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モブが世界を救うなら  作者: Rester
第一章
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疑心暗鬼度

「だから、この依頼は止めた方がいいよ。」


私はそう少年に忠告する。

こんな依頼を受けても、金はもらえないし命は失くすし良いことなんて一つもない。

だから私はそういったのだが…


「そんなの嘘です!」


まあ、そうなるよね。

普通SKの監督なら嘘なんてつかないし、死にそうな役も補償がついてるから命令通りにしてれば危ないことなんてないはずなんだし。

むしろ疑うのは同じ人造人間である私達の方だろう。

例えば、自分の役割がおいしい仕事だと勘づいた先輩方が後輩から上手いこと仕事を奪い取ろうとしている、とかね。


「SKの人が嘘をつくことなんてありませんし…死ぬこともないと言っていました。そ、それにこの仕事は僕にしかできない仕事だって!なのでお二人が志願しても無駄だと思いますよ…!」


ドンピシャだ。


「ねえ、僕は君の仕事欲しいなんて言ってないんだけど…。」


2号がげんなりした表情で言う。

2号にとっては、魔物の出ない仕事は苦行だ。


「あ、でも4号は欲しがるかも…?最近お金ないって言ってたし。」

「事をややこしくしないで。」


ほら、そんなこと言うから向こうの疑心暗鬼度が高まっちゃったじゃん!


「僕はこの仕事辞めませんから。」


ぎゅっと身を固くする彼に、私もげんなりしたい。

まあ、確かに気持ちは分かる。

この世界に来たばかりで、中々大きな役目をやらせてもらえない。やるのは物語にすらでてこない、賑やかしでもない役ばかり。

例えば、勇者が歩く大通りのシーンで、街の端っこの隅にある小さな広場で草をむしっているような役とかね。

…なんでこんな役まであるんだろう。私も正直不思議だ。


で、そんな役ばっかりが回される中、突然ある役に抜擢される。

勇者に出会い、知りあう役。

物語の主人公と直接関われるのだから、重要な役割だ。

そりゃあ喜ぶよね。絶対放したくない。


こういう心の隙をついてくるから、ホントたち悪い奴らだよね。そいつらは、SKの人間じゃないし。

SKはきちんとした人たちだけど、こういう犠牲者役を回してくる奴はこっそりこの世界に入ってきた不法侵入者だ。ならず者といってもいい。


SKも不法侵入されないように色々やってるみたいだけど、主に強化しているのはSKの機密情報が入っているところぐらいらしいし。


Xの人からすれば、こちらの人造人間が多少不幸な死に方をしたところで、「作品を作っているのとおなじじゃないの?」みたいな感覚だろう。

補償の有無について考えたことはきっとないだろうし。

対岸の火事、というやつだ。他人事ともいう。


むしろ信用すべきは、人間じゃなくてモブのほうだよ…って言いたいけど、信用度がガタ落ちの今何を言っても無駄だろう。


と、いうことで。


「私達は今回あなたと一緒に小世界を回ることになっているの。それは知っている?」

「…。」


彼は無言で頷いた。


「あなたの受けた役でもらった報酬はいらない。だから私達は私達の仕事を果たす。忠告はしたけど、私達はあなたの後をこっそりついていくだけだから。」


単純明快。彼を悪しき手から守りながら、ついでに1号を探す!

モブは勇者と違って経験が大切なのだ。まだ新人とはいえ、多少役をこなしてきた彼を失うのは損害になる。

まあ同じモブとして同情もあるし。


「2号もそれでいい?」

「いいよー。」


適当に答える2号。

私は少年に言った。


「じゃ、一緒に行きましょう。」


少年が何か言おうとしてたけど、無視。

こっちも仕事なんです。

君と世界を救うっていう面倒なしごとです。




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