6.蒼炎が舞う帝都_上
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
帝都アルベリア 商業区 高級宿の一室 ??? (貴族と思しき男)
「絶対に許すな!」
窓の外に平民達の騒ぎの様子が見える。
「傭兵を殺せ!どうせ皇帝や貴族は何もしてくれない!自分達で日常を守るんだ!」
「数で戦えば大丈夫だ!高位冒険者も俺たちの味方だ!」
口々に叫ぶ平民達は滑稽だ。自分達が操られてとも知らずに。
「閣下……。如何なさいますか」
執事が私に聞いてくる。
この後の動きは、あのお方の指示通りに動くしかない。
「内密に処理せよ。混乱に乗じて確実に消せ。もし消せなければ、我々があのお方に消されてしまうからな」
執事が軽く頭を下げて部屋から出る。
窓の外を再度見る。
さてさて、どのくらい平民が頑張るか……見ものだな。
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帝都アルベリア 平民区 母屋 サリエラ
明け方、母屋の入り口から音がしました。コツコツと足音がして、しばらくすると小さく部屋の扉を叩く音が聞こえました。
――マルクですか…。金属のこすれる音。装備を着込んだまま?何かありましたか。
アリアもぼんやりと起きたようです。子供たちを一瞥し、寝ていることを確認し部屋から出ます。マルクは一睡もしていないのでしょう。
疲れ切った顔を歪めて、簡潔に外の状況を説明してくれた。
「平民区の市民と冒険者が傭兵を殺した。その事で、傭兵団と市民・冒険者で争いが起きている。既に、傭兵団側も市民を数人殺して暴れている。一部では火も放たれている」
マルクの言葉を聞いたアリアは、顔をこわばらせています。
私は疑問に思い言葉を発した。
「……そうなる可能性はありました。ですが…そこまで大きくなるものでは無いはずですが?」
私自身の知人――ゲイン殿の手紙にも、帝都の近況は書いてはありました。
しかし、そこまで混乱が大きくなるような書き方ではありませんでした。
「傭兵団の背後には大貴族がいる可能性がある。この辺も危ない。一時的に官僚区まで逃げた方がいい。警備隊隊長のコネで優先して警備隊の家族は、逃げられるようにしてもらった」
「…ッ!平民区の孤児院は!あそこの子供たちも逃がしてほしいです!」
アリアは平民区の孤児院に、最初は預けられていたらしいです。
魔力があった為、物心ついた時には大聖堂へ移動しましたが、その後の奉仕活動は、平民区の孤児院で活動をしていたと言っていました。
「アリア、すまない。人数には限りがある。ただでさえ、東部市場の有力者たちが、我先に移動してきている。今でも許容人数を誤魔化してもらっているんだ」
「そんな……」
アリアが悲しそうな顔をし、マルクが肩を抱く。
「……話は分かりました。マルク、このような状況になった場合の対処は覚えていますね?」
「ああ、母さん。アルスとメルは優先して逃がす。今すぐにでも」
「ええ。こちらの準備は任せて――」
バキッと、玄関の方で急に音がして扉が開いた。
「ッ!〈フィジカル〉!誰だ!」
マルクは反射的に身体強化を発動し、剣を抜いた。玄関の扉を蹴破って、大柄な男が三人入ってくるのが見えた。
風貌は……傭兵のようですね。
瞬時に私も警戒態勢に入りました。細身の男が二人、肩幅が広く坊主頭の男が一人。坊主頭の男が、こちらを舐め回すように見てきました。
「おいおいぃ。上玉が一人いるじゃねえか。割に合わねぇとは思っていたが、そんなことなかったな!」
「どうでもいい…」
「余計なことはするな。命令通り殺せ」
頬に炎の刺青――まずいですね。一番厄介な傭兵団に狙われるとは。
「ッ!外にいた者達はどうした!」
「あんな奴らが俺らの相手になるかよぉ。舐めてんのかてめえ?」
「くッ。ダイケン……ヨルド……」
マルクが顔を歪める。
外で戦っている音はしていない。それに警備隊は魔力を持たないものが大半とはいえ、それなりに戦えるはずだ。その隊員たちが音も出さずに倒されたとなると……不意打ちだろう、と考えた。
傭兵たちも場数をかなり踏んでいるのだろうが、今は意識が完全に逸れている。
――狭い廊下での戦闘、ならば!
「〈アイスランス〉!」
氷の槍のような形が二本、傭兵達へまっすぐ飛んでいく。
「なッ!」「くそ!」
坊主頭の男の左肩に当たり、他二人は瞬時に反応して身をかがめていた。
――不意打ちにも慣れてますね。ですが、これはどうですか?
「マルク!!」
「応!〈ライト〉!」
「アリア!目を!」
「ッ……!はい!」
マルクが〈ライト〉の光量を上げた。
「くっ!」
私たちは即座に目をつぶった。目を開けた瞬間、傭兵達が目を手で覆っているのが見えた。ただの目くらましだが少しは時間を稼ぐことに成功した。
――今です!子供たちの部屋へ、三人で入り態勢を整えましょう。
そう冷静に考えていると、奥の寝室の部屋の扉が内側に開き始めていた。そして、扉からは寝間着を着たままの子供たちの姿が見えた。
私は撤退しようとしているマルクと目が合いました。
これはまずい……。
そして傭兵団たちがすでに動き始めているのに気づき、そのうちの一人がこちらに向かってきていた。
「マルク……!」
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――何か外で話し声が聞こえてきて起きてしまった。何だ?マルクでも帰ってきたのかな。
「んんぅ…アルス?」
メルが目をこすりながら起きてきた。
「今お父さんの声がした?」
メルにも聞こえたみたいだ。
「マルクが帰ってきたのかな?」
「…本当!…あれ?サリエラお祖母ちゃんとお母さんは?」
確かに、広いベットに二人は居ない。いつものなら、僕たちが寝ている場所のすぐそばで寄り添うようにして寝てくれているはずなのに。
「マルクが帰ってきたんじゃないかな。迎えに行ったんだよ、きっと」
「そっか!私たちも行こう!」
バキッと硬いものがぶつかるような音がして、家全体がわずかに揺れた。」
「アルス……何か、音がしたね?」
メルが小首を傾げる。可愛いが外の様子が明らかにおかしい。家の中で物が壊れるような音がしていた。マルクが酔っ払って何かを壊したのか?
「…!………!」
マルクの声だ。
「……。……!」
そして、低い知らない男の声だ。
「メル……何か大変なことが起きている気がするよ」
声が少し震えてしまっているようだ。自分で話をしていても分かる。
「……大丈夫だよアルス!怖くないからね。お父さんがいるなら安心だよ!」
自分が怖いと思って、慰めてくれているようだ。
「メル。ここはマルクさん達が部屋に入って来るまで待とう」
「……だめだよ!危ない時は、大人と一緒にいたほうがいいよ!お父さんは強いし大丈夫だよ!」
メルは一刻も早く、マルクさん達と合流したいようだ。
「待ってメル!外の状況が分からない内は大人しく……」
「アルス!何言ってるの!?お父さん達のところへ行くよ!」
――まずい!せめてサリエラやアリアが来るまでは待つべきだ!
外からは、何か硬い物がぶつかる音。そして扉の隙間からは、強烈な光が差し込んだ。
「お父さん!お母さん!」
「待って!」
だが、止めるよりも早くメルは扉に手をかける。
そして……扉を――開けてしまった。
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帝都アルベリア 平民区 母屋 サリエラ
――状況はまずい……子供達が出てきてしまったようですね。幸い扉は、私たちの真後ろにありますが……。
「今この瞬間はまずいですね……」
マルクは子供達が出てきたのを見て、狭い廊下の中央で傭兵を押し返している。私とアリアは子供部屋の前に陣取り魔法で援護をしている。
しかし、他二人を抑えるのに精一杯だ。アリアは、回復魔法でマルクが傷を負う度かけ続けている。つまり、子供達の安全を確保しながら逃げることができない。
本来であれば、〈ライト〉で怯んだ隙に子供たちのいる部屋に入る。そして、内側からかんぬきを入れ時間を稼いでる間に、暖炉裏の隠し通路から逃げるはずだった。
――もう次は無いですね。ここで私たち止めなければ、子供たちが死にます。相手は手だれ……不意打ちで一人右肩を負傷。
それでも、こちらが不利なのに変わりはありません。
この状況、覚悟を決めるしかありませんね。
「アリア!子供達を部屋へ!」
「……!はい!」
――出来た義娘。夫が犠牲になるかもしれないというのに、状況を理解しましたか。
そう。この瞬間において、子供達を逃す事は最優先だ。
「マルク!前へ!〈ファイアボルト〉!」
マルクは一度気合を入れ、目の前の傭兵を自身ごと大きく押し返した。先程までマルクがいた位置に魔法が直撃し、瞬時に炎の壁となった。
そして、マルクは後方にできた炎の壁に、躊躇わずに飛び込んだ。
傭兵達は、屋内戦闘に慣れていない。基本的に身体強化がメインで、他の魔法を瞬時に発動できないんだろう。
「アリア!」
子供達を部屋へ押し込んだアリアが、再び廊下へ戻ってくる。そして、マルクへ回復魔法をかける。
「〈ヒール〉!」
――今のうちに部屋の中へ……。
その時、ヒュッと風を切る音がした。
「うぅっ!」
短剣が飛んできて、アリアの脇腹に刺さる。
「アリア!!」
マルクがやけどから治りきってない体を、アリアの前へ移動させます。
「早く!部屋の中へ入「〈ウォーターウォール〉」」
「舐めるなよババア……」
傭兵の一人が炎を消してこちらへ来る。目を凝らすと、奥から更に傭兵達が二人、入ってきているのが見えた。どうやら最初に怪我を負った傭兵のようだ。他の者たちはこれ以上何かないか警戒している。
次はきっと不意打ちを打つ前に動き出すだろう。
今の状況は良くない。アリアが負傷し、マルクは火傷から完全には復活していない。なんとか子供達は部屋へ押し込んだ。
――だけれども……ここから先二人を……。
「母さん!行ってくれ!」
マルクが剣を再度構え直す。
迷いは一瞬だった。
「……愛しているわ」
――こんなにも大きく……なっていたのですね……。
マルクの背中を見て、ふと場違いなことを思ってしまった。ここまで大きくなっているのを、どうして今の今まで気づかないのか。
目から涙が出ているのが分かる。
「メルとアルスを頼む。母さんなら……」
最後に見たのは――
アリアを後ろに庇って笑っている亡き夫によく似た顔だった。
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