9.ドワーフの集落
お知らせ
大変申し訳ありませんが9/5(土)、9/6(日)は一日中パソコンが触れません。そのため更新をお休みさせて頂きます。スマホでの改稿作業のみの活動となります。
直前の連絡誠に申し訳ございません。
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
ガンテが天幕まで無事に送り届けてくれたみたいだ。僕は途中で眠気が限界で意識朦朧となっていたけれど。
そして今は、ガタガタと音が鳴り、振動が凄まじいが枕がすごく柔らかくて結構眠れる。
なんと匂い付きである。
「アルスー起きてよー」
「アルスは今寝てるから起こしたらかわいそうだよ!ボラム!」
……2人とも寝かせる気があるのかな?君たち僕に顔を近づけて話しているでしょう?
「でもね、メルー。カイが早く起こせーって」
「アルスは昨日遅くまで頑張っていたんでしょう!じゃあ、もう少し寝かせてあげてもいいじゃない!」
「そうなんだけどさー。ほら、カイが困ってるからさー」
……起きるか。だがこの8歳の体はいうことを全く聞かないんだ……。
「おい!ボラム!何してんだ!起こすだけにどんだけ時間かかってんだよ!朝になるまで起こさないつもりかよ!」
「いいんじゃ!アルス坊は寝かせてやってくれ!わしらの村にはもう着く!」
「戦うならアルスは関係ないんだから寝かせてあげてよ。かわいそうだもん」
「い、いや、でもアルスがいねえと作戦とかがよ……」
……起きようか。さすがに。
ゆっくりと瞼を開けると、メルの顔が上から覗き込んできた。
「あ、アルス!おはよう?まだ暗いけど、起きて平気なの?」
「うーん。平気じゃないけど……皆起きてるなら起きないとだよね」
そうして枕から顔を上げて少し伸びをすると、レオが苛立った顔で僕の方に近づいてきた。
「てめえ。俺が索敵に出ている間に、メルの膝の上でおねんねとはいい度胸じゃねえか?」
「え?あ、ごめん、メル。重かったでしょう?」
「ううん!全然平気だよ!馬車に乗ってからだからそんなに時間も経ってないし」
メルはいつ見てもかわいいな。少し髪の毛が跳ねているからメルも寝起きなのかな?レオの機嫌が悪いのもわかる。
羨ましいんだろう?ブラザー?
僕は少し勝ち誇った顔をしていたのかもしれない。レオが割と強めに僕の頭にげんこつしてきた。
「いっつう」
「おまえ!今少し俺の方見て笑っただろう!何勝ち誇った顔してんだ!別に羨ましいわけじゃねえ!」
「レオ!やめてよ!アルスに暴力を振るわないで!」
「ちが、こいつは――」
馬車の中でこんなに騒いでいていいのだろうか。どう考えても行軍中じゃないかな?周りの警戒とか平気なの?
「ガハハハッ!アルス坊はいい男だからな!女にモテるのは仕方ないの!」
ガンテが馬車を操作してくれているのか。周りにも似たような馬車がいくつか並走しているな。
ん。あれはカイか……こっちに気づいた。何々……このまま進むが問題ないかって?
僕はちょっと待ってほしいと、ハンドサインで伝える。辺りは〈ライト〉の魔法が馬車の周りを照らしているからか、そこまで暗くは感じない。
少し状況を整理しないとどうにもならないか、と心の中で一人考えていく。
「レオ?周りの警戒はどうなっているの?」
「ああ?……ちっ、もともと斥候は野営地にいるときから周囲には出していたんだよ」
レオは僕が声をかけると一瞬怒り顔をあらわにしたが、すぐに僕が真剣な顔をしているのに気づいた。切り替えが早いのもレオの性格だ。ちゃんと報告はしてくれる。
レオはそのまま報告を続けた。メルも静かに一緒に聞いてくれている。
「さすがに急だったからな……。斥候部隊が集まってからじゃ遅いと思ってな。ゲインさんと相談して暗部にも協力してもらってる。
今は暗部が斥候と一緒に動いていて、リュシアが指揮をとっている」
「ああ、リュシアが合流したんだね。じゃあ問題ないね」
実は3年前にゲインの説得で僕たちの仲間になったエルフのリュシアは、暗部という部隊を率いている。今回の護衛任務では、最初からいたわけではなく後から合流する予定だった。
道中は居なかったが、僕たちが侯爵の元へ行っている間に追いついたみたいだ。
ちなみに暗部と言われているが、隊長は一応僕だ。副官にゲイン、リュシアという組織体制になっている。
実は暗部は末端まで数えると結構な数がいるが、今回はどのくらい合流できたのかな。
「今は、セルフィーがこの馬車の近くに連絡役としているぜ」
「あ、ほんとだ」
横を見ると黒いフードを被った人影がこちらに会釈している。顔の下半分も黒い布で覆われている。
セルフィーはリュシアの妹だ。この3年間で貴族の屋敷で囚われているエルフたちを救い出した。どうやら結構な額で、愛玩用奴隷として伯爵家に買われていたみたいだ。
正規の帝国奴隷商人から買ったのならともかく、皇国とつながっている商人を通していたので帝国法では完全にアウトだった。
ゲインが昔の伝手を使って、騎士団に連絡をし一網打尽。完全に皇国と繋がっていた悪い貴族だった。どうやらその貴族はエルフを大量に買っていたようで、リュシアの村のエルフたちがほとんどいた。
ほとんど身寄りもないし、若い女の子が多かったから全員傭兵団で引き取ったんだよな……。だけど、皆ゲインの下で暗部として働くとは思わなかった。
ゲインが「全部アルス様のおかげですぞ!」と、救い出したエルフ全員に言ったから、僕への忠誠がすごい。リュシアも泣きながら感謝していたし……。なんか騙している気持ちだ。
「ドワーフの集落まで、あとどのくらいかな?」
「もうすぐのはずじゃが……なんじゃ、村の方が明るいの」
僕は、ばっと立ち上がり、前で馬を操っているガンテの方へ向かった。メルが後ろで「危ないよ!」と言っているがそれどころではない。
普通この時間にここまで明るいなどあり得ない。
異常事態を除いては――
「まずい!騎士団が来ているのかもしれない!カイ!」
カイも異変に気づいたみたいだ。僕の方を見てすぐに手を上げて全部隊に戦闘準備を指示している。
ピィーーーー。
あれは!先行させている偵察隊の戦闘開始の合図だ!
「レオ!」
「分かってる!〈フィジカル〉〈アクセルブースト〉」
そう言ってレオは馬車から降り、後ろについてきている馬に並走して飛び乗った。
「ゲイン!レオと共に先行お願い!リュシアと合流して村にいるドワーフたちの保護を優先して!」
「お任せくだされ!レオ行きますぞ!」
「おう!」
ゲインたちが身体強化の使い手たちを率いて先行していった。
間に合うか?だが、まさか初手から騎士団が襲っている村に当たるなんて……
だが逆に運が良かった。ガンテの村みたいだから早く救ってあげないと!
「ガンテ。大丈夫?」
「あ、ああ!頼むのじゃ!残されている者たちは女子供と年寄りどもしかおらん!騎士に襲われているならひとたまりもないのじゃ!」
ガンテはひどく狼狽えている。自分が本当は先行していきたいだろうが、ドワーフはあまり魔法適正がない種族だ。身体強化でさえ使えるものも少ないだろう。
「大丈夫。ゲインたちが行ってくれている。安心して」
「頼む!頼むのじゃ!」
僕はガンテにひたすら大丈夫と声をかけているが、もし間に合わなかったら……!
そう考えると手の平をキツく握りしめてしまう。
どうか、間に合ってくれーー
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ドワーフの集落 ガンテの息子 ホルト
ーー夜、外が騒がしいと思って起きてみると、母さんや妹たちも目を覚ましていて、窓の外を見ている。
少し段差のある玄関を上り、外の様子を伺うために玄関の扉を少し開けた。
「なんだ?なんで外がこんなに明るいんだ?まだ朝じゃなさそうだけどーー」
すると外から長老の声が聞こえた。そちらへ目を向けると、そこには10人くらいの侯爵家の騎士たちが見えた。
「騎士様!なぜここに!もう若い男手たちは全て鉱山や要塞へ行っており、ここはもう女子供と老人しか残っておりませぬ……」
「……無論知っておる。用があるのはお前たちだ」
「ま、まさか!女子供や老人たちも働かせようと!?それは無体にございます!皆、飢えておりこれ以上は死んでしまいますぞ!」
「はははは!良いではないか!お前たちドワーフが減るのは良いことだ!
用があるとはまさにそのこと!我々はお前たちを殺しにきたのだからな!」
「な、なに……を……」
長老の体に何かが刺さっているーー
それはよく見ると長老の前にいる騎士の手から伸びていた。
長老が……!
「ホルト!すぐに閉めて!裏口から逃げるわ!」
「母さん!長老が!長老が!」
「ええ、窓から見ていたわ!逃げないといけないわ!」
「おっかあー!怖い!怖いよぉ」
幼い妹たちが騒いでいる。僕も奥歯がガチガチ震えてきた。
こんな時に父さんたちがいてくれたら……。
裏口から外に出てみると外は朝のように明るくなっていた。隣の家、いや周りの家のほとんどに火が付けられていた。
マルダの家も燃えてる……僕は幼馴染の女の子のことを一瞬心配したが、今は自分たちも危険なのだ。
母さんが森の方へ逃げようとしているのを必死に追いかける。
だがーー
「汚らわしい亜人風情が!逃しはしないぞ!」
村長を殺した騎士とその仲間が、僕たち家族を見下ろしていた。よく見れば剣からは血が滴り落ちている。
父さんどこにいるんだ!いつもならもう帰ってきてくれるじゃないか!父さん!
「せめて子供たちだけは!」
「ええい!近寄るな!」
騎士が剣を振るった。
そして、母さんから血が飛び散った。
母さん!
「母さん!よくも!」
せめて妹たちだけは守りたい!
しかし、そんな思いを嘲笑うかのように、騎士は笑いながら僕の方へ剣を振り下ろした。
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