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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第3章 メガロポリス分裂編

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戦記70「来客」

4行でまとめる重要項目


 新キャラ登場。

 久々の一人称視点。

 相変わらず名前の出てこない登場人物。

 その他もろもろ。


戦記70「来客」


 歌姫を先に行かせた後、

 俺は着替えてから謁見の間へと足を向けた。

 神楽月の玉座がある謁見の間は、中央門と向き合い、中庭に背を向けるように配置されており、王族の私室がかたまっているエリアからはやや距離がある。


(―さて、このタイミングでの来客、それも急ぎってあたりで考えられるのは)


 頭の中にいくつかのグループや名前を挙げる。

 ドラゴニア、メガロポリス、グラン夫人、鈴星からの伝令…

 来客が良い知らせを持ってくるとは限らないわけだが、まぁ悪い知らせだったのなら、イン竜ももう少し慌てていてもよかっただろう。

 ボウのまとめた報告書にもさっと目を通したが、緊張を強いるモノは少なかった。

 そんなこともあり、特に警戒するというわけでもなく、謁見の間へと到着。


「遅くなり申し訳ありません」


 相手がどのような立場か分からない以上、謝罪と共に入りつつ、その場にいる面々を把握する。

 玉座に座るのは、晴れて許嫁となった舞姫様。最近は日中、玉座に座ったまま来客や国政に追われており、謁見の間にくれば必ず会えるぐらいになっている。一時も会えないというほどではないが、会う時間がある時に決めておかないといけないことも多く、あの夜以降、深い意味でお相手できてないのが残念な限りである。

 なんなら夜、姫の私室に忍び込んでもいいのだが、夜は夜で連夜のごとくイン竜と打ち合わせなのでそれもままならない…


(―っていうか、よもや忍び込ませないためにやってきてるとかじゃないだろうな、イン竜)


 そのイン竜は、姫の後方に待機している。

 そして、舞姫の右斜め前にソウ竜。舞姫と同じくほぼここに常駐し、警護などに努めているらしい。


「遅い!」


 そして俺の顔を見るなり、このように理由をつけて文句をいうなり怒鳴るなりしてくる。


「姫様の貴重な時間を奪うでない!」


 この場合、気を使うのなら来客にでは?

 と思いながらも、面倒なので視線をずらすと、二つある玉座のもう片方に、居心地悪そうに歌姫が座っていた…というよりは、座らされているのだろう。

 俺の姿を見つけた途端、嬉しそうに玉座を立ち上がろうとしたが、すぐにソウ竜が噛みついた。


「歌姫様、なぜ立ち上がるのですか!」

「え、だってユウが来たから」

「あ奴は、客人であり、この国の王族では、けっしてありません!」

「や、でもそのうち姉様と―」

「だと、して、も! 今は―」

「あー、もう! わかったわよ! 座るわよ! 座ってればいいんでしょ!」


 そんなやり取りに、政務を担当している何人かの官僚達は、ため息をついたり微笑ましげに見つめたり、様々な反応を見せた。

 そんな中、


「ユウ様、どうぞこちらへ」


 舞姫様が俺を玉座の付近へと呼び、それに合わせて玉座ほどではないにしろ、質と見ために気の使われたイスが用意された。

 先王達が存命の時に、謁見の間に姫様たちが同席する時使われていたものと同じタイプのものらしい。ソウ竜辺りはこれに俺が座ることに難色を示したそうだが、この前の戦争で活躍した…なんて名前なんだか相変わらず分からない、部隊長の男というか、個人的にはそんなエピソードよりも、水かけて尻を撫でてきた男としか思えないのだが、とにかくあの男を筆頭に、せめて、と食い下がったらしい。


「…イスがどうかしましたか?」

「いや…なんか、日増しにこのイスの色つやが良くなってるなって」

「なんでも、手の空いた時間に兵が交代で磨いてるそうですよ。なんでも舐めるように丁寧さだとか」

「へー…舐めるように…」


 ダメだ、一瞬本当に舐めながらイスを磨いてる姿を想像してしまった。


「慕われてる証拠ですね」


 優しげに微笑んでくれる舞姫様…そうだよね、普通そう考えるべきだよね。いつまでも来客を待たせるわけにもいかないし…

 なぜたかがイスに座るだけでこんな葛藤をしなければならないのか疑問に思いつつも腰掛け、そして改めてここまで無言を保っていた来客を見る。

 来客は、二人。

 どちらも膝を折り頭を下げる形で待機している。

 …まさか、待っている間ずっとあの姿勢だったとかないよな。


「お顔を上げさせて下さいますか?」

「俺が?」

「私がいっても聞いて下さらないので…」


 舞姫が困ったように笑う…のを見て、来客の所属が絞れてきた。

 まぁ、ならあまり堅苦しくなくていいだろう。


「改めて遅くなって申し訳ない。楽にして」


 そして顔を上げる二人の来客。

 一人は細身…というよりは、華奢な少年。年は舞姫と歌姫の間ぐらいだろうか? 美形というほどではないが崩れてもいない顔立ちと、筋肉のついていない身体とで実年齢よりは下に見られそうな感じである。

 そしてもう一人は、重厚な金属系の鎧を身につけた女性。こちらは二十歳前後といったところ…長身の美女、といって差し支えないだろう。切れ長な目と、厚めの唇に目が行く。ただ、男でも重たく感じるであろう重量感のある鎧と、高く結んだポニーテールからは、美麗さよりも活力の方を強く感じる。

 どちらも見覚えはない…見覚えはないはずなのだが…どちらもうっすら見覚えがあるというか…


「えーと、俺へのお客様ってことだそうで」

「は、はい! お会いできて光栄ですユウ王様!」


 はつらつと答えたのは、少年の方。

 外見にしっくりくる、細く高い声をしている。


「どちらも、はじめましてで間違いないかな?」

「はっ、お初にお目にかかります、ユウ王陛下」


 堅苦しく答えたのは、女の方。

 声まで堅苦しさをまといってるのか、張りと力が語尾まで届いている。

 そして二人は、そのまま自己紹介を始めた。


「師匠に言われ参りました、名はハンと申します!」

「父より助言頂き馳せ参じました、名はコウと申します」

「「我ら二人、どうぞ手足としてお使い下さい」」


 そして礼を取る二人。

 その礼の馴染み具合からして、かなりこの手の場や相手とやり取りしてきたのだろう。そしてその礼は、俺がさんざん練習させられた鈴星や神楽月に見られる礼の形。そして、舞姫ではなく俺に礼を尽くすってことは、おそらくは鈴星の人間だろうってわけで、


「えーと、ハン君?」

「どうぞ、ハン、と呼び捨てに!」

「じゃぁ、ハン。師匠って」

「はい、チョウ竜様です!」


 だよね?

 っていうことはもしかしてだけど、


「コウさん?」

「コウ、で。陛下」

「じゃぁコウ。コウのお父さんって」

「ガン竜でございます」


 あぁ、やっぱりね。

 そういわれると、顔のパーツがところどころガン竜に似てるものね。


「で、手足として使ってくれってのは?」

「ぜひ、ユウ王様のお手伝いをさせて頂きたいのです!」


 はつらつと述べるハン。


「先日の葬儀でのユウ王様の御姿に胸を打たれました!」

「隣王の葬儀のこと?」

「そうです! あえて『隣』の文字をお送りになった深さ、参列者一人一人と別れを共有するかのような立ち居振る舞い! 師匠から常々言われていた、使えるべき主に間違いないと確信いたしました!」

「あぁ…そういえば、チョウ竜が部下として働かせている何人かにいたっけか?」


 大正解だったらしく、ハンの顔に光が溢れる。


「自己紹介もしていないというのに、まさか覚えていて下さるなんて!」


 チョウ竜の部下のほとんどが成人の中で、珍しく少年がいるなぁぐらいのことだったのだが、偉い喜びようで言うに言えない。


「どうぞ、御側に置かせて下さい!」

「気持ちは嬉しいんだけど、チョウ竜の手伝いはいいの?」

「はい。自分に与えられた分は片付けましたし、兄弟子様達もおります。ユウ王様なら自分をうまく使ってくれる故に、尽くしてこいと送り出されました」


 そういえばチョウ竜から、国を任せるならとか、手元で使うなら、とかいくつか聞かれたことがあったが…まさか弟子を送りつけるための選考だとは思わなかった。


「…それとも、人は足りておられるのでしょうか?」


 やや不安げにこちらを見るハン。

 人手が足りてるかと言われると微妙である。

 が、すぐに手元に置くかというと…


「うーん…」


 などと唸りつつ、明確な答えは返さないまま、女性…コウへと話を振る。


「で、コウも同じ用件だと」

「はっ。父から、見込みのある王が現れたので、今のうちに恩を売っておけと」


 評価されたこと自体は嬉しくないでもないが、なんだその打算にまみれた助言は。せめてその助言をもらったことぐらいは隠したらどうだろうか?


「てか、ガン竜、娘いたんだな…」

「娘どころか、子だくさんですよー、ガン竜一家」


 と、後ろからイン竜の補足が入る。


「はい。兄が四人と弟が三人」

「多いな」

「それと姉が二人と妹が一人です」

「多すぎるだろ…」


 その衝撃の兄弟編成に、ソウ竜や歌姫まで反応を示した。


「まさか、十人兄弟とは…」

「十一人兄弟でしょ」

「何をおっしゃいますか歌姫様、某をたばかろうとしても―」

「男七人、女四人、合わせて十一」

「いやいや、姉二人と妹が一人で―」

「だから十一でしょ!」


 お前は自分を人数に数えられない子供か。ちゃんとコウをいれてあげなさい、とは面倒なのでいわない。

 そんなことよりも聞いておかねばならないことがある。

 舞姫と目があったのをみると、どうも姫様も同じことを考えたらしい。


「…ご兄弟は、この前の戦いにおりましたか?」


 舞姫がと声をかけると、ハンがはっとした顔を浮かべてコウを見た。

 歌姫とソウ竜も言い争いを収めた。


「おりました」


 コウの答えは変わらず強く淀みなく広がる。


「…どうなったかお聞きしても?」

「兄と弟が戦死しました。けが人も何人かおります」

「…兄と弟は、近衛兵か?」


 俺の問いに、やや驚きをみせるコウ。


「その通りです。父はその話を?」

「いや、兄弟がいることすら今初めて聞いた」


 が、そもそも隣王が鈴星から連れてきた兵は少数だ。

 その中で、ガン竜の息子達…おそらくは父に似て武に長けた者がいるとしたら、そこだろうと思っただけだ。そして、近衛兵にいたということは、俺や姫と直接やりとりをした可能性が高い。

 まぁ、仮に直接やりあってなくても、十分すぎるほどだろうが…


「…恨むか?」

「滅相もございません」


 俺の問いに、即座に首を振るコウ。


「兄弟は皆、自分の意思で戦いに赴きました。赴いた以上、責は全て己に。それに、恨むどころか感謝しておりました」

「感謝…って、殺しちゃったのに?」


 思わず横から口を挟んだ歌姫が、舞姫に睨まれた。

 そんなやり取りなど意に介した様子もなく、コウは言う。


「先程もいいましたが、覚悟して赴いた以上、死も怪我も恨むことではありません。もし恨むことがあるとすれば、踏みにじられた時」


 そして、コウが俺と舞姫を見る。


「父も兄弟も感謝しております。戦の場で、自分の仲間を殺され、国を奪われそうになり、それでもなお人として相手を慮るユウ王とそれを許した舞姫様を」


 そして、続ける。


「故に、参じました。恩に報いる為、すぐにお役に立てる兄弟の中から、ユウ王陛下が自由に動かせる手勢として」


 それに、加わる。


「同じく、参じました。お役にたちたいと申し出た弟子の中から、気兼ねなく命じやすい者として年少の自分が」


 そして、二人は再度言った。


「「我ら二人、どうぞ手足としてお使い下さい」」

 お読みいただきありがとうございます。

 というわけで、新キャラ祭り第一弾はガン竜の娘コウでした。さて次はどんな美女や少女が飛び出すか…みなさんお楽しみに!


 え?

 ハン?


 知らんな。


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