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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第3章 メガロポリス分裂編

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戦記75「宿の中」

 ついに明かされる女性の正体!?

 なんと女性は!?


 と、煽ってみましたが、煽り方が下手なのかそれともそもそも煽りというものの特徴なのか、なんかとてつもなく胡散臭いというか、逆に期待を削ぐというか、戦記75はっじまるーよー!

戦記75「宿の中」


 そして女は、


「んふふ、どーかなぁー? それはほら、実際に試してみないとわかんなくない? だからさぁ」


 と、いいながらフードの奥から何かを取り出し、


「気にいってからでいいから、とりあえずご飯だけでもどう? 何もしないからさ」


 と、取り出したものを…ナッツをかじりながら、そういった。


「ね、もう私もけっこうお腹すいちゃってさ。一人ご飯も寂しいっしょ?」


 そして、ウィンク。


「…ふー、わかった。おねーさんの根気に負けました。じゃぉとりあえずご飯だけってことでいい?」

「もちもち。んじゃいこう。ついてきて」


 そして女性にエスコートされるように向かったのは、先ほど見えた売春宿…の更にもう少し奥。

 人目を避けるようにいくつかの角を曲がったところにある一軒の酒場風の店。

 店に入ると、そこそこににぎわっており、裏路地にある店らしい怪しげな客や暴力が好きそうな客の姿がみてとれた。


「個室でよろしくー。あと夕飯をてきとーに」


 と女が店主と思わしきオッサンに声をかけると、オッサンはあごで部屋を差し、二人で部屋へと入るや、女は部屋の鍵を閉めた。

 個室と店とを仕切る扉は分厚いようで、閉めた途端外からの音が途切れる。ためしに隣の部屋とを遮る石壁も叩いてみたが、こちらも同じく分厚い作りしている。

 まるで内緒の話をするためのような部屋…というか、まんまその手の話をするための部屋なわけで、天井を見ると木ではなく石造りという念の入れようである。


「さて、こんなところに引っ張り込んで、どんな用事でスワロさん?」


 と、女のほうに目をやるとスワロが…深緑の傭兵団の団長であり、先の戦争で傭兵団ごと参戦してくれたスワロがフードを取り、ベッドに腰掛けようとしているところだった。


「もー少し早く気が付いてくれなきゃ、合格点はあげらんないねー、ユウ王様さん」

「それは失礼。スワロさんがあんなに上手に変装できるとは思わなかったからつい」

「お、嬉しいこというーじゃない。じゃぁー、今日はおまけで合格ってことにしといてあげよーかね」


 そういうスワロの顔を改めてみる。

 初めてあった時も戦争の時も薄い化粧だけだったのに対し、今は目元も紅もしっかり入り、娼婦や少し高級な酒場の女給といっても通りそうなご尊顔である。

 フード付きのマントも戦闘用ではなく、せいぜいが旅用の…普通に見れば防寒着のそれである。

 おまけに、声色まで変えて下さる念の入りようである。ナッツを食べてくれたのと、口調に元の雰囲気を残してくれてなかったら気が付かなかったかもしれない。

 実に恐ろしきは、女性の化粧である。


「で、人目を避けてまで話したいことって? てか、よく俺がここにいるって分かったね」

「まぁー待って待って、がっつき過ぎるのはよくないよ。どうせ今晩はこの町に泊まりだろう?」


 などと言っていると、扉がノックされ、スワロが覗き穴から外を確認し鍵を開けた後、無言の店主により夕食が運ばれてきた。

 正直この手の裏の店で、おいしい食事に出会うことは少ないのだが…


「あ、おいしい」


 お行儀は悪いが、から揚げを一つ口に放り込んでみると、素直にそんな感想に至った。


「でしょう? てか、毒の心配とかしないでいいーの?」

「毒入るような店にスワロさんが連れてくるなんて思えないし」

「いやいやー、もしかしたらアタシが敵に回ってたら仕込むかもよ?」

「大丈夫、スワロさんの俺への好感度はともかく、義理硬さに関しては信じてるから」


 と笑うと、スワロは鍵を締めながら肩を竦めてみせた。


「好かれてる…とかは思わないの?」

「好かれるか嫌われるかでいったら嫌われることの方が多いし、スワロさんに関して言えば、あの時団員を炊きつけて断れないように仕向けた恨みがあるかなって」

「恨み…ってほどではないけど、まー、気持ちよくはなかったね」


 負け戦に出ることを傭兵は嫌う。

 それは単に評判に関わるというだけでなく、負傷しても国から保護などが出る兵士と違って、傭兵は基本的には自己責任であり、その体そのものが資本である。団体としても個人としても、失ったり損なったりするわけにはいかない。だから、上だけでなく周りを炊きつけることにしたのだ。

 あの時、いろいろと計算した上で納得したからこそ話に乗ってくれたスワロだが、まぁ、上手いこと持ち上げて荒事に巻き込んだ俺への印象がいいはずもない。

 が、だからといって不義理を働くような人だとは思ってない。

 自分の好き嫌いだけで組織の在り方を決める、そんな団長ではないと見ている。


「個人は個人、仕事は仕事。分けて考えられる人でしょ?」


 そして仕事上の支払いと責務は完結しており、しかもその仕事は上々で終えることができた。


「だから、警戒する必要はない。まー、できれば女性には嫌われるよりは好かれたいとは思うけどね」


 なお、男はどちらでもいい。


「おーけー、それでこそ我らがユウ王ー様だ」


 カラアゲやピラフのようなご飯ものなどが一つの皿の上に乗ったプレート上の夕飯をこちらに一皿寄越しながら笑うスワロ。派手ではないが、艶やかではあるその顔に、できれば好かれたいなと改めて思う。年下には年下の、同年代には同年代の、年上には年上の良さがあるというのが持論である。


「参考までに、今のところスワロさんの好感度ってどんくらい?」

「いいとこ中の下だね」

「これから努力させて頂いても?」

「無駄な努力に終わる可能性があってもいいならお好きにどーぞ」

「じゃぁ頑張りますかね。これからもスワロさんとはいいお付き合いをしていきたいし」

「おーっと今ので、下の上だ」


 ワンランクダウン…

 すぐさま取り返すべく、言葉を変更することにする。 


「では言い直して、新緑の傭兵団さんとはいいお付き合いをしていきたいので…なら?」

「おーけー、それなら中の下に戻してやろう」


 それでもランクアップはなかったか…

 まぁマイナスにならなかっただけよしとするか。


「てか、中の下って、普通より下ってことですよね?」

「嫌われやすいっていう自覚はあるんだろ?」


 などと冗談や軽口…だよね? 本当に嫌われるわけじゃないですよね? などと思いいながら、俺はベッドに、スワロはテーブルに腰掛けて夕食のプレートに手を付ける。なお、イスではなくテーブルに腰掛けて、で間違いでないことを明言しておく。


「あ、食事の最中のお喋りはお嫌いで?」

「楽しいものか、意味のあるものなら大歓迎」

「じゃぁ改めて…どうしてオレがこの町にいると?」

「おや、そっちから?」

「別の方はいくつか予想があるのでね」

「おーけー、じゃぁアンタがここにいるって分かった理由からだ」


 スワロは食事の手を停めると、マントの裏から地図を取り出し広げた。

 地図は、神楽月、鈴星、そして新緑の傭兵団が詰め場にしている宿のあった南に隣接する国など、今いる町を中心に描かれているようだ。


「今や時の人となったニーサンは、今自分がちょっとヤバイ状況にいるのはお分かりで?」

「まぁ、それとなくは」

「おーけー。うちらもその状況は知ってるし、ニーサンなら知らないわけないと思ってた」

「信頼して頂いて恐悦至極」

「情報の価値を知ってる心配性で、臆病者、そして夢想家のニーサンなら当然」


 それ、褒めてるの?


「で、そんなニーサンがココ…メガロポリスのグランギニオールへ向かうという情報を手に入れた」

「正解」


 そう、そこが今回目指している場所。

 メガロポリスの中心からやや南部に位置する文化都市、グランギニオール。

 その町の有力者であるグラン夫人の元に、私設隊が避難しているわけだ。


「で、その情報どこから?」

「まーまちなって、順番順番。で、だ。自分が危うい状況にいるって分かってるニーサンなら…旅の道筋をどう取ると思う?」

「外国に比べればまだ安全な神楽月と鈴星を通って、なるべくよその国を通らないようにする」

「そ、正解」


 正解も何も自分のことなんだけどね?


「で、神楽月王宮から馬で出てひとまずの目的地にするなら鈴星の王宮…その直線距離上でかつ王宮から半日程度で馬を止めるとする。すると出発時間にもよるけど、いくつか該当する町が出てくるわけで」

「そのいくつかの町に、俺の顔を知ってる傭兵団が散らばっている、ってこと?」

「そ、せーかい」


 なるほど、つまり俺は張っていた網にまんまとかかったってわけだ。


「この町でスワロさんと出会ったのはたまたまなわけね」


 もう少し警戒しながら進んだ方がいいだろうか?

 とも思うが、今のところ怪しい動きをしていたのはスワロさんぐらいのものである。まぁ、もしかしたら俺が気が付かないだけかもしれない…


「っていうか、もしかして何人か俺のこと追ってる奴とかいたの?」


 でなければ、わざわざこんな裏店に立ち寄る理由はない。スワロが変装しているのもそこらへんに理由が?

 と思ったのだが、


「いーや、今のところは大丈夫だろーさ。少なくともうちの情報にはかかってない。この店を選んだのは、まぁ一応の警戒と、こっちの理由…表だって動いてる、っていうアピールはしたくないってだけ」


 そこらへんの『理由』とやらが、俺に声をかけた『理由』にも関わるってことなのだろう。


「ちなみにもう一つ先の町にはスバルがいるよ」

「ならこの町にして正解ってことか」

「どうせご飯食べるなら、きれーなおねーさんと一緒のほうが嬉しいって?」


 あくまで王と傭兵団というか、個人的に親しくなりすぎる気はなくても、褒められるのは嫌いではないらしく、くったくなく笑うスワロ。

 舞姫様のまじりの少ないそれとは違い、一筋ではいかない笑みだが、これはこれで深みがあってよいと思う。


「で、網を張ってまで俺に伝えたかったことは?」

「いいお知らせと悪いお知らせ二つあるんだけど、どっちからがいい?」

「うわ、ベタな前振り…」

「下の中」

「好感度いっきに下がり過ぎじゃない?」

「口は災いの元ってわかってよかったね、おにーさん」


 とやっている間に、こちらは食事は終えた。

 さて、どっちからがいいと言われれば正直どっちからでもいいのだが、


「じゃ、先に悪い方聞いておこうか」

「おーけー」


 と、軽く返答するスワロ。

 たぶん、スワロにとってもどっちが先でもいい話題なのだろう。

 さて、どんな悲報が飛び出すか…と身構えていると、


「これから暫く、ニーサンの手伝いはできない」

「やりたくない、じゃなくて、できない、ね?」

「そ、できない」


 と、悪びれることなくいうスワロ。


「で、いい方は?」

「あれ? あんまりショックない?」

「いや、正直あてが外れたし残念だなって思ってるけど、さっきも言ったように多少は予想してたので」

「ふーん、どんな予想?」

「その前に、いい話ってのは?」


 こちらもなんとなく予想を付けつつ確認すると、スワロは多少真面目な顔つきで、


「うちらは、にーさんの敵にはならないことにした」


 と、そういったのだった。

 お読みいただきありがとうございました。

 そんなこんなで、女の正体はスワロさんでした…覚えてます? 大丈夫です? 二度とでないキャラだと思ってましたか? ボクはそう思ってました(え

 まぁ、キャラ多くなれば相対的に出番がなくなっていくキャラがいて当然なわけで、先にいけばいくほどそれが顕著になるわけで、じゃぁ今のうちに再登場しておいて貰おうかなと。

 そんな感じな戦記75に続く76、今度も早めのアップを予定しておりますので、また次回。

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