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2.ドワーフたち

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 貴族の護衛依頼。


 それは、傭兵にとって名誉のある仕事の一つと言われている。なぜなら、その仕事によって顔が売れるからだ。そう、伝手ができるのだ。

 どの世界においても伝手というのはとても大事だ。一から自分1人で、というのは理想でしかない。僕たちの傭兵団が色々仕事を貰えるのも、マーガレットという様々なパイプを持っている人がいるからだ。


 だから、マーガレットには逆らえない。今後も仕事を回してもらう以上どうにもならない。

 例え損益がトントンになったとしても、今後のことを考えれば致し方ないのだ。


「致し方なくねえよ!何してんだアルス!この仕事の利益、半分も取られやがって!」

「ま、まあアルスも頑張ってたからさ。俺だってあの場に居たけど、マーガレットには日頃世話になっているから強く出れないよ」


 レオが怒りながら僕に文句を言い、カイが慰めてくれている。2人とも騎乗しながら、馬車にいる僕に声をかける。

 舗装のされていない道を上下に揺らしながら進んでいるため、すごく揺れる。体が軽いと結構上下に揺られ、僕のプリけつは着実にダメージを重ねている。休憩ごとに、メルに回復魔法をかけてもらおうかどうか悩んでいる。


「アルスのせいにしないで!なら、レオが交渉すればいいでしょ!年上なんだからそれくらいやってよ!」

「な、俺は斥候だぞ!交渉事はアルスの仕事だろ!」

「アルスのおかげで、ここまで傭兵団を大きくできたんだから!文句言わないで!」

「二人ともー。喧嘩はよくないよー」


 レオは最近、メルに怒られたくて僕に難癖を付けているような気がする。ボラムは一応仲裁してくれているが、そこまで本気で止めてる感じでもない。いつものことだからだ。


「けけけ。アルスー?あねきに負けたんだろうー?仕方ねえなー。お姉さんが慰めてやろうかー?」

「ルビーさん!あ!お酒どこから持ってきたんすか!ダメっすよ!仕事しに行くんすから!」

「なんでだよー。暇なんだからいいだろー。どうせ周りは他の奴らがやってんだろ?団長様のおかげでなー」


 ケイトが叫んでいるのを聞いて振り返ると、馬に乗りながら酒を片手に進んでいる、ピンク髪の女が見える。ルビーはここ3年ほぼ見た目は変わっていない。初めて会ったときのままだ。

 一応戦力としてはゲインに次ぐ戦力で、マルクと一騎打ちしても勝っていた。マルクがだいぶ凹んでいたのが印象的だ。ちなみにマルク、アリア、ゲインの大人三人衆は2台目の馬車にいる。ルビーも年齢的にはそっち枠だが……やっていることと言動が僕たち側だ。


 僕も今からゲイン達の方へ行こうかな……。でも、カイが困った時は近くにいた方がいいし。


 ちなみに、僕たちの目の前にいる黒い馬車が今回の護衛対象である。質のいい、それでいて無駄な装飾を施していない馬車だ。頑丈そうにできているし、周りにいる騎士も、伯爵家の青いマントがなびいていてかっこいい。

 そして、さっきからチラチラと、後ろの窓から女性がこちらを見ている。


「レオ。確かに僕は交渉に失敗した。だけどしっかり利益は出るんだ!それにとられたのは半分じゃない!正確には四割五分だ」

「ざけんな!半分だろうが!」

「その代わりにボグさんたちを貸してくれたんだ!トントンだよ!大丈夫!いやー、いい交渉だった」


 僕たちは、今回選抜された100人弱で移動している。なので馬車は10台近くある。そして、僕たちの後ろ、3台目の馬車にはボグさんと灰月の組員の人が20人ほど乗っている。

 最後、4割からさらに値切れないと悟った僕は、ボグさんを貸してほしいと無理やりねじ込み……少しだけ上乗せされて交渉を終えた。


 これは引き分けでいいのでは?最後の交渉には勝ったのだ。そうに決まっている。


 話を戻そう。なぜ新興傭兵団の僕たちが、貴族の馬車の真後ろにいるのかについて。

 ズバリ、カイの顔のおかげである。


 最初に挨拶をした際に、ご令嬢がカイの顔を見るなり、真っ赤になった。そしてそのご令嬢は、近辺警護をその場で命じたのである。それから道中は、ずっとあんな感じでカイを見つめている。そして、その視線を、さり気なくエルナが邪魔をしているのだ。


 エルナはカイと馬で並走する為に、2人で一緒に練習していた。今その真価が発揮されている。カイの動きに合わせて前に出ている。素晴らしい連携だ。


「なんでも良いけどよー。あとどのくらいで着くんだー?寝ててもいいかー?」

「ルビー。寝ちゃだめだよ!お仕事中はしっかりしないと!」

「えーん……メルちゃんはわたしに厳しよー。アルス、寝ててもいいだろー」


 噓泣き下手だね。なぜかルビーは、メルのことを気に入っている。自分のことをしっかり相手してくれる人が好きなのか?ケイトもどっちかというとその系統だ。


「そうだね。あと……3日くらいだと思うよ。今回行くのは、侯爵家の北方要塞手前の領都だからね。

 確か名前はーーヴァルガルドだったかな」


 そうして馬車は賑やかに進んでいくーー。




 都市まで後半日、というところまで傭兵団一行は進んでいた。そして事件は起きた。

 目の前から騎士が10騎ほど駆けてきた。そして、目の前のマントをつけた騎士が1騎、こちらに馬を進めて声をあげた。


「止まっていただきたい!ここより先は現在、厳戒態勢につき中を改めさせて頂きたい!

 私はヴァルグレン侯爵家、第2騎士団騎士団長マーズ・ボルドー子爵である!」


 おお、結構偉い肩書きの人が出てきたな。こっちも伯爵家の人が出て騎士に説明をしている。

 そして周りの騎士たちが、傭兵団の馬車や他の傭兵や冒険者の検閲をしている。一通り見た後、伯爵家の人に何か耳打ちしていた。


「大変失礼を致しました!お通りいただいて問題ありません!」


 騎士達は全員下馬して、最後まで見送ってくれた。


 なんだ?何かあったのか。僕達は疑問に思いつつ、そういうこともあるのだろう、と領都ヴァルガルドまでの道を急いだ。


 その日の夜、伯爵達御一行は先に領都内に入った。僕たちは、街の外の城壁外で野営している。貴族達は先に門を通ることができるが、僕たちはしっかり門で検閲を受けてから入る。


 城壁外の至る所で、他の団員たちが休みを取っていた。今は春先だが北方に来ると、とても寒い。ゲインが上着が必要だと言っていたので、お金をかけて全員分用意しておいてよかった。

 すると、カイがゆっくり僕の方へ近づいてきた。後ろにはエルナとガストも一緒に引き連れている。


「アルス。昼間のこと覚えているか?」

「ん?ああ、騎士達の人のこと?覚えているよ。どうかした?」

「ああ。実は門に入る前に、伯爵令嬢から話を聞いたんだ。それで少し気になることがあってな」


 さすがカイだ。伯爵令嬢が領都に入る時、カイだけ一緒に連れてこうとしてたからな。貴方、婚約者いるんですよね?大丈夫かなって思ってみてたけど、カイがしっかり断ってた。

 あの隙に聞いたのか、凄いな。


「どうやらドワーフたちが、各地で反乱を起こしているらしいんだ。さっきの騎士たちも奴隷のドワーフたちを捜索している」

「反乱!?あ、ごめん」


 つい大きな声が出てしまった。エルナとガストも周りも見渡している。


「はは。まあ、その反応になるよな。ドワーフは北方守備では欠かせない存在だ。北方は鉄鉱脈が多い。それにドワーフたちも奴隷とは言っても、亜人の中じゃ結婚の自由もあるし、都市の移動も制限されていないからな」

「そのドワーフたちが反乱って何があったんだろ?」

「さあな。そこまでは令嬢も聞いてないらしい。だけど、ドワーフを見つけたら報告した方がいいそうだ」


 そうか……ドワーフなんてファンタジー小説の中じゃ定番中の定番の存在だ。帝国では、奴隷だが普通に生活している。

 隣のセントラル連邦では、エルフや他の亜人が国を主に動かしているため、ドワーフたちは帝国の方に多くいる。


「まあ、そうそう出会う事はないだろうから、大丈夫だとは思うけどな。一応気をつけてくれって話さ」


 カイが爽やかに笑いながら言っている。結構フラグじゃないかな、その話し方は……。



 僕、思うんだよね。

 イケメンが言うフラグは、絶対に回収されるって。

 

 うう。それになんか、心なしかおなか痛いような気がするな……。

 用を足せる場所を探そうかな。




――――――――――――――――――――――――――

領都 ヴァルガルド近郊 ガンテ


 ーー同刻。領都近くの森では、暗闇に紛れて影が蠢いていた。


「ガンテどうする?周りは侯爵の騎士だらけぞい。これ以上は逃げられないぞ」

「わかっとる。今は見つからない事だけを優先するしかあるまい。夜はわしらの方が目が効くでな」


 ガンテと、その隣にいるドワーフの背丈は1.5ルムドほど。しかし、体はまるで岩が何個も付いているかのような体つきだ。その後ろにも10人くらいだろうか、同じような体つきの者たちが息を潜めていた。

 彼らは領都近郊の鉄鉱山から逃げ出してきた奴隷たちである。


 これ以上は逃げるのも難しいの……。春先とはいえ酒と飯が無いんじゃ、動くに動けん……。


 ここはもう全滅覚悟で騎士達に一矢報いるしかあるまいか、と考えていた矢先ーーー

 遠目ではあるが、炎が揺れているのが見えた。


「おい、ガンテ」

「見えておるわい。ここも見つかるのは時間の問題じゃて。

 ーーこれは……ルミエラの光の元に旅立つしかあるまいかのう……」


 その言葉に、皆顔つきを引き締めた。死を覚悟した者達の目だ。我らは初代帝がこの地域を平定する時、恭順を選んだ。しかし、それは奴隷という名の保護であったはずだ。

 昨今は我らを本当の奴隷のように使い、まるで物のように扱っていた。

 北方要塞に居た同胞たちも、その苦しさから反乱を起こして皆(・)殺(・)さ(・)れ(・)た(・)らしい。


 古の盟約を破るような帝国人共にはもうウンザリじゃ!ここで光に導かれようとも、一矢報いて次の同胞のため死んでやるわい!


「やるぞ……奇襲を仕掛けるのだ。静かに移動じゃ」

「おうよ」


 皆が拳で自分の腹を、ドンドンと叩いた。ドワーフたちの決意の表れだ。

 わしも拳を2回軽く叩いた。


 ーー女神ルミエラ。我らここで光に導かれようとも、同胞の未来を照らしてくだされ。


 一瞬、村に残された妻子の顔が浮かんだ。いつもならもう村に帰っている時期だ。


 ……今年は、帰ったら息子と釣りに行く約束をしていたんじゃがな。守れなくなってしもうたか、すまぬ。


「行くぞ……」


 そしてゆっくりと灯りのある方へ近づくとーー



 そこには、下半身を丸出しにした小さな人間の子供が1人。近くにもう1人おり、その子が松明を持ってこちらを見ていた。


「あ、アルス!なんか怖い顔の人たちが見えるよー」

「ボラム!ちょっと待って!昼に何か悪いもの食べたかなー。おかしいな。昨日お腹だして寝てたから?

 うう……お腹痛い。メルに回復魔法かけてもらいに行くの恥ずかしいし。どうしようかな」


 我らは皆固まってしまった。なんじゃこの状況は……


「アルスー!本当にいっぱい居るんだよー!嘘じゃ無いって!見てよ!」

「分かった!分かったから!もう終わるってーー

 まだお腹に少し残ってる気がするんだけど……。ん?」


 用を足していた小僧が服を整えてから、こちらを振り返り固まる。そして、顔を急に輝かせると、こちらに近づきわしの手を握ってきた。


 その手、綺麗じゃろうな……!


「ドワーフ!ドワーフだよ!ボラム!凄い!初めて見た!思ってた通りの見た目だ!

 あ、挨拶しなきゃ!僕アルスって言います!あのドワーフの人たちってお酒いっぱい飲みますか!?」



 この時のわしは思っていなかった。


 このアルスと名乗った小僧が、わしが生涯をーー


 いや、命をかけてでも守りたいと思うような存在になろうとは。



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