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17.傭兵団設立②

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 マーガレットが僕たちに貸してくれた場所は、確かに傭兵団アジトにはぴったりな場所だった。

 なにせ、まず大きい。元々人が沢山いることを想定している場所だ。きっと今後、傭兵団の数が増えても500人くらいなら収容できそうだ。

 

 そしてスラムでは珍しい、石造りの3階建てだ。石造りの壁がぐるっと周囲を囲んでいるし、かなり防御面でも安心できそうだ。

 入り口の前にはいくつかテーブルも並び、かがり火が入口の左右についている。傭兵団アジトとして、雰囲気も抜群だ。

 

 よく見ると、黒(・)い(・)蛇(・)の(・)旗(・)が、スラム独特の匂いとともにたなびいている。


 うん。確かにマーガレットが勧めてくれるだけはあるな。灰月の手のアジトによく似ている。

 

 そりゃそうだ、だってここ――



 黒蛇の帳の元アジトだもんね。



「気に入ったか?うちよりも豪華じゃねえか。石造りの塀があるたあ、ゴーンのやつ中々剛毅じゃねえか。

 誰かに殺されるのを恐れていたのかな?なあ、メイズ?」

「……そうかもしれませんね」


 マーガレットさん、なかなかジョークがお上手ですね。


 それはともかく、結構いい場所であることは間違いない。スラムでここまでの建物は、灰月の手のアジトとこの場所くらいだろう。


「本当にここを使っていいんですか?」

「ああ。かまわねえよ。どのみち、灰月の手だけじゃ管理できてねえからな。それなら、お前たちに貸した方がマシだ。空いているとスラムの奴らが勝手に住むからな」


 中から灰月の手の組員さんが何人か外に出てきて、マーガレットに報告している。


「――わかった。ご苦労。おい小僧ども、中は一応少し片づけてくれているらしい。後はてめえらで好きに使え。あと、こっちからも人を数人出してやる。好きに使え」

「え。いいんですか?この前の戦闘の後処理で、だいぶ灰月の手の皆さん大変そうでしたけど……」


 そう。絶賛今灰月の手は屑鉄市場の掃除やら、黒蛇の帳の残党狩りやら色々と忙しそうだ。


「アルス、てめえが気を遣うんじゃねえ。カイの小僧にも言っていただろう?信頼できる大人を頼れ、ってな。

 それとも何だ?わたしのことは信頼してねえってことか?ああ?」

「いえっ!全然そんなことはありません!ありがとうございます!」


 こわ。5歳児にガン飛ばさないでください。せっかくの美人なのに、ずっと眉間にしわが寄っているから怖いよ。


 そうだよな。マーガレットはよく見ると美人だ。銀髪に鋭い緑の瞳。モノクロの眼鏡を、片方だけ今はかけている。戦闘の時はつけていなかった。

 メイズさんがいつも横にいるから小さく見えるが、身長は1.7ルムドくらいあるかも?長い髪を一本で結っている。

 

「なんだてめえ、ジッと見て?失礼なこと考えてねえか?」

「いえ、本当に何でもありません!」

「ちっ。アルス。てめえはよくわからねえ奴だ。正直5歳とは思えねえしな。だが――」


 マーガレットは、片方だけつけた眼鏡を少し上にずらした。そして、僕の目をその目でのぞき込んできた。その目は爛々と輝いている。


「お前を殺した方がいいかもしれねえ、というのは保留にしとく。今は投資してやる。

 お前は将来、何かでかいことをやりそうだ。それを見てからでも遅くねえ」


 その言葉に、ゴクリと喉がなった。


「マーガレット殿、アルス様に何かありましたら私が相手になりますぞ。」


 ゲインがいつの間にか横に来ていた。ほのかに少し魔力が沸き立っているのが分かる。


「へえへえ。わかってるよ。ゲイン、あんたとは戦いたくはない。最初こいつを殺さなくてよかったぜ。あれも私の直感だな。あはははは!」


 この人もやっぱり中々ぶっ飛んでるよな。


 ひとしきり笑った後、カイの方を向いた。


「まあいい。カイ!」

「……!はい!」


 カイが急に呼ばれたので、びっくりした声で返事をしていた。


「お前が傭兵団のリーダーをやるんだろう?むしろ、お前がやらなきゃこの場所は貸さねえが。傭兵団にうちのやつを少し入れろ。そして、今後はうちと同盟を組め。

 簡単だが、ルールとしてお前らは私に上納金を払え。月に金貨1枚だ。1年間は無しでいい。

 それと裏のことは介入するな。組員とのごたごたはトップ同士の話し合いで決める。他は後から追加していく。いいな?」

「はい!分かりました。ありがとうございます。」


 カイは、急に言われてもすぐに理解したようだ。

 つまり、1年以内に傭兵団としてしっかり運営しないとすぐに赤字になるな。時間はあまりない。


「いい。お前には元々貸しがあった。今返してやる。」

「貸しですか?マーガレットさんに?」


 マーガレットはどこから出したのか、パイプの火種を熾(おこ)した。そして、それを少し口に含んでからゆっくりと吐き出した。甘い香りが一帯を包む。


「ふう。そうだ。てめえには兄が世話になった。」

「え、えっとマーガレットさんの兄?」

「ああ、目も手足も全て無くなった老け込んだ奴がいただろう?

 あれが私の一番上の兄だ。次兄の阿呆がゴーンに騙されてな。やられちまったんだ。まあ、次兄の奴は、私がぶっ殺したが、長兄は探しはしたが死体も見つからなくてな。」


 カイが信じられないといった顔をしている。僕とメル以外の子供たちも驚いた顔をしている。


「ギーバルさんがマーガレットさんの兄?」

 

 カイがその人の名前であろう言葉を言う。


 まさか、前に話していた、カイたちにこの国の知識やら、スラムで魔力持ちを集めろ、って言った人か。話には聞いていたけど、まさかマーガレットのお兄さんだったのか。


「ああ、てめえらのアジトにゴーンをやった後に行ったんだ。入り口が広がったのは、あいつのおかげだな。そしたらお前らわざわざ墓つくってくれたんだろう?石に名前があったからな。」

「はい。ギーバルさん、自分の名前の文字を最初に教えてくれて、墓に刻んでおけって……。」


 マーガレットはパイプを再度吹かした。

 紫色の薄い煙は、ゆっくりと広がりスラムの空気によくなじむ。


「ふん。兄貴らしいな?メイズ」

「……」


 よく見るとメイズさんが黙ったままだ。思いつめたかのような顔をしている。


 もしかしてメイズさんとマーガレットさんのお兄さんって……。いや、詮索はしない方がいいか。そこは本人たち同士が知っていればいい。


「あの!マーガレット……さん!」

「あん?なんだ嬢ちゃん」


 エルナがマーガレットに声をかけた。


「私がギーバル……さんの最後の言葉を聞いて……。マーガレットさんに、直接言うように言われました!妹にあったら伝えてほしいって!」


 エルナは少し震えているような声で、だけれども、しっかりと聞こえるようにマーガレットに言った。赤毛が少し目にかかり、それを耳にかけて一度呼吸を整えた。


 マーガレットは黙って聞いている。顔はさっきとは違い無表情だ。


「迷惑をかけてしまいすまない。お前には幸せに生きていてほしい。

 そう言ってました!誰に伝えるのか、それをちゃんと聞く前に、もう声が聞こえなくなっちゃって……。

 でも!スラムにいる妹にって!メグって言っていたのは聞こえたの!だから、傭兵団ができたらちゃんと探そうって!だから――」

「――もういいさ。わかった……。」


 マーガレットのその声は、いつもより少し小さかった。近くにあった椅子に座りパイプを少し吹かした。


「嬢ちゃん。エルナだったな。あんたは最後にその言葉を聞いてくれたのか。メグって言うのは、私の小さい頃の愛称さ。ありがとうな。」

「い、いえ。その……ちゃんと聞けなくてごめんなさい……」

「いや充分だ。あんたは恩人だ。カイも含めてお前らは恩人だよ」


 紫の煙は薄くいつまでも漂っている。


「ふうー。うっし!帰るぞメイズ!」

「はい。お嬢」


 急に立ち上がると歩き出そうとする。


「おいカイ!傭兵団の名前を決めておけ!それとこっちからも人を送るから、よろしく頼むぞ!」


 そして、カイの方を一度見ると、そのまま組員の人たちと歩き出してしまった。


「マーガレットさん!ありがとうございました!」


 カイが大きな声で、歩き出したマーガレットに声をかける。


 マーガレットは右手をひらひらと振って、そのままスラムの奥へ、メイズさんたちと消えていった。


 まるで嵐のような人だな。というか送られてくる組員の人、まさかとは思うけど……。


 

 その予感は後日的中した。



――――――――――――――――――――――――――

帝都アルベリア 皇城 大評議の間別室 アークレイン大公


 ーー同刻大評議の間では、1ヶ月に及ぶ評議会が終わろうとしていた。


「大分時間がかかったな、今回は」


 貴族一人一人に用意されている個室の中で、窓を眺めながらもう1人いる者に声をかける。


「致し方ないかと。レオニクス大公もおられませんでしたから」


 その声は、若い女性の声だ。最近私が帝都に来る際に、よく連れてきている秘書官だ。

 歳は20代くらいだったはずだ。眼鏡をかけていて、その瞳は金色に輝いている。


「そうだろうな。皇国が連邦と同盟を組むなど、さすがに驚かされた。そして、そのまま攻め込んでくるとはな」


 そう。アウレシア皇国とセントラル連邦は、同時に攻勢を仕掛けてきた。

 帝都にいる私の元に報告が来た時には、ガルディオン侯爵とレオニクス大公が率いる1万の軍勢が、皇国軍2万に敗れたという報告だった。


「それに、まさか国境要塞を奪われるなど……帝国設立以降、初めての失態だ。」

「そちらも致し方ないかと……。ガルディオン侯爵が戦死なさるなど、それこそ誰も予想しておりませんでした。」

「はっ。状況は最悪だな」


 ガルディオン侯爵は、国境要塞の指揮官も兼ねている。その侯爵が戦死し、浮き足だったところを皇国が強襲。

 国境要塞はあっけなく陥落した。


 レオニクス大公が、国境要塞付近で増援と合流し、なんとか食い止めているのが現状だ。


「レオニクス大公から増援の要請は?」

「不要、とのことでした」

「ふん。あの爺さんは面子ばかり気にするな。今はそれどころではないだろうが」


 くだらない……。無駄なプライドだ。


「まぁいい。それにこちらも要請されたとしても、厳しいかもしれないからな」

「はい。このタイミングでくるとは……。こちらも予想外でした。まさかーー」


 私は置いてあったワイングラスに、ワインを注いだ。


 そうだな。この周期で来るとは思わなかった。



 初代帝でさえ、7つの北方要塞を築いて蓋をした相手。


 亜人も含めた人種全ての天敵。


 強大な魔力を持ち、配下に異形の存在を付き従える存在。



「ーー魔王軍が南下を開始するなど」


 

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