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3.北方の事情

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。


ふっ。15時投稿だと思ったでしょう?あれはまやかしだ。嘘です。

今日は2本くらい上げれればいいなと思いまして。無理でしたら無理です……。

 ドワーフ――帝国北方に多く暮らす亜人種だ。頑丈な体、鍛冶・採掘は他の追随を許さない技術を持つ、異世界定番の種族だ。

 初代帝が北方平定の際に、魔族に追いやられ南下してきたドワーフたちを保護した。それが今の帝国に住むドワーフたちだ。

 ……そして、そのドワーフが今、僕の目の前で座っている。


 近くで用を足したからさ……。さすがに場所は少し移動したけど。この人たち、侯爵家の騎士たちに追われているらしいし。


「それで、ガンテさんたちはどうしてここに?」


 多分理由は反乱がらみだろうな、とは思っている。身なりも薄汚れているし、足に奴隷の証である帝国紋がある。


「ふむ。その前に坊主――アルスと言ったの。おぬしは何者じゃ?見たところこの辺の平民の子供じゃろうが……。だが、そのような子供が、いくら大きいとは言え武器を持った子供とおるのはな」


 ガンテさんは一度ちらっとボラムを見る。ボラムは一応僕の背後に立ってくれているが、どう見ても及び腰だ。けど、ボラムは僕を置いて一人では絶対に逃げないだろう。

 彼は臆病だが、仲間を見捨てることはしないからだ。


「彼は僕の護衛です。僕は、碧狼傭兵団で参謀をやっています。今回は仕事でここにいます」

「む?わははっ!坊主、嘘はいけねえぞ。どう見てもまだ子供じゃろうが?傭兵団の雑用係か何かか?」


 周りのドワーフたちも、声は小さいが鼻で笑っているのが分かる。


「まあ、そうですよねえ。でも、傭兵団に所属しているのは信じてもらえますか?」

「む。そうだな。後ろの坊主かなり鍛えておるじゃろう。ガタイもかなりいい。それに、坊主を守ろうとする意志は感じておるわい」

「ええ、彼はとても強い戦士ですから。僕はとても弱いですが」


 ボラムを横目で見ると、顔を引きつらせながらだけど少し喜んでいるみたいだ。


「それで話を戻します。どうしてここにいるのですか?」

「……帝国人の、いや侯爵家のやりようにうんざりしているのじゃ。我らドワーフは古の盟約に従い、鉄を掘り武器を作り帝国に貢献しているというのに!

 それなのに、だ!やれ冬には帰るな。手を休めるな。しまいには、食料と酒にまで制限をかけてきたんじゃ。

 確かに我らは奴隷という肩書きじゃ!しかし、それは盟約に従って甘んじていたのじゃ!食料と酒を供給してくれるのは、古の盟約でしっかりと決めておるはずじゃ!」

「古の盟約……」


 ガンテさんは、余程堪えてきたのだろう。一度話始めると留めなく言葉が出てくる。後ろのドワーフたちも大きく同意の声を上げている。声が少し大きすぎるな。

 いったん落ち着かせよう。ここまで不満が溜まっているとはただ事じゃないな。


「い、一旦落ち着きましょう。騎士の人たちに見つかるかもしれません」

「むむ。そうじゃった……すまぬ。じゃが、最近は特にそれが酷くなってきたのじゃ。鉄嶺堡(てつれいほ)では同朋がたくさん死んだ。それも貴族に殺されたと聞いたのじゃ」


 ガンテは肩の辺りを軽く搔きながら謝ってきた。その姿は先ほどとは違い、しょぼくれていて申し訳なさそうにしている。


 それは――なるほど、ここでカイが言っていた反乱に繋がるのか。


 僕は頭に魔力を流し始める。大事な局面では、もはや意識をしていなくても勝手に魔力が頭を駆け巡る。

 まず整理するのはこの後のことだ。この人たちの意思に関係なく、騎士たちは捕えようとするだろう。無事にそのまま戻してくれることは無いだろう。何せ一度逃げ出しているのだ。より強固な監視下で働かされ続けるのだろう。悪ければ――殺されるだろう。


 初めて会ったドワーフたちを見殺しにする?ありえない。僕はドワーフが好きなのだ。


「とりあえず、カイに相談しようかな」

「え!アルスー!この人たちを連れて行くの?大丈夫かなー。皆に怒られないかなー」

「大丈夫大丈夫。理由は今から考えるけど、多分平気だと思うよ」


 ボラムが僕の方をキラキラした目で見ている。この3年間で築き上げた僕の地位は盤石だ。


「そうだよねー。アルスに任せれば間違いないよねー」


 ……本気で考えないとまずいな。




 そして、僕たちはとりあえず、傭兵団の野営地へドワーフたち10人を連れて行ったわけだが――


「俺は反対だ!ありえないだろう!騎士団に見つかったら俺たちがやべえよ!」

「そうだぞアルス。さすがにやばいぞ。カイから話は聞いたが、騎士団に見つかったら、最悪俺たち全員が牢獄行きだぞ」

「アルス……。あなたは頭がいい子でしょう?もう少しどうにかならない?」


 僕が用を足し終わったと思ったら、ドワーフを大勢連れてきたので皆びっくりしていた。

 急遽天幕で会議をするために皆を呼び集めた。天幕の中央に僕、右側にカイとゲイン、左側にレオたちとマルク、アリアが立っている。レオ、マルク、アリアからは大反対だった。ちなみにドワーフたちは、近くの馬車の中で待機してもらっている。


「ははは!おもしれえー。いいんじゃねえー?騎士団と一度戦ってみたかったんだよなー」

「え、いやっすよ!その時はルビーさんだけでお願いします!」

「はー?お前部下なんだから私の言うことは全部聞けよー」


 何その独裁者主義。某アニメの歌が下手な人かな?お前のものは俺のもの的な。


「ふむ。アルス様は何故ドワーフを受け入れたいのですかな?」

「そうだな。俺もその方が気になるな」


 ゲインとカイが聞いてくれた。この2人は絶対に僕の話を聞いてくれると思っていた。ここからちゃんと説明できるかどうか、それによってドワーフたちの未来が決まる。


 そうだな……単純に好きだからってのもあるけど、メリットを言わないとな。


「まず、これから先のことを考えて――僕たちはドワーフを保護した方がいい」


 僕が言い始めた瞬間、一斉に皆の目が向けられる。僕の評価は、皆の中でどうなっているのか分からない。けれども、話を一度ちゃんと聞いてくれるくらいの信頼関係は、ここにいる皆と築けているんだと思う。

 そう思うと嬉しい反面、責任も重大だ。


「今回の仕事は、伯爵令嬢の領都までの護衛だ。これは、ほぼ全て達成されたとみていい」


 皆が頷いているのが分かる。むしろ、だからこそ、これから帰還するだけなのに、わざわざ面倒ごとを抱え込むのが不思議なのだろう。だが、僕の中にはある懸念がある。

 そのまま言葉を続ける。


「僕たちは依頼完了の報告を、北方侯爵であるヴァルグレン侯爵にもらいに行くはずだ。本来であれば、すぐにもらえるはずだ。

 ――だけれども、今この状況ですぐにくれるかどうか分からない。何故なら、侯爵領全体でドワーフたちが反乱を起こしているからだ」

「……だからこそ、こっちからドワーフに助力する動きは見せない方がいいだろう?」

「マルクさんの言うとおりだぜ?なんでわざわざ敵対するように動くんだ」


 マルクとレオが意見を言ってくれる。僕たちの作戦会議は、いつも皆で口々に意見を言い合う。そして最終判断を僕やカイがしている。

 今回は、議題の提案者が僕だからカイの判断待ちだ。


「アルスがドワーフ好きだからじゃないの?前にドワーフ好きだって、言っているの聞いたことあるよ」

「確かに好きだけどね、メル。けど、理由はそれだけじゃないよ。ちゃんとメリットがあるんだ。

 ――しかも、僕たちの生死を分ける可能性もある」


 その瞬間、天幕の中の空気が一変した。特にゲインやマルクは、3年前のことがあるから特に気にしているようだ。話の先を早く聞きたいようだ。

 魔力が頭の奥でざわめいている。思考が勝手に整理されていき、最適解を探している。絶好調だ。


「まず、侯爵はきっと集めた傭兵たちや冒険者に、このまま待機するように命令を出すと思う。報酬を渡すから、とでも言って、理由は何でもいいよね。

 そして、そのまま追加で依頼を出し始めるよ、きっと。その命令はーー

 北方要塞への派兵依頼という形で」


 そう、きっとその依頼は来るだろう。なぜなら侯爵家は、子息のお嫁さんにすら護衛を満足に出せないほどだ。ドワーフの反乱も起きている今、兵力は満足にあるとは言えないだろう。

 それに――


 僕は、半日前に出会った副騎士団の人と他の騎士たちの装備を見ていた。それぞれ馬の鞍に袋がいくつかかかっていた。

 その袋からは、かすかに――血(・)の(・)匂(・)い(・)がした。


 もし捕獲が目的なら、その袋を持ち歩く必要はない。あれはきっと……ドワーフの体の一部だ。それを証明としているのだろう。


「ヴァルグレン侯爵は、ドワーフと和解するよりも鎮圧する動きを見せてる。けれど、皆殺しまではすることを考えてはいないと思う。そんなことをすれば、鉄や武器の産出で食料を買っている北方全体の影響は計り知れないから。

 だけれども、侯爵が弱腰では他の貴族に示しがつかない。だから、今反乱を起こしているドワーフは見せしめで殺そうとするだろう。

 今後、侯爵に逆らわないようにするための布石として」

「……そんな」


 メルが形の良い眉を八の字にして、泣きそうな顔をしている。レオとマルクには効果絶大だ。二人ともどうにかならないのか?と目線で僕に聞いている。


 いい流れである。


「そこで!僕たちがドワーフを保護するのさ。ガンテたちに反乱を起こしているドワーフを説得してもらうんだ。僕たちが仲介役として名乗りを上げる。

 侯爵は反乱を起こしたドワーフを従わせて働かせたい。それなら、僕たちの傭兵団で面倒を見るから、そのまま戦力として働きます、といえば侯爵を説得できる材料となる」

「なるほど……」


 ゲインが感心したように頷く。しかし、カイは疑問があるのか、指を2本立てて僕の方に聞いてきた。


「アルス、その話は問題が2つある。まず一つ目にドワーフたちを説得できるのか?二つ目にどうやって侯爵に連絡を取るんだ?そのアルスの予想が正しければ、いつか侯爵に会えるかもしれないが……」

「ガンテたちは僕が何とか説得してみる。任せてほしい。2つ目は……カイに任せるよ」

「お、おい!俺に任せるって言ったって、俺は傭兵団の団長だぞ?さすがに貴族と話せる立場じゃない!」


 カイが珍しく焦っている。そりゃ普通の傭兵団の団長ならそうだけど――


 君は忘れていないかな?自分の顔をもっとよく見てみてほしい。


 僕がじっと見ているのに気付いたのか、カイは少し考えてから思い当たるふしがあったようだ。その顔で、眉を寄せてじろっと睨んできた。

 僕は大きく頷いた。



 最近、ずっと護衛していたもんね。


 侯爵家と交渉できそうな――カイと繋がりを持ちたそうなご令嬢が。



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