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シノブ侍従を討て!


シズクの脳裏へ流れ込んだ"異星人の記憶"は、ひとつの衝撃的な事実を告げていた。


この月面には六百年前の・・異星人が操っていた航宙艦がそのまま放置されている!

しかも・・あの異星人(イグヌス=ヴァスル)の記憶によれば・・・・

その航宙艦は今だ健在・・駆動可能な状態で眠っているという!


異星文明の呪いと引き換えに得た、最大の"お宝"というわけなのだ。


「いずれはその航宙艦を回収したい。もしかしたら・・私たちで動かせるかもしれないのよね。

これは・・すばらしい。夢が広がる! 自分の船が持てるのよ!」



呪いは徐々に解呪されていったものの、シズクの身体はまだ重い。

弟シノブに抱きかかえられているとはいえ、揺られるたびに、体内の仙力が微かに軋むのがわかった。


忌まわしきあの場所から遠く離れた・・この通路、

冷たい鉄壁が続く静かな一角で、シズクはそっと身を横たえた。


枕代わりになっているのは、白狸"ゆきたん"の柔らかなもふもふ。

その"ゆきたん"は目を丸くし、尻尾をぴんと立てる。


「うち・・姫ちゃんの枕っすか!?」


シズクは疲れた笑みを浮かべ、ゆきたんのふわふわの毛に頬を沈めた。


「ごめんね・・しばらく、枕になってて・・・

"ゆきたん"のもふもふ、落ち着くのよ♡」


そんなことを言われたので・・ゆきたんは少し誇らしげに胸を張った。


「・・・しゃあないっす!

姫ちゃんのためなら、もふもふを全力で提供するっす」


通路の薄明かりの中、

シズクはゆっくりと呼吸を整えながら目を閉じた。


そして、弟シノブは周囲を警戒しつつ、

姉の呼吸が落ち着いていくのを静かに見守る。



-- -- -- -- -- -- -- -- -- --


一方・・五稜郭内の治安を司る衛門府は、突如として大混乱に陥っていた。

シノブ侍従はただ一人、その武勇に命を賭し・・姉シズクを救うべく地下の監獄に突入!

そして・・狭い通路での壮絶な激闘、牢衛たちは次々と倒れ、床は血で赤く染まる。


とりわけ、キリヤ左衛門尉の次男、シュウジ様の刺殺は、大きな衝撃を呼び、場は瞬く間に混乱の渦に飲み込まれた。


大江山の鬼退治で名を馳せた英雄、シノブ侍従・・

単独とはいえ、その切り込みはまるで戦闘マシーンのように凄まじかった。



衛門府の人員だけでは事態を収められない。

ただ死傷者の数だけが増えていく。


そんな中・・・

エノモト総裁自らが現場へ姿を現した。


そして、ついに幕府陸軍の出動が命じられる。

もはや治安維持隊では手に負えない。

軍を地下施設へ突入させるしかないのだ。



「なんとしてもシノブ侍従を討て! 首をここに持ってこい。姉のシズク姫も同様だ」


エノモトは決意する。

・・ここでシノブ侍従を仕留める。後々、禍根を残すわけにはいかない。



濃紺のフロックコートに身を包み、

形の整ったケピ帽を深くかぶった幕府陸軍の兵たちが、

無言のまま、統制された足取りで前に進む。


手に握られたのは前装式の電磁加速銃(エルフィールド)。

西洋諸国における標準的な銃であり、

腰の軍刀は、薄暗い通路の光を受けて鈍くきらめいた。


地下牢獄へと続く狭い通路へ、

兵たちは続々と足を踏み入れていく。

冷たい鉄壁が四方から迫り、空気は冷たく重い。

それでも隊列は崩れず、課せられた任務を遂行すべく前進していく。



この幕府陸軍は・・五稜郭を守護する最精鋭部隊。

10倍以上の兵数で迫る明治維新政府軍を鳥羽・伏見の戦いで・・一時的とはいえ破り、勝利した兵たちなのだ。


五稜郭の防衛を任されるにふさわしい・・経験と胆力を備えた、幕府最後の強兵である。




そんな幕府陸軍の隊列に、

ひっそりと紛れ込むもう一つの集団があった。


それはキリヤ左衛門尉と、その家臣たち十数名。

彼らの胸に宿る目的は、ただ一つ次男・シュウジの仇を討つこと。


左衛門尉は五十前後。

やせ型の身体に、神経質さを隠しきれない鋭い目。

口元は常に固く結ばれ、

怒りと焦燥が入り混じった表情が張り付いている。


その男が、家臣たちを率いて自ら地下へと足を踏み入れた。

復讐の炎に突き動かされるように、

幕府陸軍の兵列の後ろへと静かに続いていく。


もちろん、仇となる男・・シノブ侍従は並の敵ではないことは理解している。

奴は、大江山の鬼退治で名を馳せた英雄。地下牢獄を血の海に変えた怪物。

真正面から挑めば、ただでは済まない。


ゆえに・・・左衛門尉は"最強の助っ人"を呼び寄せていた。


ひとりは オキタ・ソウジロウ。

元・新選組幹部。

かつて京の闇を斬り裂いた剣鬼でもあり、シノブ侍従と同様に大江山の英雄でもある。


そしてもうひとりは、

二十歳にして陰陽学師の学位を授かった若き陰陽師、"ウズマサ式部"。


直衣(公家服)の衣装にて・・式札を携え、静かに歩むその姿は、兵士とは異なる異質の気配をまとっていた。


よし、これなら勝てる! 討てる!

恐れるにあらず!


「シュウジよ! おまえの仇は・・わしが討ってやる」



--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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