戦記84 「いい日旅立ち」
パソコンが壊れ、
そのせいで書き溜めていた一週間近く分の文章がすっ飛び、
気持ちが壊れ、
もろもろの締め切りや作業に追われ、
雨に負け、
風に負け、
冬の寒さにも負け、
不健康な体を持ち、
欲にまみれ、
皆にごみ虫と呼ばれ、
褒められもせず、
ソウイウモノニワタシハナリタイ、
ワケガナイ
うおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
ソロモンよ!
私は帰ってきた!
戻ってくるかも分からぬデータを待つことをやめ、潔く書き直すことに決めた!
なぜならば!
どうせ一桁まで減っているだろうと思っていたブックマークが残っていたから!
そのうちの99%は登録しているだけでもはや見ていない人ばかりだったとしても、1%の人が待っているかもしれないのであれば!
作者の勢いとは裏腹に、ぶっちゃけたいして話の進展していない回ですが!
人類にとっては小さな一歩でも!
私にとっては大きな一歩である!
それでは!
お客様のテンションを置き去りに!
はじまりますよ、戦記84!
戦記84 「いい日旅立ち」
コウと激しい夜を過ごした翌日。
攻め合い、息を切らせ、傷つけあい、それでもなお求め合う夜…なんだろう、ただ戦っていただけなのにそう聞こえない…とにかくそんなおかげで午前中には出発する予定が大幅に狂い、すでに昼過ぎ。
チョウ竜といくつか打ち合わせを済ませ、遅ればせながら準備も整い、あとは出発を待つばかり。
王宮の門手前にてその出発の時に臨んでいる訳だが、それを見送る面々の、中でもチョウ竜のまなざしが幾分冷ややかに感じなくも無い。
が、ボウのそれに比べればどうということもない。
もはや口癖となりつつある『昨日はお楽しみでしたね』程度では動じない強い心を会得している。
そもそも、そんなことを気にして、激しい夜など過ごせるというのだろうか?
いや、できない。
あの後もコウのおねだりは続き、まぁこちらもこちらでなんとなく楽しくなってしまい、この武器ではどう立ち回るか、こういう技がきたらどう返すかなど、模擬戦だけでなく、研究っぽいことまで始まってしまった。
さすがに明日があるから…というよりは、うるさくて迷惑だからという理由で、ガン竜の奥さんが止めに来なければもう小一時間くらいは続けていたかもしれない。
ドラゴニアにいた頃は、剣姫様やキョウ王様を筆頭に、なんだかんだで暇があれば稽古に借り出されるような日々だったので、懐かしさを感じるとともに充実感もあった結果だ。
(―これからも、ちょくちょく相手してもらおうかな)
コウは普通にやったら俺より強い…つまり、国によっては竜になれる程度の強さがあった。しかも、頑丈さまで備えている。いくら訓練でも傷つける可能性があると思うと、なかなか思いっきりは戦えないのだが、コウであれば多少無茶が効くのがいいとこだ。
別におもちゃや的にしたいわけではないけどね?
(―てか、あの強さがあってなんで鈴星の竜になってなかったんだ…)
昨日は聞きそびれたが、まぁそれもこの旅の途中に聞いてみるとしよう。
なにせ、けして短い旅ではない。
普通に往復するだけで一週間以上…あちらの滞在時間や道中のアクシデントなどが重なれば半月ほど近くになり、神楽月に戻るところまでを考えれば、一月近くになるかもしれない。
舞姫様やボウに…あとなんだかんだでイン竜あたりにも会えないのはまぁ寂しく思わなくも無いが、違う楽しみや目的があると思えば、その寂しさも紛れるというものだ。
あとはハンのことも忘れてはいない。ぜひがんばっていて欲しい。
ソウ竜? だれそれ。
「では私たちはそろそろ参りましょうか」
そう告げたのは、ガン竜の奥さん。
奥さんの声に反応し、見送り組みが馬車へと顔を向ける。
ただし、その馬車は俺が乗る馬車では…コウが用意してくれた馬車ではない別の馬車。
その馬車に同行するのは、御者が二人、馬車の中に奥さんを含めて三人、そして馬車の周りを囲むように騎乗した兵士が五人と、しめて十人の一隊である。
「すまんな、引退しているにも限らず役目を任せて」
「いいえこれも鈴星のため…アナタにばかり苦労はさせません」
いい夫婦なのだろう。本人たちはもちろん、その周りにすら穏やかな空気が流れるほどである。
「では、ユウ王様。失礼いたします」
「よろしくお願いします」
「はい。では、あちらでお会いいたしましょう」
そういって、ガン竜の奥さんを中心とした一隊は、ここより北にあるグランギニオールへと旅立った。
ルートは、鈴星とメガロポリスのいくつかの都市を繋ぐ東街道。その街道を進みながら、元々鈴星と交流のあった都市国家と、新体制になっても代わらぬ付き合いを結ぶ協定を結びながら、グランギニオールを含むまだ交友の無い所と新しい関係を作るという、一言で言えば外交が目的の一隊である。
ただし、今回はもう一つ役割がある。
それが、囮。もちろんこの囮とは、俺を狙っているという傭兵団への目くらましの意味である。
(―部下にはなれないけど、鈴星の仕事はしてくれる、か)
ガン竜やチョウ竜を炊きつけた手前、自分が引退を理由に仕事をしないのは気が引ける、という理由で奥さんは今回の外交と囮役を引き受けてくれた。とはいえそれは俺が手配したり頼んだりしたものではなく、チョウ竜を中心とした鈴星の内政担当者達によるもの。
俺から提案やお願いすることもあるけど、基本的な運営は自治。それはこれからも変えないつもりである。
故に、こちらの状況に合わせて囮役まで買って出てくれたことは素直に嬉しいは嬉しい。のだが…
「ガン竜、本当に一緒にいかなくてよかったの?」
「あれでしっかりした女ですし、周りも腕のいいので固めております。よっぽどでもない限りは、問題ありません」
護衛として周りを固めている中には、ガン竜兄弟や元隣王側近などもいる。野党や小型の魔物にどうこうなることはないだろう。
ただ、統率が取れた傭兵相手にどこまでやれるかは分からない。そもそも相手の戦力が分からないので、心配しすぎても仕方の無いことではあるが…ま、当人達が納得の上でそうしてくれているのなら、甘えておくとしよう。
「さって、んじゃこっちもそろそろ行きますか」
と奥さん達一行が完全に見えなくなったところで振り返ると、ちょうどコウが馬車を引いて来るところだった。
昨晩みかけた大型の馬車と、それを引く馬が二頭。
これに乗って、俺は西の方へ逸れる別ルートからグランギニオールへと出発する。
ようは東と西、二手に分かれることで傭兵団の注意と戦力をばらけさせようという魂胆である。それに伴い、チョウ竜の弟子たちがこっそりと近隣の町などに、俺があの馬車に乗ってグランギニオールへ向かっているという噂を流してもらう手はずである。
「てか、本当に御者一人でいいの?」
「はっ、問題ありません」
「昨日の疲れとかは?」
「ご心配には及びません。おかげさまで今朝は気持ちよく目が覚めました」
適度な運動だった…ということなのだろうか?
覚醒の反動分もあるとはいえ、睡眠不足気味なこちらとはえらい違いである。
「ま、もし本当にダメそうなら、途中で雇うとかするから、無理はしないように」
「はっ! 畏まりました!」
コウの体調も気にはなるが、そちらは一先ずおいておき、もう一つの気がかり…先ほどから視界の端にちらちらしている歌姫様へと目を向ける。
「歌姫様はさっきから何してるの?」
「別に…そろそろ行くのかなって思って」
「ま、そーだね」
「グンラギニオールだっけ?」
「そう」
「…遠いの?」
「馬車だと四日ってところかなぁ…」
「ふーん…」
「で、そろそろ出発なわけだけど…」
「うん…」
「ごめんね」
「へ?」
姫が目を丸くしてこちらを見る。
「え、なんで、謝るの?」
「こんなギリギリになるとは思ってなかったから。何かいいたいことがあったんでしょう?」
本当はいくらか話しやすいであろう、二人の時に話を聞くつもりだったのだ。
コウとのやり取りが終わったら、
それが無理だと分かったので起きてから、
しかし囮一行に関する打ち合わせをしたためそれも叶わず、そのまま自分の準備に追われ、結果このタイミングである。
「だから、ごめんね、と」
「…なんで謝るのよ」
「だから遅くなったからゴメンねって」
「そーじゃなくて…謝られたりしちゃったらやりづらいでしょ…」
「うん、知ってる」
腹部めがけて近づく姫の拳を握り、抑え、再度尋ねる。
「で、いいたかったことは?」
いくつもの言葉が姫の中に浮かんでいるのが、その目から分かる。
そして出すべき言葉を選び終わってからも、それを音にするのに何秒と重ね、必要なだけの気力が集まってからようやく、姫は小さい声でいった。
「…ごめん」
「それはもう、昨日聞いた」
だから、前提のその先を。
ゴメンナサイのその先を。
言葉にはしていない、姫の『だけど』の先を促すと、やはり姫は先ほどと同じように時間をかけてから言った。
「…一緒にいっていい?」
どこに、とは聞かない。
聞いてもいいし、聞いたら聞いたでちゃんと答えただろうけど…別に姫を苦しめて上下関係を作りたいわけではない。
「コウ」
「はっ」
「確認。準備は確かに、三人分済んでるんだよね?」
「はっ。ユウ様、私、歌姫様の三人分済ませております」
「と、いうことで行きましょうか、歌姫様」
笑いながらそういうと、姫は怒ったような安心したような戸惑ったような、いくつもの表情を順番に顔に浮べてから最後に、
「…ん、行く」
と、何か一つ決めたような真剣な顔でそういった。
その顔は舞姫様が挙兵する時や、上に立つことを本当の意味で決めた時に見せたような顔で、やっぱり姉妹なんだなぁ…などと思う。
「じゃ、足りないものがあれば途中で買い揃えるから、とりあえず出発の準備してきちゃって」
「わかった!」
そして姫様は普段良く見せる明るい顔に戻るや駆け出し、宛がわれた客室へと向かっていった。
本当は、出発の前にいくつか言い含めておくつもりだったのだが…
(―ま、話を聞いてくれるなら今でなくてもいいか)
たぶん、大丈夫だろう。
根拠はないがそう判断する。
「嬉しそうでしたな、歌姫様」
「ま、残していったら残していったで、鈴星に迷惑かけるかもしれないしね」
「とはいえ、私は歌姫様の同行に賛同しかねます」
とやや神経質気味にいうチョウ竜。
「でも反対でもないんでしょう?」
「…ユウ王様の狙いも理解できないではないので」
そう…姫様の同行には意味がある。
もちろん姫様の『行きたい』という希望を酌んではいるが、まさか一国の姫をそれだけの理由で連れまわすわけにはいかない。
そして同じことが俺にも言える。一応は一国の王である身だ。ただ自分のメイド達を迎えにいくだけでは無い。
「ま、せいぜい良いお土産が持ってこれるよう祈っておいて」
「期待するとしましょう…隣王様が認めた王と、将来性を見出した姫様の旅路に」
などと話をしている間に姫が戻ってきた。
服装は特に変わっていないが、手には旅用のマントと、肩掛けに大き目の鞄がある。
その荷物をコウが預かり馬車へと乗せる間に、姫はやや躊躇いながらもチョウ竜とガン竜に近づき、そして頭を下げた。
「…ごめんなさい」
やや驚きながらその謝罪を受け止めるチョウ竜と、我が子を見守っているのかと思うほどの深い笑みを浮べるガン竜。
数秒経っても姫の姿勢は変わらず、その深く長い謝罪を止めるには声をかける以外にないと察したのか、それとも思うことでもあったのか、チョウ竜が姫の視線に手をいれ、頭をあげさせながら言う。
「…本来、姫というお立場であるアナタに、他国の一役人でしかない私が何を言うべきものでもありませんが…いずれ我々の上に立つお方と思い一言だけ。あなたの行動一つ一つが、大きな利と不利を生む可能性がある。それだけはお忘れないようお願いいたします」
「うん…あ、違う。はい…」
「…私からは以上です」
言葉遣いに関しての注意でもしようと思ったのかもしれないが、一言といった手前ガン竜へと譲るチョウ竜。
ガン竜は近づくと、そのでかい手を姫の頭において、犬でもそうするかのようにぐしゃぐしゃと撫で回した。
「良い土産話、待ってますぜ!」
「ん…楽しみにしといて」
そして二人から離れる歌姫様。
「じゃ、行きますか」
「うん、よろしく」
「はっ! お任せください!」
そして姫が先に馬車に乗り込み、コウが御者台に着く。
「チョウ竜」
「はっ…」
「今しばらく迷惑をかけるけど、よろしく」
「…それが鈴星のためならば、どうぞ存分におかけください」
「ガン竜」
「はっ!」
「時間はないが、無駄死にはさせたくない。期待してる」
「お任せを! 他国に負けぬ立派な兵にしてみせましょう!」
そして集まっていた他の面々にも言葉を書け、馬車に乗り込む。
御者台とを繋ぐ小窓からコウに合図を送ると、馬車は緩やかに動き出し、そして徐々にスピードをあげていく。
「窓開けていい?」
「どうぞ」
姫が窓を開けるや、風が馬車内を舞う。
姫は窓から手を振り鈴星へ別れを告げ、馬車を追うように聞こえていた王宮からの別れの声が遠ざかり、やがて姫は手を振るのをやめ、王宮からの声は聞こえなくなり、ただただ風が舞い込んでは姫の髪を躍らせるようになり、地面の凹凸に合わせて小刻みに揺れる馬車特有の音が休み無く流れるようになり、その頃になって姫がぽつりと、
「…ありがと」
そう、言った。
こちらも向かず、窓の外をずっと見ているため、姫がどんな顔でその言葉を言ったのか見れなかったことが残念だなとは思ったが…
「どういたしまして」
たかが四文字分ではありながら、姫のその「ありがと」は心地よく耳に響き、馬車の程よい揺れや、昨夜の疲労とあいまって、やがて眠気へと繋がるのだった。
お読みいただきありがとうございます。
このお礼を書くのも久しぶりです。
前書きの通りで、新しいパソコンを購入してもすぐには時間的にも精神的にも取り掛かることができず、随分とあいてしまいました。
もうほんと、このまま失踪するかと思いました。
でもさすがにどうよ、と。
せめて終わるにしろ、ジャンプの打ち切り最終回ぐらいにはまとめてから終われよ、と思いようやくパソコンに打ち込むことができました。
それもこれも全て、残念な美人さんことカイのおかげです。
カイを出したいがために再度パソコンに向かうことができました。
そしてそれ以外のキャラも。
未登場も再登場も、皆様にお届けできるように、再びパソコンにガタガタ打ち込む日々の再開…
まだお付き合い頂けるようでしたら、また次のお話でおあいできれば幸いです。




