暇だから授業する
私と2号はこの世界を救うために、アドルフ(モブ少年)は怪しいバイトを受けるために、それぞれ3番世界に行くことになった。
正直アドルフがお荷物なのは確定だし、(嫌だけど)2号と私だけの方が1号を早く見つけられると思う。
でもアドルフが危ないバイトを受けている&アドルフの面倒を見てくれとSKのアランに言われてしまったので断れないこの状況。
更に言えば、親切な忠告をしたせいで少年には不信感を持たれてしまっている。
…めんどくさいな、これ。
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3番世界のゲートに向かうと、そこに人はいなかった。
「あれ?門番さん、いないね。」
ゲート前にいる受付…通称門番の姿を探してキョロキョロする2号。
「じゃあ、早く通っちゃいましょうよ。」
「待って。」
さっさとゲートを潜り抜けようとするアドルフの首根っこを押さえる。
「門番がいないのにゲートを通っちゃダメ。」
「どうしてですか?」
「そういう決まりなの。面倒だけど。」
小世界に入るにはちゃんと許可を得ないといけない。
アドルフは首を傾げた。
「でもSKの人は大丈夫だって言ってましたよ。むしろ主人公と関わるような大役だってばれたら他のモブに襲われるかもしれないから、門番に見つからないようにこっそり入って来いって。」
「それは偽の情報。アドルフが受ける依頼は正式の依頼じゃないって証拠だよ。門番は担当してる小世界の依頼は全部知っているから、うっかり門番にバレると依頼を受けられなくなるってわけ。」
「門番は仕事が適当だから信用しちゃダメって…。」
なるほど。そう言って新人のモブをだますのか。
確かに、あらかじめそういうものだと言っておけば、純真な新人モブはすぐひっかかる。
「ま、今回はちゃんと門番を待つことにしたら?私と2号は絶対に入れるから、アドルフは付き添いってことにすればいいよ。それなら安心でしょ?」
「え、あ、はい…。」
私は門番を待つために座る。アドルフも少し迷った後隣に座った。
うーん。ゲートの規則とかも知らなかったのか。
生まれて1年経ってないとか言ってたけど、もしかして半年も経ってないかも。
「ねえ、この世界についてどのくらい知ってる?」
門番を待つ暇つぶしに私はアドルフに尋ねた。
「えっと…小世界がたくさん、と大世界が一つあるんですよね?」
「この場所はどっちなのかは…」
「分かりますよ。大世界ですよね。」
「当たり。じゃあ私達がいるのは、大世界の何という場所でしょう?」
「えっと…あ、"ゲート地区"!!」
「そう、」
今までボヤーっとゲートを見ていた2号がこちらに興味を示した。
来ないでほしい。ずっとゲート見てればいいのに。
「ゲート地区は文字通り、ゲートがたくさん並んでいる。依頼を受けたモブは、みんなこのゲートを通って小世界に向かうの。だからここは大世界の中でも外側にある。家で言うなら玄関なんだよね。すっごい細長い玄関。…だからうっかり違う番号のゲートに着いちゃうと、戻るのが大変なんだよね…。」
「それ僕もやりました!集合場所の番号間違えて、気が付いたときには真反対の場所に着いちゃって!!」
「あの時の絶望感はすごいよね。大世界広いし、交通手段がないと…。」
「自転車とかバイクのことですよね。」
「電車ぐらい通してくれてもいいと思うんだけどね。いくら大世界が建物の中だからって言っても。」
「え!?ここって建物なんですか!?」
アドルフは驚いた顔をする。
「あれ、知らなかった?大世界はSKが管理する建物なんだよ。小世界を管理するための。」
「え、でも太陽とかありますよね?ゲート地区には照明しかありませんけど…。」
「あー、"居住区"の?あれは人工的なものだよ。ほら、SKの人って人間だから、太陽光がないと体壊しちゃうんだよ。モブとSKの人が住む地域は分かれてるけど、居住区は一律人口太陽が照らすって決まりになってるんだ。」
「あれ…?その言い方だと、僕たちは太陽がなくても平気みたいに聞こえますけど。」
「平気だよ。だって私達、人間じゃないからね。」
「え…。」
絶句するアドルフに2号が吹き出す。
「え、もしかしてSKの人たちと僕らって同じだと思ってた?」
「だって見た目とか、全部一緒じゃないですか!」
「そりゃそうだよ。僕たちは人間をモデルに作られた…言わば人造人間なんだから。じゃなきゃ魔法を使ったり怪物と戦ったりできないよ。Skの人間は、いっちばん弱いモブでも簡単に倒せるぐらい弱いんだからね?まあ鍛えてる人なら少しは違うんだろうけど、ここにきてる人間は戦う力なんて持ってないよ。魔法も使えないし。」
「えー…。」
「ついでに言っとくと、人間は私達みたいに"燃料"飲んだりしないから。」
「燃料って…これ、ですよね?」
アドルフはカバンから缶をとりだした。
一見すると缶コーヒーに見えなくもないが、中身は全く違う。
「そうそれ。私達はエネルギーとしてそれを取らないと生きてけないけど、SKの人は違う。ほら、嗜好品ってあるでしょ?オムライスとか、カレーとか。あれがSKの人たちの主食ね。ああいう"料理"が私達にとっての燃料ってわけ。」
「へえ…。嗜好品が燃料なんて、SKの人は贅沢ですね。」
私は納得して頷くアドルフに思わず笑いそうになった。




