


「着服できるのはあんたしかおらん」


 終わった。


 バレた。


「……ちょっと入用で」


「四千万相当がちょっと!?」


 胸倉締め上げ。


 ギリギリ。


 アンナが止める。


「殺したら企画が止まります」


 私より企画優先なんやな!?


 飲み込む。


 姉が手を離す。


 床で咳き込む私。


「吐け」


 観念した。


 ストリートチルドレン二十一名。


 館購入。


 生活費。


 家具。


 投資。


 レアスキル。


 青田買い。


 全部白状。


「人間はペットちゃう」


 正論。


「でも後任探しは自由やろ!」


「自由や。でも会社の金は自由ちゃう」


 刺さる。


 泣く。


 結果。


「今回は投資扱いにしたる。二度はない」


 命拾い。



◆スラム再編


 だが姉はそこで終わらんかった。


「スラムの土地、買い上げる」


「は?」


 桁違いの発想。


 曰く付き物件を安く押さえ、区画整理。


 水路整備。


 簡易住宅建設。


 仕事斡旋。


 孤児二十一名は管理補助へ。


 炊き出しは食堂へ進化。


 朝は日輪の祈り。


 昼は労働。


 夜は物語。


 太陽信仰は生活に溶け込んだ。



◆布教と組織


 私は布教班の責任者にされた。


「罰や」


 姉が言う。


 ブラック企業ここに極まれり。


 だがやるしかない。


 子ども達が語る。


 天岩戸の話。


 笑いで闇を破る神話。


 天照大神(あまてらすおおみかみ)の名。


 押し付けない。


 でも繰り返す。


 名は広がる。



◆経済圏の形成


 アンナが制度を作る。


 日輪商店組合。


 加盟条件は三つ。


 一、朝日の感謝

 二、不当搾取禁止

 三、売上の一部を孤児院へ


 宗教団体ではない。


 経済共同体。


 だが実質的な信仰ネットワーク。


 スラム一角が丸ごと“日輪圏”になった。



◆対抗勢力


 サイエス女神教会は焦る。


 寄付減少。


 信者流出。


 だが正面から潰せない。


 私達は暴力を使わない。


 救済と雇用を提供している。


 否定すれば民衆敵に回す。


 静かに削る。



◆軍団化


 ある日、姉が屋上から街を見下ろして言った。


「数、把握してるか?」


「何が?」


「日輪商店加盟、三百超えた」


「は?」


「協力者、実働五百。準協力含め千規模や」


 私、凍る。


「これ……もう宗教やなくて勢力やん」


「勢力や」


 即答。


 さらに。


「自警団も出来とる。スラム治安改善しとる」


 知らん間に軍団。


 武装は最低限。


 だが統率はある。


 合言葉は“日輪”。


 朝の祈りで士気統一。


 思想で結束。



◆一個師団


 半年後。


 数は二千規模。


 訓練も始まる。


 農地も確保。


 自給率上昇。


 商業と農業と治安。


 三位一体。


「……これ、国家やん」


「まだ自治圏や」


 姉は平然。


「でもいざという時は守らなあかん」


 太陽信仰は単なる祈りやない。


 生活基盤。


 経済基盤。


 防衛基盤。


 結果として、姉は一個師団規模の民兵を得た。


 知らず知らずのうちに。



◆副社長の嘆き


 夜。


 屋上。


「なぁ姉」


「なんや」


「私は着服しただけやのに、なんでこんな巨大勢力できとん」


「原因はあんたや」


 ぐうの音も出ない。


「でもな」


 姉は朝日を見つめる。


「光は広がるもんや」


 空が赤く染まる。


 子ども達が並ぶ。


天照大神(あまてらすおおみかみ)様、今日も働きます!」


 声が重なる。


 私は溜息。


「副社長の労基法、どこ」


 だが胸の奥は少し熱い。


 着服から始まった投資。


 青田買い。


 館購入。


 それが街を変え。


 思想を広げ。


 軍団を生んだ。


 ブラック企業副社長は今日も働く。


 日輪の下で。


 知らん間に、歴史の歯車を回しながら。

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