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13. 鉄嶺堡《てつれいほ》のドワーフたち

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 皆、侯爵からの話を聞いて最初はだんまりだった。状況が、かなり悪いことは分かったからだ。

 すでに北方防塞群《セプテント・ライン》は半壊し、これから向かう要塞もドワーフたちによって占拠されている。


 最初に口を開いたのはレオだ。


「でも、行くしかねえだろ?帝国に恩はねえが、俺たちは力ある傭兵団として戦う必要があるよな」

「レオ……そうだな。俺たちはそのために傭兵団を組織している。怖いから、不利だからと逃げるようなことはできない」


 カイもレオが言った言葉を改めて噛みしめている。すでに侯爵からの依頼を受けている。ここで「やらない」と言っても意味がない。


「それで今後の動きだが、アルス」

「うん。まず鉄嶺堡(てつれいほ)のドワーフたちの説得からだ。それは、ガンテたちにお願いするしかない。頼めるかな?」


 奥に座っていたガンテが、胸を二回たたいて「応!任された!」と答えてくれた。そして僕は細かい指示を皆に伝える。

 具体的に一番大事な補給に関してだ。要塞には武器の備蓄は相当あるだろうが食料が不足している。

 ヨルムさんの話では、第二騎士団を討伐した際、取り返せた食料はごく僅かだったらしい。他はすべて売り払って金に換えていたとのこと。


 さて、食料問題が一番の問題だろうな。僕たちがそもそも用意してきてる食料はもうほとんどない。侯爵も食料だけはどうにもならないと言っていたし。


 僕がそのことについて説明し終えると、フィンとノエルが手を挙げた。珍しいあの二人はこういう場では静かにしていることが多い。


「アルス!実はね!マーガレットさんにあらかじめ食料の追加は頼んでおいたんだ!」

「うん。ボグさんがマーガレットさんに報告していたからその時に一緒にお願いしたんだ」

「その話本当!?いつの間に……」


 二人は主に補給面で傭兵団を支えてくれているのだ。フィンは快活な性格だから、だれとでも仲良くなれるし、ノエルは物静かだけれど頭がいい。傭兵団の一員として、幼いながらも自分たちで判断して働いてくれていたのだ。


「アルス。俺が手紙をあまり書けなくてな。ノエルに道中も教えてもらっていたんだ。だから、マーガレットさんに手紙を出すときいつも相談していたんだ」


 ボグさんと二人はいつの間にかそんなに仲良くなっていたらしい。意外な組み合わせだ。


 ん?ちょっと待てよ……。それって、マーガレットに追加依頼の話はもうしてあるってこと?報酬の話までされると大変だぞ。


 僕は顔を青くさせていると、ノエルが僕に近づいてきて手招きして耳打ちする。少しこそばゆい。


「マーガレットさんには金額の話はしていない。追加で依頼するから、その分の報酬も払うってことで、食料をいっぱい送ってって頼んだんだ」


 さすがノエルだ。これで後でいくらでも金額は調整できるぞ、と僕はノエルに親指を立ててウィンクしておいた。ノエルは意味は分からなそうだったが、同じように返してきた。

 聞いた話では食料は領都の侯爵宛てで送ったらしい。その話はあとで侯爵に伝える必要があるとのこと。それはヨルムさんが喜んで引き受けてくれた。


「なら、最低限の食料を買い込んで早速出発しよう。武器とかは侯爵が好きに使っていいと言っていたからね。ガンテたちの装備は――」

「アルス坊心配いらぬぞ。わしらたちは自分たちで装備を作れる。要塞のドワーフたちを説得できればそこで作る方が早いのじゃ」


 なら、本当にすぐ出発できそうだ。僕はカイの方を向いて一度うなずいた。カイもうなずき返してくれたので準備はいいみたいだ。

 最後にカイが全員に号令をかけた。


「碧狼傭兵団。これより、鉄嶺堡(てつれいほ)の説得、および防衛のために出立する!各位万全の準備をしておいてくれ!以上!解散!」

「「「応!」」」


 さて、要塞についてからが大変だぞ。


 僕は一人、どうやってドワーフたちを説得させるのか、を道中ガンテたちと話そうと決意した。




*************************************


 ーー領都を出発して二日の位置に要塞はあった。まるで山そのものが要塞としてあるかのような壮大さ。両側に伸びる壁は尾根と尾根を繋ぎここから先は通さない、という意思を強く感じた。

 その中央には鉄でできた巨大な門が待ち構えていた。


 僕たち傭兵団が近づくのが城壁の上から見えたのか、騒がしくなっているのが分かった。次々と城壁の上に弓やクロスボウを装備したドワーフたちが並んだ。

 すると、真ん中にいた指揮官らしきドワーフが大声でこちらに向かって叫んだ。


「止まれ!ここは我らドワーフが占拠した!見たところ傭兵だな!即刻立ち去れ!」

「俺は碧狼傭兵団の団長カイだ!ヴァルグレン侯爵からこの要塞にあるドワーフの説得と防衛の依頼を受けここに参った!代表者を呼んで欲しい!」


 すると、向こうのドワーフたちが騒ぎ始めるのが聞こえた。露骨に弓矢で狙ってくる者たちまでいる。お互いの緊張が高まっているのが分かり、こちらも盾を構え始めるがーー

 先にガンテがカイの前に出て大声で叫んだ。


「北方総鉱山長のガンテじゃ!お主らは鉄嶺堡(てつれいほ)のドワーフたちじゃなかろう!どこの所属じゃ!」

「ガンテ……ガンテ鉱山長!生きておられたか!反乱を起こして死んだと聞いてあったぞ!わしじゃ!氷牙(ひょうが)の砦のテグンじゃ!」

「テグンか!久しいな!すまんが、この人たちは入れてやって欲しい!ドワーフの里を救ってくれた恩人じゃ!」

「むむ。すまんがわしの一存では決められん!鉄嶺堡(てつれいほ)の代表者を呼んでくるので暫く待たれよ!」


 すると、そのドワーフは城壁から消え周りのドワーフたちも弓矢を一旦は下ろしてくれた。

 そして、小一時間くらい経っただろうか。城壁がゆっくりと開き始めた。

 中からドワーフたちが武装して出てくるのが見えた。先頭には片目のないドワーフが歩いている。だが、ガンテを見ると走り出し、そして抱きついた。


「叔父貴!」

「おぉ、ガルト!お主生きておったのか!」

「それはこっちのセリフだぜ!なんでまた人間なんかと一緒に来たんだ!」

「それよりもお前が責任者なのか?お前の父はどうした?」

「ああ!中にいる!だが、怪我をしていて動けないんだ。だから代わりに俺が来たんだ」


 何やら色々と話をしているのが見える。そして、チラチラと僕たちの方を見てから、僕の元へ来て頭を下げた。


「我らの同胞を助けて頂き感謝いたす!侯爵との交渉も中でお聞きいたします!」

「あ、僕は参謀だから団長のカイに話を……」

「アルス。構わないさ。助けようと動いたのはお前だからな。お前に感謝を伝えるのは間違っていないさ。とりあえず、中へ入ろう。

 ガスト、エルナ!武器はしまうよう徹底させろ。中で荒事は厳禁だ!行くぞ!」


 僕たち傭兵団はこうして砦の中へ入ることに成功した。



 中に入ってみると、至る所に戦闘の跡が見える。魔法の跡、血が飛び散っている壁、ドワーフだけじゃなく、人間の重症者も地面に横たわっている。

 一旦中央の広場のような所に傭兵たちは集めさせ、砦の代表者のところに行くのは僕とカイ、護衛でガストとゲインを連れて行くことにした。

 

「こちらへ」


 ガルトと名乗ったドワーフが、砦の四隅にある櫓の一つの部屋へ案内した。

 中では、人間の冒険者らしき男が一人と、ベッドに横たわるドワーフ、その隣に人間が一人いた。


「ガスト。誰だそいつらは?砦の人間じゃないな?」

「父ちゃん!ガンテ叔父貴が来てくれたんだ!生きてたんだよ!」


 奥のドワーフは急に腰を上げて扉近くにいるガンテを凝視し、暫く見つめてから涙を流した。


「ガンテ!」

「ガジン!」


 二人は近づくと、いきなりお互いの顔面を思いっきり拳で殴った。動揺する周りの人たちを尻目に、お互い罵声を浴びせた。


「てめえ!反乱を起こす気はねえ、って言ってたじゃねえか!反乱するなら最初から加わりやがれ!」

「お前も要塞では大人しくしてる、って言っておったじゃろう!反乱をしたくてしたわけじゃないわい!」


 ドワーフたちはお互いに罪をなすりつけあっていたが、暫くすると抱き合って再会を喜んでいた。


 何を見せられているんだろう、僕たちは……。あ、奥のベットの人と目が合った。会釈しておこう。


 奥で横たわっていた人も会釈を返してくれた。見た目だけで判断するなら冒険者だろう。隣の人も呆然としているが仲間なのだろう。


「ともかく、わしらはお主らと侯爵の仲を取り持ちに来たんじゃ。誤解があったようじゃ」

「誤解だあ?食料もろくに渡さねえし、仕事も何もしねえ人間貴族様には愛想が尽きたんだよ!

 しまいにゃ、ドワーフの子供まで殺そうとしたんだ!ここにいる冒険者のにいちゃん達がいなかったら死んでたぞ!」

「なんじゃと!」


 何やってんだよその人は……。確かにそんなことされたら反乱するよな。


「其奴はどうしたのじゃ?」

「今は牢屋にぶち込んだ。他の貴族も一緒にな。魔力を吸い取るミスリルの牢屋だ。魔法も使えずおとなしいもんよ」

「なるほどな……とりあえず、今は大人しいならいいわい」

「……それより、後ろの小僧どもは誰だ?」


 ようやく僕たちに話が回ってきたようだ。


「おお、わしらの恩人のアルス坊と、その上役で傭兵団の団長のカイじゃ」

「よろしくお願いします!」

「よろしく」

「わしらはお主達が要塞の補給を止めておるのをやめて欲しいのじゃ。他の要塞への補給は続けて欲しい、あわよくば地下から他の要塞を取り戻したいのじゃ」


 ガジンと呼ばれたドワーフはそれを聞いて苦虫を潰したような顔をした。そして、それは後ろの冒険者たちも同じだ。


「……ガンテよ。わっちらが地下から補給を止めておるのではないのだ」

「なんじゃと?」

「わっちらとて帝国に住む者ぞ。そんなことはせやせん。今ある事情で地下からの補給をできなくなったのじゃ」


 そしてガジンは物がつっかえたかのように、苦々しく言葉を出した。


「地下にーー魔人が現れたのじゃ」



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