14.アルスの瞳
一応前の話、最後に黒蛇の帳のバン視点差し込みました。
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
結局その日、ルビーが全身血だらけで帰ってきたのは、少し日が沈んだ後のことだ。
僕も含め子供たちは、血だらけで笑ってるルビーを見て、全員が悲鳴をあげるか怯えていた。なにせ大声でマーガレットを外から呼び、見に行った全員の前で首を投げて渡してきたのである。
本人はすごく満足そうでやり切った顔をしていた。
「あねきーやってきましたー!アジト少し汚れちゃったけど全員殺してきましたー。」
「……ルビー……。」
「なんすか!あねきー。褒めてください!頑張りましたー!」
ルビーは完全に褒めてもらえると思っている顔をしていた。
「てめえ。誰が殺せって言ったんだよ!」
マーガレットの拳骨、全然見えない。すごいね。魔法で強化してないよね?頭割れたんじゃないかな。
「っっっ!」
ルビーは涙目で座り込んでしまった。
「ちっ。メイズ!こいつはまた雑用やらせろ!どぶさらいでもなんでもいい!」
「……ちょ!あねきーひどいっすよー。」
なんで不満そうなのかな。確かに、一人で敵を壊滅させたのは戦力としては相当高い。けど、完全に手綱を握れてない。暴れ馬だ。
「てめえが殺しちまったから、誰が黒幕かわからねえだろうが!くそが!」
「ええ、言われてないっすよー。」
「てめえが聞かねえで殺したんだろうが!ああああ?」
マーガレットは頭をガシガシ掻きながら、パイプの煙を一度ふかし、口に含んだ煙をゆっくり吐き出した。
「はあーーー。おいアルス。てめえら傭兵団を作るんだろう?」
「え、あ、はい」
「なら、スラムで場所を貸してやる。マリードにいるって親御さんたちも、どのみち今は城壁内には戻れないんだろう?なら、たった今スラムは治安が良くなったからな。隠れて住むならうってつけだろう。」
スラムか……。確かにマリードにいるマルクやアリアと合流したとしても、今は帝都内には戻れない。
それに、今狙われているのは僕じゃなく、金髪碧眼の娘――メルだ。
今回の件、僕を狙ったのかは不明だが、探して殺そうとしていたのはサリエラとその家族。ここまで貴族が裏で動いていることを考えれば……灯台下暗し。貴族の権力が及びにくいスラムは、うってつけかもしれない。
「ふむ……。アルス様。発言よろしいですかな。」
ゲインが発言を求めるように僕に聞いてくる。
「いいよゲイン。僕はそこまで畏まられる人じゃないから、そんなに気にしないでほしい。」
「いえ、そういうわけには参りません!アルス様の事、今後はこのゲイン、主君と思って付き従いますぞ!」
「むしろ、ゲインは僕に仕えるなら騎士団に戻って、中から情報収集した方がいいんじゃないかな?」
「そ、それではアルス様を守るものがおりませぬ!それだけは!」
その狙っている奴は今後も僕たち――メルを主に殺そうとするだろう。
なぜ、サリエラやメルを狙っていたのかがまだ不明だが。
だが今後のことを考えると、ゲインが僕たちといてくれるのが確かに一番安全だ。
「わかった。それなら一緒にいてほしいゲイン。」
「……!ありがとうございます。このゲイン!必ずやアルス様やメル殿たちをお守り致しますぞ!」
ゲインがそう言った瞬間、唐突に片膝をつき僕に頭を下げた。
重厚な鎧だ。銀に光るその鎧。
使い込まれているのか所々傷がある。
そしてゲイン自身がとても大きい。片膝をついても、僕より少し目線が高い。
スラムの地面は汚いからあまり膝をつけると鎧が汚れちゃうな、そんなどうでもいいことを考えていた。
そのゲインは、頭を下げたまま急に重みのある声でそのまま続けた。
「わが魂が光の御許を得るその時まで――。
あらゆる災禍を退け、万民の希望を守護することをここに誓う。」
急にゲインの体から魔力が沸き立つ。基本的に魔力は自分で見ようと思わなければ、見えないといわれているが……。
そしてその魔力のもやは、僕の体にゆっくりと近づき――
そのまま僕へと繋がった。
なんだろう……ゲインの信頼が僕に向けられているのを肌で感じる。
「ゲ、ゲイン?えっと今のは……なに?」
僕は、周りが急に静かになっているのを打ち破るかのようにゲインに声をかけた。
「騎士の誓いになります。生涯で一人の方にのみ誓いを立てます。その方が亡くなったりした場合や、逆に誓いを解除しない限りは契約が結ばれるのです。」
「そう……ん?騎士団なら皇帝陛下に誓いを出していないの?」
一瞬納得しかけたが疑問に思って聞く。
だって騎士の主君って王様――この国では皇帝陛下じゃないの?
「騎士の誓いは2種類あります。魔力を乗せる場合の誓いは、主君の命令に逆らうと主君から許しを得るまで魔力を失います。」
「え、でもその場合主君に気づかれちゃうよね?ゲイン今魔力乗せて誓ったでしょ?」
ゲインは目を段々大きくしながら立ち上がり。
「ア、アルス様!なぜ……なぜその事が分かるのですか!」
「え?だって、ゲインの体から出ていた青い魔力が僕につながったよ。」
「な!」
ん、なんか認識が違うのかもしかして。
「やっぱりな、アルス。てめえ魔眼持ちだな?それも……そこまで鮮明に見えてるのはヤバいな。」
マーガレットが少し顔を引きつらせながら言う。
「……これは知られるのはまずいですな。皆様、口外せぬよう願います。万が一漏れた場合は――」
ゲインの魔力が急に湧き出ているのを感じる。
そしてそのまま言葉をつなげた。
「この私が対処いたします――」
ズンッ。
空気が震えるような音がした気がした。
そして周りを見てみると僕とメル以外の皆の顔色が急に悪くなる。なんだ?
「くっ。」
メイズさんとルビーは片膝をついた。
「だああ!わかってるよ!だからやめろよ、お前みたいなのが【魔圧】をかけると小僧たちは死ぬぞ!」
マーガレットが冷や汗をかきながらひねり出したかのように言う。
「無論。子供たちには調整をしておりますよ。それくらいはできますから。」
ふっと急に空気が軽くなった気がした。そしてカイたちは手を地面につきながら肩で呼吸をしている。メルは何ともなさそうだ。
「ゲインさんよ。あんた相当だな……階位も高位だろう。」
「いえいえ。私もさすがに高位ではありませんよ。ただ、中位の上の方ですな。」
マーガレットが冷や汗をかきながら言っている。
「ぜひとも皆様。よろしくお願いいたします。」
こういう時は本当に元諜報に長けた騎士団のトップだったんだなって思う。
普段はあんな感じなのに、今は目が全然笑ってない。むしろ本当に誰かを殺しそうな感じだった。
「アルス……。皆なんで苦しそうなの?」
「メル、少し疲れちゃったんだと思うよ。大丈夫だよ。」
メルが心配そうにしている。
「とりあえず、僕のこの目は特殊ってことかな、ゲイン?他の人に見つかるとまずいってことは分かったよ。」
ゲインはこちらを見た後、心配そうな顔をして言った。
そして、一度息を大きく吸った。
「特殊どころではありません。魔力を感知できる方は多少なりともいます。魔眼持ちはどの国でも要保護対象です。
更に、色や形、方向性も鮮明に見える方は皇帝陛下を含めいないでしょう。いえ――」
ゲインはそこで言葉を一度とめると――
「正確に言えば一人だけいらっしゃいます。
万民の声を聴き、万民の青き魔力をその身に宿し、その力を分け与えた御方。
その力は伝説とされ、その御方以降その力を完全に使いこなせた方は現れませんでした。」
言葉を少し飲みこむようにしてゲインは言った。
「――初代帝アルベス・アウグスト・ヴェルディア陛下。その御方を除いては。」
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帝都アルベリア 帝都 貴族区 ???
――貴族区では、平民区の暴動とは無縁に夜行パーティーが開かれていた。
「はははは。それでは平民たちは、結局何をしたかったのかね?まったく……これだから知性のかけらもない存在は。」
「仕方ありませんわね。何せ所詮は平民ですし。おほほほ。」
貴族たちは下等な存在である平民たちが、多数犠牲になった暴動について話を咲かせていた。
そのパーティ会場の控えの一室で、ある男は報告を聞いていた。
「それで?始末できなかったのか?」
「申し訳ありません。金髪の娘の方は依然として行方が分かりません。死体も見つかっておりません。」
「ちっ。あの血染めの騎士の遺体も回収できていない。そもそも下賤な傭兵には荷が重かったか。」
その貴族風の男は爪を噛みながらつぶやく。
報告をする執事服の男も軽く頭を下げたままだ。
「まあいい。引き続き捜索はしろ、いつかは見つかるだろう。最悪はその辺の子供を殺して持っていけばいいだろう。」
「……髪の色が違いますが?」
「確認しに来るやつに髪は別で渡せばいい。焼けてしまったとでも言え。」
「……かしこまりました。」
執事は子供を犠牲にするやり方は反対であったが、何も言わずに頭を下げる。
「それよりもあの女――サリエラだったかそいつのことをどう報告するかだな。あの御方からは必ず遺体を回収しろと言われていたが……まさか自爆するとは。
それは私の落ち度ではないはずだ!くそ!どうする!」
「……。」
執事は黙ってたたずんでいた。
するとその後ろから声がかかる。
「その必要はありませんよ?クロご苦労様でした。あなたは戻っていいそうです。お疲れ様でした。」
貴族が入ってきた方向へ目を向けると、そこには若い貴族が一人ワイングラスを持ちながら立っていた。
執事――クロも頭を下げその貴族の後ろにつく。
「あ、あなた様は!」
「子爵。ご苦労様です。いろいろと上手くいっていないそうですね。ですがもう大丈夫ですよ。」
その貴族は、ワインの香りを楽しんでから口に含む。
「は、はあ。それはどういうことでしょうか。」
「血染めの騎士――サリエラの死はこちらでも確認しました。子供の方も今はいいです。それよりも優先したいことがありましてね。」
子爵と呼ばれた男は、唾をゴクリと飲み込む。
「そ、そうでしたか。それで私の役目は果たせたことになりますでしょうか。」
「ええ、よくやってくれました。このクロも役に立ったようで何よりです。ですので、」
若い貴族は言葉を一度区切り、子爵に微笑みながらこう言った。
「ここで死んでいただければ、私の役目も果たせるので問題ありません。」
「な!それは、どういう……。」
子爵と呼ばれた男はそれ以上の言葉が出せなかった。正確に言えば声が出ない。
胸が熱くなるのを感じ下を見ると、赤い――まるで血でできた槍のようなものが若い貴族から伸びていた。
「な……なぜ…ごふっ。」
「いえいえ、子爵。あなたの役目は死ぬことで完全になるのですよ。」
若い貴族は、子爵と呼ばれた男が倒おれた場所へゆっくり歩いてくると。
「お疲れ様でした――」
だま…されたーー。
ああ、せめて娘だけでも……。
その子爵は意識を手放した。
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