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1.スラム街の子供達

文章がおかしい、誤字脱字等ありましたら申し訳ございません。

 目の前に現れた男の子は、俺よりも背丈は大きい。前世なら小学校五~六年生くらいだろう。その後ろにいる子たちも同じくらいだ。


 川風が冷たく、霧に濡れた草の匂いが鼻を刺した。

 足元の泥は乾ききらず、子供たちの服の縫い目には土と潮の匂いが染みついている。


「カイ!」


「……へへ、戻ったぜ」


 大柄な子は嬉しそうだが、小柄な方は気まずそうに頭をかいている。


「レオ。ボラム。心配したんだぞ……朝起きたらいなくなりやがって、外で攫われたのかと思ったぞ。

 エルナ!ガストとフィンに伝えてくれ!まだ拠点で準備してるだろう!」


「分かったわ!」


 赤い髪を一本結びにした女の子が、軽やかに走っていく。


「それで?お前たちは誰なんだ?スラムのやつじゃねぇな?」


 ちょうど背中から下ろされたところで、カイと呼ばれている男の子から声をかけてきた。


「僕たちは……」


「人に名前を聞く前に、自分から名乗らなきゃダメなんだよ!」


 一瞬、空気が止まった。


「……俺はカイだ」


 目の前の男の子が名乗る。そこはちゃんと名乗るのか、と少し関心してしまった。


「私はメル。こっちはアルスだよ」


「僕はアルスだ。メル、少し目の前の子とお友たちになる為にお話ししてもいいかな?」


 メルは今、僕を守る為に頑張ってくれている。

 きっと、サリエラの言葉を思い出してくれてるのだろう。けど、メルはまだ幼すぎる。僕が言えたことではないけれども。

 だからこそ、必(・)ず(・)守らなきゃいけない。


「……うん。いいよ」


「ありがとう。メル」


 メルは本当にいい子だ。ただ、僕のことを守ろうと必死なだけだ。今も僕の前に立って守ろうとしてくれてる。


「お前と、お友だちになる気はねえけど」


 カイがぼそっとつぶやいた。


「うるさい。それで、お前たちは誰なんだ」


「ふっ……。先に自分から話さないとダメなんだろ?」


 癇に障る。こういうタイプとは、きっと相性が悪い。


「僕たちは、平民区から来た。今は事情があって戻れない」

 

 コイツら――カイたちが、敵か味方かハッキリしない内はぼかして話すしかないな。


「……それで? どうするつもりだ?」


「何?」


「俺たちはお前たちに危害は加えねぇ。けど、助けもしねぇぞ」


 カイたちは完全にスラムの子供。俺たちはどう見ても浮いている。

 何せ衣服の質が違いすぎるし、いくら一度川で汚れたからといっても生まれが良すぎる。


 もう一度外壁の中に行くのは論外。殺してくださいって言ってるようなもんだ。そうなると――


 頭に魔力を流すと、思考が妙に冴える。身体強化の応用だと自分では思っている。


 サリエラたちと日々生活していた時にはほとんど使わなかったが、今朝の事件の時はフル活用した。

 頭部に魔力を集中させると、妙に思考が冴える。身体強化の応用だと思っているが、他の人間からすれば中途半端な使い方だろう。


 よし。ここまでの話から最適解は――。


「カイ、でいいか」


「ああ。仲間たちからもカイで呼ばれているからな。構わない」


「なら、カイ。俺たちの服を買い取らないか?」


 カイはニヤリと笑った。


「いいな。お前。その年でそこまで考えたのかよ。いいぜ。買い取ってやる」


「いくらで?」


「そうだな……2人分の服で銅貨3枚だ」


 この世界では、平民ならパン一個が鉄貨二枚。

 鉄貨十枚で銅貨一枚。

 つまり銅貨三枚はパン十五個分。

 

 中古の服にしては高い。むしろカイたちの利益が少なすぎる。


「何が目的だ?」


 カイはアルスをじっと見て、ふっと笑った。


「あっははは! お前高く買い取ってることに気づいたのか!

 それにこちらの狙いも! お前凄いな! 何歳だ!?」


「……5歳だ」


「いいぞ! お前は天才だ! その胆力……気に入った!」


 目つきが変わった。値段よりも、僕の落ち着きに興味を持ったように見える。

『こいつは使える』――そんな空気が、笑いに混じっていた。

 そして僕を指差し、言い放つ。


「お前が欲しい!」


「……?」


「え?」


 最後の言葉はメルだろう。


「行く当てがないなら俺の所に来い。そこの娘も一緒にな」



*************************************

帝都外壁外 スラム街 盗賊の溜まり場 ゴーン


 ――同時刻、ゴーンは黒いフードの男と相対していた。


「ほぉ。それで幾らまで出せるって?」


「娘の方は真金貨一枚だ。もう1人のガキの方は銀貨50枚だ」


 声は低いが若い。仮面をつけているが口元だけを覆い、深紅の瞳が露出している。

 真金貨一枚――この街では銀貨何百枚にも相当する額だ。


「本当なのか! 魔金貨一枚って相当だな……逆にもう一人は殺さなくても良さそうだな? どうでも良いのか?」


「ふんっ。詮索はするな。灰色の髪に黒い瞳――凡位のゴミだ。最悪殺さなくても良い」


 いけすかねぇ。貴族はいつもこうだ。良くこのアジトに来てそのセリフが吐けるぜ。


 ゴーンの内心はともかく、このアジトに凡位なんて山程いる。ゴーン本人だって、栗色の髪に黒の瞳だ。これでも凡位の中では魔力が高い方だ。


 魔力階位ってのは髪と瞳の色で大体わかる。この街じゃ絶対の指標だ。


 生まれ持った物。覆らない物。だから階級社会が成立している。

 だからこそゴーンは、このフードの男の服装・言葉使い・瞳の色を見て貴族だと思っている。貴族は、権威の象徴である瞳は隠さないからだ。


「まぁ、わかった……。俺たち黒蛇(こくだ)の帳に任せてくれれば……」


「いや、お前たちだけの所じゃない。灰月(かいげつ)の手にも頼んでいる」


「なっ! どういう事だ!」


 灰月の手――スラム街の裏組織で、俺たち黒蛇の帳と争ってる組織だ。


 今も抗争は尽きないし、先月も小競り合いがあってこちらが負けて稼(・)ぎ(・)を失ったばかりだ。


「失敗は許されない話だ。お前たちの抗争など、どうでも良い。依頼を成功させた暁には、金も倍にしてやる。それで、勢力でも拡大すれば良いだろう」


「チッ! 分かった……」


 いけすかねぇ。俺たちを、そこら辺の虫か何かだと思ってやがる。だが、悪くはない話だ。


「まずは、その娘の特徴を教えてくれ。流石に何も分からなければ、何も探せねぇ」


「分かっている。すぐ見つけられるだろう。5歳くらいの男女の子供2人」


 フードの男は依頼書を雑に放り投げた。紙が床に落ちる音が、薄暗い部屋に小さく響く。皆が一瞬息を呑んだ。


「男のガキはどうでもいい。女の方――金髪に青い瞳のメル。必ず殺して、死体を持って来い」


ブックマーク応援のほどよろしくお願いいたします。

仕事休みの間は頻繁に投稿してみようと思います。

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