10.リュシアと騎士
お休みを頂いてしまい申し訳ありません!
時間設定ミスりました!
今日からまた書き始めます!よろしくお願いします!
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
ドワーフの集落 碧狼傭兵団 リュシア
――夜の森を、木から木へ飛び移るように駆ける影があった。碧狼傭兵団のエルフたちだ。
先頭を走るリュシアの脳裏に、先ほどアルスの乗る馬車で交わしたレオとの会話が蘇る。
ゲイン様に報告を済ませた後、そのまま馬に乗りアルス様のいる馬車へ近づき飛び移った。そこではメルが膝枕をアルス様にしているのが見えた。
うらやましい……。今回の任務が長引かなければ、私がその場所にいたものを……。
「それで?私たちが別任務で出ている間に、アルス様がおひとりで貴族の屋敷に向かったと?」
「仕方ねえだろ。アルスしか交渉役がいねえんだからよ」
私は声をかけてくるレオを無視して、奥で小さく丸くなっているアルス様の近くまで進んでいく。
「アルス様……お疲れなのですね……」
「おい!無視するな!」
私は後ろで騒いでいるレオを放置し、スヤスヤと寝ているアルス様の目の前で膝をつけた。よくお顔を見ようと、長くなった黒い髪を耳にかけてから横顔を見る。
少しアルス様が「んん……」と身じろぐのが分かった。
「リュシア。起こしちゃだめだよ」
「メル。分かってる。ただ、少し見たかっただけだ」
「むう……」
メルはアルスと居すぎだ。普段一緒にいるのだから私に代わってくれてもいいと思う。しかし、今は任務中だ。
私情を挟むわけにはいかない。
「それで?レオは何でここにいる?いつもなら先行しているはずだろう?」
「お前……。まあいい。ゲインさんとアルスの話しか聞かないのはいつものことだしな」
「当たり前だ」
当たり前だ。アルス様とゲイン様は我らエルフの――あの里のエルフたちの恩人だ。他の者たちも助けに来てくれたことは感謝しているが、私を含め助けてくれたのはアルス様とゲイン様だ。
特にアルス様は、あの小さき体でいつも他の者たちを助けようとする。自分は何もしていないという謙虚さも人間とは思えないほどだ。
……今回もドワーフたちを助けるために無理をしたのですね。
私の胸に、愛おしい気持ちが湧いてくるのが分かった。
「はあ。まあいい。今回急だったからな。斥候部隊は数人しか戻ってこれてない。そこでゲインさんから暗部も使っていいと許可をもらったんだ」
「何?……仕方ないか。ゲイン様がその判断をしたなら、アルス様のためになるのだろう」
「団長が、ゲインさんにお願いしてくれたんだ。アルスにも起きたら説明する。本当は俺が直接行きたいが……森の中じゃ暗部の方が早いからな」
森は私たちエルフの領域だ。木々の間を駆ける速さなら、誰にも負けない。
「ふん。いいだろう。行ってやる。だが、アルス様の護衛も必要だからな。妹だけ残していく」
我々が役に立つことを証明すれば、アルス様はきっと私たちを重宝してくださる。
そうすれば――私も、メルよりお近くに置いていただけるはずだ。エルフである私がいれば、護衛だって問題ないはずだ。
メルの方を見ると、まるでアルス様を取られまいと、上から抱きついている。少しアルス様が苦しそうだ。
その時、馬車の横に近づいてくるフード姿が目に入った。暗部の人間の装いだが、セルフィーだろう。
「ねえさま。呼びましたか?」
「ああ、暗部も斥候として前に出ることになった。私が直接率いるのでアルス様の護衛を頼みたい」
「ア、アルス様の!良いのですか?」
「私が一番足が速いからな……。余計なことはするなよ?」
「も、もちろんです!」
セルフィーが喜んでいるのが伝わってくる。しきりに服の匂いを嗅いでいるが……まあ、今更だ。
「とりあえず、すぐに行く。後は頼むぞセルフィー」
「はっ!」
そうして私はすぐに近くの馬へ、そして木に飛び移り他の暗部たちを連れて集落へ先行した。
「リュシア。もうすぐドワーフが言っていた集落の場所だ」
後ろから付いてきていた暗部の一人から報告が上がる。
「分かった。ドワーフの集落は人命優先と言われている。着いたらまず集落の長の元へ向かいましょう」
「ああ――ちょっと待て!前が明るくなったぞ!あれは……炎が上がっている」
「戦闘準備!間に合いませんでした、では済まされない。ゲイン様から必ず保護するように言われている!散開しろ!」
まずい。ドワーフたちを助けるように言われているのに、間に合わないとなったらアルス様が悲しむ。
それだけは絶対に阻止せねば――。
集落に入ると、そこら中の家という家から炎が上がっている。まるで……襲撃されたエルフの里のような光景だ。
よく見ると倒れているドワーフたちもいる。
私のほかにも同じように思っているエルフたちはいるだろうが、今はそちらへ気を配っている暇はない。
すると、視界の端でまた一人。ドワーフの女性だろうか、人間の騎士に切られているのが見えた。そのまま、目の前に立った子どもを切ろうと剣を振り上げていた。
よく見るとその顔は笑っていた。その顔は里を襲った騎士と同じ表情をしていた。
また……。
また、あの顔だ。
お前たちは――また、その顔で殺すのか!
私の里を襲ったときと同じように!
私は拳を強く握り、怒りで魔力が心臓から湧き出ているのを感じながら魔法を唱えた。
「〈エアブレイク〉!」
轟音とともに暴風が吹き荒れる。
「なっ――!」
騎士たちが次々と吹き飛ばされていく。その中で、一人だけが踏みとどまった。
「この程度の魔法で――!」
他の騎士とは明らかに違う。魔力の質が桁違いだ。
――中位級。
だが。
「遅い」
瞬きをする間もなかった。私は男の背後に立っていた。
「〈アイスランス〉」
「な――」
次の瞬間、男の身体を氷の槍が貫いた。
それ以上、その男が動くことはなかった。
――――――――――――――――――――――――――
ドワーフの集落についてみると、ひどい惨状だった。家々は焼き払われ、所々ドワーフたちの死体があった。
しかも、右手側は地面ごと抉られたかのように吹き飛んでいる。
「母ちゃん!ホルト!メディ!ユナ!どこだ!どこにおるんじゃ!」
ガンテが必死に周りに叫び、自分の家族であろう者の名前を呼んでいる。一緒に来ていたドワーフたちも、何人かはこの村の出なのだろう、大きな声で家族の名前を呼んでいる。
すると、目の前からエルフが歩いてきて、僕の目の前で膝をつき頭を下げた。
「アルス様」
「リュシア?」
「申し訳ありません。先行したのですが、すでに襲撃を受けておりました。
騎士たちは全て倒しましたが……何人か、間に合いませんでした」
「そっか……」
傭兵団にいる以上、人の死体や重傷者を見ることは珍しくない。
それでも、僕は未だに慣れなかった。前世の記憶があるせいなのかもしれない。
殺された親に寄り添って泣いている子供たちも見慣れない。
後ろからカイが声をかけてくる。
「アルス。とりあえず、重傷者たちを集めて回復魔法をしよう。メルやゲインさんの近くに来るように伝えてくれ。エルフ達もいるなら回復魔法の使い手は多いからな」
「リュシア。疲れてるだろうけど頼めるかな?」
「勿論です。軽傷者であれば暗部で引き受けます」
リュシアが顔を上げて引き受けてくれる。僕は笑顔でお礼を言うと、顔を赤くして暗部たちの元へ戻っていった。
リュシアはいつも話す時赤くなるけど、エルフは元々白い肌だからな。疲れが顔に出やすいんだろうな、きっと。
「父ちゃん!」
その時ドワーフの子供の1人がガンテに飛びついてきた。
「ホルト!ホルトか!よく無事じゃった!他の皆は無事か!」
「うん!でも母ちゃんが騎士に切られたんだ」
「な!なんじゃと!どこじゃ!どこにおるのじゃ!」
ガンテが近くを見渡し、地面の布の上に横たわっているドワーフの女性の元へ走っていく。
「母ちゃん!よくも……よくも母ちゃんを!その騎士どもはどこじゃ!わしが殺してくれるわい!」
ガンテが涙を流しながら騎士たちを探しているが、地面に横たわっていたドワーフの女性が目を覚まし、大声でガンテに怒った。
「あんた!うるさいよ!静かにしておくれ!」
「母ちゃん!生きとったか!よかった!よかったのじゃ!」
ガンテはそのまま奥さんに抱きつき、おいおい泣いている。奥さんもため息を吐きながら、ガンテのことを仕方なさそうに抱きしめている。
「エルフの人たちが回復魔法かけてくれたのー。」
「ねー。あっという間に母ちゃんの傷が塞がったんだよー。」
「おぉ、そうか!そうか!」
ひとまずガンテたち家族は全員無事だったみたいだ。よかった。
僕はカイに目線を送ると、騎士たちの死体の元へ向かおうと声をかける。
「カイ。ここ以外の集落も襲われているかもしれないから誰か向かわせたほうがいいね。夜の移動は大変だから、リュシアたちにはこのまま動いてもらおう」
「ああ、侯爵の騎士団も動いているからな。その騎士団とかち合って同士討ちだけは避けないといけないな。たまたまここに居たのは第二騎士団だったからよかったが……」
そうなのだ。夜だから見分けはほとんどつかない。今回は火をつけたからその騎士たちが敵だと分かったが、他はもしかしたら助けようとしている騎士たちかもしれないのだ。
「慎重に動くしかないね。でも先に集落に行っておいて問題はないはずだ。この集落以外のドワーフたちも、気が気じゃないはずだ。リュシア!」
怪我人を回復させているメルやゲインたちと同じく、回復をかけていたリュシアが振り向き走ってきた。
「は!どうしましたか?」
「軽傷者の回復が終わったら悪いのだけれど、すぐに他の集落の様子も見てきて欲しいんだ」
「問題ありません!あとは重傷者のみですからすぐに発ちます」
リュシアはそう言うと、右手を口にあてぴぃー、と一度鳴らした。
すぐに暗部の者たちが反応し、リュシアの元へ駆けつけた。
「では、早速出立します。ドワーフたちを連れていっても?」
「うん。ガンテ!他の集落の様子も見たい!道案内をお願いできるかな!」
ガンテは喜んでいたが、その話を聞いてハッと我に返ったのだろう。すぐに大きな声で呼びかけに応じた。
「……分かったのじゃ!問題ない!わしも行く!」
ガンテは息子ーーホルトだったかな、に一言二言話をしてこちらへ走ってきた。
そしてエルフたちに道筋を教えてから、他のドワーフたちとともに馬車へ向かい始めた。
「アルスお前はここに残ってくれ。あとは俺たちがいく。あまりにも重傷者がいたら、この集落へ伝令を飛ばすからメルたちを派遣してくれ」
「分かった。くれぐれも気をつけて。ここにきた騎士の死体も確認したら連絡する」
「ああ、頼んだ。ゲインさんと10名くらいを残して、他は連れていくぞ?」
「うん。問題ないよ。頼んだ」
カイは少し笑うと頷き、自分の馬の場所まで向かっていった。
ーーよし。僕も自分の仕事をしよう。まずは騎士の身元を確認してみようかな。ヨルムさんから団長であるマーズの特徴は聞いてるし。
僕は、騎士たちが倒された場所に向かって歩き出した。
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