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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

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戦記63「『ロウ』にまつわるエピローグ」

 全国3人ぐらい(うち一人は相変わらず作者)の、ユウ王戦記にオッサンと老人を求める皆様こんにちわ。ボクらのロウ竜の締めの舞台です。どうぞ笑顔でお送りください。

 それ以外の方は「あぁ、これが終わったら女の子と戦いの日々が待ってるんだ!」と思ってお送りください。

 それではどうぞ。

戦記63「『ロウ』にまつわるエピローグ」


 佇む姿を見るだけで、分かる。

 もう、何年も見てきたロウ竜だからこそ分かる。

 この数日で…たった一人との出会いをきっかけに、歌姫が変わったことを。

 変われないとは思っていなかった。

 しかし、こうも変われるとも思ってなかった。


「姫様を待ちきれなかったこと、お詫びいたします」

「いえ…あのままではきっと、ダメなままでしたから」

「…よい出会いでしたな」


 誰でもいいわけでもなく、

 何時でもいいわけでもなく、

 会うべき時に、会うべき者と、会うべくして会う。

 それが成せた時、人がどれだけ変わるか…それは自分の体験として知っている。

 自分のことしか考えられなかった『狼』が、国を思う『老』にまでなったのだ。


「どうぞ、優しさと厳しさを備えた…よい王に」


 深く、頭を下げるロウ竜に、


「はい。約束いたします…今までありがとう、ロウ竜」


 姫もまた頭を下げ、それ以上は言葉にできず姫と竜は…師匠と弟子でもあった二人を頭を下げ合い、そして示し合わせたかようにぴったりと頭を上げた。

 どちらも笑顔で…ただし、舞姫はぎこちない笑顔で。


「精進しなされ」

「…はい」


 姫の返事を満面の笑みを浮かべたまま聞き、ロウ竜は歌姫へと視線を向ける。 


「歌姫様も…いつまでも小さいままだと思っておりましたが、あの一戦、目を見張りました。あそこまで操れる者、そうはおりません」


 話しかけるロウ竜に、しかし歌姫は何も言わない。


「戦終わりの食事で、筆姫様のお相手を買って出たのも、よい判断でした。御話相手としてもしっかりとお勤めを果たしておりましたな」


 やはり歌姫は何も言わない。

 いや、言えない。

 口は開いてはいる。

 しかし言葉は息になって掻き消えて、掻き消えた分を取り戻そうと吸い込む息は胸の浅いところで止まり、息苦しくなるだけ…

 話したいことはあるのに、

 伝えたいことはあるのに、

 ここに居並ぶ誰よりも、ソウ竜よりもあるかもしれないのに、

 もう、言葉を並べる時間なんてたいして残っていないと分かっているのに、

 なのに、


「戦も、政も、じいがお教えすることはできませんが…」


 いや、だから、


「世界を見なされ。師などいくらでもおります。得るものを得ればきっと巫女姫様以上の―」


 言葉の途中で、歌姫はロウ竜にしがみついた。

 出ない言葉の代わりに、足りない息の全てを駆け出すことに使って。

 言葉もない歌姫に、ロウ竜もまた言葉を見失い、探して、探して、自分の記憶をまさぐった結果出てきたのは、我がままで気まぐれで振り回され続けた歌姫の…歌声に、笑い声。


「…姫様。どうか、いつまでもあなたらしく笑ってお過ごしください。あなたも、周りの人も、笑っていられる場所をお作り下さい…ただし、言葉づかいだけはお気を付け下され」


 頭突き…ではなく、強く頷いた歌姫の身体を力強く放し…


「…ぃ…ぁ…ぉ」


 老いた耳に微かに響いたその声に、


「こちらこそ」


 そう返すと、

 歌姫は舞姫に肩を抱き留められながら、後ずさっていった。


(―さて)


 言葉をかけるとしたら、これが最後。

 そう思いながら、黙したまま視線を向けていたユウ竜と視線を交わすと…


「では、頼もうかの」


 何もいわず、首筋に刃物をあてる仕草を見せつつ、ソウ竜へそれを願い出た。

 ソウ竜は一瞬だけユウ竜に顔を向けたが、すぐにロウ竜へと視線を引き戻すと、ぐっと刀を握った。

 息を整え、

 何度も刀を握り直し、

 ようやく刀を振りかぶり、


「あのさー」


 そしてそこにユウ竜が割って入った。

 座すロウ竜の視線に合わせてしゃがみ込んだユウ竜を見て、慌ててソウ竜が刀を止める。


「このバカ者が! 何を急に―」


 ソウ竜の罵声を片手で止めるよう仕草をしつつも、ユウ竜の視線はロウ竜としかぶつからない。


「思わせぶりにこっち見るからなんか言ってくれるのかと思ったら、俺だけなしとか、ちょっと寂しいんですけど」

「といわれてものぉ…さして親しい間柄というわけでもあるまい?」

「まー、そうですけどね? でもほら、先人の貴重な教えとかは聞いておいて損はないかなーって」

「損がないかなー程度にしか思ってない奴と話してものぉ」

「いやいや、価値があるかどうかは聞いてからじゃないと分からないじゃない? それに俺には理解できないだけで、他の人間には価値があるかもしれないんだし、受け取っておいて損はないんじゃない?」

「まったく…つくづくズルイ奴じゃのぉ」


 そういいながらも、他の誰に向けた笑みとも違う…悪戯しあった悪友どうしにか分からない、人の悪い笑みを浮かべるロウ竜。そしてユウ竜。


「…ま、勝ち逃げしたままでは気も咎めるしの」

「戦はこっちの勝ちでしょうが」

「あんな綱渡りばかりの戦で勝ち誇るとは底が知れるのぉ」

「はいはい。じゃぁその浅い底をずーんと深めるようなありがたいお言葉を頂戴したく存じます候」

「何がききたい?」

「なんでも。貰える物は取りあえず貰ってから、後で考えるタイプなんで」

「じゃぁ…余計なお節介だとは承知の上で、言わせてもらうとするが」


 顔を改め、ロウ竜はいう。


「強くなることを諦めとるんじゃない、馬鹿者が」


 同じく改め、聞くユウ竜。


「若いくせにかっこつけとる場合か。上手なとか、楽なとかは老人の特権じゃ。今まだどうにかできるうちに、もっと強くなっておけ。でないと…死ぬ時の後悔が多くなるぞ」

「じーさんみたいに?」

「あぁ、ワシみたいに」

「…そういうわりに、あんまり後悔はみえないけどねぇ?」

「まぁ…おかげさまで、最後にいいもんみせて貰ったからのぉ」


 ユウ竜の向こう…舞姫と歌姫を見ながら、ロウ竜。


「お主は人によって毒にも薬にもなる劇薬みたいな奴じゃろう。誰からも必要とされる風や水や、誰をも狂わせる金や色気のようなものとは違う種類の人間じゃ…だから、より一層使いどころを間違えるな。お主が強くなれば強くなるほど、与える影響は大きくなる」

「…薬、ね」

「ま、こんなこと今更ワシに言われんでも分かっておるんじゃろうが…分かっておると知っててあえて言う意味、お主ならわかるな?」

「ん、心得た」


 そこが話の終わりであると示す為、笑みを挟むロウ竜とユウ竜。


「…二人のこと、よろしくの」

「え、ちなみにそれって、筆姫様的な意味で?」

「もしそんなことになろうもんなら、化けて出るから覚悟しとくんじゃな」

「まじで?」

「マジじゃ」

「仮に同意の上でも?」

「万が一同意の上でも」

「…見られてると思うと随分萎えるな」

「よかったわい、興奮されるかと思うておった」

「ま…そんなこんなで、諸々受け取りました」

「うむ。いくらか価値があるといいの」


 ユウ竜が、しゃがんだまま、半歩後ずさる。

 ロウ竜が、ソウ竜に刀を構えろと合図する。

 それを推し止めて、ユウ竜が笑う。


「そうだ。言葉を貰ったお礼に、こちらも御礼をしなくちゃね?」


 その、これ以上ないほどに『してやったり』というユウ竜の笑みに、『しまった』という顔を見せるロウ竜。


「…これが目的で、わざわざ聞きおったな」

「なんのことかわからないけど、言葉のお礼には言葉を返すのがいいと思うので…文字を送ることにします」


 その言葉に反応したのは、ロウ竜ではなく、今まで黙っていた高官達。


「罪人に文字を送るとは何事だ!」


 そういった高官達に、ユウ竜は笑顔のままいった。


「ボウ、確認だけど、ここで処刑を行うにあたり、誰か一人でも『ロウ竜に文字を送るな』っていった人いたか?」

「いえ、私の記憶にも、記録にもありません」

「だよねぇ? もし嫌なら嫌って最初にいっておくべきだと思わない?」


 その発言に高官達は憤りを現したが、最終的にはなんといってもどうにもならない相手だと悟り口を閉ざした。


「ほーんと、ロウ竜の言うとおり、劇薬みたいなやつだよねー」


 笑うイン竜に釣られて笑った兵士が高官に睨まれ姿勢を正したのを見て、ロウ竜もまた笑い声をあげた。


「じゃぁ、まぁ、場も整ったところで…」


 笑顔のまま、ユウ竜は文字を送る。

 笑顔のまま、ロウ竜が文字を受け取る。

 最上位の敬意と、相手の名を背負う覚悟をもって。

 最高位の感謝と、相手に名を背負わせる責務を持って。 


「朗らかな竜で、朗竜」

「…謀反を起こした罪人に文字を与える上に、しかも朗らかときたか」

「そ。どれにしようか悩んだんだけどね…最後に歌姫様と舞姫様が、これって選んでくれました」


 眼を見開き、ロウ竜が二人の姫をみやる。

 そして三人は並び、


「例えその体なくとも、その朗らかな魂は空から我々を見守り」


 最初に舞姫が口を開いた後、


「その朗々たる声は我らを導き、明朗なる国の礎とならん」


 歌姫が続き、


「我ら『朗』の字を送り、ここにそなたを『朗竜』として歴史に刻む」


 そして最後をユウ竜が締めくくり…ユウ竜のその言葉に、

 舞姫と、歌姫のささやかな…最後の贈り物に、

 自ら首を落とすその責務を厭わぬ孫に、


「…ほんとに、ずるい男じゃなぁ」


 ロウ竜は何かがこぼれないよう目を細めたまま、


(―さぁ…逝きますぞ)


 贈られた時を体現するかのように朗らかに笑い、


(―長く御側を離れておりましたが…そちらに逝きましたら、どうかお聞き下され。あなた達のいなくなった後、こんなにもズルイことをするようになった姫様たちへの愚痴を)


 笑い、

 笑い、

 笑い、

 笑ったまま、その生涯に幕を下された。


 お読みいただきありがとうございます。

 

 ロウ竜になんの字を送るか…偉く悩みました。

 キャラクターを作るに当たっては『狼』と『老』が中心で、他にはまぁ姫様を捕えてるって意味で「牢」とか、大変な人っていみで『労』とかも考えていたのですが…作家としてってよりは、あの3人が相談してつけるならこうなるかなってことで、最後の最後で作中の「朗」になりました。


 ちなみにですが、神楽月リン王にはまだ字が送られていませんが、こちらは次の章…かその次の章か…舞姫が王位を継承し終えたところで、本人がつける予定です。

 ロウ竜や鈴星リン王に比べると若干あっさりめに流したのは、まぁその文字云々あたりでまた触れる機会があるだろうな…って理由です。もしなかったら…その時は諦めてもらいましょう。ごめん、神楽月リン王。


 さてそんなこんなで、無駄に長くならなければ次でエピローグラッシュも終了です。最後の中心となるのは、もちろん…


 というあたりで、また次でお会いできれば幸い。




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