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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第3章 メガロポリス分裂編

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戦記71「馬車の中」

 みなさんは乗り物酔いに強いですか?

 ボクは弱いので、移動中はもっぱら寝ることに努めてます。乗車してほぼすぐ寝ます。そしてパーキングや目的地に近づくと、不思議と起きます。

 ボクはこれをワープと呼んでいます。

 だからなんだと言われると困りますが、戦記71をどうぞ。

戦記71「馬車の中」


 チョウ竜の弟子ハンと、ガン竜の娘コウの、二人合わせてハンコウコンビが仕官してきてから数日後…

 俺は馬車に揺られていた。

 地図上でいうと、鈴星の北部。メガロポリスに属するとある小国と鈴星とを結ぶ街道を進んでいる。

 同行者は二名。

 一名は、


「ねぇ…まだ、つかないの?」


 グロッキーな様子を見せる、歌姫様。

 木製の屋根に扉まであるそこそこ立派な馬車は、乗合馬車や荷物用のそれに比べれば遥かに乗り心地はいい方なのだが、馬車旅に…というか、長距離移動そのものに慣れていないのだろう…搭乗して最初の方ははしゃいでいたものの、数時間もしないうちに、このありようである。

 まぁ、かくいう俺も今でこそ平気だが、慣れるまでは似たような感じだったため、偉そうなことは言えない。


「順調に進んで、あと一日とちょっとってところだな」

「うっわ…また車中泊?」

「いや、今日は町に着いたら宿に泊まる予定」

「ほんと!?」


 まぁ、食糧に余裕もあるので馬車で寝泊まりしてもいいのだが、目的地に着く前に身支度を整えたいというのもある。どうせ町で降りるのなら、泊まるのもいいだろう…根性で吐しゃ物をトシャトシャすることを割けている歌姫様だが、そろそろ限界だろうし、俺も女の子が嘔吐する姿に興奮するような趣味もない。


「ねぇ! 町まであとどれくらい!」


 と、笑顔を取戻し、大声を張り上げて御者に進行を問う歌姫。

 すると御者台と馬車内を結ぶ小窓から、御者を努める女性…コウが声を返してくる。


「夕暮れまでには着けるかと存じます」

「う、それでもまだ結構あるのね…」

「飛ばしますか?」

「やめて、むり、吐く」

「では、このままで」


 数日共に行動して分かったことだが、コウは基本的に無口である。喋らないというわけではないが、必要がなければ口を開かない。今も必要なやりとりが済むや、すぐに手綱を握りしめることに集中している。


「うぅ…酔い止めってまだある?」

「はいよ」

「ありがとう…」


 格納していた酔い止めを渡すやすぐに飲みほし、それでも暫く唸り声をあげていたものの、やがてその呻きが寝息に変わった。酔い止めに含まれている睡眠成分が効いたのだろう…あまり気を抜いていい旅というわけでもないのだが、どのみち馬車酔いでは寝てるのと大差ないだろう。

 姫様の寝顔を見ながら、ここに至るまでを少し整理することにする。



 ハンとコウがやってきた日、二人を雇用するかは別に、すぐに返すわけにもいかず、ひとまず懇親会をかねて食事をすることになった。


「で、ユウ様はどうするおつもりですか?」


 客人二人を食堂へ座らせている間、こっそりと尋ねてきたのはボウ。

 どこで情報を仕入れてきているのか、謁見の場には立ち会っていないにも関わらず、相変わらず耳が早い。

 食堂で舞姫と歌姫が客人の話相手をしてくれているのを確認してから、ボウと考えをまとめる。


「正直なところ人手は欲しい。チョウ竜とガン竜の紹介なら素性もはっきりしてるし、受け入れようかとは思ってる。まぁ、よっぽどアレでなければだけど」

「それは仕事をして貰わないことには分かりませんね」

「同意。何か丁度いいのある?」

「丁度いいかどうかは分かりませんが、お知らせなら一件」


 そういってボウが取り出したのは、封の切られた手紙。

 手紙には見慣れた女の字があった。それは、ドラゴニアから避難した私設隊…俺が直接雇用していたメイドを束ねるメイド長からの便りだった。


「…やっぱり、グラン夫人のところに避難してたか」


 手紙には、公私共に世話になっている夫人…メガロポリスに所属するとある国に居を構える有力者の館にいる旨が書かれていた。


「距離、安全性、信用度…ドラゴニアからの避難であることを考えると、グラン様のところ以外考えにくいですからね」

「で、俺の交友関係を知っている人間なら同じことを考えるわけだし」

「迎えに行った方がよいでしょうね。ドラゴニアから追手が来る前に」


 筆姫の報告から、ドラゴニアが逃げ出した俺と関係者を探していることは分かっている。逃げ出した時の飛空艇爆撃に腹を立てたのか、剣姫様の行方を知ってるとでも思っているのか、その理由までは定かではないが、いずにれしろ会って嬉しい相手ではない…いつかは乗り込むにしろ、だ。


「…できるだけ早い方がいいな」


 ドラゴニアから見ればいくつかの国を越えなければいけない場所に婦人の館はある。それ故簡単に追手を放つこともできないだろう…しかし、転覆直後に隣国に戦争をふっかけるような国が今のドラゴニアである。何をしでかすかわかったもんじゃない。そしてもし、その何かをしでかした場合、施設隊はもちろん、かくまってくれた夫人にまで迷惑がかかる。


「少数で素早く到着し、でもいざという時の為に、それなりに腕が立つことが望ましい…」


 しかし現状、神楽月で腕が立つとなると、オレとボウを除けば、ソウ竜、イン竜、舞姫の三者だが、激務がなくとも舞姫を連れて行くわけにはいかないし、舞姫がいかない以上イン竜もソウ竜も動かないだろうし、防衛のことを考えれば俺にだって動かす気もない。

 じゃぁ鈴星から…といっても、ガン竜もチョウ竜も、鈴星のことに関わってくれてはいるが、俺個人の竜というわけではけしてない。

 となれば…


「コウを連れていくか」

「そうなるでしょうね」


 そもそもが私兵として使ってくれ、と来てるのだ。俺が了解している限り、問題にはならないだろう。あえて問題が生じるとしたら、さきほどいったアレ…使い物にならない時だが、まぁ、コウは事戦闘にかけては大丈夫だろう。謁見の時は係りの者に預けていたコウの愛用の剣を見せてもらったが、見事な太刀だった。俺では振り回すだけでも一苦労だろう。


「渡りに船というかなんというか…」

「使用試験も兼ねて丁度いい頃合いですね」

「で、コウはそれでいいとして、ハンはどうしたい、ボウさんや」


 と、ボウにふる。


「…彼は、私の方で預かってもよろしいですか?」

「使えそう?」

「使ってみないとなんともいえませんが、少なくとも戦えるようにはみえませんので…」

「あ、やっぱり?」

「はい。武器の類も所持していない上に、魔力の流れも見えません」


 チョウ竜の弟子というから、魔力や気の類で戦えるのかも…と思ったが、根っからの官僚タイプなのか…二人でやってきたのは、コウがハンのボディーガードを担うためもあったのかもしれない。表向きはかなり穏やかに収まりの付いた先の戦争だが、万人が納得しているわけではない。

 俺や舞姫はもちろん、敵に寝返ったようにもみえなくないチョウ竜ガン竜及びその関係者への襲撃がないとは限らない。

 だからこそ、旅に連れて行くのはそれなりに腕が立つのが望ましいわけなのだが…


「まぁ…用途が限られているならいるで、変に悩まずに済むといえば済むか。その用途で活躍できればそれでいいわけだし」

「ただそうすると、私が同行できなくなりますが、よろしいですか?」

「んー、まぁ仕方ない。スワロにでも何人か生きのいいの借りれないか聞いてみる」


 と、先の戦いで味方をしてくれた傭兵団の団長の名前を出すと、ボウも納得してみせた。スワロやスバルは無理でも、部下の一人二人ならなんとかなるだろう。


「じゃあ、その方向で話をすすめますかね」


 そして食事の最中、二人には使用試験…として、仕事を言い伝えた。

 ハンには、ボウの仕事を手伝うように、

 コウには、旅についてくるように、

 二人は試験、という言葉に嫌な顔もせず、大きく頷いた。


「よろしくお願いします、ボウ先輩!」

「私が先輩…ですか」

「メイドとは世を忍ぶ仮の姿で、実際には秘書や右腕のような方だとお聞きしておりますが?」

「別に忍んでいるわけではありません。これはご主人様の趣味です」

「え…じゃぁボクも着た方がよいのでしょうか?」

「やめろ、着るな、そんな趣味はない」


 そんなもの着させようものなら、筆姫から恐ろしい小説の執筆依頼が来ること必至である。


「よかった…」


 心底ほっとしたようなハン。

 君はあれか、勉強はできるけど頭が少し残念なタイプなのか、それともあれなの天然なの?


「陛下、確認なのですが」

「あぁ、俺のことはユウ、でいい」

「しかし」

「他国や公式の場ではそれでもいい。立てる時は立ててくれるとありがたい。でも普段は変に畏まらなくていい。というか、旅の間ずっと陛下陛下言われるのは、いろいろとマズイ。理由は必要?」

「…いえ、私が浅慮でした。承知いたしました。ではせめて、ユウ様と及びしてもよろしいでしょうか?」

「まぁ、それぐらいなら」

「ではユウ様…私兵を迎えに行くとのことですが、数はいかほどでしょう?」

「五人ぐらいかな」


 あいつらたまに増えるからな…まぁ人手が増えて困る事の方が少ないからいいんだけど。


「では帰りは乗合馬車での移動をお考えでしたか?」

「そうなる。行きは馬で行って…コウは馬には?」

「嗜んでおります。それで提案でございますが、一度鈴星にお立ち寄り頂けないでしょうか?」

「別に構わないけど、鈴星の連中には勝手に動く許可は取ってるぞ?」

「いえ、そうではなく、鈴星の実家に長旅用の馬車があります。広さも五人なら余裕がございます。どうせ帰りが馬車になるのであれば、その方が色々と利便が効くかと」

「なるほど…御者は?」

「私が務めます」

「結構な距離を移動することになるけど、御者は一人で大丈夫?」


 通常、二日三日とかかるのであれば、御者は交代することが多い。寄合馬車なんかでは、御者が二人おり、一人が手綱を握り、その間もう一人は休み、交代交代で運転することがほとんどだ。

 俺が代われるなら問題ないのだが、馬は乗れても御者はやったことがない。


「大丈夫です。体の丈夫さには自信があります」


 その言い切り用は、例え女性と言えどガン竜の血筋…あの拳一つでソウ竜と渡り合った竜の血を感じさせる。

 ま、仮にダメそうだと思ったら、御者を雇うなり休みながら行くなりすればいいだけの話だ。


「わかった。ちなみに馬車は、一人二人増えても問題ない?」

「はい、平気かと。元は家族で旅行に行くなどで使っていたものなので」


 ということは、十一人兄弟とかが乗っていたのか…そりゃまぁ五人程度なら余裕もあるだろう。実際どの程度かはわからないが、仮にガン竜が十一人すし詰めになってる馬車であると想像すると…すごいな。そしてその中には絶対に乗りたくない。きっと、いろんな意味で吐くと思う…弱音とかね?


「それでは、先に向かっております。ユウ様は準備ができましたら、鈴星の宮殿へお越しください」

「一緒にいかないの?」

「はい。馬車の整備と荷造りをしておきます。水と食料、とりあえず三日分ほどでよろしいですか?」

「そう…だな。途中町で買い足すってことで」


 まぁ、馬車に積まなくても、一週間分ぐらいの食糧なら能力で格納できるんだけどね。


「では、お待ちしております」

「って、ちょっと待った。ボウ」

「はい、こちらをお持ちください」


 といってボウがコウに金貨の入った袋を渡す。


「整備代と食糧費。足りると思うけど、万一足りなかったら後で言って」

「いえ、それぐらい私が―」

「仕えては貰いたい。だけど、滅私奉公してもらいたいわけじゃない…必要な経費は雇い主が払うことにしてる」

「しかし普通は―」


 そう普通…というか割と多くの国や貴族が、仕える竜や騎士などに、恩賞は与えても経費や給与は与えないことが多い。勿論それは知ってるし、それを美徳としている精神を持つ者がいることも理解しているが、少なくとも俺はそれをドラゴニアでもしてこなかったし、これからもするつもりはない。


「もし納得いかないなら、褒美の前払いと思ってくれてもいい。俺に良かれと思ってコウが提案してくれたモノが実際よいと思ったから用意しただけ。おーけー?」

「…はい。ありがたく使わせて頂きます」


 その声と顔は心の底から納得した…とは言いづらいモノだったが、一応でも承服したのならよしとしよう。


「それでは改めて…万全に整えて、ユウ様をお待ちしております」


 そういってコウはその日のうちに鈴星へと帰っていき、


「ではハンさんも今日からお手伝いお願いできますか?」

「はい、喜んで!」


 ハンはボウの元で早速仕事を始めたのだった。

 お読み頂きありがとうございます。

 いよいよ外に出た! と思いきや、話自体は神楽月での出来事中心という…なんでかって、あれです。舞姫です。舞姫分が足りないんです。いえ、『歌姫が歌姫を睨んだ』とか誤字するぐらい歌姫も好きなんですが、舞姫も好きなんで、旅に出る前に…ね? ほら、つまり、そういうわけですよ。

 てなわけで、次回は舞姫回です。



 たぶん。

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