私のために争わないで~
ゆきたん・・そして仙術波動で視界を共有するシズクは、あの"少女"を巡って対立している2つの少年グループを興味深げに観察していた。
弟・男の娘シノブは、可憐な仕草と微笑みで少年たちを誘惑し、まるで手玉に取るかのように振る舞う。
その魔性は、見ているだけで背筋がぞくりとするほどだ。
今の所、2グループの少年たちは口論で済ませているが、いずれ殴り合いに発展してもおかしくない。
「おれを誰だと思っているのだ!」
「親の身分でしか語れんのか・・卑怯者!」
「なに、卑怯!? 徒党をくまないと何もできないと小人め!」
「なんだと!!」
一人の少女をめぐっての争い・・・
シズクはドキドキわくわくしながら、弟の恐ろしさを満喫していた。
「悪い奴だなぁ・・ほんとに!」
やがて・・・
少年たちの罵り合いの断片、内容から・・ひとつの事情がゆっくりと姿を現した。
そう、彼ら少年たちの身分と素性・背景が、ついに明らかとなったのだ。
対立する二つのグループの一方は・・・
父・マキビ参議を、おとしいれ処刑に追い込んだ・・憎きマツウラ外記の家臣や関係者の"子どもたち"。
そしてもう一方は・・・
同じく仇であり復讐すべき・・キリヤ左衛門尉の家臣や関係者の"子どもたち"なのだ。
シズクにとって憎き相手、復讐すべき二つの家門に属する子供たちが、弟シノブをめぐって対立している。なんとも愉快な筋書きだ!
牢の中で、シズクはゆっくりと口角を上げた。
「ここで全員、血祭りにしてもいいのだけど・・・
シノブに何か思惑があるみたいだし・・ふっふふふ」
この対立は、主君同士の因縁がそのまま子どもたちに受け継がれたのか。
それとも・・弟シノブの"魔性"が、彼らの関係をこじらせたのか!?
「シノブめ・・・!
マツウラ外記とキリヤ左衛門尉の間に、子どもの揉め事から亀裂を入れようってわけなのね。
そんな芸当、上手くいくのか・・見ものだわ」
その呟きは、驚きと期待、そしてわずかな恐れが混じった低い声だったその時・・・
"ゆきたん"の耳・・すなわちシズクに、少女の声が届いた。
「ぼく・・いや、あたいはね、強い人が好きなのよ」
その一言、その発言は、まるで火種を投げ込むような破壊力を持っていた。
少女に気に入られたいという少年たちの甘い恋心。
そこに付け込まれた両派の少年たちは、一斉に胸の奥で何かが爆ぜた。
そして次の瞬間・・・
彼らの腰に下げられた鞘が、一斉にカチリと音を立てる。
少女の言葉が、少年たちの闘争心に火をつけたのだ。
その高ぶりは、ゆきたんの視界を通じてシズクにも鮮明に伝わる。
「よっしゃ・・・我が弟よ。見事だ。
ここで奴らに亀裂を入れる! 血の粛清の始まりだわぁ」
シズクは別の意味でいきり立ち、牢の中で拳を握りしめた。
だがその直後・・・路地に鋭い怒声が響き渡る。
「おまえら、何をしている!
鞘から手を放せ! もし抜けば・・俺が斬る!」
声の主はジロウ君,すなわち"オキタ・ソウジロウ"。
その一括で少年たちの動きがとまり・・
その上、威圧によって、彼らは後ずさりした。
少年たちの顔が真っ青になってしまっている。
そう、少年たちのいさかいに、彼が真っ向から割って入ったのだ。
「ちっ・・いいところだったのに。
ジロウ君は・・ほんと、空気を読む気がないんだから」
シズクは舌打ちし、悔しげに肩を落とす。
そして・・・
騒ぎの元凶である少女の姿は、いつの間にか消滅! 逃走していた。
なんと逃げ足の速い! ヤバいと判断すれば・・瞬く間に消え去る。
理由は明白だ。
弟シノブとオキタ・ソウジロウは顔見知り。
大江山の鬼退治で共に戦った仲でもあり、ライバルでもあった。
鬼抹殺スコアを競いあった戦友。
(ちなみにシズクもサポートとして参加している)
女装しているとはいえ、あの距離で長くいれば正体が露見する可能性が高い。
だからこそ、シノブは風のように姿を消したのだ。
とりあえず・・・子供たちの騒動はジロウ君によって未然に防がれた。
殺傷事件にならずに済まされたのだ。
しかし、路地の騒ぎは町人たちの目にも触れ、
さらに 警備を司る検非違使の役人まで駆けつけてきていた。
小さな口論のはずが、治安上の問題として扱われるほどの騒ぎに発展していたのである。
これで・・わずかとはいえ、
マツウラ外記とキリヤ左衛門尉の陣営に亀裂を生む"最初の一里塚"になったはず!?
・・・とシズクは密かに願うのだった。
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その後、ゆきたんは気配を消したまま、そっとその場を離れた。
ジロウ君は勘が鋭い。
透明化しているとはいえ、長く近くにいれば気配を察知されかねないからだ!
それから、まもなく道端で・・マツウラ外記の関係者と思しき、まだ10代前後の子供と鉢合わせした。
年も若く、心も未成熟。意思の抵抗は弱い。
ゆきたんは迷いなく式札を貼り付け、その子を傀儡として操ることに成功する。
操られた子供は、ふらりと町へ向かい、
シズクの指示どおりに菓子類を買い集めた。
本当はもっと豪勢な品を買わせたかった。
だが、子どもの持ち金は小遣い程度。
買えたのは、ほんの少しの珍しい菓子だけだった。
それでもシズクは、牢の中で満足げに笑う。
「ふふ・・・珍しい菓子が手に入っただけで十分よ」
幼い子供のお金を巻き上げた極悪人だと・・・本人は気づいているのであろうか!?
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




