戦記59「諸国にまつわるエピローグ」
気が付いたら2話分ぐらいの長さになっていたので、別けました。
ちなみにみなさん、女の子の寝間着といったらどんなものを思い浮かべますか?
ちゃんとした寝間着とかも好きですが、個人的には胸元に名前が入ってる中学校時代のジャージとかも、外見を作られてない感があって嫌いじゃないです。
そんな感じで、描写してないところはみなさんのお好きな物でよいんじゃないかという前置きとともに、エピローグラッシュどうぞ。
戦記59「諸国にまつわるエピローグ」
「ユウ様、入ってもよろしいですか?」
ユウ竜が鈴星へとやってきてから三日ほどが経ったある夜、王宮内の一室…ユウ竜に宛がわれた部屋に、筆姫がやってきた。
この日もユウ竜は、神楽月合併と合併後のあれこれのために日中はほぼ休む暇なく、移動や会議や雑務に追われ、ようやく一息ついたところだった。
(―断る)
という言葉も正直でかかったが、相手が筆姫とあってはそれもできない。
神楽月へと呼びつけたのは他でもない自分だし、日中の雑事をそれとなく手伝ってくれていることもある。
「どうぞ」
と声をかけながらユウ竜が扉を開けると、そこには質の良い寝間着に身を包み、昼よりも無防備な姿をさらす筆姫の恰好があった。
「こんな夜更けにどうしました?」
「夜伽に」
筆姫の笑みに、肩を竦めつつ入室を促すユウ竜。
扉を閉めると、窓を閉めているせいで部屋の明かりはランプだけとなり、そのランプの明かりもまた就寝直前とあり、小さく頼りなさげ…
「夜伽…ですか?」
「はい。受け入れて頂けますか?」
「もちろん。では、喜んで『語り役』を務めて頂きましょうか?」
身長差から自然上目づかいになっていた筆姫に動じることもなく、ユウ竜が人の悪い笑みで返すと、
「…やはりこの程度の冗談では、動じてくれませんね」
残念、とばかりに口を尖らせつつ筆姫は夜伽へと―男女の交わりを意味する方ではなく、物語を語る方の夜伽を始めるのだった。
「さて、今宵の物語は、まだどんなタイトルになるか分からない、周辺諸国の物語。その年のある週、大陸の東側では、二つの大きな戦争が…規模という意味ではなく、重要性という意味で大きな争いが二つありました」
そんな切り出しから姫が語った大きな二つの争い。
一つは勿論、神楽月内の内乱。
そしてもう一つが、ドラゴニアの内乱。
共に内乱でありながら無視できない影響を周辺諸国へと与えることになった戦争のその後と、それが周辺国へと与えた影響についてである。
「物語、というよりは情勢レポートってことですか」
「夜伽の物語としてはお堅いですが、ユウ様には必要なお話かと」
「ま、そうですね」」
これからを考えるに周辺の出方は重要だ。
神楽月でボウも集めてくれて入るだろうが、筆姫の―ペンシルグラードの情報網から聞ける情報もあればそれにこしたことはない。取捨選択できる力を持つなら、情報が多くて困ることはないのだから。
「まずドラゴニアですが、ゴウ竜様はキョウ王様を討ったその日のうちに王位に就き、ゴウ王様となりました」
「ペンシルグラードとの同盟は?」
「維持を表明されました。が、あくまで同盟はペンシルグラードとであり、他国との関係は個別の信頼関係による、と念を押されてしまいました」
これは筆姫配下の騎士団がドラゴニアに直接赴き、謁見した上での情報である。
当初、大国との関係性から筆姫自ら謁見―というよりは、交渉を行う予定だったが、出立ぎりぎりになって、ボウが筆姫達が駐留していた町へと到着。
ボウから事の次第を聞き、緊急性が高いと判断した筆姫と、大国過ぎる故に少人数で筆姫を連れて乗り込むことに不安を持っていた騎士団の思惑が重なり、筆姫と半数は神楽月へと…残り半数がドラゴニアへ向かうこととなった。
(―通りで、騎士団の数が少なすぎると思った)
動きやすさを優先したからとはいえ、あの夜神楽月に筆姫と共に現れた兵は二十にも満たない程。いかに強者揃いの騎士団とはいえ少なすぎると思っていたその理由にようやく合点がいくユウ竜。
「てことは、俺のせいで国益損なわせちゃったか…」
「責任…とってくださいね?」
上目づかいで言った後、言葉に詰まるユウ竜を見てすぐに笑顔に切り替わる筆姫。
「と、言いたいところですが、わたくしが直接行ったとしても大差なかったでしょう。あくまで『交渉』ですから」
「話ができる奴じゃないと意味がない、と」
「相手はゴウ王様ですからね…側近らしき女性も折れるような方ではなかったと聞きます。それで、ここまではあくまで前振りでして…」
「え…まさかもうなんかしでかしたの?」
「はい。ドラゴニアは、現在隣国と戦争状態にあります」
唖然というかなんというか、口元を引きつらせたユウ竜に解説する筆姫。
「ゴウ王様が即位したその日、ドク竜さんが隣国の村へ単身攻め入り、人体実験を始めました」
村からの定期連絡が来なくなったことから偵察部隊の派遣、その偵察部隊も帰ってこないことから兵団の派遣、兵団の一部が命からがら逃げだしたことにより、事件が発覚。
「それ、ドク竜わざと逃がしたな」
「なぜ…ですか?」
「ドク竜の強さ…てか能力なら一兵団ごとき、本来なら逃がすわけがない。たぶん、もっと実験隊が欲しい、ってことなんだと思う」
ユウ竜の見立てが合っているかどうかは別に、いずれにしろ隣国はこれをドラゴニアの侵略と断定し、宣戦布告。
両国とも同盟を結んでいるペンシルグラード騎士団が仲裁役を名乗り出たが、両国とも拒否。徹底抗戦の構えを見せ、現在も決着はついていない。
「『他国との関係は』って、こっちの方がメインの話だったのか…」
隣にあるからこそ長年の問題もあった両国の関係である。今回はドク竜の一件が切っ掛けになっただけで、いつそうなってもおかしくなかった。故に問題はそこではない。
「その戦争終わったら、次はメガロポリスの番だな」
「ドラゴニアが勝ちますか? 両国とも、小さないざこざは昔から起こしながらも決着はつかないままであったと記憶しておりますが」
「それは小競り合いだからで、全力で打ち合うなら負ける要素がない」
ドラゴニアは同盟国への派遣や、自身の戦争で年中、王や七竜を各地に散らばらせている。例え強国といっても、一個竜隊だけでそうそう戦に勝てるものではない。
「しかし今、キョウ王様は死去、ユウ竜様とヨウ竜様、カイ竜様、ドン竜様という四竜と大勢の兵を欠き、剣姫様…が、行方不明でもですか?」
剣姫様、の名前を言ってしまったところで顔を曇らせながら問う筆姫。
その気遣いの仕方は、ユウ竜が剣姫にどんな思いを抱いていたか知っていなければできないもので、そして二人の間柄は、それを知り、知られていることも知っている仲である。
この、二人の間柄を表す適切な言葉は残念ながら、まだこの世に生まれていないので、表現することはできないが…そういう仲であることは間違いない。
「…それでもドラゴニアだ。形振り構わなければ、ドク竜だけでも滅すことはできる」
「そうしないのは?」
「何も残らないから」
戦争の理由にもいくつかある。
領土や賠償金、宝や人材や技術など、欲しいモノを奪うため。
恨みや妬みや政治的理由から、人や建築物や自然などを破壊するため。
または、単に愉悦のためなどもあるだろう。
目的を達成しない勝利など、戦争においては…犠牲や支出を伴ったうえで得た無駄な勝利など、敗北に等しい。
「ではドラゴニアの侵略はあくまで、略取なりの目的があるわけですね?」
「少なくともドク竜は毒や薬の研究をするための実験隊や敵が欲しいから、全てを滅ぼすことはしない」
人は無限にいるようで有限だ。
土地を荒らすのは一瞬でできても、その土地が再び元のようになるには飽きるほどの時間がかかる。
だから、普通はしない。
少なくともドク竜は。
「ではドク竜様以外は?」
ユウ竜は至極真面目な顔で数秒考えてから、
「…なんともいえない」
そう答えてから、理由を述べた。
「ゴウ竜は、王になる力をつけるために戦いに赴いていた気がするけど、その目的を達成した今、何を考えてるのか正直わからない。まだ強くなりたいのか、目的もなく周りの声に流されるのか、または王になって成したいことがあったのか…」
「ホウ竜様は? 以前お会いした時は、理性的な方に思えましたが…」
「以前のホウ竜と最近のホウ竜は別人と思った方がいい」
「…骨姫様のせい、ですか?」
「出回ってるのかこの話…」
「わたくしも噂程度にしか聞いておりませんが一応」
ユウ竜がボウを通して諸国の情報を収集しているように、もちろん筆姫…ペンシルグラードも独自の情報網を持っている。しかしその情報網は、浅く広くが基本である。
ユウ竜が舞姫に講釈した通りペンシルグラードは人材の質はともかく量には悩まされている国である。しかし、同盟国は多く、それは同時に同盟国に敵対する国…味方の敵も多いということである。調べる対象が多いせいで、どうしても集中的に情報得るのが難しい状況にある。
「まぁ…もうドラゴニアの竜じゃないから言うけど、ぶっちゃけ今のホウ竜さん、骨姫様のためなら何でもする困ったちゃんなんだわこれが」
「良しも悪しも骨姫様次第、ですか…」
「そ。骨姫様の為なら、親友の息子に加担して王座を転覆させちゃうほどにね」
「…骨姫様はどんな方なのでしょう?」
「俺もそんなに付き合いが深いわけでも、っていうかそもそも会ったのも数回しかないけど、話を聞く限りだと、ネガティブなロマンティスト」
「…シンデレラストーリーとか好きそうな方ですか?」
「うん。そんでもってホウ竜さんもそーゆーの好きなもんだから、骨姫様とのラブストーリーのためにどんな障害を乗り越えようとするか、どんな宝を手に入れようとするか、皆目見当もつかない」
「迷惑なカップル―失礼、失言です」
口元に指を重ねて×をつくる筆姫に苦笑するユウ竜。
「こう並べると、一番理性的なのがドク竜ってのがすごいな。一般的な理性的とは程遠いけど」
「交渉の余地はある方ですか?」
「今のドラゴニアの中ならね。ただし、自分に利の無いことには絶対に動かないし、どう逆立ちしてもまともな類の竜じゃないから、その点だけは誤らないように」
「心得ました」
お読みいただきありがとうございます。
振り返ってみるとこの後書き、いつもほぼリアルタイムで読んでらっしゃる方を意識して書いていたような気がしてきました。
中には数話溜めてからまとめて読んでる方や、一話の方から追ってきてくださっている方もいらっしゃ―大丈夫、きっといる、と思ったので、たまにはそんな方向けに…
ここまでまとめ読みいただきありがとうございます。
目、疲れてませんか?
胃にもたれてませんか?
まだ先を読みますか?
これを書いている時点ではまだ次の文章をまだアップしておりませんが、未来のボクはきっとアップしていると思うので、もし続きがあったらという前提が書きますが、もうすぐ中継地点です。
一息いれてもいいのではないでしょうか。
あまり早く読みすぎると、きっと更新が途絶えてます。
あまり一連の流れで読まれると、伏線回収の甘さや言葉遣いの変化やあまつさえ髪の色とかかわってるなんてことが発覚しやすくなってしまいます。
いえ、保身ではないのです。
あくまで読者たる皆様に快く浸ってもらおうという「おてもやん」だかなんだかの精神に他なりません。
大丈夫ですか?
…そうですか、大丈夫ですか。
では、頑張ってください。
未来のボク、がんばれ。
誤字脱字に気を付けて、うん、たぶん無理だろうけど、せめて致命的なミスとかだけはおきないように、ちゃんと設定書やメモとまとめながら書き進めるんだよ。
うん、それじゃぁボクはもういくからね。
この瞬間から、これを書いてるボクはもう過去のボクになっちゃってるから…
ボク、いくね。
また見返した時、こんなこと書いてたんだ『うはっw黒歴史ww』とか死にたくなるかもしれないけど、あえてそのままで行くからね。
そんな感じで、また次回。
次はたぶん更新早めです。




