13話 ユニークモンスター
「ライトニング!」美穂がそう叫ぶと、指先から電流が狼のような魔物へ向けて迸る。
「アギャギャギャ」
魔物の悲鳴だろうか金切り声をあげながら倒れた。
悟たちがシリウス洞窟から出るとそこは谷だった。どこかの渓谷だろうか?。
しかも薄いベールがかかるように霧も発生してる。
この霧のせいで視界は見えづらく、上は少し明るいが左右を見渡すと少し暗いためサーチを使えなければ食料がなくなり全滅、それとも魔物の餌なるのかだろう。
今、美穂がサーチの魔法をかけているため安心なのだが。
「そう言えば、腹減ったなー。魔物って食べれないの?」美穂がお腹を押さえて言った。
「不可能だな。そもそも魔物というのは魔素というのを含んでいるんだ。その魔素というのが厄介で、一種の毒のようなものなのよ。魔物を食べて死ぬやつなんか人間にはざらにいると聞いていたが。」アスタロトは当たり前と言いたげに語った。
「そうなんだ。知らなかったわ。」
「なるほどな。」悟と美穂はこの世界の知識が不足しているのでアスタロトを入れて正解だったと思っている。
「じゃあ町に行くまで我慢だな。」悟がため息をつくと同時に美穂が敵がくると二人に向けて言った。
「うわー、でかいな。」
「こ、これは、ヤバそうだね。」
「あー、こいつは見たことがあるな。たしかギガラックスだったか?」それぞれ二人が魔物の大きさに驚きを隠せない中でアスタロトだけが落ち着いていた。
「ギガラックスって言うんだ。なんか大きいし、すごく強そうだね。なんか恐竜みたい。」美穂が考えのままに言うが……
「え? こいつはスライムぐらい弱いのよ? 図体だけでかいだけよ。
重くもないし、むしろ軽いぐらいで踏まれても痛くもないしね。
ギガラックスのユニークモンスターの方ならまだしも、普通のギガラックスなら冒険者の初心者でも余裕よ。」アスタロトが答える。
「へぇー、そうなのか。で、そのユニークモンスターって言うのはなんなの?」美穂と悟が私の頭よりも少し上の方へ視界を向けていたが気にしないことにした。
「ユニークモンスターっていうのは、姿は一緒なんだけど、色が黒っぽい魔物のことをユニークモンスターって呼ぶの。強さは桁違いで、ユニーク固有の能力も使えるとか言われてるわ。
けど、ユニークモンスターなんてそんな滅多にいないから大丈夫だと思うけど。って聞いてるの?さっきからあたしの後ろばっかり見て。」アスタロトが美穂と悟の態度にキレたが、悟は、アスタロトの後ろを見るだけである。
「いや、悪いな。話は聞いてはいたんだけど、その特徴に似ているモンスターがアスタロトのすぐ後ろにいるなーと思って……」
「え?」アスタロトが振り替えると同時に黒いギガラックスが、ギガラックスに向け走り出した。
「なにしてんだあいつ?」
黒いギガラックスはギガラックスの所へつくと抵抗されながらも捕食していた。
「え? かなりやばいわよあれは。」
「なんで? だって魔物からしたら食事をしてるだけなんでしょ?」
「捕食しているということはつまり魔物のレベルが上がるということ。魔物というのは闘いによって経験値を稼ぐこともできるのだけど、魔物同士の捕食の方が効率いいから。しかも魔素を取り込むことによってレベルが上がるだけでなく純粋なパワー等も上がるから。
ユニークモンスターは普通でもヤバいのにレベルが上がったら凄まじいわよ。」
黒いギガラックスは食事を終えてこちらの方へ向かって来る。
「ちょっと私は勘弁かな。相当な数を食べてそうだし。」
「アスちゃんがそうなら私も遠慮しておく。」
アスタロトと美穂がそう言うと
「そんなに強いんだ。じゃあ腕試しついでに俺が相手をしようかな。」悟は知らなかった。自分自身のステータスの数字の恐ろしさを。
悟が黒いギガラックスへと走り出した。
悟からしたら走り出したのだろう。だが美穂とアスタロトから見たら、突然地面が抉れて、消えたようにしか見えなかった。
「「え?」」
それはギガラックスも同じだったようで、周囲を見渡して獲物を探すようなそぶりをしている。
「ここなんだけどな。じゃあ一発いくぞ。」悟の声が聞こえたと思ったらギガラックスが、空中へ十数メートル殴り飛ばされる。
あの一瞬でギガラックスの懐へ忍び込みギガラックスのお腹を殴っただけなんだが。
そして、ギガラックスの巨体が軽い音を出して落ちた。
そんな様子をアスタロトと美穂は唖然として見ていた。
「え? もう終わりか?」
「「いやもう終わりか? じゃないでしょ!?」」
「え?だって倒れてるし……」
「当たり前でしょ」「当たり前じゃない」
「だってあの高さから落ちたら普通に死ぬし、しかもあれをあそこまで飛ばすとか貴方どういう腕力してるの?」
「え、何か不味かった?」
「不味くはないけど、悟くんが人間辞めてるなーとは思える瞬間だったかな。」美穂にそう言われて頭を抱え始める悟。
「ところでだけどもうでてきてもいいんじゃないの? あなたが私たちへ近づいてきてたのはわかっているのよ。」アスタロトが言うと同時に霧の中からシルエットが浮かび上がってくる。
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「見つけた。」霧の中で見えないはずなのに、狐の尻尾と耳を体のシルエットから匂わせる銀色の髪を持つ少女は言った。
だが次の瞬間の光景に驚いていた。三人の少年少女がギガラックスを見ても落ち着いているのだ。ギガラックスは上級冒険者でも数人相手にしないといけない魔物だ。魔族ならともかく普通の人間には勝ち目はない。しかもそれが少年少女なら尚更の話だ。
ギガラックスの前でも悠長に話をしている。少女は助けにいくべきかどうか迷っていた。
(私なら倒せるけどあいつを追っているだけだし、でも、助けないで死なれるのも。)
少女が考えに耽っていることで、三人の少年少女の所へあいつが迫っていることに気づけなかった。
少女が目を戻したときには、黒いギガラックスが現れてギガラックスを補職していたところだった。
(え?)少女は少なからず動揺していた。ギガラックスなら勝ち目はあっても、黒いギガラックスなら勝ち目はないからだ。ユニークモンスターの危険度は200の奴もいて冒険者の所で言うとSS級のモンスターだ。
そのモンスターが目的のモンスターであることもあるが、黒いギガラックスが補職を終えて少年少女の元へとゆっくり幾度にその後の光景が想像される。
少年少女の体がくいちぎれ全てのみこまれる光景。そして次は私かもしれないという恐怖が徐々に忍び寄ってくる。
だが実際には、少年が走り出したと同時に懐へ忍び込み殴り飛ばしている。
(なっ! 私でも動きが見えないの? 早すぎる。)
狐のシルエットの少女は少年の恐ろしさに戦慄していた。
私はアルテマの王直属の部隊の中でも三番手になるものだった。一番手は実力差がありすぎるのでおいておくが、それでも私は国内でもほとんどの者に負けない自信があった。同い年ぐらいの少年少女なら、赤子の手を捻るようだろうとまで思っていた。だが目の前の少年は私を上回る魔物を一発で倒した。あり得ないと思いつつも、部隊特権を使おうか迷っていた。
部隊特権とは王直属の部隊の上位5人の中の一人でも外部の者を認めれば部隊に入らせることができるというものだ。
そんな思いがあり迷っていると一人の少女から声がかかった。もうでてきてもいいんじゃないかと言われている。
(あの中で、気配に気づけていたのか。もしかしたら私を越えるものが三人も……、これは是非もって帰りたいものだな。)そう思いながら少女は三人の少年少女の元へと向かった。
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