3.傭兵団
あくまで参考です。
これから変わるかもしれませんが
ヴェルディア帝国 帝都アルベリアの地図になります。
参考にどうぞ!
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カイが傭兵団といった瞬間、メルの魔力が高まるのが見えた。
「メル。落ち着いて……」
「アルス。傭兵団って言ったよ……あの人達と同じことをしようとしているってこと?」
魔力は気持ちに左右される。メルはきっとサリエラの言葉を思い出しているのだろう。サリエラが言っていたことを全て理解しているとは思えない。
しかし、メルにとって傭兵団という言葉は――
家族との幸せを引き裂いた、憎むべき言葉だ。
「メル。俺たちを襲ってきた奴らは悪い奴だ。蒼炎傭兵団ってサリエラは言ってた」
「……! じゃあ!」
メルがさらに言葉を続けようとした瞬間、僕は慌ててカイへ声を張った。
「カイ! お前たちの傭兵団は人を楽しそうに殺そうとする、そんな傭兵団を作るつもりじゃないんだろう!」
「ふ、ふざけんな! そんな連中と一緒にするな!」
レオが急に立ち上がり、怒気を混ぜた声で言葉を放つ。よく見ると、周りの子供たちも同じように立ち上がり怒りを示していた。
「俺たちは……俺たちみたいな奴らを救ってやりたいんだ。理不尽に捨てられて、売られたり殺されたりするのはもう嫌なんだ」
カイは、周りの子供たちに一旦『落ち着けおまえら』と言葉をかけてからそう言った。
やっぱりな。そんな事をするような奴には見えないし、正義感も強そうだ。
僕は一度メルに向き直ると、メルの両手を少し握った。
「メル。お父さんとお母さんをいじめた奴らとは違うんだ。サリエラを傷つけた連中とも違う。あいつらを――悪い傭兵をやっつける傭兵団を作るんだって」
「あいつらをやっつけるの? それなら……私もその傭兵団にはいる!」
メルはまだ6歳だ。他の6歳よりも頭はいいとは言え、感情的になってしまうのは当たり前だ。むしろ、この年としては聞き分けが凄くいい。
前世の俺なんて、この年の頃は何してたか覚えてすらいない。
「アルス。お前言葉までうまいな。大人が子供を騙すときみたいだったぜ」
「うれしくない!」
カイが笑いながら僕に言ってくるが全然うれしくない。せめて親が子供を諭すみたい……ってそうか。こいつらに親は――。
少し憐みの目を向けてしまう。
「な、なんだよその目……。気持ち悪いぞお前」
レオが僕のことを見てから引き気味に答える。前言撤回だ。
改めてアジトの中での仕事を見ていると、入口では年長の子が周囲を警戒し、別の子は散らかった道具を手際よく並べていた。
「詳しくは、一度物資の補給をするときに教えるさ」
「補給ってどこでするんだ?」
僕は疑問に思って聞いた。この周りに、市場や物を買えるような場所があるのであれば、その辺は今後のためにも知っておきたい。
「ああ、城壁が崩れている場所はここだけじゃないんだ。もう一か所あってな。そっちは城壁の中にまで続いている。けど、そこは結構大きく壊れているからな、大人も通るし危険性も高い」
「なるほどな。ここは子供しか通れないから、隠れるのにはうってつけってことか」
「そういう事だ。けど、ボラムやガストはもうすぐ通れなくなるだろうな……。その前にどうにか傭兵団の目途をつけたい。そこで――」
「ん? なんで僕を見るんだ?」
カイが僕を見てニヤリと笑うと僕を指さして言った。
「何かいい案を考えるのがお前の役目だ!」
「え?」
本当に僕にやらせるつもりだったのか。よく5歳くらいの男の子にやらせる気になるな。その辺の寛大さというか何というか。度量が広いな。
「頼んだぞ」
カイ。お前もイケメンの部類だな。そうやって人を惹きつける笑顔が爽やかだよ。
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帝都アルベリア スラム街 黒蛇の帳 ゴーン
――川辺の近く。アルスたちが拾われた近くに黒蛇の手は集っていた。
「カシラ! この辺に血だまりがありますぜ」
「これは、結構新しい血だな。もし子供たちのだとしたら、これだけ血を流せば死んでるだろうな」
「ですがカシラ、血を引きずった跡がありやす」
確かに砂利の上に血で何か重いものを引きずった跡がある。そして、途中で点々としていて消えている。
「となると、自力で動いたか……」
ゴーンは草を足で払う。その場所にある複数の小さな血でできた足跡を見て、凶悪な笑みを浮かべた。
そして小さく言い放った。
「誰かが運んだ……ってことだ」
ゴーンの口元がゆっくりと吊り上がった。
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帝都アルベリア 平民区 母屋 レオン・テラバス
――同刻。平民区の暴動は一旦の落ち着きを見せた。
最終的に、第二外壁警備隊と帝国軍が出てきて、魔法で平民区にいた人もろとも攻撃を開始した。警備隊は、最後まで対処する為に出ていた。そしてその攻撃に巻き込まれてしまっていた。
だが、それよりもこっちの方がひでえな。特に――。
レオンはそう思いながら、その母屋の入り口にたどり着く。
ジャリ、と煤の残る地面を踏み締めながら、元母屋だったものに入る。
「酷いな」
「隊長、こちらへ……」
ケインの呼ぶ声がした。
「――ああ。今行く」
副隊長であるマルクと連絡が取れないことに気づいた時、既に第二外壁警備隊と帝国軍の攻撃は始まっていた。それでも、何とか平民区を守るために警備隊の面々は頑張っていた。
だからマルクのことは気づいていたが手が回らなった。
今思えば……くそ!どうしようもないか。そう心の中で毒づく。
「隊長……」
他の警備隊の面々も、悲痛な面持ちでその焼死体を見ていた。
「ヨルド……タイケン……」
そこに倒れている遺体は黒く焦げ、形を保っているのが奇跡のようだった。個人識別ができる胸当てと剣……その死体が二人のものであることを物語っていた。
そして――。
「マルク…」
そこには、黒く焦げた二つの遺体が、寄り添うように倒れていた。
マルクにはかわいいらしい奥さんがいたな。上にかぶさるように……そうか、マルク……奥さんを最後まで守ったのか。
「マルク……だな」
「はい隊長……。マルク副隊長です。ダイケンやヨルド同様焼けてしまっていて。ですが胸当てと剣は間違いなく」
「いや……間違いなくマルクだ。あいつは――左足の小指がねえんだ」
昔、警備隊で子供を貴族の馬車から逃がすとき足先をひかれた。その貴族はそのまま去っていったが。
「それと、この剣がマルク隊長の体と奥方の体を貫いていました。惨くてすぐに引き抜いてしまいましたが」
ケインがその剣だったものの刃先を見せてくる。
「これは?この紋章は――」
レオンはその言葉を飲み込んだ。周りで誰が聞いているか分からないためだ。
マルク、お前は……一体何に巻き込まれたんだ?なんで、この大公家に狙われるんだ。
そこに彫り込まれていたのは――。
元王家に連なる大公家の象徴のような冠の紋章。
瞳に翼が生えたような絵が中央に描かれている。
そう――
この国では知らない人はいない家。
アークレイン大公家の紋章が描かれていた。
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帝都アルベリア スラム街 灰月の手 マーガレット
――場面は再度スラム街に変わる。
スラム街のアルベリア川方面は灰月の手の本拠地がある。
灰月の手は十年前に代替わりした。今の長は、兄貴二人を押しのけて座についた女だ。
「お嬢。ゴーンの奴が何かかぎつけています」
「もうお嬢呼びはやめな! って言っても聞かねえかおまえは」
「へい」
メイズは昔っからお嬢呼びだ。
こいつくらいだぜ。このわたしを【お嬢】なんていまだに呼んでいるのは。
「それでお嬢。どうしますか」
「あー、はいはい。わかってるよ。メイズてめえがいけ。若い衆を30人くらい連れていけ。そのあとわたしも合流する」
「へい。わかりました」
メイズと呼ばれた男。2ルメドほどある巨体を小さくして扉から出る姿は滑稽だ。
「ゴーンの野郎、もはやなりふり構わずだな。うちのシマまで荒らしにくるたあ。焦っていやがるな」
引き出しからパイプを取り出し、ハーブを選んで魔法で火をつける。少しだけ口に含みパイプを離してから、煙だけを漂わせる。
「だが、うちも依頼はしっかりとやる主義なんでね。報酬をもらった以上、簡単に渡す気はないよ」
窓の外を眺める女頭の手元には――。
魔金貨が2枚煌めいていた。
メルちゃんと単位のメルが混じるので…長さの単位を変更します。メル→ルムド。
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