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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

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戦記44「リン王の布陣」

 前回更新後、ついにブックマークが100人を超えました…友達100人できるかなじゃないですか、少なくとも100人は「べ、べつに嫌いなんかじゃないんだかんねっ!」と思ってくださる方がいるというこの世界に、もう少し生きる希望が湧いてきました。

 これからも「べ、べつにアンタのために書いてるんじゃないんだかんねっ!」という精神で続けていこうと思いますので「べ、別によろしくしてくれなくてもいんだかんねっ!」です。

戦記44「リン王の布陣」



 舞姫軍のそれは、一切迷いがない行動であった。

 そして、無駄と無理のない行動であった。


(―急増の傭兵をどう軍に組み込むかと思えば、完全に切り離して運用しますか)


 隊として動くには、動く方にも動かす方にも、かなりの訓練を要する。

 例えば、組体操でもいいだろう…号令に合わせて動くこと、動きを変えること、それを全体の呼吸として行うこと…たかがそれだけの動きにも訓練が必要なのだ。

 人というのは、普段の…繰り返し行ってきた動作に左右され、普段しない動きを急に行うは、筋肉的にも意識的にも感覚的にも難しい。

 それは例えば、同じ剣を扱う剣士同士でも、流派が違えば動きが変わるのと同じ。茶道や踊りでもそうだ。ジャンルが同じだからといえど、同じ動きができるとは限らない。

 何度も傭兵達を雇っては戦争に参加してきたユウ竜は、傭兵が兵の動きに合わないことを知っていた。

 傭兵は、正規兵の穴埋めとして使うよりも、それ独自のルールに沿って動く独立軍として考える方が効率的であると理解していた。

 その場合問題になるのは、本当に独立軍として戦えるかどうかである。

 ユウ竜は姫と共に軍に合流した後、まっさきにその実験を行った。

 その行動こそが小さな襲撃とトラップの設置…『削りと煽り』だ。

 傭兵達の力を知り、道具を扱う技量を見定め、傭兵達との連携の取り方を実地で確認する。

 その結果、敵の戦力が落ちれば儲けもの…本命は予行演習そのものにあった。


(―加えて、開戦直後からあの破壊力を持つ道具まで使用すると…)


 破壊力から考えて、そう数が用意できるものではないと予想するチョウ竜。

 それは正解なのだが、問題は『あと何発残っているかが分からない』ということだ。

 その恐怖は、兵士にのしかかる。

 いつどこで使われるか分からないが、使われればほぼ間違いなく吹き飛ばされる爆弾を持つ者がいる。戦が乱戦にもつれ込み、無我夢中になれば薄らぐその恐怖も、この序盤ではまずい。戦いの熱が恐怖という冷静さで冷やされ、足がすくんでしまう。

 そしてもう一つ…チョウ竜にとって厄介なのはむしろコチラ。

 破壊力のある爆弾を単なる戦闘道具ではなく、攻城兵器として使用してきた…つまり、兵を倒すことではなく、王を討ちに来ているということ。目先の兵に捕らわれず、目的達成の為に道具を運用してくるということ。


(―あの爆弾があれば…)


 王を守る壁を吹き飛ばすかもしれない、王と護衛を切り離すために瓦礫を生むかもしれない、壁や通路を破壊し王への近道を作るかもしれない。

 そういったことを考えながら、戦を運ばないといけないということ。

 頭のまわるチョウ竜だからこそ、それは頭の痛い部分だ。

 想像できる、考え付く、が、それには少なからず時間がいる…それは数秒かもしれないし、数十秒かもしれない。しかしその数秒の間に何が起きるか分からないのが戦場である。

 そしてその数秒が、何かの判断の度に発生する…もし、このタイミングであの爆弾を使われたら? を考え続けなければならない。

 例え数秒でも、それが積もり続ければ、数分となり、数十分となるかもしれない。

 指揮官や軍師の判断力を数秒削り続ける一手…それは、初期であればあるほど効果的だ。もちろん計算に組み込まれる以上切り札としては…一発逆転の手としては使用できなくなってしまうデメリットはあるが…


(―あるんでしょうね、切り札は別に)


「やるな、あいつら」

「えぇ、ロウ竜殿の見立て、正しかったようです」

「我が孫ながら数年後が楽しな人間と、正直戦場で会いたくない種類の人間…だったか?」

「ロウ竜殿ほどの方が何をおっしゃるやらと思っていましたが…確かに厄介な相手ですね。ロウ竜殿の見立てが起こることもあり得るかもしれません」


 ロウ竜の見立て…それは『舞姫とユウ竜は、リン王の元に必ず来る』ということ。

 その話が出るまで、チョウ竜が考える最良の布陣では、大将はロウ竜だった。

 しかし今ロウ竜は、王を護衛する任務に就いている。その実力からいって、任務遂行能力への疑問はない。が、王の場所に敵が辿りつくということは、軍が敗れた時か裏をかかれて何人かが送り込まれた時である。

 送り込まれた少人数を相手にする護衛であればガン竜で事足りるし、裏はあるだろうが女竜も仕事はこなしているゆえ、密偵レベルでは辿りつけもしないだろう。

 何より、百戦危うからずといわれたロウ竜が大将を努めるなら、そもそも軍として破れるとは考えにくい。ここにいる兵の多くは神楽月の兵であることも理由の一つだ。ある程度はガン竜が掌握したとはいえ、懸念は残る。

 チョウ竜は理由も含めて、自分が考える布陣を伝えた。

 が、ロウ竜は言った。


「仮にガン竜殿が護衛に着くとしたら、ユウ竜殿にやられます」

「オレがユウ竜よりも弱いと!?」

「いやぁ、強さでいったらガン竜殿でしょう。しかし負けます」


 訳が分からんという顔をするガン竜に、ロウ竜はその手口を伝えた。


「まず、能力で盾を奪います。その後は、弓か爆弾で近づかず延々と攻撃されます。近づいてきたら、姫が抱きかかえて距離を取って、また遠距離攻撃。基本的にはそれを繰り替えすでしょうな」

「そんな戦いが―」

「そんな戦いを平気で選んでくるのがユウ竜です。まぁ、能力に何か条件が…例えば他人の持ち物は不可能などがあれば変わってきますがな」


 続いて、チョウ竜の場合も伝えた。


「チョウ竜殿の場合、姫にやられます。姫の速さに追いつく足も目もないのであれば話になりません。仮にうまいこと姫をだしぬけたとしても、一時的にとはいえワシに匹敵する速さを出すユウ竜殿相手にも同じことがいえますな」


 しかし、とチョウ竜は反論した。


「リン王と共に戦えば、その前提は崩れますが?」

「なるほど、確かにリン王はお強い。姫の父上…先代の王と並ぶといってもよいでしょう。そのリン王が護衛と共に戦うのであれば、話は違います。しかし…」


 髭をなで、ロウ竜は言った。


「根を下ろした最初の夜は、非常に脆い」


 鉢から鉢へと移し替えた苗のように、根は弱り休息を求め、栄養を欲す。

 と、例えるロウ竜。


「この場合の栄養というのは、王の気…もう少し広げて生命力といってもよいですかな。それを莫大に消費しながら一つになろうとします。元々リン王殿は豊潤な気をお持ちですが、おそらく…その半分以上が根にとられるでしょうな」


 自分が気で作りだした蝶を操るため、チョウ竜は気が見える。

 それ故、王の気が半分と言われ、危うさを覚える。


「気が戦闘の全てではありませんが、気に頼ってきたのであれば、神樹の根の力が働くことを考えても…王の戦力は通常の半分からよくて七割ほどといったところでしょうな」

「…その状態の王が、ユウ竜や姫に負けると?」


 暫し髭を撫で、ロウ竜は言う。


「いや、王が勝つでしょうな」

「ならば!」

「ただし、二人がかりで来られたら、負けるやもしれません。というか、あの男ならそうするでしょう」


 まず、護衛に合わせてユウ竜か姫かどちらかが王の足止めをする。その間に、護衛に入っていた竜を倒す。その後二人で攻撃をしかける。


「…先ほどから姫が戦場に来るのを前提としておりますが、それは間違いないので?」

「来るでしょうな。姫もそれを望むでしょうし、仮に望んでなくてもあの男が言いくるめて引っ張ってくるでしょう」

「旗頭をわざわざですか?」

「目的のためなら、自分も姫もコマの一つとして割り切りそうな男です。そもそも、姫が生き残ったところで、この戦いに勝てなければ負けですからな。連れてくるでしょう。でないと、ワシを止める者が誰もいなくなる」


 ソウ竜は確かに強い。が、他国の戦争に行かされていたせいで、気を扱う修行はほとんどできていない。

 イン竜も強い。が、気や魔法が使えるわけではなく、単独でロウ竜を打ち負かすほどの力はない。そもそもイン竜が戦うことになるであろう敵は、その役割からいっても女竜である。


「だから、ワシが王の護衛に入るだけで、基本的には詰みですな」


 ユウ竜と姫二人がかりでもロウ竜は落ちない。

 抑えるだけなら少しは抑えられるだろうが、そうすると今度は一人で王を落とすことができない。

 ソウ竜を連れて来ようとすれば兵を指揮するものがいなくなり、イン竜を連れて来ようとすれば女竜が合流し、結果戦力は増えない。


「まぁ、いくつかの中の一つとして、可能性があるとすれば…」

「歌姫ですね」

「そうですな。しかし、まぁその歌姫様を助け出すための鍵も…」

「はい、私が持っております」


 いって、チョウ竜は今も間違いなく持っていることを示すため、懐から牢屋のカギを取り出し、そしてしまった。


「仮に歌姫様から神鳥の音を預かることもできなくもないでしょうが、結局扱えぬ道具には意味もありません」


 チョウ竜、ガン竜、そして黙したまま笑顔を浮かべるリン王、それぞれの顔を見てからロウ竜は論議を締めにかかった。


「というわけで、納得頂けましたかな?」

「…分かりました。ここは敵をよく知るロウ竜殿の布陣で迎え撃つとしましょう」


 かくしてリン王側はこの布陣となった。


 お読みいただきありがとうございます。

 この前『そういえば』と、書きだす前に相談という名のボクの妄想を垂れ流されていたかわいそうな友人が、『異世界ファンタジーと聞いていたので西洋なイメージだったけど、大陸風(アジア系)なんだね』みたいなことを言ってました。

 国によって雰囲気変えようと思ってるので、すでに出ている国でいうとドラゴニアとかペンシルグラードは西洋欧州系で、神楽月や鈴星は日本や大陸含むアジア系のイメージです。まだ出ていませんが、アメリカ大陸系や中東系、南国などもありおりはべりいまそかり。

 種族も、巨人族にドラゴンハーフ、エルフ、ダークエルフ、鬼、死鬼…あと実は獣人族系も登場してます。まだ誰がそうかは紹介していないので名前は伏せますが、そのうち名乗るでしょう。

 てな具合で、ごちゃ混ぜな大陸がユウ王戦記の舞台です。

 主人公たちの進展に合わせてお披露目していけるといいなぁと思ってますので、これからもお付き合いのほどを。

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