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8.ガンテの決意

お知らせ

 大変申し訳ありませんが9/5(土)、9/6(日)は一日中パソコンが触れません。そのため更新をお休みさせて頂きます。スマホでの改稿作業のみの活動となります。

 直前の連絡誠に申し訳ございません。


マーズ・ボルドー子爵は騎士団長の設定に修正しております!

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 傭兵団に戻り天幕の中に入ると、案の定ゲインが心配そうに待っていた。マルクやアリアも起きて待っていてくれた。

 3人にはとても心配をかけたようだ。レオやボラムも起きて待ってくれている。


「ただいま。今戻ったよ」


 カイが皆に声をかける。


「なかなか帰ってこないので心配しましたぞ!このゲイン、無理にでも付いていけば、と思っておりました」

「いや、ゲインさんアルスが言った直後に飛び出していきそうだっただろ。侯爵に顔が割れているんだからおとなしくしなきゃいけない、って自分で言ってたじゃないか」

「ゲインさんを止めるのが一番疲れたぜ俺たちは。なあ、ボラム」

「皆で抑えてもびくともしないからねー。アリアさんが居てくれて助かったよ」


 アリアがゲインを止めただと?

 

 とは、ならない。傭兵団アジトではよく見る光景だったからだ。どうやらゲインはアリアに怒られると大人しくなるらしい。

 理由はなぜか教えてくれなかったが、逆らえなくなってしまう、とのこと。


「それでどうだったんだ?」


 マルクが代表してカイに聞いている。


「そうだな。とりあえず、ドワーフの件は話がついた。ガンテたちは傭兵団で預かっても問題ない。だけれども途中でおかしな方向へ進んでしまって。

 ここから先はアルスが話をしてくれた方がいい。今後の動きも含めて、ね」


 カイ。疲れているのは分かるけど僕の方が疲れているよ?僕まだ8歳なんだから……。

 まあいいや。確かに今後の動きは、今すぐ皆に伝えないといけないしね。


「おほん。まず、どうやら前に遭遇した第2騎士団が、反乱に関係のないドワーフたちを殺して回っているらしい。どうやらそれは侯爵の意向ではないことが分かったんだ」

「な!侯爵に逆らってる騎士団があるってことか?」

「マルク父さん。侯爵は例年より多く食料を配給していたみたいなんだ。

 だけれども、ドワーフたちは減らされたと言っていた。それに加えて、ドワーフたちの陳情も届いていなかった。

 ……どうやら意図的に誰かが配給を止めて、ドワーフたちの陳情も握りつぶしていたみたいだ」


 マルクたちは黙って話を聞いている。信じられないといった顔だ。

 騎士とは主君への忠誠が全てだ。

 だからこそ、侯爵の命令をねじ曲げるような騎士団など、本来あり得ない。


「それで、今後の動きはどうするんだ?」

「そうだね。傭兵団として、第2騎士団の討伐に僕たちも【依頼】という形で引き受けることになったよ」


 その言葉に反応したのはレオだ。彼は今回連れてきた団員の中で斥候部隊を率いている隊長だ。最近ではゲインから用兵学を習っているから立派な指揮官だ。


「騎士相手に俺たちの傭兵団で当たるのは難しくないか?中位級の相手はさすがに厳しいぞ」

「侯爵の話では、第2騎士団に所属する騎士で、中位クラスなのは団長であるマーズだけらしい。それに侯爵が全騎士団を動員していたから、僕たちが全員相手することはまず無いとみていいよ」

「しかし、今から動くとなると夜の中での行動となります。いささか厳しいのでは?」


 ゲインがより戦術的な観点から疑問点を言ってくれる。うちの傭兵団は最近できたばかりだが、戦いに身を置いているものが多い。

 そのため、より具体的に案を練り、実行していく能力が他の傭兵団よりも高い。


「夜目が効くドワーフたちに案内を頼もうかと思っているんだ。それに彼らは自分たちの村の場所や、土地勘もあるだろうからね」

「さすがにございます。接敵した時の対応は排(・)除(・)で問題ありませんかな?」

「うん。生かして捉えられるならそれに越したことは無いけど、それでうちの被害が大きくなるようなら、殺すしかないよ」


 僕は敢えて「殺す」という言葉を強めに言った。傭兵団として、この区別はとても大事だ。

 生かすか殺すか。それを悩むと殺されてしまう。


 そこは前世の日本よりもはるかに明確にしておかねばならない掟だ。情けをかけてはいけないのだ。


「承知いたしました。では先行でドワーフたちとレオ殿たちを出動させるのですな?」

「うん。そのあとで全員に第一次軍装令を出して。連絡があり次第急行するよ。カイ、最後に命令を頼むよ」

 

 第一次軍装令とは碧狼傭兵団独自の命令だ。兵装を整え、馬や武器をすぐに持ち出せる状態で待機すること。

 うちは僕が提案をしても、カイがいるときは必ずカイが最後に命令を下す。そうしないと指揮系統がばらけるからだ。

 それにカイ自身、責任を自分で取るためにもやらせてほしいと言っていた。


「ああ。ありがとう、アルス。レオ悪いけど先行して行ってくれ。ドワーフへの話はアルスから通してくれ。残りのものに第一次軍装令を。馬たちにも水を上げてくれ。

 夜間行軍となる。くれぐれも同士討ちは避けてくれ。

 ――以上。各位動け!」

「「「応」」」


 皆が天幕から出ていく。僕自身も天幕から出て歩き始める。外はもう暗闇が支配していて、篝火だけが照らしている。


 僕もドワーフに話をつけに行かないとな……。ガンテたちは同朋のこともあるから、待っててといっても一緒に絶対に来るだろうな。

 天幕からカイが出てきて僕に声をかけた。


「アルス」

「ん?カイ、どうしたの?」

「ドワーフたちへの話が済んだら少し休んでくれ。少しばかりのご飯もボラムに持っていかせるからな」

「ありがとう!カイ!」


 カイは、僕が食べられなかったのを見ていてくれたんだ!さすがカイ。イケメンで気遣いもできる団長は僕は大好きだ。こんな上司は好かれるタイプだ。


「ああ。アルスに倒れられると困るからな。寝て起きたら作戦のことをまた話し合いたい。起きたら連絡くれ」


 カイはそう言って天幕の中へ戻っていった。


 いい上司なんだ……。


 僕はガンテにまずは話を通そうと、一旦ガンテたちがいる馬車の方へ歩を進めた。



――――――――――――――――――――――――――

領都 ヴァルガルド近郊 ガンテ


 ーーアルス坊から話があった。どうやら、わしらたちは一旦はこの傭兵団に身を置いていいらしい。


 その話を聞いた瞬間、皆眠れなかった目を潤ませて喜んだ。しかし、その後に続いた言葉を聞き驚愕した。


「侯爵の第2騎士団の団長のマーズって奴が勝手にドワーフたちを殺そうとしているらしい。侯爵はそんな命令は出していないし、ガンテたちの陳情もそのマーズって人が握り潰していたみたいだ。

 それに食料配給も操作して行き渡らないようにしていた事も分かったよ」

「なっ、なんじゃと!」

「どう言う事だ!!」


 わしも他の者と共に声を荒げてしまった。まさか侯爵家の騎士団が……わしらを殺そうとしているなんて。


 な、ならば!村にいる妻子たちは!


 他の者たちも領都近郊に住む家族のことを心配している様子だ。


「なので、早速皆さんは傭兵団として協力していただきたいのです。僕たちには土地勘はありませんし、夜目も効きません。

 しかし皆さんは、暗い炭鉱で日々生活していて夜目も効くと聞きました。

 お願いできますか?」


 アルス坊はあくまで、わしらの自由意思に任せようとしてくれておる。じゃが、聞かれなくてももちろん答えは決まっておる!


「勿論じゃ!案内しよう!すぐにでも!」


 他の者たちも口々に「応!」と返事をしている。


「うん頼むよ。僕、今までずっと動きっぱなしでね……ちょっと疲れちゃったから、自分の天幕で少し休むね」


 む。確かによく見ると、アルス坊はひどく疲れて見える。確かにこのような子供にわしらは全て任せてしまった。


 目もよく見ると少し赤くなっておる……。少しフラフラしているように見える。わしらのために、こんなになるまで交渉してくれたのか…!

 皆を振り返ると、同じ気持ちなのか頷くのが見えた。


「もちろんじゃ!わしがアルス坊の天幕までおぶってやる!」

「え?いや!それはさすがに恥ずかしいから……」

「わしらの恩人じゃアルス坊は!遠慮するな!少しばかり汚いかもしれないがーー」

「そんなことない!今は皆の方が疲れているでしょう?僕は自分で歩けるから大丈夫だよ?」


 自分だって立っているのがやっとであろうに。そのような歳でわしらの心配ばかりしおる。

 わしらは多少の特権があるとはいえ、奴隷じゃ。奴隷にここまで心配してくれる帝国人がおったとは……。


「背負わせてくれ!アルス坊よ!わしはーーいやわしらは、お主の為だけに働く、少しでも恩を返させてくれ!」

「ええ……そこまで言うなら……」


 アルスの坊は、その小さい体でわしの後ろに回り込むと背中に乗ってきた。


 ーー軽い。このような小さき体でわしらのために……。


 涙が出そうになってしまった。会ったばかりのドワーフに、奴隷であるわしらに……。

 グッと体に力を入れ、アルスの坊を持ち上げる。


「大丈夫?そこまで重くはないはずだけど……」

「平気じゃ!軽すぎるわい!もっと大きくならなきゃいかんな!ガハハハ!」

「む!これでも少しは大きくなってきているんだ!今はガンテより小さいけどいつかはーー」


 わしは、泣きそうな顔を見られないように笑って誤魔化した。


 ーーアルスの坊よ。おぬしはドワーフの恩人じゃ!必ずやこの恩に報いるぞ!


 そうしてドワーフは少年を背負い、静かな夜道を歩いていく。


 これから先、どれほど苛烈な戦場が待っていようとも。


 この小さな恩人だけは、必ず守り抜くと心に誓いながら。



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