12.アルスの秘密
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
説明会が続いてすみません。
「メル殿のお母さまのアリア殿、お父さまのマルク殿は生きております。」
ゲインがそう言った瞬間、僕もメルも言葉がとっさに出なかった。
なぜなら、マルクもアリアも生きているとは思わなかったからだ。
あの時の事は今でも鮮明に思い出せる。サリエラは後で迎えに行くと言っていた。
あれは……亡くなった後、教会へ迎えに行くのだと思っていた。
僕よりも先に言葉を出したのはメルだ。大きな声でゲインに詰め寄る。
「お父さんとお母さんはどこにいるの!今どうしているの?今ここにいるの?」
メルは矢継ぎ早に言葉をゲインに向けている。
確かに今この場にいないのはおかしい。あの2人の性格だ。生きているならゲインと一緒にすぐ来てくれていると思う。
僕は少し嫌な予感がした。ここに来られないほどの状態、もしくは理由があるからだ。
「メ、メル殿。少し落ち着いて下され。一からお話ししますゆえ。」
メルに先ほど怖がられたのを気付いたのか、腰を落として話をする。
小さな子供をあやすおじいちゃんに見える。目線はしっかり子供の高さとは言うけど、ゲインは膝を折ってもメルより目線は上だ。
「メル。一旦ゲインの話を聞こうよ。きっとちゃんと説明してくれるよ。」
「うん……。」
メルは少し落ち着いたのか、小さくうなずく。
ゲインは一息呼吸を入れる。
そして、立ち上がり僕とメルの前で、しっかりと聞こえるように話す。
「今お2人は帝都にはおりませぬ。帝都よりほど近いマリードという町におります。そこで治療を受けているのです。」
「治療?」
僕はメルが聞くよりも早く、その先を促すために聞いた。
「はい。あの日の夜。実は我々月影騎士団は、アルス様保護のために平民区へ向かっていたはずでした。先行で出撃させた部隊が、アルス様とサリエラ殿ご家族を保護する手はずでした。」
「でも、僕たちのところに来たのは……蒼炎傭兵団が先だったよ。騎士団の人は来ていないと思う。」
ゲインは難しそうな顔をして頷く。
「然り。先行させていた部隊は、どうやら足止めを食らったようなのです。それも帝都警備隊のものに。それに、私自身にも皇宮内へ召集令が出ましてな。」
それは、確かに大分怪しい。
行こうとしていたのに全て先回りされて止められている。騎士団の動きを知っていないとできないことだ。
そしてゲインは最初の挨拶の時に言っていた、元騎士団長だと。
つまり、騎士団長を呼び出せるだけの権力がある人、もしくはそれが可能な伝手を持っている人が関わっているということだ。
「私はもはや猶予はないと感じましてな。副騎士団長に全てを任せ、サリエラ殿の家に単身で向かったのです。」
ゲインは堂々と言い張った。
うわあ。 その副騎士団長の人、今絶対困ってるでしょ。引継ぎもなしに団長職の仕事押し付けられるとか、急に騎士団よろしくね!は地獄すぎるよ。
そして顔を急に真剣な顔つきに戻し話を続ける。
「そうしたらですな。盗賊らしきものたちがサリエラ殿の家を囲んでいまして、慌てて突入したんです。中を見てみると、アリア殿は血だらけで倒れ、マルク殿が何とかアリア殿を守っている状態でしてな。」
それを聞いていたメルは顔を青ざめさせた。今にもまた泣きそうな顔をしている。
それを見たゲインは慌てた様子で、手を振りながら先を続ける。
「で、ですが!私がすべて倒しましたゆえ。何とか間に合ったのです。その際にマルク殿から、死体を偽装するように言われましてな。」
偽装?マルクとアリアは騎士団にある内通者の存在に気づいていたのか?
「マルクはなんで偽装なんてしたの?」
僕は気になって、ゲインに聞いた。マルクは何を思ってそんなことをしたんだ?
「どうやら、死んだ事にして後でサリエラ殿と合流しやすいようにしたかったようですな。それから、偽装した後、お二人ともすぐに隣の酒場で簡易的な治療をしたのです。なのでご無事ですぞ。」
メルはその話を聞いて再度泣き出してしまった。わんわん泣く姿を見てゲインはどうしたものかと、あたふたしている。
本当は凄い騎士なはずなのに、今は孫に泣かれてしまったおじいちゃんのように動揺している。この人はなんか裏表なさそうすぎて、逆に裏仕事がメインの月影騎士団団長としてやっていけたのか気になってくる。
しばらく、自分も一緒に泣き止むまで待った。
「おほん。それでですな。後の事は私に任せてもらい、今は帝都からは離れ、マリードにいる信頼できる知人の神官の元で治療に専念してもらっているのです。大変でしたぞ!探しに行こうとするのを止めるのが。」
そうだろうなアリアはともかく、マルクは絶対自分で行くだろう。マルク本当に止められたのか?この人も意外にパワー系だから……。
すると話を聞いていたマーガレットが言葉を発した。
「んで?なんでこの小僧を迎えに来るのが遅くなったんだ?アルスは、このカイたち小僧集団としばらくいたぞ?何ならそこの金髪のやつを殺せって貴族が出てきていたぞ。」
マーガレットがいつの間にか座っていて、メイズさんからパイプをもらって火をつけている。
メイズさんいつでもその準備しているんですか。
「そうですな。私はそのあと、お二人をマリード行きの馬車に乗せてサリエラ殿の後を追ったのです。しかし、城壁外に出たところで魔力の反応と爆発があり……。現場に向かったところおびただしい血の痕跡がありました。」
それがさっき話していた、サリエラの死の話になるのか。きっとサリエラは、その爆発でゲインさんに居場所を伝えるのも目的としていたんだろうな。
「そこでアルベリア川周辺を捜索していたのです。まさか、川上の方にいるとは思わず。しかもスラムにいるとは……。主君の危機に間に合わず不甲斐ないばかりです。」
サリエラのこと。きっとゲインさんが見つけてくれることも想定して、色々動いてくれていたんだと思う。血の球体はわざと川上に飛ばしたんだきっと。
だが――。
「ゲインさんでさえ、探すのにここまで時間がかかったんだ。それなのにメルを探して……。その、そういう命令を出した人が来たってことは、その人は僕たちがここにいるのを知っていたってこと?」
メルを殺せなんて口が裂けても言えないので濁してしまったが。
マーガレットがパイプの煙を、空気と一緒に一度大きく吸い込むのが見えた。
「ふうーー。そうなるだろうな。わたしたちのところに来たのは、爆発があった日のすぐ後だった。それにあの貴族の言い方じゃ、ここにいるのは確定しているような言い方だったぜ。」
なら早すぎる。ゲインがここに来たタイミングよりもだいぶ早い。
僕は魔力を頭に少し流すのを意識する。
情報がまとまらないからだ。思考の闇に沈んでいる間に、今度はカイがマーガレットに声をかけた。
「マーガレット。俺を保護するように言ってきた貴族は誰なんだ?その……アルスたちとは関係がある貴族なのかな。」
カイが俺たちを一度見てから、少し遠慮がちに聞いていた。よく見るとカイたちは誰も座っていなかった。
「ああん?お前を保護しろって話が来たのは結構前だぜ。その金髪の小娘を殺せって言ってきた貴族が来るよりずっと前だ。」
マーガレットは、再度パイプを口に持っていき吸った。
「ふう。それにお前を保護しろと言った仲介役の男は、保護するときは連絡しろとな。だが、そのあとは連絡を取ってねえ。呼べば来るのかもしれねえが、どうした?気が変わったのか?」
「いや、俺のことを保護する貴族が誰なのか知りたかっただけだ。俺はこいつらと共にいる。」
後ろであからさまに皆ほっとした顔をしている。そうだよな。カイがいないと不安になるよな。
……エルナ露骨に喜んでるし。
「知らねえな。貴族の名前は聞いてねえ。北の方にいるやんごとなき身分のお方?としか聞いてねえぞ。
守ってやれくらいの依頼で結構な金を出すから貴族だろうな。」
「そうか……。」
カイは話を聞いて考え込んでいる。
「ひとまず、話の続きですな。」
ゲインが一区切りついたと見たのか話を続ける。
「アルス様を何故サリエラ殿の家に預けていたか。そのお話をします。」
ゲインは真剣な顔で話を始める。
「その話は、わたしたちも聞いちまっていいのか?嫌だぜ。後でゴタゴタに巻き込まれるとかな。」
マーガレットが心底嫌そうに手を振る。メイズさんがその時落ちたパイプの火種を足で消してる。
持ってる方の手で振るのやめたほうがいい。いつか大火事になりそうだ。
「既に巻き込まれておりますゆえ。むしろ聞いて頂いた方が良いでしょう。それに、アルス様出生の話は、私ではお話しできる事は少ないですゆえ。」
ゲインは少しだけ悲しい顔をした。
サリエラと同じ顔だ。何故そんな顔をするんだろう。
「言える事は、ご両親はご存命である事。しかし、2人ともそう簡単に会える方では無いという事だけです。」
その情報は、正直なところあまり大した話では無い。
しかし、皇族となればその話自体もそれなりに察せる。
「つまり、誰かは教える事はできないけど、皇族の望まれていない子供ってこと?」
僕が言うとゲインはすごく悲しそうな顔をして、目を赤くさせながら言った。
「……存在を公にはできない子供、とはなります。」
自分で聞いてても実感が無い。つまり、望まれずに生まれた存在が僕。そして、サリエラたちに預けていた。
だがゲインは慌てて言葉を繕った。
「し、しかし!アルス様のお母様は、アルス様を望んで産んだのです!とても、愛していたのです!それでも……時勢がそれを許さず。我らにもどうすることもできませんでした。
せめて、健やかに育ってほしいとサリエラ殿の家に預けたのです。」
まぁ……そこまで本当の親に興味はない。
マルクとアリアが生きてることの方が僕は大事だ。
サリエラの事も大事だ。
「アルス大丈夫?」
メルが心配そうな声で、僕を抱きしめてくれる。
そうだ。
今の僕にも家族はいるし、父母に変わる人たちも大事に育ててくれた。そんなに気にならないのは……いい事だ。
「大丈夫だよ。そこまで気にして無いから。」
僕はちゃんと笑えていたかな。ゲインは今にも泣き出しそうだけど。メルも自分のことで精一杯なのに、そんな顔しないでほしい。
「それよりもこれからの事ちゃんと話しよう。」
僕はなるべく明るい声で、これから先のことを話そうとした。
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