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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

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戦記48「歌姫を巡る攻防」

 お姫様たる者、敵に捕らえられたら、程度の差はあれ多少は不幸な目に合ってもらうのが定石というものでしょう。ただしこのお話は18歳未満禁止ではないし、そもそも歌姫は14才ぐらいだとどこかで書いてしまってる気がするので、間違ってもそういう展開にはならないのでご安心&お嘆き下さい。

 なお、作者がどっちかは読者の皆様の作家象にお任せいたしたい所存。

戦記48「歌姫を巡る攻防」



 舞姫は、焦りや不安を落ち着けるため、何度も作戦を反芻していた。


(―広場での戦いは…)


 ソウ竜とガン竜の一騎打ち、

 スワロと傭兵団によるチョウ竜の抑え込み、

 鎧の着替えによる敵陣の瓦解、

 いずれも成功した。


(―廊下での襲撃は)


 自分が中心となって走ることで女竜をおびき寄せ、イン竜がそれを抑える。

 これも成功した。


(―残りは…)


「姫様、先へ!」


 神殿内に現れた敵兵を食い止めるため、近衛兵が姫から離れる。


「姫様!」

「姫様!」


 一人、また一人と、イン竜がそうしたように我が身を壁とし、残った仲間を先へと先へと送り出す。


(―あと少し)


 ほどなく、姫は中庭へと辿りつくだろう。

 近衛兵の…いや、多くの配下の犠牲の元に。


(―コチラはあと少しです…ユウ様)


 舞姫は姿の無いユウ竜のことを案じながらも信じつつ、回廊をゆく。


(―どうか…妹をお願いします)


 一人、歌姫の奪還へと向かっているユウ竜に妹のことを託し、回廊をゆく。



 その頃、無事を願われていた歌姫はといえば、何も牢獄でじっと戦いが終わるのを待っているだけではなかった。


(―広場の戦いはこっちが有利…なのかな? 姉さま達は…やった! 神殿に入った!)


 眼を閉じ集中している姫の脳裏には、戦場の様子が千里眼のように浮かんできている。


(―あっ)


 しかし、途端にそれが途切れる。


「…ちぇ、早く動かしすぎちゃったか」


 眼を開くや、姫は鳥を…神鳥の音の力で白い小鳥を生み出し、空に放つ。

 そして再び目を閉じると、脳裏に様子が浮かんでくる。

 ただし今度は、戦場ではなく自分を見下ろしているような光景が。


(―ソウ竜…はまだ無理か。部隊長あたりが無難かな?)


 眼を閉じつつ鳥を操る…すると、見えてくる景色が変わってくる。

 これは神鳥の音の力…操る鳥の視界などを共有する能力。


(―いた、部隊長!)


 鳥を通して部隊長の一人を見つけると、そのまま操り近づける。

 その部隊長は歌姫と共謀し、ギリギリまで宮殿に残っていた部隊長で、歌姫の腹心といってもいいだろう。部隊長が鳥を視界に収めたのを見て、歌姫は事前に決めていた動きを組み合わせ、メッセージを伝えた。


(―姉さま、侵入成功)


 部隊長が口を開き何やらいっているが、残念ながら音までは分からない。が、表情からすると喜んでいるようだ。


(―こいつも気が使えれば、あたしももうちょっと役に立てるんだけどな…)


 相手がある程度気を扱える者なら、鳥と触れることで歌姫と言葉をやり取りすることができる。

 酒場で姫が歌姫からメッセージを受け取ったのは、その効果だ。もっとも、ただ動かすよりもかなりの気を消費するので、通話しようと思えばすぐに鳥は消えてしまうのが難点といえば難点だ。

 それ以外にも、鳥を早く動かせば動かすほど、複雑な動きをさせればさせるほど持続時間は短くなる。それを伸ばすには無駄を省いて上手に扱うか、鳥を作り出す気を多くするかだ。


(―結局は、あたしがもっと扱えるようになれよってことか)


 落ち込みそうになるが、そんな時ではないと頭をふるい、気を引き締める歌姫。


(―やれることぐらいやらなきゃ、ほんとにクズだし)


 鳥を飛ばし、上空から戦場を観察し、敵の布陣や動きを各所に伝える。

 歌姫はこのように戦が始まってから…正確には、戦が始まる前から、斥候と連絡の一部を担っていた。

 城壁を破壊しての侵入経路を決められたのも、人目を避けて神殿への進入口を作れたのも、歌姫のおかげ…とまでいうといいすぎだが、その貢献度は高い。

 その重要性は…自分がいることの利点は、舞姫を通してユウ竜から説明された。

 だからこそ、歌姫は疑問に思ったことがある。


(―なんで爺、あたしのこと放ってるんだろ)


 代々の姫に…神鳥の音の主に従ってきたロウ竜が、その能力を知らぬはずがない。いくつもの戦場を渡ってきたロウ竜が、ユウ竜の説いた斥候や連絡係の重要性を知らぬはずがない。


(―あたしなんか放っておいてもたいした敵にならないってこと?)


 そうではない気がする。

 理由もなんとなく分かってきてる自分もいるのだが、そんなはずないと否定する自分もいる。

 しかしなんにせよ、歌姫の考えは中断せざるを得なくなった。


「歌姫様!」


 声が聞こえてきた。

 神殿と牢屋を結ぶ回廊の方…見張りが立つ辺りから。


「お、おまえたちどこの―ギャー!?」


 そして悲鳴。

 姫は目を開くと同時に、戦場の上に飛ばしていた鳥を消滅させた。

 今、姫が同時に呼び出せる鳥は一羽だけ…


(―所詮、気絶させることも、檻を破ることもできない鳥だけどね)


 それでも…姫は万が一の為に、鳥を呼べる状態を選んだ。

 おそらく、見張りは倒されただろう。

 問題は、見張りを倒した者が誰で…どこに属する者かだ。

 その、何者かのセリフは、


「歌姫様、お助けに参りました!」


 どかどかと荒い足音を立てて複数の兵士が…見える範囲で3人ほどが、姫にも見えるところまでやってきた。

 それはいずれも神楽月の鎧に身を包んだ兵士…手には、今しがた牢屋を見張っていた兵士を突き殺したと見える、赤く塗れる槍が見える。

 その兵士と槍を見て、歌姫はただでさえ牢屋の奥まったところにいた体を、さらに奥へと寄せた。


「…姫様?」


 姫は警戒を隠そうともせず、槍の長さから今の位置に刃先が届くことはなかろうことを目測で確認しつつ、身を小さくする。


「どうしたのですが、早くこちらへ! 今がここを逃げ出す、最良の時です!」


 格子から姫へと手を伸ばす兵士。

 しかし姫は取り合わず手近なものを…なんの足しになるかはわからなかったが、毛布や布団を引き寄せ、少しでも身を守る何かにしようとした。

 その様子を見て、兵士達の顔が変わった。


「あー…姫様? 来て頂けませんか? こちらも忙しいのです」

「…なんで敵についていかなきゃならないのよ」

「敵…ですか? 助けに来たのに?」


 そうはいいながらも、兵士達の顔は愉悦や苛立ちに歪んでいく。


「敵じゃないってなら、いってみてよ。あんた達、どこの兵士よ」

「見ての通り神楽月のですよ」

「じゃぁどっちのよ。姉さまの? それともロウ竜の? それ以外は、神楽月だって認めないから!」


 姫のその発言は、だいたいのことに察しがついている者の言葉だった。

 察しがつけられていることを理解し、兵士達たちは肩を竦め見つめ合い、


「ちょっとぐらいなら、大丈夫だったな」


 そういうと、一人の兵士が落ちていた小石を拾い、牢屋の隙間から姫に向かって投げつけた。

 姫はとっさに布団で自らを覆う…ぼふっという音と共に小さな衝撃が伝わった。


「ずっと牢屋にいるくせに、妙に詳しそうだな…なんの手品だ、あ?」

「それともあれか、見張りでも垂らしこんで、いいように躾たか?」


(―やっぱりこいつら、どっちのでもなかった)


 舞姫や自分の部下が寄越した助けなら、事前に取り決めたやり取りをするはずだ。

 ロウ竜の配下なら、ロウ竜自身が置いていった牢屋の番を殺す必要がない。


(-あのオッサン王はアタシのこと狙ってるだろうし、王の部下なら、チョウ竜とガン竜も従うし…なら、きっとあの女竜だ)

 

 考えることで気をそらそうとする姫…しかし石と共に笑いや怒声は止まることなく注がれ、格子が蹴られ殴られ、その衝撃音が牢屋に響き、小さくとも拭いがたい恐怖心を蓄積させていく。


(―しっかり。しっかり。しっかり)


 戦場の様子を、ついさっきまで、鳥を通してみていたのだ。

 人が倒れる様、怪我する様、倒れる様、死ぬ様を、

 なのにそのどれよりも、たかが石が、笑い声が、殺す気がないはずの相手の行動が恐ろしい。


(―姉さま、こんな中にいるの? ロウ竜がいってたのってこれ?)


 捕らわれながらも守られていたお姫様は、今、本当の意味で捕らわれの姫となった。

 鉄格子が開けられた瞬間、

 目の前にいる男達が本気で殺そうと思った瞬間、

 なにかの拍子に、自分の意思などお構いなしな展開へとなるこの状況の怖さを、姫はようやく実感した。


「おい、鍵まだかよ!」

「うっせーな、探してけっど、ねーんだよ!」

「くそ、殺す前に聞いときゃよかった…」


 扉は開かない。

 苦痛でしかなかったその事実に守られることになる皮肉に、

 鍵がないという言葉に安堵した自分に、

 恐怖と同じぐらいの悔しさを感じる姫…


「なぁ、姫様、ここの鍵しらねー? 教えてくれれば、無事に出してあげてもいいんだぜー?」

「誰が…知ってたって、あんた達みたいなのに教えるもんか!」


 自分を鼓舞するために、恐怖と悔しさを押し込めるために、姫が鳥を生む。

 鳥は矢のような速さで格子をすり抜けると、一番近くにいた兵士の顔面に直撃した。


「ぐぅぁ!?」


 痛みにのたうつ兵士…が、死ぬことはおろか、戦闘不能になるまでのダメージにすらならない。

 多少顔が赤くなった程度だろう…その赤さだって、ダメージによるものより、何もできないはずの少女に一撃いれられた怒りよるものの方が大きそうなぐらいだ。


「このやろう!」

「ちょ、おい!」


 兵士は立ち上がると、他の兵士の静止よりも早く、手にしていた槍を牢屋の中へと投げ込んだ。

 お読みいただきありがとうございました。

 前書きではあんなこといってますが、そもそも成人向け描写ってたぶん今まで全部さかのぼっても、ちゃんと書いたことってないと思うので、そもそも書けそうにないんですよね…

 そういうシーンを髣髴とさせる描写とか、抽象的表現とか、そのシーンに入る直前または事後とかならあるのですが…

 今まで見たいと言われたわけでもないし、自分でも別段書きたいと思ったこともなかったので書いてこなかったのですが、実際かけるのかどうか自分でも気になるので、なんかのおりに挑戦してみようかなと思う今日この頃。

 まずは手始めに、パソゲーのその手のシーンに入ると同時にコントロールスキップする癖をなくすことから始めようと思います。

 あのてのシーンて、ストーリー理解上は省いても支障ないこと多いので、あんまり読まないんですよね…

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