23話 美穂とのデート
楽しんでいただければ幸いです
翌日、美穂からデートをすることになった。
美穂は、なにやらぶつぶつ言いながらサーシャたち、王女直属の部隊が集まるところへ向かっていった。
どうやら女性兵士にデートプランを相談しに行ったようだ。
女性兵士なら地元ということもあり、いろいろと知っていて相談に乗ってくれるだろう。
そして翌日の待ち合わせの時間となった。
待ち合わせの場所は噴水がある広場だった。ところどころにベンチがありお散歩コースというところだろう。
人も何人かいる。
先に、美穂が来ていたようで「ごめん、待った?」と聞くと「ううん、今来たところ」と言っていた。
目が合ってこちらに気づいて手を振るまでそわそわしていたので10分は待たせたのかもしれない。
美穂は白のワンピースを着ていた。
そして、麦わらの帽子を身につけている。
そして、手提げのカバンを持っていた。
妙に服装と金髪が合っていて、普段の大人の女性を思わせる風貌が、幼くも色気がある女性に変わっている。
ん?、俺?
男の衣装なんて聞いてどうすんだ?
今回、冒険者みたいな格好で行こうとしたら、サーシュに止められたので、カレンにコーディネートしてもらった。
実は、カレンの前にサーシュにお願いしたんだが、執拗なまでに女装をさせようとするのでサーシュはお願いしといて悪いが断った。
その代わりカレンのコーディネートは完璧だと思う。
まぁ、俺がおしゃれをしない主義だし、興味もないので他人からどう見えるかなんて知らないからおしゃれをしているかどうかは疑問だが。
青の半袖の上に黒のポロシャツを着て、下は黒を基調とした半ズボンが、今の俺の格好だ。
それにサングラスとマスクをかければ即警察に声をかけられそうな服装だ。
「ね、ねぇ、悟くん、ちょっとベンチに座って話でもしない?
私たち、あの時から随分と離れ離れ……、いや、離れてはないし、むしろこっちから行こうとしてたけど、会って話もしてなかったし、今日は話がしたいの。」
「べ、別に今日は美穂の番なんだから好きにしていいぞ。」
思いの外、美穂の上目遣いで見つめてお願いしてくるのが可愛かったので目をそらしてしまった。
「うふふ、ありがと。
じゃあエスコートお願いね。」
美穂が手を差し出してくる。
悟はそれを手で返し、近くのベンチを指差して、手をつなぎながらベンチまで歩いていく。
ベンチは綺麗に掃除されていた。
この広場を掃除する人がいるのだろうか?。
美穂を先に座らせて悟は美穂の隣へと座った。
「ここは綺麗だな。
日本と違った雰囲気がいい。あっちは都会に行くほど空気がまずいからな。
ここは、発展してない分不便なこともあるがだからこそこういうのを維持できるんだろうな。」
なにから話していいのか会話の糸口が見つからなかったため、ここの世界の話をすることにした。
「そうね、本当に綺麗。
でもいずれ、この風景は壊れるわ。
私たちが神を殺さないとね。復讐、そして支配。それが私たちの目的でしょ?」
美穂はこの世界での最終的な目的を口にする。
「そうだな。
まぁ、気楽にしていこう。
あっちは逃げやしないだろうし、俺たちが強くなるまで泳がせておけばいいさ。」
「強くなるまでか……。」
美穂が呟くと同時に風が吹き、美穂の金髪がふわふわと風によって持ち上げられる。
「そういえば、あの時、最初に会った時は黒髪だったと思うけど?
なんで今は金髪なの?」
悟は、髪を見て今思い出した。
かつて、家で見た時の少女はこのような髪の色をしてなかったと。
まるで、光を拒絶する闇のような漆黒の髪だったはず。
なのに今は、逆に闇を拒絶するかのような金色の髪だ。
なぜ今まで気づかなかったのかはわからない。思い出したのが最近だったこともあり、忘れていたのだろう。
「んー、どう説明したらいいのかわからないんだけどね。
この世界に来るまではちゃんと黒髪だったんだよ。
けどね、この世界に転移してから急に金髪になったことに気がついたの。
そのことが気になって、図書館で本とかを調べたんだけど全くと言っていいほど情報がなかったんだ。
多分、転移の弊害だと思うんだけど。
今のところ、他の人に確認しても出てないって言ってたからあまり気にしてないの。
私も今は気にしてないしね。」
「そうなんだ。
でも、転移の弊害なら他の人にも何か問題が起こってるはずだし、多分、転移した所為ではないと思うけどな。」
「多分そうだろうけどね。
それより、それがもし弊害で、帰る時にも同じことが起こったりする方が心配だなー。私ならともかく他のみんなとかなら大変だし。」
美穂は、自分のことよりも他の人の方を気にするらしい。
「今のところ帰る予定はないだろう。帰れるかさえ今のところ怪しいんだからな。」
「まぁ、それは私たち2人からすれば覚悟の上だもんね。」
そう、覚悟の上で、ここまで来た。
幼い頃、両親を殺された2人。
片や、目の前で殺されているところを目撃し、そして、激昂。
犯人が死に絶えた後も執拗にナイフを腹へと突き刺した少年。
片や、父親が警察の手で殺され、母親が殺されるも、偶然居合わせなかったために生き残った少女。
そして、一通のてがみのおかげで、2人は出会い、そして、復讐を誓った。
だが、少女は、少年は、お互いに知らない。
今は、どちらも復讐なんてどうでもいいと思っていることを。
ただ、少女に、少年に、幸せになって欲しいと願っていることに。
目的は違えど、ゴールは一緒なのだ。
少女は安直なまでに少年を助けたいと願う。そのためなら手段は選ばないだろう。
それがたとえ悪魔と契約することになろうとも。
少年は神を殺すことで、少女がこの先も平穏に幸せに生きていけることを願う。そのために、邪魔な者は排除する。
そう、互いに支え合わなければ、心の上部で願う復讐は並大抵のことではかなわない。心の深淵にまで気づけていない2人は一蓮托生だ。
どちらかが死ねば自分も死ぬという覚悟で、ここに立っている。
だからこそふたりは、覚悟を決めなければならない。
「もちろんだ。俺たちは仲間だとかそういう生ぬるい関係じゃない。
互いの命を持っている復讐者だ。
片方が死ねば、自分も死ぬ。
自分が死ねば、相手は死ぬ。
そういう関係だからな。」
「そうね。
でも、生きて帰れる保証もない。
だから、悟くん。1つお願いがあるの。」
「なんだ?そんな改まって。」
急に美穂が真面目になったので、悟は驚いたらしい。
そして、美穂は顔を少し下に向けて言った。
「もし、私たちが、2人揃って一緒に生きて帰ってこれたらだけど、1つお願いを聞いて欲しいの。
あ、欲張りだけど、今も1つだけ叶えて欲しいかな?」
「まぁ、俺に叶えることのできる願いならいいけど。
今叶えて欲しいほうも同様だ。」
そして、悟の言葉を聞いた美穂が頬
を赤らめ、少し反対側を向いて恥ずかしそうに口を開いた。
「そ、そのね、わ、私のそばにいて欲しいの。
それで、私を見て、守って欲しい。
私も悟くんを守るから。」
「何言ってんだよ。そんなの当たり前だろ?
美穂のそばにい続けるし、守るのも当然だ。」
そばにいるのも、守るのも当然。
そんな悟の言葉に更に顔を赤くする美穂。
そして、美穂は急に恥ずかしさでこの場の空気を変えたくなった。
「と、とりあえず、時間も頃合いだし、お昼ご飯にしよっか。」
そういうと美穂は、カバンから2つお弁当箱を用意した。
「今回のために、朝から作ったんだよ。はい、これ。」
悟はピンクと水色の弁当箱のうち、水色の弁当箱を受け取った。
そして、2人揃ってフタを開ける。
中には、シューラのお弁当と同様に、キャラクターがいた。
シューラが、かわいいキャラ弁なら、こちらはとてつもなくすごいキャラ弁だ。
2人しか知らないルシファーの特徴をとらえた弁当箱にしあがっている。
味はいうまでもなく美味しかった。
もう、細かすぎて食べるのがもったいないくらいだった。
ちなみに、美穂の方はノルンだった。
ノルンの特徴もよくとらえて作られていた。
美穂もシューラも女子力が高すぎると思う。
「どうだった?」
美穂は心配そうに、上目遣いでこちらを覗き込んでくる
「とても美味しかったよ。」
「そ、そっか、良かった。で、この後なんだけど、予定は決めてないんだ。
だからあれから何があったのかの話をしようよ。」
「あれから?」
「うん、ルシファーと別れた後のこと。」
そういえば、その話は触れてなかったと思う悟。
「そうだなあれからは……」
こうして、ルシファーと別れた後の話をお互いにしたがその内容はまた今度にしよう。
「はぁー、いろいろ話して疲れたなー。」
「そうだな。」悟は美穂に返事を返す。
いつの間にか噴水はライトアップされていた。
まだ、夕方だが、とても綺麗にライトアップされている。
いつの間にか周囲には二人組の男女がところどころに見える。どうやら有名なデートスポットらしい。
「人が増えてきたな。」
「そ、そうね。今日はもう帰りましょ。
久々に悟くんと話せて楽しかった。」
「最後に1つだけいい……か?」
その一言に広場を一緒に歩いていた美穂はこちらに顔を向ける。
夕景と合わせてとても綺麗だ。
柄にもなく見とれてしまった。
「ん?なに?」
「なんで、あのシリウス洞窟の時助けたんだ?
まだ、会ってもなかったし、美穂の方に記憶はあるって言ってもこちらが記憶がなかったら無意味じゃないか?
それに、互いが死んでれば今はなかった。」
あの時に美穂は飛びなさなければ助かったはずだ。その疑問を悟が気になっていた。
「それの理由は3つあるわ。
1つ目に、記憶があるからこそ助けたかった。
2つ目に、一緒なら生きられると思ったから。一緒に落ちたら生きられるそう予感したのよ。」
「な、そんな理由で……。
もしかしたら死んでたのかもしれないんだぞ。」
「その時はそのときよ。
あとは3つ目だけど、今は秘密。」
「秘密って…、まぁ、いいけど自分の命を大切にしろよ。
いくら俺たちの関係だからって、大切なのは自分の命だからな。」
「それはそうよ。
じゃあ帰りましょ。」
美穂と悟は嘘をついた。
それは美穂は気づいていた。
自分の命なんてあなたに比べればと……。
そして悟と美穂は城へ向かって歩いて行った。
私は悟くんのためなら死んでも構わない。
悟くんが幸せでいてくれるなら。
も、もし、もしだけど、悟くんが私にも幸せを分けてくれるならその時は……。
それは最後にお願いしたい願い。ただそれだけを願って悟くんの幸せを願う。
いつか平穏が私たち2人に訪れるまで私は今日のことを忘れないだろう。
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