04 竜も人間も同じように殴ればいいじゃないかと思うのは私だけだろうか
一部の地域では、竜を殴るなんて恐れ多い、という人間がいるらしい。
ロンバルトの亡き祖父と祖母の二人が、何十年も前に生活していたという、辺境の村の人間の主張がこうだ。
(ちなみにロンバルトの祖父と祖母は、昔竜化した幼いロンバルトに踏みつぶされて亡くなっている。屋敷のどこかでその事故が起きたため、ロンバルトは家の一区画には足を踏み入れる事ができないようだ)
私は竜も人も根本的な部分は同じなのではないかと思っているし、人様に迷惑をかけるなら竜も人も等しく殴って叱るべきだと考えている。
だから、彼らの考えには同意できないのだが。それだけでは話が終わらない。
私達の関係を聞きつけた彼等が、わざわざ抗議しにきたらしい。
竜愛の会とかいう名前の、竜の仮面をかぶった連中だ。
会の連中は何度も、同じようなことを何度も言ってくるから、対応すると眠くなってしまったな。
竜を殴るなとか、罰当たりがどうとか。そればかりだ。
イレイザーはこの手の連中はまともに相手をしない方がいいと呆れていたな。
長い人生の中で、呆れるほど見てきたのだろう。
話が通じたためしがほとんどないと言った。
そんなこちらのやりとりを知らず、会の連中は主張しまくる。
こちらのスケジュールもおかまいなしに、屋敷におしかけまくる。
さすがに迷惑なので、ちょっとキレそうになった。
竜を殴るなと言われても、竜化した旦那様を放っておいたら、犠牲者が出てしまうし、ロンバルトだって私にとめてもらう事を望んでいるはずだから、頷けない。
困ったものだし、さっさと拳で解決したかったが、ロンバルトが首をふるので、今までのように解決するわけにはいかず。
状況は膠着してしまう。
そこにさらに、義理の両親たちも来訪してきたから、状況はかなり面倒な事に。
物理で解決できない問題が二つもあると、性格がかなりさっぱりしていると自任している私でも、さすがに参ってしまうな。
だが、力を振るわない相手に私も拳を振るわない姿勢を見せたことで、義理の両親からの好感度はアップしたようだ。
少しだけ仲が良くなったので、その点は幸いだっただろう。
とはいっても、そこで話が終わるわけではない。
村からきた竜愛の会の連中は、まだまだ居座りつづけた。
こっそり屋敷の裏手ーー(ロンバルトのトラウマがある区画だ)から外出しようとしたら、どこからともなくやってきて囲まれてしまった。
長々と同じ話を繰り返される中、眠くなった私がぼうっとしていると、一人がキレたらしい。誰かが投げた石がたまたま油断していた私の額に直撃し、おでこをぱっくりと割ってしまった。
直前にイレイザーが忠告してくれたのに、反応が遅れてしまったんだ。
私は別に特に問題には思わなかったのだが、騒ぎを聞きつけてかけつけた旦那様はそうではなかった。
真っ青な顔で無理をしながらやってきた彼は、額から大粒の汗を流していた。
だが、そんな自分の事など気にも留めなかった。
額から血を流す私を見たロンバルドが激怒。
竜化して暴れまわった。
ロンバルトをおさえながら、会の連中を守るのはさすがに至難の業だったな。
私は基本相手を倒す事しか考えてこなかったんだ。
イレイザーがどこに何人いて、どちらの方面に腰をぬかした人間がいると教えてくれなかったら、やばかっただろう。
最終的には、巨大棍棒に変身したイレイザーで、竜になったロンバルトを殴り倒して、何とかなったが。
しかし、今回は私が拳をふるってもなかなか元に戻らないから苦労したな。
通常の三倍は強かったぞ、旦那様。
最終的には地面でもがいている竜化ロンバルドのほっぺにちゅーする事によって、人間に戻ってもらった。
その時の暴れっぷりを見てか、竜愛の会の連中はすごすご帰っていった。
うむ、無茶な事を言い出す人間には、手っ取り早く現実を見せるのが一番だな。
全てが終わった後、拳を使わずに解決した事を偉いと旦那に褒められた。
ロンバルトはいつも気弱な性格だが、私よりは人間性がちょっと上だ。
今まで拳で物事を解決してきた私の成長を嬉しがっているのだろう。
私は誇らしい気持ちにもなったが、年下扱いされたのが少し不満だった。
だからトラウマを克服したロンバルトの頭を撫でて褒め返してやった。
真っ赤になった旦那様が再び竜になりかけてちょっと大変だった。
イレイザーがごちそうさまといっていたが、私の知らない間に何か食っていたのだろうか。




