2.黒蛇の帳と灰月の手
文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。
結局、俺たちはカイについて行った。
スラムのことは何も分からない。川沿いを歩くと、風に乗って腐った魚のにおいがした。城壁は半ば崩れ、穴が口を開けている。
「ここが俺たちのアジトだ」
先程までいた場所が、川辺とスラム街のちょうど入り口だったらしい。
スラムは西門と南門の間に広がっている。南門は湾岸区の荷下ろし場で、サリエラと別れた川も近い。そして、この川は【北門ノルデ門】まで続き、軍事区へと流れている。
「少しここで待っていろ…中にいる仲間に連絡してくる」
先ほどまで俺たちを背負ってくれていた二人を残し、カイたちは中へ入っていった。ここまで警戒しっぱなしだった。少し今のうちに現状を整理しよう。
まず、サリエラはあの川でどこに行こうとしていたか。
アルベリア川は北へ流れている。北へ行けばノルデ門、軍事区だ。元騎士団なら、知り合いに保護を求めるはずだ――そう考えると、辻褄が合う。
サリエラは軍事区に頼れる相手がいたのだろう。もし、俺たちが次に目指すとしたら軍事区だろうが、誰に庇護を求めればいい。
待てよ……。
サリエラも最後に誰かのところへ行け、とは言わなかった。
少し、魔力を多めに頭に流していく。まるで、今まで起きたことを勝手に整えてくれるみたいだ。
「なあー。俺ボラムっていうんだー」
急に体の大きな男の子が話しかけてきた。思考をいったんやめ、体をそちらに向ける。
「あ、ああ、僕はアルスっていう」
「私は……メル」
メルはまだ警戒をしている。
「そっかーアルスとメルかー。いい名前だなー」
ボラムだったか、この子と話していると少し空気が和らぐ。これは天性のものだな。人によってはイライラしてくるかもしれないが。
そして、後ろでそっぽを向いている、俺より少し背の高いくらいの細身の男の子にも声をかける。
「レオも挨拶しなきゃダメだよー。メルが言ってただろー」
「は? お前そいつらのこと信用してんのか? お人よしすぎんだろ。俺はまだこいつ等のこと信用はしていねぇ」
レオ。こいつの反応はもっともだ。普通だったらそう簡単に信用はしないだろう。
「レオでいいの? さっきは怒っちゃってごめんなさい。背負ってくれてありがとう」
メルは少しほほ笑みながらレオにお礼を言った。メルはいい子だ。しかしその微笑みは犯罪的だ。
……メル、その笑顔は危険だ。レオが固まってる。レオは顔を真っ赤にしているし、ボラムもそういうのに興味なさそうなのに照れていた。
「うおっほん! うちのメルの相手は私の許しが必要ですよ!」
「な! バカ! ちげえよ! 誰がこんな気の強い女……」
「いやいやー」
レオとボラムは、動揺してるのか首を大きく振った。
「??」
メルは分かってなさそうだ。
「お前ら…もう仲良くなったのか……」
丁度その時カイが戻ってきた。後ろに女の子が1人、男の子が……3人か。一人髪の毛が長くて女の子かと思ったが、多分男だろう。
アジトは城壁の一部が崩れている場所の、小さい穴の中のようだ。
そこに僕たちが入る前に、手で止まれの合図を出された。
「ひとまずこいつらに話を通した。アジトの中で待ってるか聞いたんだが、顔を見たいって言うから連れてきた。罠がいっぱいだからな。慣れないうちは変なところに触るなよ」
カイが説明をしてくれる。
なるほど賢いな。この壁の入り口、大の大人じゃ入るのは難しい。
奥へ進んでいくと少し広い空間にでる。元々は城壁の二重構造の箇所だったんだろう。
元の通路は塞がれている。
だが、兵士が使っていた古い武具や、朽ちた鎧の一部が残されている。
「さて、改めて自己紹介させてくれ――」
自己紹介で紹介された子供たちは全部で七人だった。
まずリーダーのカイ。黒髪に銀が混じったような髪色で、薄い青の瞳をしている。年は十一か十二くらいだろうか。頭の回転が速く、仲間からの信頼も厚い。
副リーダーのガストは、灰色の髪に青緑の瞳をした大柄の少年だ。寡黙で頼りになる兄貴分で、年はカイより上らしい。
俺たちを背負ってきてくれた男の子はレオ。赤茶髪に琥珀色の瞳の十歳。気が強いが根は優しい。そのレオといつも一緒にいるのがボラム。黒褐色の髪に灰青色の瞳の九歳で、体が大きく力も強いが、性格はとても穏やかだ。
唯一の女の子、エルナは赤髪を結んだ十歳。黄緑の瞳で猫のような雰囲気を持つ。なぜかメルをじっと見ていた。
双子のフィンとノエルは八歳で、灰茶髪に灰色の瞳。フィンは活発、ノエルは静かで髪が長いせいで女の子に見える。
そして驚いたことに、全員が魔力持ち――俺よりも多い。
「今いるメンバーはざっとこんな感じだ。そこにお前ら2人。だがなメル。お前、金髪の髪にその青色の瞳。中位クラスの魔力持ちだな?貴族に近しい平民だったのか?」
カイがメルの魔力がある事に気づいている。
薄々感じてはいたが、髪の色と瞳の色はこの世界での魔力に関係がありそうだな。
気になったのでカイに問いかける。
「やっぱり髪の色とか瞳の色で分かるのか?」
「なんだ知らなかったのか?参考程度だが、髪や瞳の色には魔力の強さがある程度出る。金髪や銀髪、それに鮮やかな宝石色の瞳は、魔力が高いことが多い。そしてーー」
一旦言葉を区切り、カイはメルの方を見た。
「メルお前は中位クラスだ。しかも、瞳の色も青い。青い瞳はこの国じゃ至高の色だ。初代皇帝は圧倒的な魔力を持っていたそうだ。その皇帝は、純白に近い白髪にサファイアのような瞳だったらしいからな」
「そうだったのか。じゃぁ、俺は?」
「……アルスは凡位だろうな。まぁ、兄弟でそこまで違いが出るのも珍しいが」
カイが少し哀れんだ瞳を向ける。
いや別に悲しくはないから!そこまで気にしていないし。メルが、俺より多い魔力と知った時、結構凹んだことを思い出した。
「ま、まあ、そこまで気にすんな。あくまで参考だ。ただ、メルはあまり外に出ない方が良いかもな。髪を染める染料があるんだが、最近は滅多に出回らないからな。それまではすまんが、アジトで待機していた方がいい」
カイ、いいよ気にしてないから……。それよりもメルはしばらくこの中で待機か。
とは言っても僕も出れないから一緒か。
「あれ?その点で言うと…皆凡位はあるのか?髪の色が黒とかじゃなきゃある程度魔力持ちだってことだろう?」
「ああ、それなりにな、低位~中位くらいありそうだが……」
魔力持ち、それも低位~中位が7人……意図的に集めたのか。
「そうだアルス、集めてるんだよ魔力持ちを…」
まるで心を読んだかのように、カイが言葉を発した。
「スラムで一生こんな風に生きるなんて御免だ。俺たちには魔力がある。だったら、それを使って稼ぐ。俺は、俺たちは……いつか傭兵団を作る」
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帝都外壁外 スラム街 盗賊の溜まり場近郊 ゴーン
闇の中、ゴーンは血の跡のついた男を睨みつけた。怒りが冷たく胸を締め付ける。
「おい! 居たか!?」
「カシラ! いや…それが…ブフッ」
カシラと呼んだ盗賊は再び顔面を殴られた。
「チッ! 何で見つからねぇ! ガキ2人! しかも、片方は金髪なんだからすぐ見つかるだろう!」
「そっ…それが! 川沿いはくまなく探してるんですが……」
ゴーンはその殴られた男を睨みつけた。
「絶対に見つけろ! 何としてでも灰月の手よりも早く!」
その時、遠くから別の盗賊の声がした。
「カシラー! きいてくだせぇ!」
「あー? 何だ見つかったのか!?」
「いや…ブッ!」
「てめぇ! 殺されてぇのか!」
その男は、顔面から鼻血を流したまま言葉を続けた。
「ぅぅ…。それが、灰月の手の奴を一人締め上げたら……金髪の女の子らしき奴がカイの所に行ったって…」
「カイだぁ…? アイツ…またコソコソと…!!」
ゴーンにとってカイは鼠のような奴だった。
美味しいところを少しだけ齧っていくガキ…。
「カイ…今回は容赦しねぇぞ! おい! てめぇら! 探しに出てる奴を呼べ! カイを探させろ!」
「「へ、へい!」」
ゴーンは唇を引き結び、大声で命じた
「カイを見つけたら殺さずに捕えろ! 拷問してでも良い! 金髪の女のガキの場所を吐かせろ! 必ずだ!」
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