18.信頼
上納金の額はもしかしたら変更するかもしれません。金額設定難しい。
また、スラム編はここまでとします……たぶん。
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
マーガレットと別れ、元黒蛇の帳のアジトーー傭兵団アジトに入る。
まず目に入るのは、奥に垂れ幕のように広がっている黒地に白い蛇の壁布だ。その目の前に丸いテーブル、蝋燭、ナイフが刺さっている。
壁には何に使うのかわからない黒い鉄の鎖が垂れ下がり、そして左の壁には人物の顔の紙が貼られていて、ところどころバツ印になっている。
部屋の中は薄暗く、松明が少し、あとは机の上に蝋燭台で火が躍っている。
「まあ、元々スラムの盗賊のアジトだからね。想像はしていたけど、薄暗い感じだね。」
「そうか?そんなに気にならないけどな」
僕はカイに話しかけたが、そこまで気にならないみたいだ。
元々城壁の壊れた壁にいたからね。あそこは隙間から日光が差し込むか、夜は松明か基本的には寝ていた。
「わあー広いなー僕でも余裕だー。ガスト!よかったねー」
「……そうだな……」
体の大きい2人組はとても喜んでいる。何せもっと大きくなったら、皆と離れて暮らさないといけなくなるところだった。
「少し……かび臭いかも?綺麗に掃除しないといけないわ」
「わあ。本がいっぱいある!読めるかな……」
「ノエル!見てみて階段があるよ!どこまで登れるかな!」
エルナ、ノエル&フィンはこれから暮らすことになる場所を色々見て回ってる。
「ん、レオ?皆と見て回らなくていいの?」
僕は入り口付近で、僕たちと一緒にいるレオに声をかける。こういう時真っ先に行きそうなものなのに。
「あ、ああ。俺は後でゆっくり見るさ……」
「レオはねー。一度、黒蛇の帳に盗人したことがあってねー。その時捕まったんだよー。」
「ああ、なるほど」
ボラムが理由を教えてくれた。聞くと、その時カイとガストに助けられて仲間になったらしい。
確かにここに侵入したことがあって、それで捕まっているのなら少し嫌かもしれない。
「ち、ちげえよ!怖いわけじゃねえ!ただ、ちょっと……なんだ!別に全然平気だ!行くぞフィン!」
「あ、僕も行きたいよー」
「レオ兄!待ってよ!」
ボラムとフィンがレオについて、右手側にある階段で上に登っていく。別にそんなことでレオに何か言うつもりはなかったけど……。
「アルス様この後はどうなさいますか?」
すぐ後ろで立っていたゲインが聞いてきた。
「そうだね。まずは……カイ。大事なことを決めようか」
「ん?なんだ?金の話か?それは一応、今までの蓄えも少しはあるけど、上納金の金貨一枚はキツイかもな……」
「いや、違うよ、カイ。もっと大事なことがあるでしょう?」
カイがお金のことで腕を組んでお金のことを心配していたが、それよりももっと大事なことがある。
「ーー傭兵団の名前!どうするの?それがないと色々と困るよ」
「ああ!そうかそうだよな。どうしようかな……もっと先の話だと思ってたからな。全然考えてないな」
カイが頭をかきながら答える。
「僭越ながら、この私が思いついたものがありますぞ」
ゲインが会話に入ってくる。一度僕の顔を見てそれからカイの方を見た。
なんだ?僕に関係ある名前は……やめてほしいな。カイの傭兵団だからさ。
「カイ殿は瞳が、少し青く澄んでおりますからな。それに、スラムから立ち上げるならば狼が似合うでしょう。
そこでーー【碧狼傭兵団】と名乗るのは如何ですかな?」
それを聞いたカイは、目を大きく見開くと満面の笑みで言った。
「ゲインさん!それ凄くいいじゃないか。
狼か!そうだよな。俺たちはこれから狼のように群れで行動して、大きくなっていく。そして、俺たちみたいな奴らを群れに加えて助けてやるんだ!」
「結構普通にいい名前だよね!カッコいいと思う!」
凄くいい名前だ。響きもかっこいいし、僕に関係があるって疑った僕の方が恥ずかしいや。
ーー【碧狼傭兵団】
後世、その名前は大陸各地に知れ渡る事となる。
他の傭兵団の追随を許さない、その圧倒的な連携と強さ。
戦場でその青地に銀色の狼の旗が上がると、相手側の傭兵団は金よりも命を優先して逃げ出したと言われた。
そして、傭兵団は常に弱き者を助ける事を優先した。
例え貴族であろうと、王であろうと、自らの信念を貫いた。
後世の歴史書には、その名が幾度となく刻まれ、吟遊詩人たちの間では英雄譚として歌われる事になる。
そして今ーー
その歴史に、最初の1ページが刻まれようとしていた。
カイ達とそのまま少し話をしていると、急に入り口のドアが開く音がした。
「ういーす。マーガレットの姉貴から言われてこっちに来ましたー。本当は嫌っすけどー。そうしないと2度と会わないと言われたんでー。仕方なく来ましたー」
「え?ルビーさん?」
「そーでえーす。ルビーさんでーす。はあー」
ルビーが肩を落としながら入ってきた。そして後から3人くらい組員の人が来た。そして、カイの方に近づくと、ジャラジャラと音が鳴る袋を渡した。
カイが受け取って呆然としていると、急に目の前の子が話し始めた。
「ルビーさん、しっかり挨拶してくださいよ!アタシたちも変に思われるじゃないですか!
あ!アタシらはルビーさんの下で働いてて、今日からここで傭兵団の一員として働かせてもらいます!宜しくです!」
凄く元気のいい、ルビーと同じくらいの女の子が挨拶してきた。髪の色は赤茶色で瞳は少し琥珀色に近い色だ。
僕の瞳で見るとルビー程ではないが、この子も魔力を少し持ってそうだ。
「アタシはケイトって言います!隣にいる男2人はボグさんの配下だった人で、ヤジンとクシャルと言います!」
ケイトの後ろに1.7ルムド位の中肉中背の男が1人、そして細いが、体を鍛えている同じ背丈の人がいた。いわゆる細マッチョっである。
「ヤ、ヤジンて、い、言います。宜しくた、たのみます」
「クシャルだ。ボグさんに言われて今日からここで世話になる。宜しく頼む」
中肉中背の人がヤジン、細マッチョはクシャルというらしい。
「あ、後その袋なんすけど!マーガレットさんから働きの分の支払いだって言われました!
最初の運営資金?にしろ、って言ってました!」
ケイトがよく通る元気な声でカイに報告した。中を見てみると金貨が30枚程入っていた。
こ、こんなに貰っていいのか!金貨一枚の上納金もここから出せばーー
「あ!ここから上納金だすなよ、と
少し多めに入ってるのは、利子をつけて返せ、だそうです!」
さすがですね、こちらの事はお見通しですか、マーガレットさん。
カイがその金貨を見て凄く動揺しているのが分かる。手が震えているよ。そんな大金、平民でも中々お目にかかる事はないだろう。
「と、とりあえずルビーさん達、宜しく頼みます」
カイが動揺しながら答えると、急にルビーがカイの目の前にきて、目を覗き込んで話し始めた。
「おいーてめえ、カイって言ったか?」
「え、はい」
「お前さーこの傭兵団のトップなんだろ?敬語使うんじゃねえよ。舐められるぞー?そんなんじゃ、こっちも働き甲斐がねえんだよー」
ルビーが顔を左右に揺らしながら、カイに話しかけている。
「わ、分かった。これからは気をつける」
「上下関係はしっかりしろよなー」
要は終わったとばかりに、ルビーはスタスタと歩き出し階段を登っていく。
部屋割りとかまだ決めてないんですけど……。
「ほんとすみません!あの人昔からあんな感じなので!」
ケイトが頭を下げて謝っている。この人はすごい元気はつらつって感じだけど、今まで見たクセのある組員の中じゃ、一番まともだ。
「いや、良いんだ。俺は、これからもっと傭兵団のリーダーとして学ばないといけない。
色々と教えてもらいながら、やっていきたいんだ」
カイは決意を固め、その瞳を僕にまっすぐ向けてきた。キラキラと輝く青緑の瞳は、希望に満ち溢れている。
「アルス。お前が居てくれて本当に嬉しいんだ。お前とならこの傭兵団を大きくできると思うんだ。
だからお前を、この傭兵団の参謀役として改めてお願いしたい」
「カイ……でも僕はまだ5歳だし、魔力もそこまで多くはない。いつか、迷惑もかけてしまうかもしれない」
そう。僕は皇族だと言うことが分かってしまった。いつか、命を狙われることもあるかもしれない。
その為には、あまり目立たない方が良いだろうと考えていた。
「大丈夫だアルス。ここにはお前の味方が大勢居るじゃないか。皆で力を合わせてやっていこう。
それに年齢なんて関係ない。お前は立派に作戦を考えて戦っていた。
俺はお前を信頼しているんだ。頼むよアルス」
自分は信頼して良いのだろか。
かつて、父親を信頼し続けていた母の最後を思い出す。
母は【いい人生】だったなんて、とても自分には思えなかった。
【いい人生】とは信頼されれば分かるものなのか?
人に信頼された今なら、いつか分かるのだろうか?
「……カイ。わかった。やらせてほしい」
カイは満面の笑みで答えた。
「ああ、信頼しているさ。任せたよアルス」
その信頼の先に【いい人生】ーーそいつが居るならば。
前世とは違って、僕も信頼してみようじゃないか。
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