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15.初代帝

妄想っていいですよね。

本日は2つ目投稿になります。

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

「初代帝……。」

 

 誰かがその言葉をつぶやく声が聞こえた。のどが渇く。まるで、自分が他の人と違う何者かであることが怖かった。

 

 初代帝の話はサリエラ達と暮らしているとき、寝る前に英雄譚としてよく聞かされた話だ。


「初代帝ってこの国を作った人だよね?その人とアルスは何か同じなの?」


 メルのよくわかっていない声が僕の心を和らげる。


「俺もよくは知らないんだ。俺たちはその日を生きるので精一杯だったからそういう話を聞いたことはねえ。」


 カイ達もよくわかっていなさそうだ。

 

 でも言われてみれば、おとぎ話の人と君は同じだ!と言われても、同じ人間ならある程度は同じかもしれない。

 同じ人間だし。よし、少し落ち着いてきたかもしれない。


「……アルベス帝ってのはな。このオルフェリア大陸においてしらねえ奴はほとんどいねえよ。この国に暮らしている奴からすれば英雄。他国の奴らからすれば――化け物だ。」


 マーガレットはパイプをメイズさんに渡して、腕を組んでその辺の壁に寄りかかり、少し考えるように言った。


「そうですな。知らない方もいるそうですので簡単に説明するとすれば、【戦争の天才】でしょうな。

 個人の武勇も最強と呼ばれており、騎士の国シルベスト王国では【騎士の中の騎士】【武神】と呼ばれております。

 生涯で120近い戦に出征しておりますが、アルベス帝が出た戦では負けたことはないそうです。そのことから【常勝帝】【軍神】とも呼ばれています。」


 その人、人間じゃなくない?前世の上杉謙信じゃん完全に。

 それは同じにされちゃ困りますね。だって僕、どう見てもその存在と同じではないでしょう。


「……まあ、それに加えて内政面でも活躍していた人だ。【賢帝】とも【叡智王】ってのもある。」


 マーガレットが補足のように言う。


 そう考えるとだいぶ人間離れしている。

 一応僕がサリエラに教わった話では、


 曰く――


 当時小国が乱立している、オルフェリア大陸のヴェルディア王国第一王子として生まれた。

 隣国を軒並み倒した。

 現在の3大公がヴェルディア王国に畏怖し、降伏して王国はヴェルディア帝国となった。

 100近い国を攻め込んで滅ぼした。

 大陸統一直前で寿命によりこの世を去った。

 在位期間は100年近い。


 その時点で僕の中では伝説の人だった。


「ともかく、戦においての一面が強いですが、帝国法の作成や、帝国大学創立、魔法研究への投資など内政面でも優秀であった御方と聞き及んでいます。

 その中でアルベス帝が強かった理由というのは、ある程度解明されているものがあります。」


 ゲインは僕の方をみたまま言葉をつづけた。


「それは、アルベス陛下の血統魔法についてです。」

「血統魔法?それ……サリエラも使っていたけど、名前からしてその血筋じゃないと使えない魔法ってこと?」

 

 僕はサリエラの最後を思いだして、少し心が暗くなるのを感じた。

 血統魔法……サリエラは血を自在に操る魔法を使っていた。


「サリエラ殿は……そうですな。ですがサリエラ殿は純粋な血統魔法を使えるわけではありませんでした。

 血統魔法は血筋はもちろんですが、血統魔法を生み出した始祖の思想や魔力量にどれだけ近いかにも左右される魔法なのです。」


 そうなのか。サリエラの血統魔法はその点でいうと苦しそうに使っていた。そのことも関係していたのかな。

  

 ゲインはそのまま続ける。


「皇帝陛下の血統魔法は【皇威】と呼ばれているものだと聞いております。この話は貴族であれば知っているでしょう。しかし、初代帝以降、その血統魔法を使えたものはおらず、どのような魔法かもわかっておりません。

 ですので伝説、架空の血統魔法だと呼ばれています。」


 その話を聞いて疑問が一つ浮かんだ。

 だけれど……この話はあとでゲインに直接聞こう。


「それでその魔法が僕に使えるかもしれないってこと?」


 僕は話をまとめるようにゲインに聞いた。


「いえ。初代帝のことは色々と伝説のことでしてな。

 しかし、初代帝は魔力をはっきりと目で見ることができたといいます。その魔力が誰の魔力であるかもわかるくらいに見えていたそうです。」

「そう……なんだ。でも僕は誰のかまではわからないよ。」

「ええ。ですが、それに近いというだけで貴族達からすれば、初代帝の血が入っている可能性があると考えるものがいるのですよ。」


 つまり、その血が入っていることが公になると、僕も危なくなる可能性があるということか。


「ちっ。お前らを受け入れるのを少しためらってきたな。そこまででかい話になると私たちも危険になるな。」

「それは困りますな。マーガレット殿今更なかったことにはできませぬ。」

「わかってるよ!はあ。ようやくスラムも落ち着いてきたと思っていたのに、っよ!。」


 マーガレットがなにか蹴っ飛ばしていた。

 それさっきルビーが持ってきた……いや何も言うまい。


「ともかく!小僧ども!スラムに傭兵団として活動する場所をくれてやる。今やこのスラムで、この私に逆らう馬鹿はいねえからな……。

 ん?そうだな。あの場所をくれてやろう!それとこっちからも助手をつけてやる。好きに使え。」


 マーガレットがニヤリと笑ったのが印象に残った。


「とりあえず、マルク殿とアリア殿をこちらに呼びますか。迎えのものをやらないといけませんな。」


 話がどんどん進んでいく。


「とりあえず、来るかって言っておいてあれなんだけど。これからもよろしくお願いするね、カイ。」

「ああ、そうだな。俺たちも色々あったけど傭兵団を立ち上げられてうれしいぜ。」


 カイも嬉しそうに笑っている。ほかの皆も同様だ。


「ああ、これからもよろしく頼むよ。」


 握手をしようと手を差し出した――その時だった。


「人間!よくも父上と母上を!妹を返せ!」


 家の中から出てきたエルフが、こちらを見て魔法を使う準備をしているのが見えた。

 エルフの周囲の魔力が震え、風が巻きあがりどんどん大きくなっている。


「〈エアブレイク(暴風)〉!」


 ゴウッ。


 エルフの放った魔法が放たれた。

 

「む。もう起きたか。〈エアブレイク(暴風)〉!」


 ゲインが同じ魔法を放ち、同時にエルフの方へドンッ、と地面が鳴ったかと思えば――

 いつの間にか突撃しているのが見えた。


「な!くっ!」

「甘いですぞ!ふん!」


 ブオンッ。


 ゲインが大剣を振るいエルフの首元寸前で止めた。


「大人しくするのだ。動けば殺す。」


 本当に暗殺者みたな動きだ。身体強化も使っている感じはしなかった。つまり基本的な肉体能力のみであのスピードなのか。

 10ルメドほどあった距離を、魔法と同じかそれ以上の速さで一瞬で詰めていった。

 エルフの方も予想外だったのか、何もできずに固まっている。


「こ、殺せ!お前たちになんか屈しない!奴隷になんてもう二度とならない!なるくらいなら死んでやる!」

「ふっ!」


 エルフは舌をかみ切ろうと口を大きく広げたが、その口にゲインが素早く手を入れて自害するのを防いだ。


「むむー!おご!」


 そして逃げようともがくが、すぐにゲインに後ろを片手で押さえられた。

 ゲインは手を入れたまま前に押し倒し、膝でエルフの腰を抑え完全に身動きを封じた。


 あまりにも鮮やかでゲインが主人公に見える。壮年の騎士かっこいいな。MVPはゲインだ。


「動くな。こちらは何もする気はないぞ。お前を奴隷にしていた人間とは違う。わかるな?」

「んん……。」


 少しエルフの動きが静かになってきた。


「よいか。お前を奴隷から解放したのは私だ。少しは話を聞くのだ。」


 エルフがゲインの方へ目線だけ動かし、今度はゆっくりとうなずく。


「よし、今から口の中の手はどけてやる。死のうとするな。次同じことをしたら気絶させる。」

 

 何回も思うがゲインは凄腕の騎士だよね。

 そしてゆっくりとゲインは手をどかした。


「……。お前。確かに意識が少しあるとき、助けてくれた声だ。信用する。」

「うむ。ゆっくり立たせてやる。いいか下手なことをするな。お前のこの先はアルス様次第だ。」


 ん?僕?


「わかった。それでどうすればいい。」

「アルス様どうしますか?」


 ゲイン!困るな僕に完全に任せっきりなのは。


「え、えっとね。んー。

 とりあえず――

 

 ご飯にしない?僕今日ほとんど何も食べていないや。」



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