↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/66

11.ゲインの話

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 家の中に入ると、埃のにおいが鼻についた。狭い部屋の中には椅子がいくつかと机が1つ置いてあった。


 ゲインさんの腕から降ろしてもらい、少し中を見回してみる。

 すると、マーガレットたちも続々と中に入ってくる。


「ゲインさん。聞いてもいいですか?」

「ゲインとお呼びください!敬称は不要にございます。聞きたいことはもちろんお答えいたしますぞ。」


 ゲインさんが大袈裟に声をあげた。声に渋みがあるけど大きい声だな。


「でも、貴族は敬称をつけないといけないんじゃ。」

「アルス様は不要にございます!」


 ゲインさん――いや、ゲインがそう言う。自分もこの世界の言葉で敬称をつけて呼ぶのは大変なので、子供だから仕方ないよね!のノリでつけなかったりしている。


 けど、この人貴族だしな。一応つけていたんだ。


「……わかった。ゲイン。あなたは何者なの?それと僕は一体何者なの?」


 年上を呼び捨てなのは、前世の記憶から少しはばかられる。しかし、それ以上に聞きたいことがいっぱい出てくる。


「アルス様。私の口から話してよいことと、話してはいけないことがあります。ゆえに、まずは答えられる範囲で答えていきたく思います。サリエラ殿との関係についても話させていただきたく。」

「わかった。けど、サリエラの話をするのであれば、メルっていう子が来てからでもいいかな?」


 ゲインは一度大きく頷いた。


「無論にございます!むしろ私もその子に伝えたいことがありますゆえ。」

 

 ゲインは入口より奥にある椅子を僕に持ってきた。これに座れということか。

 マーガレットは手前の椅子を二つ使い、横になっている。だが、話自体は聞くつもりなんだろう。顔はこちらに向けている。

 

 しばらくして、メイズさんの隣で心配そうにしているメルが来た。だが、僕を見つけると嬉しそうに声をかけてきた。


「アルス!無事?」

 

 メルが僕に駆け寄って抱き着いてくる。メルのにおいがする。家に帰ってきたかのような安心感がある。今頃になって、少し体が震えてきたかもしれない。


「大丈夫?」


 メルが心配そうにこちらを覗き込む。


「ああ、少し今頃になって怖くなってきちゃって……。」

「ごめんね。一緒にいてあげられなくて。でも、一応包帯のやり方はお母さんから聞いていたから……。」


 確かに、包帯なのか布なのか分からないけど、メイズさんは身体中に巻かれていた。


「助かりましたメル。一応、応急手当していただいたので、少しはマシになりました。」

「良かった。本当は魔法が使えればよかったんだけど……。」


 メイズさんがメルにお礼を言っている。メルが言っているのは回復魔法のことだろう。

 魔法は8歳くらいから教えてもらうのが普通だ。だから、5、6歳の僕たちは現状では、魔力はあるが魔法が使えない状態なのだ。

 

 僕は魔法も使えないだろうって?……気にしてはいけない。


 心の中で一人でツッコミを入れていると、メイズさんがマーガレットさんを見つけた。

 一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの無表情に戻った。


「お嬢。油断しましたな。」

「うるせえ。てめえもだろうが。そもそも、エルフがスラムにいることがおかしいんだ。」

「エルフ?」


 マーガレットは、同じように椅子の上で寝かされているエルフを顎で示した。メイズさんはエルフに少し近づき、確認すると淡々と言った。


「私が戦っているときには、いませんでしたから。」

「ちっ。まあいい。それより、ゲインさんとやら、そろそろ話をしてくれるのだろう?わざわざ騎士がスラムに来るくらいだ。相当な理由がなければ来ないだろう?そのアルスって子に何があるのか、わたしも知りたいんでな。」


 マーガレットが少し体を起こして言う。

 

「サリエラ殿の孫……メル殿と言いましたな。まずはそちらに関係する話からでもいいですかな。アルス様の話にもつながりますからな。」

「かまわねえよ。」

 

 マーガレットが再度寝ながら手を振っている。

 一応貴族ですよマーガレットさん。その体勢で聞こうとするのは逆にすごいよ。


「え!おばあちゃんの……知り合いの人?」

 

 ゲインはマーガレットから目線外し、僕と一緒にいるメルを見る。メルはその巨体を見上げて少しおびえながらも聞く。


「はい。サリエラ殿はわたしが騎士団に入ったころの教官でしてな。よく怒られておりました。そこからの付き合いになりますが、サリエラ殿は元月影騎士団(ムーンシェイドナイツ)という騎士団の所属でしてな。」

「月影騎士団……。」


 メルがその言葉を、噛み締めるように呟く。


 サリエラも盗賊に追いかけられている時、盗賊が言っていた名前だ。

 ゲインはそのまま話を続ける。


「月影騎士団というのは皇帝陛下の影。つまり、陛下の御身を影ながらにお守りする役目。それに情報収集などを担っている騎士団です。」


 ゲインは着ている騎士服の胸の部分を少し触った。そこには月のような紋章が光っていた。


 「ですので、貴族は知っている人がある程度いるでしょうが、知らない者も多いでしょう。」


 なるほど、だからさっきの貴族たちもゲインの顔を知らなかったんだな。

 あれ?陛下を守るのが役目ってこと?なら僕をアルス様って呼ぶのは……もしかして――。


「そのアルスってやつは皇帝の隠し子的なやつなのか?」


 マーガレットがド直球に聞いてくる。あなたは怖いものなしなのかな?


「いえ、アルス様は現皇帝陛下とは関係はありませんな。しかし、月影騎士団の成り立ちとしては、大いに関係があります。ゆえに、私が助けに来た理由になります。」

「ゲイン。それって僕は、帝国の皇族ということになるの?」

「そうなります。現皇帝陛下本人とは血が繋がっておりませんがーー」


 ゲインは一度そこで言葉を切り、僕をみてはっきりとした口調で続けた。


「アルス様は皇族でございます。」


 瞬間、皆が僕をすごい見てくる気がする。カイたちも驚きを隠せていないし。

 メルは……普段通りだ。何言ってんだろうって感じだ。


「やっぱり、そいつの髪の色と瞳は隠しているのか?」

 

 マーガレットがそう聞いてくる。


「ええ、アルス様の腕輪がそう見えるようにしております。これは理由があってのことですが、その話は私の口からは言えませぬ。申し訳ありませんが……。」


 ゲインがこちらを少し窺(うかが)うように見てくる。


 まあ。ある程度理由があってついているとは薄々思っていたんだ。最初は赤子につけるアクセサリーかなって思ってたけど、メルはつけてないし。

 それに話せないこともあるって最初に言っていた。僕のことなのに、僕にも話せないって相当なことだぞ。


「まあいい。それで、その小僧たちはどうするんだ、ゲインさんよ。あんたが来たなら、そのまま引き取って保護すればいいんだろう?わざわざスラムにいる必要もねえ。」


 そうか、確かにそうだ。カイたちを見るとカイも少し悲しそうな顔をしているのが見える。

 

 そうだよな……。


「いえ、実はですな。私は騎士団を辞してきたのです。なので、貴族籍はありますが、領地なし貴族ですし。今はただの貴族籍を持っている、元騎士の老人ということですな。」


 ゲインは堂々と胸を張って答えた。


「はあああ?騎士じゃないのか?そのアルスってやつは皇族なんだろう?騎士団にいる時に、保護してやればよかったじゃねえか。」


 マーガレットが驚いた顔をして言う。

 

 いや確かにその通りだよね。わざわざ辞めてこっちに来たってことなのか。

 

 何のために?


 前にサリエラが、騎士団に助けを求めるのを渋っていたと考えていた。そのことに繋がっているのかもしれない。


「ゲイン。騎士団の中に僕を殺そうとしている人がいるってこと?」


 ゲインはバッと音がするような勢いで、こちらを振り返り、僕の肩を抱いて言った。


「アルス様!その話どこまで聞いていたのですか!サリエラ殿にもその話は伝えられませんでした。どこで……まさか!月影騎士団に襲われたのですか!?」


 ゲインの顔に、今日一番の焦りが浮かんでいた。


「いや、そうなのかな、って。伝えられなかった……ってことはゲインはサリエラがどうなったか知っているってこと?」


 僕はゲインが最初に会った時、サリエラのことを聞かなかったことを今更だが不思議に思った。


 つまり、サリエラと僕たちが一緒にいないことを知っていたんだ。だから助けに来たんだと思う。


「……アルス様は5歳でしたな。お年のわりに随分と大人のような冷静さと落ち着きがありますな。サリエラ殿のことは、どうなったか知っております。わたしもその現場に向かいましたし、調査もしましたからな。」


 メルがその大きな瞳を、目一杯開いて言った。


「おばあちゃんがどうなったか知っているの!?おばあちゃんはどこにいるの!」


 メルが会話に入って聞いてくる。メルは、最後まで一緒にいたサリエラはどこかで生きていると思っている。

 マルクやアリア同様、サリエラの亡くなった姿を僕たちは見ていないし、そこにしか希望がないからだ。


「メル殿……。サリエラ殿は残念ながら亡くなっておりました……。」


 メルの表情が固まり、一瞬呼吸が止まってしまったかのように見えた。


「お、おばあちゃんが……死んだの?嘘……。」


 メルは信じられないと言わんばかり目を見開いている。


「……はい。死体はございませんでしたが、なくなっているという確証がありましたゆえ。サリエラ殿の血統魔法の爆発は自分にも死をもたらす魔法です。私としても生存は難しいと判断しました。」

「サリエラ……。」


 サリエラ、最後に僕たちを守るために、本当に命がけで戦ってくれたんだな。


「助けが間に合わず申し訳ございませぬ。」


 ゲインが小さなメルに頭を下げている。


 メルは完全に泣いてしまっている。死んでしまったなんて、この年で受け入れるわけがないのだから。


 ここ最近だって、僕と一緒にいるから何とか頑張ってきたんだ。この話はメルにとっては重すぎる。マルクやアリアのことだってあるのだ。



「ですが……。」


 ゲインは、メルが少し落ち着くまで待ってから切り出してきた。


 そしてメルが涙をぬぐい、ゲインを見上げる。




「メル殿のお母さまのアリア殿、お父さまのマルク殿は生きております。」


ブックマーク応援のほどよろしくお願いいたします。

毎日15時更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。