10.屑鉄市場の戦い_下
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
ーーエルフ。
そいつのことは、この世界で出会ったことはないが、よく知っている。異世界に転生したのだ。そういう存在について、アリアやサリエラに聞きまくっていた。
曰く――
エルフは基本的に、魔力が多く、寿命も人間よりも長いらしい。元々は世界中の深い森に居たとされているが、今は北にある深い森にだけ棲んでいる。
曰く――
人間を毛嫌いしており、基本的に人間の前には出てこない存在。セントラル連邦という亜人の国にはいるらしいが、その存在自体がめずらしいらしい。
――そのエルフが目の前にいる。
あの貴族が捲ったフードは、魔力を抑えるものなのか。
だから、魔力を目に通してても魔力の量を感知できなかった!
「はははは!さすがではないか!」
赤い帽子をかぶっている太った貴族が、大きな声で笑っていた。
「いいぞ!このままあいつ等を殺せ!我々に逆らったのだ!当然だ!」
もう1人の細い貴族も同じように叫んでいた。
マーガレットはーー居た!起き上がろうとしてるのか。手をついて立とうとしてる。
「マーガレットさん!今助けに!」
「待ってボグさん!」
ボグさんは僕の声も聞かずに、待機していた場所から飛び出しマーガレットさんの所へ駆け寄る。
「まずいぜアルス。どうする?みんなやられちまったぜ。」
「ああ。状況は最悪だね。マーガレットは意識がありそうだけど……ルビーは全然動かないよ。」
マーガレットもルビーも戦闘不能と見ていいだろう。
どうする?頭に魔力を流す。
「おい!奴隷!あそこにいる奴らを殺せ!」
くそ!間に合わない!どうすればいいんだ!
「……〈アイスジャベリン〉……」
すると3ルムドはあるだろう巨大な槍が周りに氷をつけながら生成されていく。
考えが間に合わない!まずは、カイたちに身体強化をしてもらってマーガレットとルビーだけでも助けるしかないか!いや、子供だけで連れてくるのは無理だ!
――また、僕は!何もできずに終わるのか!
「アルス!助けに行くぞ!」
カイが身体強化をしてそのまま飛び出していく。
「カイ!」
「俺たちも行くぜ!カイについていく!」
レオが身体強化をしているのが見える。他の皆も。
「アルス!俺たちは助けられた!なら助けねえといけないだろ!仲間なら!」
そうだ。
僕はこの世界で助けられてばかりだ。いつも考えてダメだったら、何もしないで終わりだ。
前世でもそうだ。
考えて、思って、だめなら愚痴を吐いて……結局何もしていない。
そんなの――【いい人生】じゃないのはお前が一番よく知っているだろう!アルス!
「ああ!僕も行くよ!」
仲間を助けるのに理由はいらないって、まさにその通りだ。
まずは目の前を見ろ!
そして!少しの力でもいい。
助けるんだ!
「マーガレット!」
マーガレットがボグさんに支えられて、こちらを見て驚いた顔をする。
「小僧ども!来るんじゃねえ!」
パキンッ!キキキキン!
氷の槍がさっきよりも大きくなっている。
思わず目をつぶる。
サリエラに心の中で謝る。
サリエラ約束守れなくてごめん!メルをまた泣かせちゃうかもしれないな。次は謝れもしないや――
そして――
巨大な槍が放たれ――
「困りますな。私の主君の子をそのように攻撃されては――。」
渋い男の声がした。
そっと目を開けるとそこには。
一人の巨大な剣を持った巨人のような騎士が、エルフの攻撃を正面から止めていた。
でかい。
本当にでかい。2ルムドはあるだろうその巨体。体の厚みもあってまるで巨大な岩だ。
その騎士は大剣でそのまま魔法の氷を叩き切った。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
それは相手も同じようで慌てている。
「な……なんだ!王国騎士団か!私は貴族だぞ!スラムのものを殺すのは貴様らには関係ないだろう!」
貴族が叫んでいる。
「騎士団は万民の盾。陛下の剣である。お前たちにこそ、そのように言われる筋合いはないわ!」
騎士は大きな声で一喝する。
「……」
「エルフ、の奴隷か」
巨人の騎士がエルフを見て、体格に似合わない悲しそうな顔をしている。
「ふん!!」
そして、そのままエルフの首についていた鎖を……引きちぎった。
エルフは急に意識を無くしたように倒れこんだ。
「な!なに!馬鹿な!それは龍の骨でできた鎖だぞ!」
「ありえない!」
貴族たちの動揺がすさまじい。きっとこれ本来そんな簡単に取れるものじゃないことだけは確かだ。少し冷静になれる時間ができてきた。
あの人いったい誰なんだ。わが主とか言ってたな。カイを助けた貴族の騎士か?
「お前たち貴族というが準男爵であろう。スラム街であろうが帝都近郊であるぞ。伯爵以下は帝都内もしくはその半径3000ルムドで攻撃魔法を使用してはならない帝国法があるはずだぞ。」
「な!知らないぞ!そのような法律は!」
「そうだ!だとしても我々を止めるな平民ごときが!」
え、そんな法律あるんだ。その人たちバンバン放ってましたけど攻撃魔法。
「私は一代限りではあるが、子爵位を持っておる。むしろ、準男爵ごときが吾輩に逆らうなど帝国法では監獄いきだぞ。」
「子、子爵、様?」
「う、嘘をつけ!騎士ではないか!騎士で子爵など、それこそ騎士団長くらいでないとありえん!」
確かにどう見ても騎士の鎧着てるし、そのガタイで貴族ですよって言われてもにわかに信じがたい。
「ふむ。そのような事は知っておるのだな。だが、名乗るのはお前たちが先ではない。先にわが未来の主君に名乗らねばならん。貴様らはしばらく寝ておれ!ふっ!」
騎士が大剣の柄を貴族たちの腹に打ち込む。
「うげええ」「ごぼおええ」
「む。少し強すぎたかもしれん。」
少しどころかなあれ……。吐いてるけど、後ろに飛んだよ。内臓破裂とかそんなレベルにならないかな。
ほらマーガレットやカイ達も完全に引き気味だ。カイ以外の子供たちに至っては顔面蒼白だ。
そしてその騎士がエルフを抱えたまま、こちらにゆっくり近づいてくる。カイに用があるんだろうと思って、カイを一度見て後ろに行く。
だが、その騎士はエルフをカイの目の前に置き、
――自分の目の前で膝を折った。
「アルス様……。初めて御意を得ます。ご尊顔賜りまして恐れ入ります。」
僕は一瞬何を言ってるのかわからなかった。
アルス…様?なんで僕にこんな仰々しく膝を折ってるんだろう。前世のドラマとかでみるやつだよね。少なくとも僕じゃないことだけは確かなはずだ。
「あの、僕は確かにアルスですけど……。人違いだと思うんです。カイって子ならそこに居ますけど。」
「いえ、我が主君はアルス様。そして貴方様に間違いないのです。その腕輪。その髪の色。お顔も……よく、よく存じております。」
本当に混乱する。僕が主君?腕輪ってこのくすんだ腕輪のこと?なんかずっとついてて、そういうものなのかと思って気にしてなかったよ。なんなら、いつか外してもらおうと思ってたくらいだ。
髪の色だって灰色で瞳の色も黒だ。平民の中でたまちょっと魔力が使える人の色だし、実際そうだ。
一つ思い当たるふしがあった。
「もしかしてサリエラの騎士団の人?」
「!!サリエラ殿は教えていたのですな。そうです。私は元月影騎士団の騎士団長ゲイン・ハイデンベルグと申します。」
サリエラの仲間だったみたいだ。でも待てよ。今この人元騎士団長って言ってた。サリエラとはどんな関係なんだ。
「ひとまずよお。わたしたちを助けてくれねえか。死にそうだ。」
ボグさんに肩を貸してもらいながら、肩で息をしているマーガレットが責めるように言う。
「そうですな。とりあえずは、この貴族どもも含めて、一旦どこかで休息を取りましょうかな。私もここまで強行軍でしたがゆえ。……あの空いている家にひとまずは入りましょうか。」
ゲインと名乗った騎士が辺りを見回して、少し大きめの家に行くように指をさす。
ーーこの人一体何者なんだろう。敵じゃなさそうだけど。
そう思い歩き出そうとし、腰が抜けているのに気づく。
「あれ、立てないや。」
「アルス様!大丈夫ですか!どこかお怪我を!おのれあの貴族ども、許さんぞ!」
急にゲインさんが、倒れている貴族めがけて剣を抜こうとする!
「い、いや!ゲインさん大丈夫です!腰が少し抜けたくらいですから。」
「な、なんと!それではこの私が運びましょうぞ!」
そういうと、まるでガラスでできた宝石を持ち上げるかのように、ゆっくり僕を持ち上げ腕に乗せる。
た、高い…。子供の体だから目線がすごく高く感じる。
「あ、あの、そこまでしなくても平気ですよ」
「いえ!少なくともあの家までは運びましょう。お怪我などされていては大変です!」
心配しすぎではと思ってまた遠慮しようとしていたら、後ろからカイたちが声をかける。
「まあ、いいじゃねえか。運んでもらえよ。俺たちはメルを呼びに行くぜ。全員集合で問題ないんだろ?」
「あ、うんお願いするよ。」
「ああ、任せろ!レオ!一緒に来てくれ!後の皆はアルスたちと一緒に行っててくれ。」
レオは事態を飲み込めていなそうだったが、一度頷くとカイと共にメルとメイズさんがいる場所へ走って行った。
「それではアルス様。いきましょう。」
「あ、はい。お願いします」
皆で先ほどゲインさんが指さした家に向かう。マーガレットがルビーに声をかけている。ルビーも一応大丈夫そうだ。
マーガレットに抱きついて怒られてるけど。
一度ゲインさんを見上げる。顔にも傷がある。歴戦の騎士って感じだ。
この人は事情を色々と知ってそうだし、家に入ったら聞きたいことはいっぱいあるな。
そう思いながら空き家の方へ進んでいく。
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