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15.砦の奪取

昨日はすみません!12時投稿ですが投稿します!


文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 要塞へ来て、魔族の子を保護?してから二日たった。まず残った要塞への武器供給がちゃんとできるようになり、二つの砦は息を吹き返した。


「ともかく、アルス坊のおかげで二つの要塞への武器供給は問題なさそじゃな」

「こやつは、魔人を受け入れるキチガイだとばかりだと思っておったが、中々よく戦場を見ておるな!」


 酷い言われようである。ちなみに魔人の女の子はメルとずっと一緒にいる。メルは、困ってる人をお世話するのが大好きな子だ。

 僕たち傭兵団は、この二日要塞の構造の確認や、戦域の状況などを把握して指揮に助言をしたりしていた。元々は貴族が担っていた役目だが、今はドワーフの代わりに僕たちがやっている。ドワーフたちからは感謝された。

 何せ元々ドワーフたちは指揮経験なんて皆無だ。

 

 貴族にも会いに行ったけど……明らかな無能な貴族たちって感じだ。腐敗の匂いしかしない。

 一度様子を見に行ったら、酒を要求し、ドワーフを皆殺しにしろと叫び、金の話しかしない。救いようのない連中だった。

 勿論そのまま無視して牢屋に入れっぱなしだ。後ろで、不敬だ、とか言っていたが無視だ。侯爵が来たらお任せしよう。

 

 ちなみに侯爵にはこの状況は知らせてある。魔族のことも伝えたけど、良い返答が来るのを待とう。


「しっかし、ほんと稀に見るクズ貴族だったな」

「レオー。あんまり言わないほうがいいよー。貴族は怖いんだよー」

「けっ。聞こえたって構わねぇよ。あんな奴らとは関わらのもごめんだぜ」


 僕たちは、今後の動きについて砦の一角で作戦会議をしている。


「しかし、何故魔王軍の侵攻が急に始まったんだろうね?」


 この部屋は、元々貴族たちがお茶会をするための部屋だったが、今は作戦部屋として壁に地図が至る所に張り付けられている。

 その地図を見ながら僕はふと疑問を口にした。


「いや、坊ちゃん。実は三年前氷牙城(フロストファング)がやられた。それを皮切りに、他の砦にも押し寄せるようになった」


 ガタイのいい、いかにも冒険者風の男が僕の後ろで地図を見ながら答えた。最初の部屋にいたベッドで寝ていた人だ。名前はワルド。

 部屋にいた、もう一人のキッドと二人でパーティを組んでるらしく、砦に派遣された北方の冒険者だ。


「もともと、俺たちは氷牙城(フロストファング)で戦っていたんだ。最初に魔物の大群が来たのは、あそこだ」

「その時は、あっしらやほかの冒険者、傭兵たちと何度も何度も押し返してきたんでさあ」


 キッドが話に参加してきたが、ガジンさんたちの方を見ながら言いづらそうにしている。


「……わしらドワーフたちが貴族の横暴に我慢できんくなってな」

「もしかして他の砦が落ちた理由って、ドワーフの人たちが協力的じゃなくなってきたからってことですか?」

「どの砦も指揮官は帝国の貴族だ。しかも、今までの歴戦の貴族は皆下げられてしまったんだ。後任は戦いに出たこともないボンボンばかりでな。しかもドワーフを毛嫌いする連中だった。

 本来、ドワーフと協力しなきゃ砦は守れんというのに」


 ワルトが苦々しげに答える。

 そこまで聞いて、僕は疑問に思った。


 ――そもそも、歴戦の指揮官たちを下げる必要なんてあったのだろうか?


 その疑問には部屋の入り口付近にいたヨルムが答えてくれた。


「戦争で指揮官が足りなくなったのです。歴戦の指揮官たちは他戦域に回され、代わりに中央から“経験のない貴族”が送られてきました」


 その際に不足した指揮官は、中央から来た指揮官で補填したらしいとのこと。ここ鉄嶺堡(てつれいほ)の指揮官も、そうやってきた中央の貴族の一人らしい。


「なるほどな。道理で急に砦同士の連携が落ちたと思っていたぜ」

「大将と鉄嶺堡(てつれいほ)に行け、って新しく来た氷牙城(フロストファング)の貴族に言われましたからね。あの貴族も自分のお気に入りしか周りに置きませんでしたから」

「けっ。その結果陥落してたら意味ねえよ。しかもその貴族はこの砦に逃げ込んでるんだからよ。たちが悪い」


 ええ、しかも牢屋にいる奴らの中にいるのかよ……。


「なあ、それってほかの砦の貴族たちも逃げ出してここに居るってことか?」

「レオ。たぶんそういうことなんじゃないかな?この砦だけ貴族がこんなにいるのおかしいなって思ったんだよね。それだけ重要な砦だからかと思ったんだけど……」

「各砦から逃げ出してきたんだろうよ。貴族はドワーフから緊急用の地下通路の場所聞いてるからな。だが、冒険者や傭兵たちは置き去りにしたみたいだな。俺の顔なじみたちもいねえからな」


 今回こんなことになったの絶対その貴族たちのせいじゃん。帝国も何考えてそんな奴ら送ってきたんだよ!どの砦も、戦ったこともない貴族が指揮官になり、ドワーフを差別する……そりゃドワーフも反発するさ。


 状況は大体分かったが、貴族がろくでもなくて反乱を起こしたくなる気持ちには共感しかない。


 ともかく、ほかの砦を取り返す作戦を考えないといけないかな。だけど、取り返しても指揮官がいないんじゃなあ。この際傭兵や冒険者の人たちに指揮官やってもらった方がよさそうだ。


「ヨルムさん。この際、冒険者や傭兵の方々に指揮官になってもらって、他の砦を取り返した方がよくないですか?」

「……元々はそのようにする予定だったのです。それを中央の役人が無理やり押し込んだのが実情です。事ここに至っては、貴族の指揮能力がなかったことにして、傭兵や冒険者の方にお願いしましょう」

「各砦の奪還を優先する方針でいいかな。ここから近い砦二つはまだ何とかなっているみたいだから」


 僕がその方針で話し始めると皆異論はないのかうなずいている。


「じゃあまずは――」



*************************************


北方要塞 氷牙城(フロストファング) 地下 ワルド


 ――その頃、北方要塞・氷牙城(フロストファング)の地下で動く者たちがいた。


 土埃で肺が焼けるようだ……。前方のドワーフたちが、静かに手で合図を送ってくる。


「ワルドよ。あとはこの岩をどければ元々あった要塞の真下にでるぞ」

「ああ、助かったぜガジン。元々は俺たち人間のせいなのにすまねえな」

「ふんっ! お前さんのせいじゃなかろう。悪いのは貴族じゃ。あのアルスの小僧は、ドワーフどころか魔人にさえ偏見がないからな。わしらも人間だからとこだわるのは馬鹿らしいわ」


 坊っちゃん――いやアルスか。アルスはまだ十歳にもなってねえガキだ、って聞いたときはキッドも驚いていたな。あの時の顔と言ったら……自分の子供に重ねてんだろうな。


「大将。俺たちはいつでもいけやすぜ」


 後ろを振り返ると50人ばかりの傭兵と冒険者、そして残る100人はドワーフたちだ。どうやら地下に隠れていたらしく、道中で合流したものも結構いる。


「よし、やるぞ……」


 俺は右手に握る剣を強く握りしめた。そしてガジンに「やってくれ」と声をかけた。

 すると、ガジンは周りのドワーフたちと「応!」と一度返事をして岩を崩した。




*************************************


 ――同刻、鉄嶺堡(てつれいほ)では。


「ワルドさんたちはうまくやっているかな?」

「問題ないだろうな。元々はあそこで戦っていた人みたいだからな」


 僕とカイは地図を見ながら、今は地図部屋と呼ばれる前に集まった部屋で、今後の展開について話をしていた。


「でもよお? 最初に氷牙城(フロストファング)を最初に落としに行くのはなんでなんだ?近くから攻略していくのがいいんじゃないのか?」


 レオの疑問はもっともなのか、ほかの面々も顔をこちらに向けてきた。

 僕はその理由をカイやワルドさん以外に話をしていないことを思い出し、もう一度説明することにした。


「まず、魔物たちの動きは急に統制が取れてきたって話を聞いたでしょ?」

「ああ、言ってたよな。だから魔王がいるって話になったんだろう?」

「そう、つまりあっちも戦略的に動いているんだ。だから、相手が“読んでない場所”を攻めるのが一番なんだ」

「???」


 ゲインやマルクは理解したみたいだけど、レオや他の子たちは難しそうな顔をしている。


 そう考えるとすぐ理解できるカイは特別だよなやっぱり……。


「だからね、敵が“こう来るだろう”って思ってる場所はダメなんだよ。読まれてないところを突くのが一番なんだ。地下通路もばれていない今なら裏をかけるからね」

「ああ、不意を突いてるってことか?」

「そうそう。そんな感じ。氷牙城(フロストファング)は一番端の要塞だ。敵からしたら想定しない。むしろ、その間の要塞をとると思うだろうからね」

「でも、結局ほかの所にいっぱい敵がいるんだから倒す数は変わらなくねえか?」


 レオが疑問に思ったことを口にする。いい疑問だ。そこが戦略的視点かどうかということになるからだ。


「そうだね、でも相手の指揮官からしたら違う。元々七つのうち四つを落としていたんだ。こっちが一つ取り返したら、相手からすると心理的に逆転されてしまったように感じるだ」

「でもそれなら、どこでもいいじゃねえのか?」

「ううん、氷牙城(フロストファング)と鉄嶺堡(てつれいほ)の間には二つの砦がある。今までは鉄嶺堡(てつれいほ)側だけを警戒していればよかったけど、後ろがとられるとそっちも警戒する必要が出てくるんだ」

「……ああ、何となくわかってきたぜ。つまり、後ろも気にしながら前も見なきゃいけなくなったのか」


 さすがレオだ。斥候をやっているだけあって理解できたみたいだな。他のメンバーも皆感心したように頷いている。


「要は、相手に“考えさせる時間”を作るのが大事なんだよ。こっちが有利になる時間をね。」

「お前……そんなことばっかり考えているのかよ……」


 レオくんや、きみ今失礼なこと考えたでしょう?僕にはわかるんだからね。


「まあ、いいじゃないか。アルスの考えのおかげで、うちはここまで大きくなってきただから」

「そうだよ! アルスはすごいんだから!」


 カイとアルスがフォローしてくれる。見ればゲインとリュシアは「その通り!」と言わんばかりに頷いている。

 そこまで言われると少し恥ずかしい。


「と、ともかく今後の動きは氷牙城(フロストファング)が陥落してからかな。どのくらいの戦力が追加で必要かも確認したいからね。侯爵からの返答はどうかな?ヨルムさん」


 僕は照れ隠しのように声をかけた。ヨルムさんは懐から一枚の手紙を出し、読み上げた。


「丁度先ほど伝令が来ましてな。カイ殿に報告しようと思っておりました。現在軍勢を再編し終わったとのこと、遅くとも三日以内には増援を送るとのことです」

「そっか、ならその間まではここで待機しようか。増援と合流したら各砦の奪還を考えよう」

「そうだな。侯爵の増援があった方が作戦の幅が広がるからな。よし! 全員武器の手入れだけは怠らないでくれ! 解散!」


 ふう。とりあえずは侯爵の増援待ちかな。そのあとの動きも考えておかないと。


 ――この砦だけは、しばらく静かだと思っていた。

 この静けさが、ずっと続くと誰もが思っていた。何故なら砦の両隣には要塞がまだ残っていたから。

 

 まさか……敵も同じ考えを持っていたなんて――


 その日の夜、鉄嶺堡(てつれいほ)は魔物の大群に襲われた。

 

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