戦記77「鈴星到着」
今更ながら3行でわかるユウ王戦記、ここまでのあらすじ。
女好きの主人公、
異世界で、
がんばる。
…なんか他の小説にもあてはまるきがしないでもないけど、そんなこんなではじまるよユウ王戦記!
戦記77「鈴星到着」
「んじゃー、道中きをつけて」
「スワロさんもお達者で」
結局、部屋を取った宿に戻ることなく、裏路地の店で一夜を明かした後、スワロと別れて馬にまたがる。
昨日、遅くまで舞姫を構いすぎたせいで早めに休憩をとったにも関わらず、今朝また構いすぎて…いや、今回は構われすぎて…という方がいいのだろうか…
「中の中」
最終的に、辛うじて一つだけランクを上げることができたのが救いとでも思うべきだろうか…
別にその手の道…ってどんな道だが我ながらよくわからないが、別にその手の技術に特化した職業に就きたいわけでもなし、極端に素晴らしい評価を求めているわけでもないのだが、ほら、なんていうか…ね? 下手よりはうまい方がいいじゃない?
というわけで、イン竜と互角の勝負を演じる程度ではまだまだ上がいるということを思い知らされた今日この頃、胸の中に浮かぶ舞姫様がやや拗ねた顔をしていらっしゃるが、まぁ、それはそれで可愛いから問題ない。
「さて、一応お礼ぐらいはいっておこうか」
スワロ曰く、スバルの口添えのおかげで敵が増えた無かったわけだし、挨拶ぐらいはね?
と、本来なら泊まるはずだった国境付近の町へと立ち寄ると、すぐに向こうがコチラをみつけてくれた。
「おー! ユウ王、実は―」
「お久しぶりスバルさん。でも大丈夫、一つ前の町でスワロさんに聞いた」
「ん、そうか…すまんな」
「いや、むしろ気遣ってくれてありがとう。敵じゃない、っていうだけで心強い」
といった俺に苦笑いを浮かべるスバルは、スワロ曰く『上の中』とのこと…
「ねぇ、スバルさん…つくづく上には上がいるよねぇ」
「む、まぁ、そうだな」
あえてナニをとはいわないっていうか、別段分かってほしいわけでもないので説明もしない。
「だが安心しろ。困った時は…そうだね、横を見ろ。そこにきっとお前と共にいたいと願う仲間がいるはずだ」
なんでだろう、とってもいい言葉をいわれているはずなのに、ちっとも頭に入ってこない。っていうか、団長さんは下見ろっていってて、副団長は横をみろってあたり、立場が変わるということも変わって面白いと思うべきか、意思疎通を図らなくていいの? と心配すべきか悩みつつ、でもまぁ俺だってボウと長年一緒にいるようになったが、いまだに意見など合わないことは多々あるし、長年連れ添った夫婦だって目玉焼きの醤油VSソース論争がまとまらないまま墓に入ることだってあるのだから、まぁそんなもんなんだろう。
(―大事なのはどの言葉を選んで実戦するかよね?)
などと適当にまとめつつ、
「この一件が収まったら、改めて酒でも飲もう、ユウ王」
「ご飯メインでもよければぜひ」
そんな挨拶をかわしつつ国境の町を後にする。
長居したつもりはなかったが、それでもそれなりに時間は過ぎている。
「ごめんよ、ちょいと飛ばしても大丈夫?」
馬に尋ねると、威勢のいい返事が返ってきた。
コチラと違って昨晩は早めに眠れたおかげか、神楽月を出発した時よりも元気なくらいだ。
または、元々が鈴星の馬だけあり、山が近いせいでやや高所にある神楽月よりも、海に近いためどちらかといえば低所にあるこの辺りの方が身体にあっているのかもしれない。
「んじゃ、いきますかいね」
手綱を握る手に力を込めると、馬はそれに応えて街道を駆け抜けていった。
まず見えるのは、国境を守る警備隊。
「お勤め御苦労さまです、ユウ王様!」
国を一つにまとめ上げるのに先駆け、すでに実質一体化した国境警備隊の詰める関所を越えれば、そこは鈴星。
「あ、ユウ王様!」
隣王の葬儀のせいか、神楽月よりも鈴星の方が顔が知れているらしい…道中かけられる声になるべく返事をしながら急ぐこと半日、二度目の休息を取る。
「一人部屋で食事つきがいいんだけど、大丈夫?」
「はいはい、それでしたら丁度これから夕食が―ってユウ王様!?」
などと驚かれつつも人のいい宿屋の主人のおかげで、騒がれずに穏やかな睡眠をとり翌日、
「ユウ王様! わたくしこの町を収める市長の―」
「すまない、今はお忍びの最中で、その手のことは宮中の者に任せてある」
と、あれやこれや賄賂…のようなものを渡そうとしてきた市長と、その声に気が付いて集まった視線から逃げるように馬を走らせる。
そして日が落ち、赤くなってきた。
距離的に言えば、あともう一回ぐらい町に泊まってもいい頃合いだが…
「お前、夜も走れる方?」
尋ねると、任せろとばかりにいななく馬。
言葉が分かる…というほどではないのだろうが、こちらの考えはなんとなく分かっているのだろう。
改めていい馬だ。
「じゃ、夜道の乗馬練習かねて、もう少しよろしく」
油を使ったランプではなく、魔法で光を生み出すタイプのライトを付けて、最後の道を走る。
昼間に比べれば多少スピードは落ちるものの、それでも普通の馬を下回ることはない。
鈴星が神楽月に進行するにあたり連れてきたという馬をそのまま借り受けていたのだが…問題ないのなら、このまま譲り受けたいぐらいだ。
などと考えているうちに、見慣れた…というほどではないが、なじみのある景色になってきた。
(―ただいま、隣王)
などと、王墓の近くを通る際に胸の中で挨拶などしつつ、そして、ついに鈴星王宮へと到着したところで―
「おっそーい!!」
なぜか、罵声を浴びた。
歌姫様の。
「…え?」
「え? じゃないわよ、どんだけかかってんのよ、待ちくたびれたじゃない!」
この声、この姿、この口調、間違いなく歌姫様…って、
「え?」
思わず目の前の歌姫様に触ってみる。
蜃気楼や目の錯覚かとも思ったが、ちゃんと触れる。
頭、ほっぺ、肩、そしてまだまだこれから膨らむであろうむ―
「死ねっ!」
顔面に直撃する白い鳥…神鳥の音で生み出された、間違いなく歌姫様の鳥。
「は!? え!? なんでここに歌姫様が!?」
「なんでって、先に来たからに決まってるでしょ、変態」
このバカめ、って感じの目でこちらを見下ろす歌姫様。
「…ここはどこ?」
「鈴星」
「わたしはだれ?」
「変態」
「あなたはだれ?」
「歌姫」
と、こぎみよく質問に答えたあと、
「あんたほんと頭大丈夫?」
と、心配などかけらも混入していない、純度の高い罵倒を浴びせてくる歌姫様。
「変態な上にボケまで発症するとか、救いようがないわよ?」
うん、間違いない。この鋭さと冷たさ、本当に姉妹か小一時間ほど問い詰めようものなら、あらん限りの罵倒を浴びせられそうなこの感じは、やはり歌姫様に間違いなく、
「だから、なぜ、歌姫様が鈴星にいるのかと…」
「だから、先に来たからっていってるでしょ!」
だめだ、この人話し通じない!
と困っているところに、救いの手がやってきた。その手とは、
「お待ちしておりました、ユウ様」
高い身長に引き締まった体付き。
王宮であった時よりも多少ラフな格好でそのプロポーションをさらけ出す女性、
「コウ!」
「は、はぁ、コウですが…いかがなさいましたか?」
救いを求めるあまり凄まじい勢いで名を呼んだ成果、一瞬たじろぎつつもこちらを案じてくれるコウ。
「いかがもなにも、こいつは前からどうかしてるでしょ」
対して、頑なに俺を罵倒してくれる歌姫様。
なんだろうこの差…俺、泣いていい? 泣かないけど。男の子だから。
ってそれどころではない。
この状況…歌姫様がなぜか鈴星におり、コウがそれに慌ててないということは…
「コウ…もしかして歌姫様を連れてきたの、お前か?」
「はっ、お言いつけ通り、歌姫様を護衛しつつ鈴星へと先に戻っておりました」
職務を完遂しただけの平然とした顔のコウ…その顔には、ハンのようなやり遂げた感もなく、だが悪いことをした、という色も見えない。
「そうか…言いつけどおり果たしたか」
「はっ。護衛と聞き警戒しておりましたが、何事もなく辿りつけました」
「それは重畳…で、誰の?」
一瞬、質問の意味が分からず固まるコウ。
「誰の…とは?」
「お言いつけってのは、誰のお言いつけ?」
「ユウ様…ではないのですか?」
焦る…というよりは困惑するコウの姿がウソではないと判断し、ギィッっと歌姫様に顔を向ける。
「な、なによ…」
顔を向けたまま、何も話さず、ただ黙って姫を見る。
その様子を見て、コウが状況を察したのだろう。
「あの、ユウ様―」
「コウは黙って」
「しかし!」
「黙って」
「…はっ」
姫は言葉を詰まらせたまま、コウと俺を交互にみていたが、やがてどちらも喋らないということを察し、うつむき始めた。
そうこうするうちに他の人…王宮に詰める兵や政務官などもやってくる。
仮にも他国の…今はまだ他国の姫をこのまま…というわけにもいかないだろう。
「…ま、言いたいことはいろいろあるけどとりあえず」
ぱっと、明るい顔をする姫だが、そうは問屋が卸さない。
確かにこのままでは下手すれば無用な問題を引き起こす可能性があるが、だからといって、なぁなぁに流す気もない。
「何か言うことは?」
姫の顔が、再度固まる。
しかし俺の視線とぶつかってしまったせいか、改めて顔を背けることもできず、姫は必死に言葉を探し、
「…別になんもない」
などという。
「…今のは、聞かなかったことにする。だから、よく考えて…何か言うことは?」
その質問に何十秒もかけた結果、歌姫は…
「だから何も―」
「申し訳ございませんでした、陛下」
歌姫の言葉を遮り、コウが深々と頭を下げ訪ねてきました。
あまりにも角度が付いたせいで、ちっとも顔は見えないが、その声に『場を宥めてやりすごそう』などという、浅はかな音は聞こえない。
「私が確認せず連れ出しました」
「だと思った。それは間違いなくコウの責任だ」
「え、ちょ、まって、なんで、私が嘘ついたからでコウは―」
「いえ、いずれにしろ事実は変わりません…」
「違うでしょ!」
慌てて、コウに駆け寄る歌姫。そしてその体を揺するが、コウはそれに取り合わず、こちらへとまっすぐに顔を向けた。
「陛下」
揺する姫を強い力で引き離し、再度、確固たる意志で頭を下げるコウ。
「どんな御咎めも覚悟しております」
「だから?」
「…何卒、歌姫様にはお情けを」
もう少し気楽な状況だったら、どんな御咎もっていったね、ひゃほー! とか程度の職権乱用した自分の姿を思い浮かべなくもないのだが、さすがに今はそれどころではない。
それどころではないのだが…まぁ、いい機会といえばいい機会かもしれない。
「じゃ例えば、俺が何をしても、どんな王になっても仕えろといったら?」
「お仕えします」
「それが、お前の理想とする主の姿と正反対でも?」
「陛下がお約束して下さるのなら」
「何を?」
「…姫様に、寛大なご処置を」
あくまで姫様のため、ね。
「その言葉にウソはないな?」
「はい。この身全てを陛下に」
どうしよう、この身全てとかいわれちゃった…
「じゃ、コウへの処置」
「はっ!」
お読みいただきありがとうございます。
そんなこんなで、ひとまず歌姫と合流。
まぁ、馬車に一緒に乗ってる描写もありましたしね。驚くのはユウさんばかり。
次回、そんなユウをさらに驚かせる驚愕の展開!?
と、前書きではなく後書きで煽ってみる今日この頃。
ではまた次回。




