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5.天幕の作戦会議

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 ガンテから感謝の言葉をもらった。

 きっと、今まで不安だったのだろう。これから先の未来もわからず、逃げ切れるかもわからない。


 僕は早速傭兵団に加入したドワーフの人たちに、この反乱を止めてほしい旨を最後に伝えた。

 そして、その橋渡しとして僕たちの傭兵団が反乱しているドワーフたちを受け入れること。その上で侯爵を説き伏せること。

 場合によっては、北方要塞まで行くことになるかもしれないことも伝えた。


「願ったりかなったりじゃ。むしろ北方要塞にいる同胞たちがどうなったか心配じゃった。あそこにはわしの弟分がおっての。

 そいつもどうなったのか気になっていたんじゃ」

「そっか。そしたらやっぱり侯爵にちゃんと話をしないとね」

「うむ。アルスの坊よ。苦労をかける」


 僕はガンテさんに任せてほしい、と最後に伝え、皆がいる天幕へと足を進めた。道中でゲインが後ろから話しかけてくる。


「アルス様。要塞への派兵依頼は本当に来るでしょうか?」

「来るよ。絶対にね」


 間髪入れずに自信満々に言い切ったのが信じられないのか、ゲインを振り返ると目を丸くしている。さっきは確証が無かったが、今は派兵依頼は来ると断言できる。


「……理由をお聞かせ願えますかな」

「そうだね……このことも含めて天幕で待ってくれている皆に話そうか。それまで待ってもらえるかな?」

「勿論にございます!」

「ありがとう」


 僕は止めた足を皆がいる方へ再度進めた。

 地面を踏みしめる音がパキパキと聞こえる。霜が降りてるのか、吐く息も白い。北方では春先でも全然寒い。

 草一つ生えていない地面を見て独り思う。


 これでは食料や酒を調達するのも難しいのかもね。北方にしばらくいるなら、食料問題もどうにかしないといけないのかもしれない……。ジャガイモとかあったらいいのにな。この世界に来てからジャガイモなんて見たことないし、何か代わりになるものでもあればいいのに。


 そんなことを考えながら皆がいる天幕へと足を進めた。




 天幕につくと、ルビーとメル以外はまだ起きて待っていてくれていた。メルは仕方ないとして、ルビーは酒でも飲んでいたのかな?酒瓶がある。ケイトが背負っていこうとしているのが丁度見えた。

 よく見たら僕と丸の次に幼いフィンとノエルも眠そうだ。


「メルは仕方ないけど……ルビーは起こそうか?」

「いやいい。フィンとノエルも一応起きてくれているがもう寝た方がいいだろう。アルスは悪いが……事情を説明してくれると助かる」

「僕は平気だよ。頭に魔力を流しているときは眠くならないから」


 カイが心配してくれているが、カフェインよりやばい魔力ドーピングである。問題ない。


「アルス!それはやめなさいと私もメルも怒ったでしょう?」

「あ、アリア母さん。ち、違うんだよ。今は仕方ないっていうか、なんて言うか……」

「アリアさん。アルスには説明だけしてもらいたいから、もう少しだけ起きていてもらいたいんだ。ごめん」

「カイ君がそういうなら……でも、その方法は本当に必要な時だけにしてね?」


 メルがいなくてもアリアがいたら結局は同じである。そう僕は傭兵団のアジトにいた頃、大小2人のお母さんに怒られている。美人だからご褒美だって?逆だ。美人は怒ると怖いし、最後に泣かれたときの罪悪感は一層すごいのだ。僕が悪くなくても、全て自分のせいみたいに感じるのだ。


 この気持ちはマルクにしか今は分からないだろう。エルナも美人になってきたから、そのうちカイも分かるよ。


 僕は一人で納得していたが、アリアからは再度にらまれた。


「それでアルス。ドワーフたちとの交渉はうまくいったのか?」

「ああ、傭兵団に加入してくれるって。それとドワーフたちの説得もしてくれるそうだよ。

 ドワーフたち自身今の状況をどうにかしたいとは思っているみたいだから」

「そうか……。まずはこっちの準備ができたってことか。後は俺がセフィーヌ様にお願いするだけか」


 セフィーヌ様ーーこの前まで護衛していた伯爵令嬢だ。歳は15歳。銀髪に紫の瞳の……少し逞(・)し(・)い(・)お人だ。


「カイに無理させる作戦なんて……アルス、許せない。またあの女の所にわざわざ行くなんて」


 エルナの視線が凄く痛い。仕方ないじゃん。伝手は大事なんだよ……。


「エルナ。セフィーヌ様は俺のことをなんとも思っていないさ。弟がいると言っていたからね。きっと歳下の俺と重ねているだけさ」


 カイ……それは無理があるよ。どう見ても目が狙ってる人の目だったし。セフィーヌ様の弟の話って、まだ生まれたばかりだったはずだよ。


「私も絶対に一緒に行くから」

「分かった。エルナに来てもらえれば安心さ。ガストも一緒にいるから安心だ」

「……まかせろ……」


 ガストが相変わらず無表情で立っている。だけどその顔は面倒にならなきゃ良いな、って顔だ。

 確かにガストは大人の戦士くらいの背丈はあるし、エルナだって弓矢を持たせれば傭兵団随一だ。


 この2人がいれば護衛として格も戦力も申し分ないな。


「皆とりあえずこれからの事を聞いてほしい。まず、侯爵からの派兵依頼は絶対に来ると思っていい。ドワーフたちと話をして確信したんだ」


 皆が僕に視線を向ける。フィンとノエルは欠伸を噛み殺しながら僕を見ている。

 そのまま話を続ける。


「確信した理由は、食糧が不足している点だ。ドワーフたちはこの北方で採掘や武器製造を担っている。

 つまり、彼らの労働力そのものが、北方にとって食糧を得るための重要な資源なんだ。

 そんな働き手に食糧を渡さない――いや、渡せない理由がある」

「渡さない理由?単純に不足しているだけじゃないのか?」


 レオが疑問に思ったことを口にする。


「嫌がらせとかならそうだけど、この貧しい北方で、食糧を得るために必要な鉱物や武器を作れるドワーフを働かせない理由はない。侯爵だって馬鹿じゃない。普通なら、その分の食糧は確保しているはずなんだ。

 今は春先だ。例年通りなら、秋口に大量に食糧を買っているはずなんだ。つまり、冬に何か食糧を大量に消費する出来事が起きたんだ」

「……戦争ですな」


 さすがゲインだ。伊達に騎士団の長だったわけじゃない。そういえば、前の騎士団から全然連絡がないように見えるけど、平気なんだろうか……。

 話がそれた。


 僕は、そのまま近くの机にあった水の入ったコップを持って一口含んだ。


「そう。戦争だよ。3年前に皇国と連邦は戦争をして和睦した。その後、連邦と皇国は電撃同盟を組み、帝国に戦争を仕掛けて国境要塞を一つ落としている。

 きっと、ヴァルグレン侯爵も増援として何回か出征しているんだと思う」

「なるほどな。度重なる出兵が侯爵領を圧迫しているということか」


 マルクが腕を組み納得している。


「皇国が攻めてきたのは3年も前だ。そこからずっと戦争は継続しているらしいから、その度に出兵しているなら負担は相当だな」

「その点傭兵は使いやすい。自分の領民じゃないからな。食糧は自腹だ。後払いにしておけばいいし、最悪、死者が出ても領民ほど大きな損失にはならない」


 まぁ、その言い方だと結構傭兵の扱いは酷いよね。死んだらお金を踏み倒せるし。


 冒険者は冒険者ギルドがある。なので、そこから支援を受けられる。帝都にいる冒険者に聞いたことがあるから間違いない。それに、個人か数人パーティで活動しているから離脱も簡単だ。


「だから伯爵令嬢の護衛という名目で、帝都から傭兵を集めたかったんだよ。最初から『北方へ行ってください』じゃ、誰も受けたがらない。

 でも『伯爵令嬢の護衛』なら、報酬次第では受ける傭兵は多い。しかも、北方に着いてしまえば――もう簡単には帰れない」

「ちっ、騙されたってわけか」


 レオが吐き捨てるように言う。


 気持ちはわかるが騙されたと言うわけではないのかな?ただ、お金をもらえるまで帰ることができないから、もう少し仕事して行けよってこと。

 あれ?それって前世の残業みたいな感じ?うわー騙されたわー。


「ともかく……ドワーフの件も侯爵は頭を悩ませているだろうから、それに少しでも役に立つことを示す。そうすればドワーフも助かり僕たちも無事報酬をもらえる。顔も売れる。

 良いことづくしだね」


 僕は説明を終えてドヤ顔で腕を組んだ。

 

「俺たちの命が代償じゃねえか!いいことあるか!それにそんな上手くいくのかよ!」

「まぁまぁー。アルスが大丈夫って言うんだから大丈夫なんじゃないかなー」

「お前はアルスを無条件に信じ過ぎだぞ!少しは自分で考えろ!コイツたまに悪いこと狙ってやってるぞ!」

「ええー?そうかなー?」


 レオとボラムがまた騒いでいる。きっと僕のことを信じたくて仕方ないんだな。

 ふっ。


「てめえアルス!にやけてんじゃねぞ!」


 僕たちがギャーギャー騒いでいると、突然外が騒がしくなっているのに気づいた。

 様子がおかしいことに気づいた皆は顔を真剣なものに戻すと、天幕の外へでた。

 そこには侯爵家の紋章が入ったマントを着た騎士が三騎、馬に乗っていて、先頭の騎士が大きな声で言葉を発した。


「こちらに碧狼傭兵団のカイがいると聞いた!至急、城壁内に参られたし!」



 僕とカイは顔を見合わせた。


 どうやら、思っていたよりも侯爵は追い詰められているのかもしれない。


 さてさて、どんな人か気になるな。



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