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28話 クラス


アステル学院に来てから1日が経った。


悟達は朝早くに起きて朝ご飯を食べ、制服に着替えてフラスの出迎えが来たので学院で学ぶこととなるクラスへと向かっている。


制服は、日本の一般的な高校生の制服と全く同じだった。

男子も女子もだ。

服の色は黒で何も変わらなかった。

クラスへと向かう前に生徒手帳も渡された。

ざっと目を通してみたが、学校の内容が現代と全然違っていた。

基本的なルールは一緒で、明確に違うのは生徒の代表である生徒会というのが無いことだった。

その代わり、風紀委員があって風紀を乱してないかチェックするらしい。

生徒会がないということはもちろん目安箱等もないわけで、美穂から生徒は困っていることとかはないのか?と聞くとフラスは生徒の対偶は強さに比例して変わると答えた。

もちろん上に行けば行くほど不自由がなくなり自由な行動ができる。

だが逆に下に行けば行くほど不自由になり自由な行動や優先順位などが後ろになる。

例でいえば、闘技場を使うと先に約束していた下位の生徒が闘技場を使う前に上位の生徒が闘技場を使うと後から約束をすれば上位の生徒の約束が優先され、上位の生徒が闘技場を使えるとかだ。下位の生徒にはそれを認める義務が生じる。

そのため、生徒会がないのだろう。

他にもいろいろあるらしいが今は置いておく。


とりあえずフラスが言ったことからわかるのはこの学院では強さが全てということだ。

今以上の環境の良さが欲しければ強くなれ、逆に今の環境に居続けたいのならその強さを保てそしてさらに上を目指せといった具合だ。


王族や貴族の家柄の子供も来ていることからそのことを認められてこの学院に自分の子供を来させていると思われる。

それほどこの学院は有名であり、数々の優秀な生徒を輩出してきたのだろう。


そんな話をしているうちに、悟達はクラスの前にたどり着いた。

悟達は、年齢が同じではない為学年が違うと思っていたが、理事長の配慮で全員同じ学年の同じクラスとなった。

そのことを聞いて、特に美穂が喜んでいた。

悟と同じクラスではないと思っていたのに、一緒のクラスで学べると聞いて飛び跳ねたりしていた。

とにかく、全員同じクラスなのはいいことだと思う。


「じゃあ、みんなはここで待っててくれ、今からショートホームルームなんだけど、その時間を君たちの紹介に使うからさ。

僕がどうぞって言ったら入ってね。わかった?」


フラスの言葉に悟達4人は頷いた。


そしてフラスが教室へと入り、しばらくしてフラスのどうぞという声が聞こえた。


教室の扉を開けると中から複数の視線を感じる。

緊張しながらも悟達はフラスの立っている教壇へとあがる。

悟達が一列に並んだらフラスから自己紹介をするように言われた。


「俺は、神崎 悟です。気軽に悟と呼んでもらえたら嬉しいです。

これからよろしくお願いします。」


悟が紹介した時点で複数の女の子の目が悟へと向けられる。悟はその視線を軽く流すと自己紹介を終えた。


「私は、椎名 美穂と言います。

まだまだわからないことがたくさんあるので教えてもらえたら嬉しいです。これからよろしくお願いします。」


そして、美穂が紹介した途端ほとんどの男子の視線が美穂へと向かう。

金髪で、整った顔立ちをしておりその目は、漆黒と比べても生ぬるいほどの闇色をしていて、言うまでもなく美少女なのだから注目を集めるのも当たり前というものだろう。


「私は、アスタロトと言います。よろしくお願いします。」


アスタロトの短めの自己紹介も男子の視線が集まった。

アスタロトの黒髪と燃えるような赤色の目の組み合わせが珍しいのだろう。

それと、制服とが妙にあっていて美少女というよりは美人に変わっていた。


「私はアレン・シューラと言います。多分お察しの通り、アルテマで王女の護衛を務めておりました。

しかし、師匠である悟と出会い、ここアステル学院に通うこととなりました。よろしくお願いします。」


美穂とアスタロトの2人の自己紹介もクラスの注目を集めたが、シューラが自己紹介をした瞬間にクラスがざわついた。

三大都市の1つであるアルテマの女王の護衛ということでシューラは有名なのだろう。

そして、その女王の護衛をしている者の師匠までここにいるのだからざわついたのは当然のことだと思う。

そして、悟とシューラへと好奇の視線が向けられる。

それとともに何人か、質問を早くさせろとフラスに目で訴えている生徒もいる。


4人の自己紹介が終わって、目の前にいる好奇心に駆られている生徒を見てフラスが口を開いた。


「それでは、クラスの自己紹介をしようか。では、担任である私からしたいと思います。

改めまして、私はここ、32クラスの担任を務めているフラス・シューベルトと言います。昔は冒険者をしていました。これからよろしくお願いします。」


フラスが自己紹介をしたのち、クラスの名前順にクラスのメンバーに自己紹介していくように指示をした。


「アイス・テントと言います。

得意な事は、人間観察です。これからよろしくお願いします。」


まず最初に紹介してくれたのは少年だった。

顔つきが可愛いので女子用の制服を着ていたら少女に見間違えてしまうほどの美少年だ。

アイスの茶色の髪の毛を後ろに束ねたらすごい美少女に早変わりするだろう。


だが、そんな少年が得意なことは人間観察なのが残念ポイントだろう。

何か能力と関係があるのだろうか。



そして、アイスに続いて続々と自己紹介をクラスにいる生徒たちがしていく。


そんな中、1人の窓際に座っていた少女は自分の自己紹介の番が来た時だけこちらを向いてそれ以外は興味がないとばかりに窓の外へと目を向けている。


その少女の名前は、ヤスル・ランス・リーシャンだ。ランスは水色の髪の毛を持つ少女でミステリアスな雰囲気を醸し出している。

もしかしたらこの教室の中で1番強いのはこの少女かもしれないとこの時悟は思った。

なぜならこの少女だけ、体から溢れ出す魔力が一定なのだ。まるで自分で操作しているかのように。


魔力とは、消費をすれば時間とともに回復する。

だが、消費をしていなければ魔力が体から溢れ出すのだ。

想像としては容器に水を一定量入れる。それにだんだんと水を入れていき最終的には溢れ出すような感じだ。

しかし、魔力の回復にもムラがあり漏れ出す魔力が増えたり減ったりすることが少なからずあるはずなのだ。

だから、魔力の操作をしている少女は自分の力を隠している可能性があった。

だが、逆に操作していることに気づかれれば実力を悟られる危険があると気づけなかった少女でもあるが。


そして、最後の1人の自己紹介が終わった。


「では皆さん、質問があると思うので質問タイムを取りたいと思います。

それと、今日は本来なら授業ですが、転入生の都合により明日行われる大会に転入生も出場するため、授業ではなく闘技場で実戦練習をしたいと思います。

なので、質問は3つにしてください。

それでは、どなたか転入生に質問はありませんか?」


フラスの問いかけにクラスの生徒たちは一斉に手を挙げる。

やはりこんな時でもランスは窓の外を向いたままだ。


「では、カルート君お願いします。」


「はい。では、シューラさんの自己紹介の時に言っていたと思うんですが、悟さんはシューラさんの師匠って本当ですか?」


最初の質問は、カルート・シーズという少年によってされた。

彼の質問は他の者たちも聞きたかったことのようでクラス内が先ほどとは違い一気に静かになり、こちらに注目を集める。


「違う。シューラが勝手に言ってるだけだ。」


「と、悟は言っていますが、本当は恥ずかしいからそう答えているのだと思います。私は彼のことを心の底から師匠と思っています。」


悟による否定に合わせるように、完全な付け足しによって、悟がシューラの師匠で、この場で言うのが恥ずかしいから否定したという雰囲気をシューラが作り出した。


「…………。」


悟による無言とじと目攻撃を華麗に避けてなぜそんな攻撃を受けているかを知らぬ存ぜぬで突き通すシューラ。


「そうなのか。」


「じゃ、じゃあ噂に聞くシューラさんよりも悟さんが強いってこと?」


「悟さんがシューラさんの師匠ってことはそうじゃねぇーのか。」


悟とシューラの受け答えにより生徒たちは納得したようなので、悟はこの場はこのまま突き通すことにした。


「じゃあ次の質」


「はい!」


フラスが言い終わる前に最前列にいた赤髪の少年が勢い良く手を上げて質問をしたいアピールを全力でした。


「そ、それでは、ラキュース・リリン君どうぞ。」


「じゃ、じゃあ、美穂さんとアスタロトさんとシューラさんはそ、その………、こ、こ、恋人とかはもういるんですか?」


思いがけない質問に、悟たち4人は呆気にとられる。

だが、クラスの男子たちはこの質問に耳を傾けていた。


「………、え?

こ、恋人? 今はいない……かな

?」


美穂の最後に悟の方を見た仕草により一部の男子から悲痛な声が聞こえてくる。


「別にいないわよ。」


アスタロトのあっさりとした回答に男子たちは歓喜をあげた。

そして女子たちに注意され再び静寂が戻ってくる。


「私は、今はいない。今は……な。」


シューラも美穂と同様に悟の方を最後に向いたため複数の男子から悲痛な声が聞こえた。


「はいはい静かに。次が最後の質問だからね。じゃあ質問したい人?」


フラスは興味がないのかさっさと次の質問へと移った。

フラスの声とともに生徒たちが最初と同様に手を挙げる。

だが、その中からフラスが指名したのは手を上げてすらいなかった生徒だった。


「じゃあランス、最後の質問をお願いするぞ。」


だが、それを聞いても反論する生徒は1人もいなかった。ランスはこの時だけ、質問をさせろと目でフラスに訴えていたのだから反論する理由がないのだろう。


「………、悟さん……美穂さん……アスタロトさん……そして、…シューラさんの中で……1番強いのは………誰?」


「「「悟!」」」


「え?俺?」


ランスの質問に悟以外の3人が同時に答える。


「……その回答に……理由を求める。……悟さんからは……一切の魔力を……感じない。

だから……、この中で……1番弱いと推定……される……。普通……魔力が漏れていない……ということは……魔力がない……ということ。……だから、私は……、シューラさんが……1番強いと……思う。」


ランスの質問に今度は悟が答える。


「お前、……バカだな。」


「なっ……、バ、バカじゃ……ない。」


「いいや、バカだ。なぜランスが魔力を調節して一定量ずつ排出しているのかは知らないが、それを実力を隠すためにしているのなら無駄なことだ。

むしろ、私は強いですよと宣伝してるようなものだしな。

だいたい、なんで自分だけがそれをできると思った?

俺もそれをしてるとは思わなかったのか?」


ランスは悟の言ったことに絶句していた。

ランス自身、魔力を調節しているのが誰にもばれていないと思っていたのだ。

自分のしてることを相手もしていると考えればバレるのは必然だった。

相手もしている場合を想定していればと、ランスは後悔した。

だが今回、悟にばれたことが問題なのではない。

なぜ悟から魔力が一切感知できないかが問題なのだ。


先ほども言った通り魔力はコップから溢れそうになるとその分だけコップから溢れ出す。

ランスがいい例で、魔力をコントロールすることによって一定に流れるようにすることはできる。


だが、悟の場合は、コップから魔力は溢れそうになっているが溢れそうになっても溢れることなくコップに魔力が注ぎ足されていくのだ。

これは、なぜ?としか言いようがない。

ありえないことだが、注ぎ足される瞬間にその分だけ容量が増えていくか、もともと無限に近い魔力を保有できるということだけが問題を解決できる。


「……でも、……それはありえない。もし……、魔力調節を……しているとしたら……あなたが……行っているのは、魔力調節だけじゃ……ない……はず。」


「まぁ、正解ではないけど、不正解でもないな。半分正解ってとこか。

だが、正解を教えてやるほど優しくはないからな。自分で正解を探すんだな。」


「そこまで……いうのなら……是が非でも……正解を……見つけて……見せる。」


「じゃあ、1つだけヒントをやる。たぶん本を探してもどこにも載っていない理論だと思うからな。だが、それだけに画期的だし、便利ではあるがな。」


「………。」


悟の言うヒントを逃すまいとランスはじっと悟に耳を傾けていた。


「ヒントは、今言った通り、本には載ってないと思う。何故なら自分で編み出したからな。」


「……編み出した……、魔法?」


「あぁ、そうだ。そこまでわかったらあと少しだ。」


「んー、よくわからない。とても高度な話をしているところ悪いけど、質問タイムを終了して、闘技場の方へ向かうよ。」


フラスの突然の言葉にもっと質問をさせろとブーイングが飛び交う。


「明日、勝ちたくないの?

……もし、勝てたら落ちこぼれと言われ続けている汚名も水に流れるかもしれないよ?」


フラスの言葉はクラスに浸透するように響く、そして、少しずつ静かになっていった。


「勝ちたいなら、闘技場に来て実戦練習をするよ。

それにランスさんの言っていた事も分かるかもしれないしね。

ここで、強い、強くないとごちゃごちゃ言っても始まらないよ?」


フラスは言葉を言い終わると教室の外へと出た。


そして、その言葉に納得したのか、クラスの生徒たちは黙ったままフラスを追いかけようと急いで、クラスの外へと向かった。そのあとに続いて、悟達もついていく。

ここはとてつもなく広いためここでついていかないと迷子になりかねないと思ったためだ。


そして、その目的の建物へと到着した。


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