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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

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戦記58「鈴星にまつわるエピローグ」

 エピローグのくせに長い…長いぞ!

 おかげで更新に手間取りました。という言い訳をしつつ、エピローグラッシュ、前回から場所を変えて鈴星に関して。

 どうぞ。

戦記58「鈴星にまつわるエピローグ」


「じゃぁ、いってきまーす」

「はい、お気をつけてユウ…王様?」

「ユウでいいよ。じゃ、なにかあったらボウに相談しといて」


 そんなやりとりを舞姫とかわし、ユウ竜はチョウ竜、ガン竜、そして鈴星の兵達と共に神楽月に短い別れを告げた。

 道中を共にしたのは、筆姫と騎士団。


「二人きっり…ですね」

「いやいや、回りよくみましょーね? 筆姫様の目は節穴ですか?」

「え? 筆姫様めはふしだらですか?」

「違うけど合ってる」


 道中、そんなユウ竜と筆姫のコメントしづらいやりとりを聞きながら、一行は鈴星へと到着。

 やや緊張気味に鈴星へと足を踏み入れたユウ竜を、しかし鈴星の関係者たちは騒ぐでも怒るでもなく、静かに受け入れた。


(―俺の人物象どうこうってよりは、リン王の人柄ってところかな)


 早馬で、ユウ竜が戦の最中王を託されたことは、国政に関わる人間は勿論、すでに多くの国民が知っていた。

 なのに暴動に発展しなかったのは、ひとえにリン王が託した相手だからというのが大きい。

 そしてもう一つの理由が、追い目だ。

 形や理由は…この後ユウ竜は自分で聞くことになるのだが…それらがどうであれ、今回の一件は鈴星が神楽月へと侵略戦争をしかけたという構図に他ならない。

 反対者もいた。

 反対はしなかったが、止めなかった者もいる。

 そういった心理が絡み、鈴星の内情はやや複雑なものとなっていた。

 そんな大人たちの空気を子供も感じ取っているのだろうか…広場に子供の姿はあるが、活気がなかった。


「ユウ様、わたくし暫く別行動をとりたいのですが…」


 関係者に招かれ城へと入る途中、そう切り出す筆姫。


「勿論お話が終わって、必要な時には参りますので」

「あぁ…うん、大丈夫。そっちは任せる」

「はい、お任せください」


 いうと筆姫は連絡係として騎士を一人預けると、子供たちのいる広場へと歩き、そして銀のペンで地面に絵を書いて子供達の目を奪って見せた。


「筆姫様は何を…なされているのでしょうか…」

「子供の遊び相手でしょ」


 大国の姫のイメージとはまるで遠い筆姫の姿に困惑が隠せないチョウ竜。

 そんな困惑に気づいているのかいないのか、筆姫は子供が一通り集まると、物語の読み聞かせを始めた。

 銀のペンで地面に描かれた絵は、物語の進展に合わせてぐにゃぐにゃと形を変え、挿絵の役割を果たす。


「さ、子供向けのお話は筆姫にお願いして、こちらは大人向けのお話でもしましょうか…あぁ、別に変な意味じゃないですよ?」


 筆姫なら乗ったであろうユウ竜のセリフに、誰もつっこまなかった。


 一行が王宮へと向かうと、『政治の話はオレには分からん』とガン竜が警備を買って出た部屋に通された。

 中にいたのは、鈴星の重臣達。

 チョウ竜が中心となり、ところどころをユウ竜が補足しながら、改めて事の顛末を聞かせて見せると、重臣を代表し、初老の男がいった。


「リン王様は、こうなることも一つの未来としてお話しておいででした」


 だろうな、と…チョウ竜達の様子から察していたユウ竜は、頷きながら、詳細を求めた。


「事の起こりは、もう一年も前になるでしょうか…」


 その日、重傷を負った男がリン王を訪ねてきた。

 本来ならば約束もなしに王への謁見など叶わぬものだが、この来訪者に関しては別だった。

 その男というのが、


「神楽月のリン王様でした」


 付き人もいない中…いや、一人だけ他国の竜を…あの『セン竜』だけを従え、神楽月の王は、兄弟国の王であり、親友であり、恋敵であった、一番信頼のおける王の元へとやってきた。

 宿しているはずの神樹の根による再生が起きないほどに消耗した神楽月の王は、誰が見ても死を待つだけであった。

 本人もそれを理解していた。

 だから求めたのは助けではなく、自分が死んだ後の物語…その物語を憂いて残して逝った伏線。


 男が親友に託した物は、全部で三つ。


 一つは、自分の死体。

 自分の死後、一年はその死を秘密にして欲しいというもの。

 行方不明ということにし国の混乱を抑えつつ時間を稼ぐのが一番の目的だったのだろう。


 二つは、神樹の根。

 死後、自分から抜け出てくる根を保管しておいて欲しいというもの。

 悪用されるわけにも、この時はまだ誰にも…娘達にすら譲ることのできない国宝を預けるのに適した人物はそういなかったのだろう。


 そして三つ目、国。

 もし、死後一年経って、娘たちが国を任せるに値するのであれば、死の知らせと共に神樹の根を渡し、共に戦ってほしいと。

 しかし、もし任せるに値しないのであれば…神楽月と鈴星を一つにし、国と民を守ってほしい、と。


「厄介を…頼む」

「うむ、任された」


 同じ名を持つ王は、同じ名を持つ王に看取られ、その命を落とした。


「…一人で担うには、ちと重すぎるか」


 そう判断したリン王は、その三つを密にロウ竜にだけ伝えた。


「王の遺言、把握いたしました…ご面倒をおかけいたしますな」

「何を今更…それよりも、ある意味これは転機かと思っている。どのような筋道を描くことになるかまだわからんが…神楽月と鈴星の為、我は動くべきと考える」

「…そうすべきでしょうな。分かりました、その時はこのロウ竜、僅かながらもお手伝いすると約束しましょう」


 そして沈黙のうちに一年が経ち、戦となり、ここに至る。


「自分が勝るのなら神楽月を鈴星へ、姫君達が勝るのならば鈴星を神楽月へ…長く分かれ住んでいた兄弟を一つの屋根に戻し、そうして新たなに大国に名を連ねるための転機とすべき…それがリン王のお考えでした」


 しかし実際にリン王を討ったのはユウ竜。

 だから姫ではなく、ユウ竜に王を託し、鈴星のリン王もまた命を落とした。

 多くを、国と民の為に。

 ほんの少しを、親友と自分の為に。


「…いかがなさいますか、ユウ王様?」


 チョウ竜がユウ竜に尋ねる。

 リン王はそう考えていたが、今の王はどう考えるか? と。


「答える前にいくつか聞きたい。知らなければ知らないでいい。まず、敵、ってのは誰? 何? それともどこ?」

「…わかりません」

「…まったく?」

「お恥ずかしながら…神楽月のリン王様が負傷した際、何者か達に襲われたとは聞きました。それに敵対しているのが、セン竜という女が所属する組織であることも」


 出会いは偶然―とは言い切れない。

 神楽月リン王が狙われていることを察したセン竜は、自ら王へと近づいた。

 大陸の西側に本拠地を構える自分達が、東で活動するための拠点になる地が欲しいと…その協力をしてくれないかと願い出た。代わりに、狙われている神楽月の防衛に自分達が力を貸す、と。

 話を聞くも半信半疑であったリン王…そこに襲撃を受けた。

 敵の敵は味方…とまでいえるかは分からないが、利害が一致するなら価値はあるとみたリン王とセン竜は、一時的ながらも協力し、共に襲ってきた『敵』を撃退。

 しかし王の傷は深く、肩を借りながら鈴星のリン王の元へと逃げ延びた。

 その後、当てが外れたセン竜は、神楽月に代わり鈴星に協力を求め、滞在し戦に参加することになった。


「だけどセン竜は『敵』ってのがどんな奴らだとか、自分達がどんな組織なのかは言わなかった、てこと?」

「左様です。何度も聞いてはみたのですが、それを言う権利が自分にはない、と」


 不審も不明も不義もある…が、事実として『敵』とやらはいるらしい。

 それも、神楽月のリン王を―自分よりも遥かに強かった親友を殺す敵が…

 さらには、そんな敵に対抗しようとするセン竜級の人材を抱える組織もある…

 だから国力の増強は急務だった。

 もっとも、それがなくとも、


「リン王は予てより、南方密林地帯のゲリラ達と、ドラゴニアのゴウ竜の台頭を警戒しておりました」

「ゲリラ達と…ゴウ竜? あのゴウ竜?」

「えぇ、ユウ王がよく御存知であろう、あのゴウ竜です…いえ、すでにゴウ王ですか」


 チョウ竜の口から久しぶりに聞いた…実際には大して日にちは立っていないが、久しぶりに思えるその名前に、嫌な顔をするユウ竜。


「まだ実質的な被害はでておりませんが、ドラゴニアは着々と巨帯都市同盟を分断しながら、影響下にいれておりました。いずれ同盟が崩れるのは明白。そうなれば次にドラゴニアが狙うは、神楽月を盟主にした鈴星含む同盟国」


 地図上でいうと、ドラゴニアは北東に、そこから南下して鈴星と神楽月が横に並び、その間に巨体都市同盟『メガロポリス』という、都市国家群がある。1つ1つは小さな、街1つで国を名乗るほど小さなものもありながら、同盟全域で見れば、大国と並ぶ巨大組織である。

 その大きさと関係性の複雑さから、おいそれと侵略する国は少なく、昔からドラゴニアと南方の小国との争いを避ける緩衝帯を努めてきた。

 が、近年それが崩れつつある。というのも、


「ごめん、それ半分は俺のせいでもある」

「存じております」


 それを崩すきっかけの一つとなったのが、ドラゴニア現役時代のユウ竜の活動。

 砂山を切り崩すかのように、外遊と友好と雄弁で同盟をドラゴニア側へと引き込み、楔を打ち込んでいったのは自身の記憶に新しい。

 一方、武力と脅迫で同盟を切り崩していったのが、ゴウ竜である。

 ユウ竜もゴウ竜も、互いに利用こそすれ協力している気など微塵もなかったが、端から見れば話は別。

 二人の若竜による強手と絡め手で、ドラゴニアがついにメガロポリス侵略へと乗り出した、と多くの者が見た。

 それはメガロポリスの影響力低下と、周辺国の不安へと繋がった。


「正直なところ、ゴウ竜だけならまだ対処のしようがありました。あまりにも強引な手法を侵略とみ無し、メガロポリスに本来の役目を担って頂ければよかったのですが…」

「はい、申し訳ない」


 先に謝るユウ竜。

 そもそも、ユウ竜がメガロポリス懐柔に動き出したのが、その為でもあるのだ。

 始まりは、メガロポリスに所属する小国とゴウ竜の争い。

 その戦の非自体は、確かに小国にあったが、ゴウ竜はそれを理由に国を壊滅に追い込んだ。

 その徹底ぶりは、『そこまでやるか?』という懐疑と共に周りに恐怖を与え、ドラゴニアへの徹底抗戦が浮上してもおかしくない…というか、水面下ではあったが、その声が生まれてきていたところだ。

 それをどうにかしろ、と存命中のキョウ王から命を受けたのがユウ竜と何人かの高官達だった。

 ユウ竜達は何人かの有力者を取り込むことで、メガロポリスが連動してドラゴニアへと敵対することを防いだ。が、一度湧いた危機感を拭うことは容易ではなく、メガロポリスではドラゴニアに敵対する勢力が生まれ、それがゴウ竜に挑んでは叩き潰され、それを見て保身を図るなどした勢力がユウ竜へと庇護を求めた。

 そして、前述のとおりである。


「…ドラゴニアの竜としては、謝るような件でなかったことは承知しております」


 竜として王の命を受け、竜として国の為に働き、竜として国に仇名す者を退ける。

 それが竜としての役目であることは、チョウ竜自身が誰よりも把握している。

 だからこそ恨んではいない。


「とにかく、そこにきてまさかの蜂起ではありましたが…脅威が消えたわけではありません」

「というか十中八九、悪化するぞ」

「はい。同じ考えです」


 ゴウ竜を含む他の…代表でいえばドク竜などに対するストッパー役を務めていた、キョウ王、剣姫、ユウ竜が同時にいなくなった。


(―ホウ竜なら多少は分別がつくんだけど、骨姫様に骨抜きにされてるしな…)


「いずれ降りかかるであろう脅威から国と民を守るため、王はどんな形にしろ再び一つの国となり、国力を高めなくてはとお考えでありました」

「てーことは…ここにいる者は基本的に」

「はい。合併に賛成しております」


 だいたいの説明を聞き終え、ユウ竜は改めて自分の考えをまとめた。

 というよりは、元からそうしようとは考えていた。

 問題だったのは、それをどういう形で運ぶか、ということ。


「…ちなみに、リン王はどうやって合併するつもりだったか聞いてる?」


 その質問に、やや濁った沈黙が室内に蔓延る。


「や、まぁ…なんとなく予想はついてるので言ってもらえる?」


 ユウ竜の促しに、チョウ竜が口を開く。


「…歌姫様を嫁に迎える、と」


 国と国が合併するにあたり、王族が婚姻を結ぶのは昔からよくあることである。侵略戦などなら後の憂いを除くため、相手の王族を滅ぼして…ということもあるが、今回は侵略船といえど発端が発端だけに、滅ぼすことはしたくなかったのだろうことは分かる。


「だけど、なんで歌姫?」


 この際年齢差については目をつぶるとして…というか、王侯貴族に関して言えば家の問題であり、個の年齢など無視されることは多々ある。が、それにしたって順番でいったら舞姫である。それを飛ばしてなぜ歌姫なのか? という問いに、重臣の一人がいった。


「巫女姫様に、似ていらっしゃるので…」


 親友に似た長女と、昔とはいえ惚れた女に似た次女、どちらか選べと言われて、次女を選んだわけである。


(―筆姫が大喜びしそうなシチュエーションだなそれ)


 いかつい大男と無理やり組み敷かれる歌姫の姿を想像し、それを想像して喜んでる筆姫の姿を想像し、想像とはいえ組み合わせてしまった自分の罪深さに、リン王と歌姫へと心の中で謝罪を送るユウ竜。なお、筆姫には送らない模様。


「ま、ともかく…その案に反対はなかったんだな?」

「いえ! さすがに! さすがに昔の女に似てるからとはいえ、年端もいかぬ少女に手を出すのはいかがなものかと思いはしましたが! 絵面的にそれはどうかと、三日三晩重臣たちで論議を交わしましたが王の童貞力には努力も虚しく」

「や、そうじゃなくて、っていうかさらっと、バラすなよそういうこと」

「ばらすも何も、リン王ご本人が笑いながら『三十路を過ぎても清い俺を憂いて神がこの魔法剣を下さったのだろう』とか酒の席でいうものですから」

「あぁ、魔法使いになったのね。正確には魔法剣使いだけど、ってバカか」


 ユウ竜の発言に、思わず吹き出す重臣たちがちらほらと。


(―そうか、ここの人間も血筋的には神楽月の…アホな論議を重ねられる人種なんだよな)


 そんなことを考えながらチョウ竜を見るユウ竜。


「こちらを見ないで下さい」


 冷たい声で拒絶されてから、ユウ竜は咳払いをして場を仕切り直した。


「じゃぁ、細かいことはいろいろと考えないといけないだろうけど…」


 そして、重臣達がにもれなく聞えるよう、はっきりとした声で言った。


「神楽月に、お婿にいきますかね」


 鈴星と神楽月の合併が決まった瞬間である。

 お読みいただきありがとうございました。

 アクセス解析を見て、あぁ読んでくれてる人がいるんだ、と思う以外に楽しみもない不遇な人生…どうでもいいですが、『不遇』ってかくと仰々しいので『ふぐぅな人生』って書くとなんかちょっとかわいいなって思いませんか?

 と頭の中までかわいそうなモノカキですが、なんだっけ…あぁ、アクセス解析を見るのが楽しみなわけですが、先日ついに累計ユニークが10000人を越えました。

 他の大人気の作者様からしたら「私の戦闘力は53万です」とかざらなのかもしれませんが、一週間の累計エンカウント(コンビニの店員を含む人間との出会い)が5人を下回ることがざらざらなボクからすれば大変な出来事です。

 これもひとえに閲覧してくださっている皆様のおかげです。

 正直途中でやめたろうかと思ったことがないわけではないですが、さしあたり次の編には突入できそうです。

 まだ数話エピローグが続きますが、ひとまず先に、日ごろの御礼申し上げます。ありがとう。そしてありがとう。

 でもきっと、2章終わりでキリがいいから読むの読める方もいらっしゃるんだろうなということも考えながら、そんな感じでまた次回。

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