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3.傭兵団

あくまで参考です。

これから変わるかもしれませんが

ヴェルディア帝国 帝都アルベリアの地図になります。


参考にどうぞ!

https://52271.mitemin.net/i1226332/

 カイが傭兵団といった瞬間、メルの魔力が高まるのが見えた。


「メル。落ち着いて……」


「アルス。傭兵団って言ったよ……あの人達と同じことをしようとしているってこと?」


 魔力は気持ちに左右される。メルはきっとサリエラの言葉を思い出しているのだろう。サリエラが言っていたことを全て理解しているとは思えない。


 しかし、メルにとって傭兵団という言葉は――

 家族との幸せを引き裂いた、憎むべき言葉だ。


「メル。俺たちを襲ってきた奴らは悪い奴だ。蒼炎傭兵団ってサリエラは言ってた」


「……! じゃあ!」


 メルがさらに言葉を続けようとした瞬間、僕は慌ててカイへ声を張った。


「カイ! お前たちの傭兵団は人を楽しそうに殺そうとする、そんな傭兵団を作るつもりじゃないんだろう!」


「ふ、ふざけんな! そんな連中と一緒にするな!」

 

 レオが急に立ち上がり、怒気を混ぜた声で言葉を放つ。よく見ると、周りの子供たちも同じように立ち上がり怒りを示していた。


「俺たちは……俺たちみたいな奴らを救ってやりたいんだ。理不尽に捨てられて、売られたり殺されたりするのはもう嫌なんだ」


 カイは、周りの子供たちに一旦『落ち着けおまえら』と言葉をかけてからそう言った。


 やっぱりな。そんな事をするような奴には見えないし、正義感も強そうだ。

 

 僕は一度メルに向き直ると、メルの両手を少し握った。


「メル。お父さんとお母さんをいじめた奴らとは違うんだ。サリエラを傷つけた連中とも違う。あいつらを――悪い傭兵をやっつける傭兵団を作るんだって」


「あいつらをやっつけるの? それなら……私もその傭兵団にはいる!」


 メルはまだ6歳だ。他の6歳よりも頭はいいとは言え、感情的になってしまうのは当たり前だ。むしろ、この年としては聞き分けが凄くいい。

 前世の俺なんて、この年の頃は何してたか覚えてすらいない。


「アルス。お前言葉までうまいな。大人が子供を騙すときみたいだったぜ」


「うれしくない!」


 カイが笑いながら僕に言ってくるが全然うれしくない。せめて親が子供を諭すみたい……ってそうか。こいつらに親は――。


 少し憐みの目を向けてしまう。


「な、なんだよその目……。気持ち悪いぞお前」


 レオが僕のことを見てから引き気味に答える。前言撤回だ。

 

 改めてアジトの中での仕事を見ていると、入口では年長の子が周囲を警戒し、別の子は散らかった道具を手際よく並べていた。


「詳しくは、一度物資の補給をするときに教えるさ」


「補給ってどこでするんだ?」

 

 僕は疑問に思って聞いた。この周りに、市場や物を買えるような場所があるのであれば、その辺は今後のためにも知っておきたい。


「ああ、城壁が崩れている場所はここだけじゃないんだ。もう一か所あってな。そっちは城壁の中にまで続いている。けど、そこは結構大きく壊れているからな、大人も通るし危険性も高い」


「なるほどな。ここは子供しか通れないから、隠れるのにはうってつけってことか」


「そういう事だ。けど、ボラムやガストはもうすぐ通れなくなるだろうな……。その前にどうにか傭兵団の目途をつけたい。そこで――」


「ん? なんで僕を見るんだ?」

 

 カイが僕を見てニヤリと笑うと僕を指さして言った。


「何かいい案を考えるのがお前の役目だ!」


「え?」


 本当に僕にやらせるつもりだったのか。よく5歳くらいの男の子にやらせる気になるな。その辺の寛大さというか何というか。度量が広いな。


「頼んだぞ」


 カイ。お前もイケメンの部類だな。そうやって人を惹きつける笑顔が爽やかだよ。




*************************************

帝都アルベリア スラム街 黒蛇の帳 ゴーン


 ――川辺の近く。アルスたちが拾われた近くに黒蛇の手は集っていた。


「カシラ! この辺に血だまりがありますぜ」


「これは、結構新しい血だな。もし子供たちのだとしたら、これだけ血を流せば死んでるだろうな」


「ですがカシラ、血を引きずった跡がありやす」


 確かに砂利の上に血で何か重いものを引きずった跡がある。そして、途中で点々としていて消えている。


「となると、自力で動いたか……」


 ゴーンは草を足で払う。その場所にある複数の小さな血でできた足跡を見て、凶悪な笑みを浮かべた。

 そして小さく言い放った。


「誰かが運んだ……ってことだ」

 

 ゴーンの口元がゆっくりと吊り上がった。



*************************************

帝都アルベリア 平民区 母屋 レオン・テラバス


 ――同刻。平民区の暴動は一旦の落ち着きを見せた。


 最終的に、第二外壁警備隊と帝国軍が出てきて、魔法で平民区にいた人もろとも攻撃を開始した。警備隊は、最後まで対処する為に出ていた。そしてその攻撃に巻き込まれてしまっていた。


 だが、それよりもこっちの方がひでえな。特に――。


 レオンはそう思いながら、その母屋の入り口にたどり着く。

 ジャリ、と煤の残る地面を踏み締めながら、元(・)母(・)屋(・)だったものに入る。


「酷いな」


「隊長、こちらへ……」

 

 ケインの呼ぶ声がした。


「――ああ。今行く」


 副隊長であるマルクと連絡が取れないことに気づいた時、既に第二外壁警備隊と帝国軍の攻撃は始まっていた。それでも、何とか平民区を守るために警備隊の面々は頑張っていた。

 だからマルクのことは気づいていたが手が回らなった。


 今思えば……くそ!どうしようもないか。そう心の中で毒づく。


「隊長……」


 他の警備隊の面々も、悲痛な面持ちでその焼(・)死(・)体(・)を見ていた。


「ヨルド……タイケン……」


 そこに倒れている遺体は黒く焦げ、形を保っているのが奇跡のようだった。個人識別ができる胸当てと剣……その死体が二人のものであることを物語っていた。


 そして――。


「マルク…」

 

 そこには、黒く焦げた二つの遺体が、寄り添うように倒れていた。


 マルクにはかわいいらしい奥さんがいたな。上にかぶさるように……そうか、マルク……奥さんを最後まで守ったのか。


「マルク……だな」


「はい隊長……。マルク副隊長です。ダイケンやヨルド同様焼けてしまっていて。ですが胸当てと剣は間違いなく」


「いや……間違いなくマルクだ。あいつは――左足の小指がねえんだ」


 昔、警備隊で子供を貴族の馬車から逃がすとき足先をひかれた。その貴族はそのまま去っていったが。


「それと、この剣がマルク隊長の体と奥方の体を貫いていました。惨くてすぐに引き抜いてしまいましたが」


 ケインがその剣だったものの刃先を見せてくる。


「これは?この紋章は――」


 レオンはその言葉を飲み込んだ。周りで誰が聞いているか分からないためだ。


 マルク、お前は……一体何に巻き込まれたんだ?なんで、この大(・)公(・)家(・)に狙われるんだ。

 

 そこに彫り込まれていたのは――。

 元王家に連なる大公家の象徴のような冠の紋章。

 瞳に翼が生えたような絵が中央に描かれている。


 そう――

 この国では知らない人はいない家。

 

 アークレイン大公家の紋章が描かれていた。




*************************************

帝都アルベリア スラム街 灰月の手(かいづきのて) マーガレット



 ――場面は再度スラム街に変わる。


 スラム街のアルベリア川方面は灰月の手の本拠地がある。

 灰月の手は十年前に代替わりした。今の長は、兄貴二人を押しのけて座についた女だ。


「お嬢。ゴーンの奴が何かかぎつけています」


「もうお嬢呼びはやめな! って言っても聞かねえかおまえは」


「へい」


 メイズは昔っからお嬢呼びだ。

 こいつくらいだぜ。このわたしを【お嬢】なんていまだに呼んでいるのは。


「それでお嬢。どうしますか」


「あー、はいはい。わかってるよ。メイズてめえがいけ。若い衆を30人くらい連れていけ。そのあとわたしも合流する」


「へい。わかりました」


 メイズと呼ばれた男。2ルメドほどある巨体を小さくして扉から出る姿は滑稽だ。


「ゴーンの野郎、もはやなりふり構わずだな。うちのシマまで荒らしにくるたあ。焦っていやがるな」


 引き出しからパイプを取り出し、ハーブを選んで魔法で火をつける。少しだけ口に含みパイプを離してから、煙だけを漂わせる。


「だが、うちも依頼はしっかりとやる主義なんでね。報酬をもらった以上、簡単に渡す気はないよ」


 窓の外を眺める女頭の手元には――。


 魔金貨が2枚煌めいていた。



メルちゃんと単位のメルが混じるので…長さの単位を変更します。メル→ルムド。


ブックマーク応援のほどよろしくお願いいたします。

仕事休みの間は頻繁に投稿してみようと思います。

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