29話 実戦練習
楽しんでいただければ幸いです
フラス先生とクラスの生徒たちは建物につくと、早速中へと入ったので、悟達も同様についていった。
中はアルテマの闘技場と同じような作りになっており、形だけ大きくしたような闘技場だ。
だが、中央の大きなアリーナとなる部分は、何もなく、砂が一面に広がっているだけだ。
そして、観客席に周りを囲まれており、戦う部分と観戦するための席を分断するようにバリアがはられていた。
「ここが、今日使うこととなる闘技場だ。
それでは早速、実戦練習をしたいと思うのだが、誰かしたい者はいるか?」
生徒たちは互いを見てお先どうぞと言いたげな表情をしていた。
確かに、相手の能力もわからない1番目に戦う者は不利になるだろう。
だが、そんな状況を壊す声が上がる。
「はい!」
フラスの質問に反応したのは先ほどの質問で当てられていたラキュースだった。
「ではラキュース君、誰と戦いたいか指名してくださいね。」
誰を指名するのかとクラスの注目がラキュースに集まる。
「それでは、美穂さんでお願いします。」
「え?わ、私?」
美穂は突然指名されたので戸惑っていた。自分が指名を受けるとは思わなかったのだろう。
「はいそうです。」
「別にいいわよ。でも、なんで私を指名したの?」
ラキュースは美穂の質問に困ったような表情をした。
「そ、その、1番弱そうだったからです。
シューラさんはこちらの学校でも有名なので、あまり相手をしたくないと思いました。
悟さんは最初見たときは実力がわからなかったんですが、シューラさんの自己紹介でシューラさんの師匠ということで絶対に相手をしてはダメと心に誓いました。
あと、アスタロトさんですが、なんというか弱そうに見えるんですが、実力を隠している気がしたんです。
これに関しては勘とかではなく確信に近いです。
以上のことを踏まえ、美穂さんを指名させてもらいました。」
「弱そうだったから……ね。
じゃあ、それが本当なのかこれから見せてあげる。」
美穂の言った言葉に反応してラキュースは緊張した。
もしかしたら、この4人はもう学生レベルではないのではないかと……。
「それでは美穂さんとラキュース君は闘技場の中央で向かい合うように離れて待機してください。
今回は私が、この実戦練習の監督をさせていただきます。」
フラスの言葉により、闘技場が一気に静かになる。
「それでは、試合開始!」
フラスの声とともに、両者は互いを警戒して、一定の距離をとりながら様子を見ている。
「弱そうに見えたんじゃなかったの?」
「弱そうに見えていても、一応警戒しておかないとと思いましたから。
それに、自分の慢心で負けたことに言い訳をするよりも本気で戦って負けた方が素直に負けを認められますし。」
ラキュースは自分の言っていることに気づいていないようだ。
いつの間にか、自分が負けた時の事しか考えていないという事実に。
「でも、美穂さんも僕と一緒で警戒してるじゃないですか。」
ラキュースにそう言われた美穂は残念そうな顔をしている。
「そう見えるのね。……私は警戒はしてるけどそれだけじゃないわ。
戦いにおいて、一番重要なのは相手の癖、能力、強さを見抜くことだと私は思っているの。だからそれを見極めようと観察してるのよ。」
美穂の言葉に素直にラキュースは驚いていた。
通常相当な実力があろうとも相手の癖を見抜くのは最低でも5回は戦わなくてはならないだろう。
しかもそれは感覚でわかるもので、自分から調べようとするものではなく脳が勝手に判断するものなのだ。
剣技がぶつかり合い苛烈な戦いの時、自分から調べようとするかというとしないと答えるだろう。本当は出来ないと答えるのが正解なのだ。
なぜなら、それは反射に等しいからだ。理解してから認識していては間に合わない。だから理解という手順を飛ばして認識をした瞬間に行動することで瞬時に動くことができる。
要するに、その行動に合わせて攻撃を認識することによって、カウンターを仕掛けたり、かわすことが容易になるのだ。
それを、一回戦うだけで見極めようとしているのだから驚くべきことである。
少なくともラキュースにはそれが出来ない。
「じゃあこちらから行かせてもらいます。長期戦になれば僕が不利なので速攻でけりをつけます。」
「……。」
美穂はラキュースの体の全てを舐めるように観察する。
それほどしなければ一回で相手の癖がわからないのだろう。
そして、ラキュースが美穂に向かって全力疾走して近付いていく。
「ソイルボール!」
ある程度の距離になると立ち止まり土でできた弾を美穂に向かって撃ちつける。
「真空波」
美穂は土の弾を空気を圧縮して斬撃のように飛ばすことによって綺麗に刻まれていく。
そして、そのままラキュースの元へと向かう。
「大地壁」
真空波は、ラキュースの元へと届く前にグラウンドウォールに阻まれてしまった。
だが、真空波の威力をグラウンドウォールの傷跡が示していた。
直接、真空波を受ければただでは済まないだろう。
「じゃあ次は私から行かせてもらうわ。複合魔法 濁流波」
「や、やばいっ。大地隆起。」
ラキュースは美穂の魔法を見て思わず自身が使える中で最高の盾となる魔法を使った。
美穂の魔法は二種類同時に唱えることによる複合魔法で、どちらも簡単な魔法を合わせただけの魔法であったが、使い方によっては上級魔法にも引けを取らないのでラキュースの判断は正解と言える。
「これを防ぐのね。なら、範囲縮小。」
「なっ! くそっ。」
だが、競り勝ったのは美穂だった。
水の中に細かな砂を混ぜることで貫通力を高めていた濁流波の範囲を狭めることでさらに貫通力を高めた。
そして貫通した濁流波をギリギリのところで避けたラキュースに隙ができる。
「これで終わりよ。空振波」
「くそぉおおおお。」
美穂はラキュースの隙を見て、背後に回り込むと、空気を圧縮させて打ち出す空振波をラキュースに撃ち込んで気絶させた。
「そこまで。勝者、椎名 美穂。」
フラスが美穂の勝利をクラスの生徒たちに知らせると口々にその勝利を褒め称えた。
「すごかったです。」
「最後の空振波って聞いたことのない魔法だったね。」
「そうね、もしかしてオリジナル魔法じゃないかしら。」
「オリジナル魔法だけならまだしも複合魔法まで披露されるなんて。
確か、濁流波だったっけ。あれはすごかったなー、あのラキュース君の(大地隆起)ヘビーグラウンドウォールを貫くなんて……。
多分あの魔法もオリジナル魔法だと思うし、美穂さんが大会に出てくれれば優勝確定ね。」
そして、ラキュースが気絶から復活すると美穂のところへと向かった。
「美穂さん戦ってくれてありがとう。
ところで、1つ聞きたいことがあるんだけどいいかな。」
「いいわよ。」
「美穂さん、……手加減、してたよね?」
「…………。」
ラキュースの質問に美穂は静かに首を縦に振る。
「やっぱりかー、だってあのタイミングで気絶させるだけの魔法なんておかしいからね。」
「気絶させるだけの魔法じゃないわよ。」
「え?」
「私が手加減をしたと言ったのは魔法の効果を下げただけのこと。
あの空振波はより空気を高圧で圧縮することにより体を貫けるし、貫けなくてもそれとともに発生する高周波の所為で相手の体の内部から壊すわ。
結局、苦しまなくて死ぬか、苦しんで死ぬかだけの違いよ。
それにあなたの癖も今の戦いでわかったしね。」
美穂から遠回しにあの時殺せたと言われたラキュースは腰を抜かして座り込んでしまった。
しかも癖を見る余裕すらあるのだからラキュースは美穂の実力に恐怖した。
「じゃあフラス先生、次の試合お願いします。」
「あ、あぁ、じゃあ次の試合をしたいんだけど誰かしたい者はいるか?」
フラスは内心、居ないと思っていた。あれほどの試合を見て挑める者が居る方がおかしいと思ったのだ。
多分だが、美穂たち4人に挑み勝つことのできるのはこの学院でも最上位の10人ぐらいなものだろうと思っていた時、1人の少女が声を上げた。
「はい…。」
「ランスさん、誰を指名しますか?」
ランスは自分の考えを振り払い、冷静に対応していく。
「もち……ろん、……悟さん。」
「やっぱり指名してくると思ってた。」
「じゃあ2人は闘技場の中央へ行って向かい合うように待機をしてくれ。」
2人は闘技場の中央でフラスの指示通りに向かい合って待機する。
「あなたの……実力を……見せて……。」
「それを引き出せる実力がランスにあるならな。まぁ、少しぐらいなら出してもいいが。」
「それでは、双方構え。
試合開始!」
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戦闘描写下手ですがご容赦を……。




