16.傭兵団設立①
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
僕たちはあの後、灰月の手アジトに帰ってきた。もちろんエルフも一緒にだ。ゲインがエルフの後ろにピッタリとくっついて歩いていた。
エルフも静かについてきてくれていた。
屑鉄市場は、少し空気が晴れてきたように感じる。だが、それでも鉄粉が舞っているし埃もすごいため、屑鉄市場側からではなく城壁近くからの帰還となった。
かなりお腹がすいた。
皆も僕が言った後から気づいたのか空腹そうだ。スラム育ちのカイたちは慣れているらしいが、ボラムはさっきからうつむきながらトボトボ歩いている。
「おい!ボラムしっかりしろよ!」
「で、でもよー。さすがに朝から何も食べてないからお腹すいたよー」
「やめろよ!お腹すいたって言うな。余計にお腹すくだろうが!」
2人ともまだ元気そうだね。
そうこうしているうちに、灰月の手のアジトについた。すでに組員さんが先行してくれていて、ルビーの戦闘跡も綺麗にしてくれていた。
マーガレットがいつの間にか、パイプをふかしていた。紫色の煙がふわりと周囲に広がる。
毎回思うけど何か甘い匂いがする。なんだろうな。
「ふーー。ボグ、悪かったな。先にアジトの片づけをやらせちまって」
「いえ、マーガレットさん。問題ありません」
ボグさん、あの後組員さんと一緒に、灰月アジト周辺の残党狩りしていたらしいんだよね。
一応、黒蛇の帳はトップを失って壊滅したらしいけど、残党はまだいる。
その辺は任せろって、マーガレットが言っていたから大丈夫なんだろうけど。それでも、しばらくは騒がしいだろう。
「ボグー。ごくろうー」
ルビーが便乗して、ボグさんに手をひらひらと振っていた。それを見たボグさんから、ピキッと音が鳴るような気がした。
ズンズンと音が鳴るようにルビーに近づいて行った。
「お前は!またマーガレットさんに迷惑かけやがって!いい加減にしろ!」
「ええー。ボグ兄うるさいー」
「話をちゃんと聞け!いいかそもそもな――」
あれはボグさんの説教コースだな。結構頻繁に起きる光景なのか、誰も見向きもしない。
「ともかく飯だ。大したもんはねえが食ってくれ。スラムの小僧たちも遠慮するな」
マーガレットが用意してくれたご飯を見る。
机の上には色々用意されている。
真ん中にでかい鍋があって白い湯気が立っている。野菜がいろいろ入ったスープだ。それにお馴染みの黒パン。あとチーズもある。あれは干し肉か?それとただ焼いてある肉もいっぱい置いてある。
あとは魚か。いろんな種類の、多分塩ふりの焼いてある魚だ。
「あー腹減ったー」
「す、すごいぞ!肉だ!肉がある!」
「私魚好き!」
「「やったーおなかすいたー」
スラムでカイ達と数日暮らしたから分かるけど、普通肉なんて滅多に食べれない。干し肉なんてぜいたく品だ。チーズなんて高級品の感覚。
僕たちは平民区で生活していた時は、それなりに食べられていたけど……。ここは内陸だし川しか流れていないから、塩自体高価だ。しっかり塩で味つけているものは贅沢品だ。
「メイズ……魚は嫌いだ。いらねえ」
「だめですお嬢。食べてください」
「なんでてめえは毎回出すんだ!嫌がらせかよ!」
これメイズさんが用意したらしい。あの人何でもできるな。
「アルス。おいしいね!久しぶりにお肉だ!」
メルは可愛い。
お肉にかじりついてても可愛い。美少女は、何をしていても美少女だから美少女なのだ。
ちなみにイケメンも、何をしていてもイケメンだ。
カイは黒パンを頬張っていても、隣のエルナがちらちら見るほどイケメンだ。
僕もイケメンかな。
前に鏡を見た時どうだったかな。どちらかと言ったら……かわいい部類かもしれない。
女神ルミエラよ。光の導きを……。
「アルス様は帝国正教会の信徒なのですかな?祈りながら食べるとは……」
「ゲイン違うよ。僕は僕派の宗教だ」
「はっーー。なるほど?」
ゲイン、分かろうとしないでくれ恥ずかしいから。頼む。
「アルスはね!毎回食べるときに『いただきます』って言うんだよ!前に聞いてから、メルもいつも食べるときは言うよ!」
「ほう。ちなみにどのような意味ですかな?」
「んーとね。たしか、命を頂きます、ってアルスは言ってた!」
「おお。なるほどいいですな。すべてに感謝をするなどさすがにございます!」
うん。なんか恥ずかしいな。メイズさんも納得した顔しているし。
「おめえ、そういうこと考えてるの爺みたいだな。生きるの大変だぞ?」
「いいんです別に。僕がやりたいだけで……。あむ」
マーガレットが少し憐みの目を向けてきた。
僕はその目線に耐えられなくて、フォークでスープの野菜を刺して口に入れる。
塩がよく効いている。野菜のダシも出ているし、ほのかに肉のうまみ?これは旨い。
メイズさん料理上手なんだな。きっといいお嫁さんになるよ。
一瞬エプロン姿のガタイのいい男性が、エプロンを着ている姿が思い浮かんだ。
ちなみにエルフの子も、ゲインのすぐ隣で野菜スープをガツガツ食べていた。どう見ても痩せてるしな。奴隷の時にまともにご飯なんかあげてないだろう。
そして、肉とか普通に食べてた。異世界でよくある野菜とか木の実しか食べない種族じゃないらしい。
――そうしてご飯は和やかに終わった。
「ふうー。それで?このエルフはどうするんだ?」
マーガレットが組員の人たちが用意してくれたソファーに、どっかり腰を下ろしてパイプをふかしている。
僕たち側にも椅子が用意されていて、ゲインだけエルフと一緒に立って後ろにピッタリくっついている。
「んー。まず君、名前はなんていうの?それとどこから来たの?」
「……リュシア。セントラル連邦リヒテンバーラルの森出身だ」
全然わからない。どこだそれ。
「リヒテンバーラル?セントラル連邦でも奥地だったと記憶していますが……」
「……皇国軍が攻めてきたんだ。それでその辺の村が全部焼かれて……母さんや父さんは殺された。妹と一緒に人間に囚われたんだ」
異世界の戦争も、前世と変わらず民間人は被害者だ。この世界では人間至上主義の国が多い。だから、この子たちはより一層大変だろう。
エルフの子ーーリュシアは思い出したのか、その長いまつげを震わして、涙をポロポロと落としている。
白と緑色の肩より短い髪は、その中性的な顔も相まって泣いていても絵になる。
けど今は、ただ可哀想だと感じてしまう。
僕たちはマルクやアリア、メルも生きていることが分かった。だけれど、この子はスラムに来たばかりの僕たちより酷いかもしれない。
「その妹さんの名前は?」
僕は咄嗟に声が出ていた。
「もし、一緒に来たのならきっとまだ生きているよ。エルフにとっては嫌な話かもしれないけど、エルフは高価な奴隷だ。
殺されたりはしないと思う。それに、わざわざ違う奴隷商人に頼まないだろうから、売り手さえわかれば見つかるよ」
リュシアは、こちらを潤んだ瞳で見つめていた。
「お前小さい人間のくせにいい奴だな」
「君もそんなに大きくないけど……エルフだと寿命違うの?」
僕はゲインに目線を送り問いかけた。
「多少は違いますな。とは言え、200歳くらいですな」
「十分違うよ」
「魔力が多ければ、その分長生きしますからな。初代帝も150まで生きた、と言われておりますれば」
この世界は、魔力が多いと長生きするんだ。知らなかった。
「これでも15だ。妹は10歳になったばかりだった」
リュシアが教えてくれる。15歳には確かに見えない。僕たちより少し上くらいに見える。
「妹さんの名前は?今後もしその名前を聞いたら探そうよ」
「……セシルだ。アルスと言ったな。ありがとう」
リュシアの笑顔も破壊力高いな。僕も含めて皆見惚れちゃったよ。メルが後ろで少し怒ってる気がする。
よく見たらエルナも怒っている。
鈍感な僕でもわかるよ。今後カイは大変だと思う。
「と、とりあえず。これからどうする?できれば一緒にいたほうがいいと思うけど」
僕は、誤魔化すように話を進める。
「アルス様。このエルフの子は魔法が使えますゆえ、私が面倒を見ます。少しずつ鍛えていき、私と共にアルス様の警護を致します。
無論その間に妹殿が見つかれば良し。鍛えておいて損はないだろう。リュシアとやら良いか?」
「ああ。妹を見つけたいし、強くなりたい!よろしく頼む」
どうやらその方向でまとまりそうだ。
「うむ。今後はアルス様と呼ぶのだ。良いな?」
「アルス……様?」
「エルフは敬語を話しませぬからな。その辺も今後ここで生きていくためには必要だぞ。勉強あるのみ」
リュシアが少し、顔を引き攣らせているのが見えた。
カンッ。
するとその光景を見ていたマーガレットが、パイプの火種を机の端に当て地面に捨てていた。
危ないよほんとそれ。
「んじゃぁ、決まりだな。次にお前たちの住処の話に移ろうじゃないか」
マーガレットの自信満々な顔が、逆に怪しかった。
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