12話 本の凄さとステータス
悟たちは早速シリウスに教えられた出口を目指して歩いていた。
「それにしてもその本小さくない? スキルの種類なんて山ほどあるのに。」美穂とアスタロトは疑問に思っていたようで首をかしげている。
「本の1ページから4ページまでが説明になっているんだがそれによるとこれには索引しかないんだとさ。」
「え、それだと説明書の意味がないだろう。」
「そうだね。索引だけ載せてもスキルのことに関しては名前だけしか載ってないから説明してないもんね。
それじゃ、説明書じゃないよね。」アスタロトの尤もな疑問に呼応するように美穂も口にする。
「そうでもないらしい。実際この本は1~4ページが説明書の説明、5~105ページまでが索引なんだよ。
だが、説明によればその知りたいスキルの名前を口にして
情報開示(英語版のやつ、要注意!)と言えばそのページがそのスキルの説明書になり、情報霧散()と言えばもとに戻るらしい。」
「そうなんだ。」
「そんな便利なことができるとは中々凄いな。
そう言うことなら早めに調べたらどうだ? その本が必要なほどのスキルが悟には発現してるんだろう?」
「まぁ、そうだな。気になるのは複数あるな。よし言葉に甘えて調べてみるか。」悟は早速本から自分の持つスキルを片っ端から探し始めた。
「まぁ、とりあえず訳のわからんものからしていくか。」
「創造者、情報開示」
悟が創造者の載っているページを開きそう言うと突然本が輝き出した。
しばらくして光は収まりそのページには、創造者の説明が載っていた。
創造者
創造する者。錬成士しか扱うことができない常時発動スキル。触れてさえいれば物だろうと生物だろうとあらゆる形と物に変化させることができる。
但し性質は変わらない。が、まれに性質が変わることがある。性質は良くなることもあるが、悪くなる方がほとんどである。
その変化させるものは何があろうと錬成することができる。
知らない物でも想像さえできれば作ることが可能。
(…………なんじゃこりゃ!
もうただのチートだよ!
何それ、じゃあ俺は最初の錬成で稀に起こるはずの性質が変わる方を引いてしかも性質がよくなる方を引き抜いたってことか? 運良すぎだろ。ヤバい、それがなかったらいまここにいられる自信がないな。)
顔をひきつりながら心の中で絶叫する悟だった。
そんな悟を見て美穂とアスタロトは大丈夫かなと思っていた。
(よし、次にいこう。こんなチートみたいなスキルが一杯あるわけないし、偶然だろうな。よかった運よくて。じゃあ、次は……)
「情報霧散、神のご加護、情報開示」
また、本が光を放ち始めた。ようやく収まるとそこには驚きが待っていた。
神のご加護
運が上がる。補正は500である。
(…………え? これだけ……? ……説明短っ!
運が上がる。そ、そうなんだ。基準がわからないけど、まさかこれのお陰でブラックメタルスライムができたとかいわないよな。ま、まぁ、次にいくとするか。)
「情報霧散、神の魔物使い、情報開示」
神の魔物使い
魔物使いの頂点に君臨する神。召喚、契約できるものが補正される。レベルによって召喚した者にステータス補正がつく。補正内容は、元のステータス×契約者のレベル×契約されている者のレベルである。
契約できるのが魔物だけでなく全てになる。全てとは生物はもちろん、ものに至る無生物もである。
物であれば無限に呼ぶことが可能。
(すいませぇええーーーーーん。誰かぁああーーーーー、助けてぇぇぇええええええーーーー。もう僕の頭では処理できないのでぇぇえええーーーー。
なんだよそれ、もう神になっちゃったよ。
人やめちゃったよ!
しかも何? レベルによって補正? いまのレベルが……、519か……、え? やばいな。普通にチートだよ?)もう驚きすぎて驚けなくなった悟だった。
(よし、改めて次にいこうかな。次はシリウスにもらった召喚時魔物能力向上だな。流石に、これもなわけないよな。)
特級フラグ建築士の称号を得た。と頭に響いていたが気にしないことにした。
「情報霧散、召喚時魔物能力向上、情報開示」
召喚時魔物能力向上
召喚した魔物の能力を上げる。およそ2倍補正。但し運が上がることはない。重複できない。
ん?、そ、そうか、そうなのか、案外普通だな。これで重複できるならまだしも。
あ、なんか隅の方に書いてあるぞ。)
そう、隅の方に書いていた。確かに明日から重複可と……
(うわぁぁぁーー、なんなんだよ。もうこれ以上は人間やめれるよ、神になれるよ。 て言うか明日からってなんだよ、適当すぎだろ。)
これを見て他の魔物使いたちはいうだろう。重複できなくても充分チートだよと。
(もういいや、諦めよう。さて次は)
「情報霧散、能力支配、情報開示」
能力支配
倒した魔物が持つ能力を奪い取ることができる。常時奪い取る。但し、一度でも触れてなければならず、最後の止めを能力者がする必要がある。
(凄さがいまいちわからないな。要するに能力を奪うんだよな。まぁ、またステータスを見たらわかるか。)悟は凄さがわからなかった。本当に恐ろしいスキルは、これだというのに。
(創造者というのが予想外に凄いな。どんなものでもできるか。そう言えば、ゲームとかだとHPとかを見れたけど、ステータスって見ることができるのか。メニュー画面とか作れるのか。ものは試しだな。よし、早速してみるか。)
悟はにやにやしながら手を伸ばすと
「錬成」と力強く言った。
それを見ていた美穂とアスタロトだったが、なにも起こらなかったのを見て憐れみを含んだ目で見つめて
「とうとう頭がおかしくなりおったか。」
「頭がおかしくなっても私は悟くんから離れないからね。でも、できればおかしくなってないほうがいいな。」アスタロトと美穂から心に刺さる言葉が放たれる。
(痛い、痛すぎるよ。手を急に伸ばして叫ぶなんて。しかも自信満々に、……死にたい。死んで楽になりたい。)
だが、しばらくして変化が起きた。悟の目の前に一枚の板が出現したのだ。
そこにはメニューとはっきり書かれている。
(よっしゃー。やっとできたーー。頭がおかしいと思われるかと思った。流石に痛すぎるもんな。でも大気中の気体を使って製作できるのか、凄いな。)そう思って悟はおおはしゃぎしている。
だが、前よりも美穂とアスタロトの表情が無表情かつ憐れみを帯びている。
なぜなら
(うわー、ないわ。なにも起きてないのに急にはしゃぎ出すとか。やっぱり頭がおかしいんだな。)
(あ、頭がおかしくても私は、は、離れないから。でもこんなに悟くんが痛い男の子だったなんて……。)
二人には悟の作ったものが見えてなかった。
それは何故か。当然である。悟はゲームのメニュー画面を想像して錬成した。だからゲームと同じ性質になるのは必然的な訳で。
結論から言うと自分しか見えないのだ。正確に言うと自分と許可をした人にしか見せることができない。だって、自分のステータスはゲームで言えば個人情報なのだから。
そんな理由で美穂とアスタロトは見ることが出来なかった。
端から見ると、悟が急に手を伸ばして叫び、その後しばらくして、急に喜びだしたという訳だが、なにも見えない方からしたら頭がおかしいことこの上ない。
悟はその事に気づいていないのだった。
(へぇー、本当に想像した通りだな。できないと思っていたんだが、やってみて正解だったな。)
悟の考えたメニュー画面は4項目に分かれている。
道具
ステータス
作戦
地図
その四つのうちステータスのを押した。
そしてステータスがついに露になる。
名前 神崎 悟
レベル519
職業 魔物使い
錬成士
HP54790/54790
MP27640/27640
STR 57690
DEX 45160
VIT 78930
INT 57690
スキル精神支配
空間支配
時間支配
全属性使い(オールアトリビュート)
眷属契約
眷属支配
眷属ステータス分配
眷属能力分配
錬成
召喚
契約
契約解除
常時発動スキル
無詠唱魔法
神殺し
能力支配
経験値必要数1/100
神のご加護(補正+500)
神の魔物使い(ユニークスキル)(補正+99999)
創造者
(ユニークスキル)
隠蔽(SS)
称号
特級フラグ建築士 神に選ばれし者
名前 椎名 美穂
レベル1
職業 賢者
HP 1350/1350
MP 1225/1225
STR 175
DEX 180
VIT 1395
INT 1250
スキル全属性使い(オールアトリビュート)
転移魔法
重力魔法
時間操作
精霊魔法
サーチ
常時発動スキル
全異常耐性
無詠唱魔法
範囲拡大
危険察知
未来視
闇属性特化
光属性特化
隠蔽(SS)
解析(SS)
必要経験値1/100
常時回復
常時MP回復
称号
なし
名前 アスタロト
レベル37
職業 魔王
HP 17050/17050
MP 12445/12445
STR 8700
DEX 8600
VIT 9990
INT 50000
スキル絶望の波動レベル1
魔の波動レベル1
魔王の威圧レベル1
転移魔法
幻惑魔法
邪属性魔法レベル99
情報開示
常時発動スキル
無詠唱魔法
範囲拡大
範囲縮小
状態異常無効
時間操作耐性
隠蔽(SS)
危険察知
常時回復
必要経験値5倍
レベルアップ時ステータス10倍アップ
INT上昇率アップ
称号
魔王の娘
(…………、もうやめてぇぇぇぇええ、なんなの? HP54790/54790って、いや、HPはわかるよ、なにあとの数字? 俺の体力?
死なないだろ。もうすでに化け物級の体力だったよ。魔王の娘より強いよ、人間やめてたよ。
あいつなのか? あのスライムのせいなのか? 嬉しいのか嬉しくないのかわかんねぇーよ。
(それは置いといて、アスタロトも案外強かったよ。でもこの世界では当たり前なのか?)
「アスタロト」
「な、なに?」アスタロトが何故か警戒しながら答えている。
「この世界のステータスの基準を教えてくれないか?」
「ステータス? なんなのそれは。はじめて聞くけど」
「え?無いのかステータス? でもここに現に書いてあるんだが……」悟はステータス画面を指差すがアスタロトから見たら何もない虚空を指差しているようにしか見えない。
「いったいどこにそんなものがあるの?」アスタロトはからかわれたと思い少し怒っていた。
悟は誤解を解くためステータス画面を作りステータスを見た経緯を語る。
「なるほどな。ここにあるのか。でも認識できないのだけど。」
(たしかこういうのはこっちの許可がいるんだっけ? ゲームの中の話だから同じとは思えないんだけど。)
「アスタロトと美穂にメニューを見る許可を出す」悟がそう言うとアスタロトと美穂は目を見開いて驚いていた。
悟の目の前に一枚の板が急に出現したのだから驚くのも頷ける。
そして各種説明をしたあと二人から言われた。
「人間やめたのね。しかも歴代魔王より強いし。それでだけど、魔界では強い人が魔王になれるの。だから代わりにやってくれない? めんどくさいから。」
「悟くんが人間をやめても好きだから大丈夫だよ。二人ならなんだって、たとえ片方が化け物でも立ち向かえるよ。」
「アスタは仕事押し付けるな! それと美穂は俺をなんだと思ってるの? て言うか二人も充分に強いからな。」
「え? 化け物じゃないの? 少しお茶目で、守ってあげたくなる少女に比べたら悟くんは化け物の位置付けだと思うけどな。」
「私もそう思うわ。」
「もういいや、人間の着ぐるみ被った化け物ってことで。」悟はもうあきらめた。
そんな話をしてるうちに外への出口が見えてきた。