戦記43「開門を巡る攻防」
無限〇リヴァイアスみたいな、群像劇が好きです。敵と味方だけでなく、様々な思惑が絡んだ結果、一つの結末に辿りつくを得ない無力感がいいです。
パンプキンシザ〇ズみたいな、モブやサブも信念や努力を重ねていくのが好きです。主人公は勿論主人公を担うだけの何かをもっているのだけど、無いものもあって、それにモブが奉仕するのではなく、自分の思いのために繋げていく様が好きです。
〇ングダムみたいな、細かいことはいいんだ、夢と野望のために突き進めよってのも好きです。その結果敵同士なのに分かり合えたり、道を託していったり、預かって成長していったりするのが好きです。
そしてアリス〇フトみたいに、エロくてかわいくてバカだったりかっこよかったり、無駄に設定が深かったりオヤジやジジイ共がいいキャラ過ぎるのが好きです。もはや何を目的にゲームをしているのか分からなくなる感じが最高です。
前書きが長くなりましたが、とりあえずそんなようなものが好きなヤツが、好きなものを書いてるユウ王戦記、趣味の合う方に向けて本日もおとどけです。
戦記43「開門を巡る攻防」
「突撃ー!」
ソウ竜の号令に、兵達が地を駆ける。
先頭近くを走るのは、王宮にギリギリまで残っていた兵達。
手に使い慣れた剣と盾を持ち、揃いの防具を身に着けた兵達。
舞姫達が戻ってこれるように、その背中を追いたい気持ちをぐっと堪え、未来の為にその場に踏みとどまった者達。
森の中で姫を待っていた彼らに、舞姫は言った。
「ありがとう。あなた達のおかげで、今こうして戦うことができます」
そして、一人一人…どれだけ時間がかかろうと、一人一人の肩に手を置いた。
その舞姫の軽くとも深い手の重みが、彼らの後ろ向きになりそうな気持ちを押し込めた。
残ったことは間違いでなかったのだと、
主のいない宮中に我がもの顔で居座る敵に殴り掛かりたくなる気持ちを抑えていたのは無駄ではなかったのだと、
今、その抑えていたもの全てをぶつけていいのだと。
「たとえ、姫様が許して下さろうと」
ソウ竜の下に付き、いくつかの部隊を率いることになっている部隊長が部下達へ…いや、この一時だけは並び立つ同じ兵としていった。
「我らは、姫様が苦しんでいる中、その場にいなかった」
苦渋の言葉が兵の胸に痛みを与える。
「その痛み…我らにしか分からん」
例え絶望の中の逃走であろうと、絶命の危険がどれだけあったろうと、姫と共に行けた者にはわからぬ苦しみ。
「その苦しみ全て…姫様の為に注ぐ!」
苦しみを、
苛立ちを、
心を痛めつける全てを力に変えて…降りかかる矢を恐れることもなく、兵達は掛ける。
その後ろを追う兵達。
手には、槍や剣や棒や盾…まちまちの武器に、まちまちの鎧を身に着けた兵士達。
姫たちと共に逃げだし、姫の後を追い逃げだし、そしてまたここに戻ってきた兵士達。
決戦を前に、ソウ竜と共に待っていた兵士達と合流した兵士達に、舞姫は言った。
「ありがとう。あなた達のおかげで、今こうして戻ってくることができました」
そして一人一人…どれだけ時間がかかろうと、視線を交わした。
その舞姫の言葉なくとも雄弁な瞳が、彼らの前を向く気持ちを更に持ち上げた。
付いてきたのは間違いでなかったのだと、
敗者だと逃亡者だと、不名誉で先の無い敗残兵であると思われながらも付き従ったことは無駄ではなかったのだと、
今、堪えてきたもの全てをぶつけていいのだと、
「たとえ、姫様が笑って下さろうと」
いくつかの部隊を率いる部隊長が、同じ時間を共有した兵として言った。
「我らは、姫様が苦しんでいるその姿を見てきた」
たった数日…されど数日…先の見えなかった一瞬一瞬が憎く蘇る。
「その情けなさ…我らにしか分からん」
例え意に反する待機であろうと、拷問の危険がどれだけあったろうと、城に残った者には分からぬ惨めさ。
「その惨めさ全て…姫様の為に注ぐ!」
「「だけでは足りない!!」」
二人の部隊長の声に、兵は頷いた。
全軍が揃った時、姫は言ったのだ。
「どちらかなくして、今はありません。どちらか欠けて、これからもありません。私達全て揃っての、今とこれからです」
だから、
「「我ら全てを、姫様の為に注ぐ!!」」
「全軍!」
「「突撃!!」」
「「「「「「突撃!!!」」」」」
戦記に名前も残らぬ兵達が、
しかし彼らなくして戦記を書けぬ兵達が、
書けぬ故、欠くことできない兵達が、あらん限りに地をかける。
「我らは今、一つの槍である! 穂先は鋭く尖り敵に穴を穿ち、柄は力強く穂先を押し込み敵を貫かんとせよ!」
ソウ竜の言葉に兵の勢いは増す。
その形は、ソウ竜の言うとおりまさしく槍。
先陣をソウ竜が駆け、その後ろにいくつかの部隊に分けられた兵達が列をなし、縦陣状に続いている。
そんな槍の穂先に射掛ける、神楽月の弓兵…城壁というには高いとはいえない宮殿の塀から矢が射掛けられた。
しかしその矢のほとんどは、前方の兵が盾で防ぎ無力化し、そしてそれ以上にソウ竜が槍を振い撃ち落とした。
突いて弾き、凪いで落とし、回し散らし…その様子は、まとっている鎧が、真紅をベースにした妙な文字…神楽月の古い文字で『勇者』とか『武士』とかいう意味のものが入ってなければ、顔立ちと相まって神話の一ページのようにみえたかもしれない。
「鎧の趣味はともかく、あいつ、あんなに強かったのか…」
槍陣形で突撃する舞姫軍の、前方よりやや後ろの隊右側にいるユウ竜がぽつりと漏らす。
そのつぶやきに補足をいれたのは、ユウ竜の隣を走るイン竜。
「あれでも竜ですしねー。性格はともかく、ロウ竜に鍛えられた上に他国の戦争で実戦も積んでますし、ちょっとやそっとの相手に負けるよーな竜ではないですよ」
「の、ようだな。正直、姫様があいつに大将任せた時は大丈夫か、って思ったけど…」
「あれで姫様、人を観る目はあるほうですからねー」
「じゃぁその目に答えるためにも頑張りますかね」
「そうですね、副将殿」
「からかうなっての」
ユウ竜は苦笑いを浮かべながらタイミングを見計らって…槍陣形の切っ先が正門へと近づききる前に、空に向かって信号団を打ち出した。それを合図に、森に隠れていた傭兵達が塀の上へと登った。
ここに至るまでの小競り合いで、傭兵達が塀に上ってきたことは一度としてなかった。試そうともしていなかった。それが、やすやすと越えてきた。
「登れたのか!?」
「登れないなんていった覚えはないねー」
七石刀を腰にぶら下げた女傭兵…スワロは『登れるかどうかなんて、何度か見りゃわかるもんだろ?』と笑うと、敵兵を愛用の剣で打ち倒し、号令をかけた。
「さぁ、野郎ども、どんどん登っちまいな!」
或いは梯子やロープを掛け、またあるいは人を土台にして飛び上がり、けして大軍ではないが、戦い慣れした傭兵達が塀の上に上る。敵兵が打ち倒される。その分だけ、弓の攻撃が緩くなる。
「全力、前進!」
弓の雨が緩くなったところ、槍陣形が加速。扉の前へと辿りつく。
が、当然敵兵も正門は固く守っている。
正門を守る部隊とソウ竜率いる前方軍が衝突し、斬り合いが始まる。
さらに正門は、他の場所に比べて弓の攻撃も厚く、門の裏には閂がかかり、万が一破られたとしてもその先には敵兵が密閉した激戦地。
そうやすやすと広場へと入れるものではないが…
「弧の字変形!」
ソウ竜にかわり、ユウ竜が号令を出す。
とたん、槍の尻…後方の部隊が向きを変え、槍先を軸に弧を描くように曲がり、正門から離れた壁へと突撃していく。
その壁は、傭兵達が徹底的に弓兵を排除した壁。
王宮を上から見て四角に加工壁の、右下の端付近。
その壁にいち早く突撃していたのは、ユウ竜。
「離れろ!」
傭兵達がさっと壁から離れるや、ユウ竜はありたっけの爆弾を呼び出し、いくつかを壁の向こうへと、そして残るほとんどを直接壁へと投げつけた。
カイ竜が置いていった爆弾のほとんどを使用したその爆撃は、ものの見事に壁を破壊し、壁の向こうにいた敵兵達もふっとばすことに成功していた。
正門よりも大きく広がる出入口の完成…そこに、兵士達が突撃する。
「陣取れ!」
「「「「「応!!」」」」
兵達が宮中へと入るや、出入口を確保する。
「傭兵、援護!」
「「「「「了解!」」」」」
塀の上に傭兵が集まり、兵に襲いかかろうとする兵達に弓をけしかける。
「さすがはユウ様!」
言ったのは、ユウ竜の尻を触った男。
「ここまではまずまずってところか、ユウ竜さんよ?」
言ったのは、傭兵団の副長スバル。
「まぁ、この程度はやらんと、恰好もつかないしね?」
答えたのはユウ竜。
そうこうするうちに、やってくる。
「突撃!!」
ソウ竜が、半分ほどの兵を正門前に残しやって来た。
そしてユウ竜から兵達の指揮を受け取り、陣を組み治す。
壁に開けた穴を中心に四角を描くように陣取る、方陣系。
傭兵達はその陣形には加わらず、塀の上からの射撃し、陣形を作り維持する手伝いに徹する。
その一連の動きを評して、チョウ竜はいった。
「…お見事です」
お読みいただきありがとうございました。
戦争始まったら毎日アップしたいといっておきながら、なかなか書き溜めが生まれず相変わらずの二日に一度の更新です…
全国推定3人(作者含む)の期待してくださっていた皆様申し訳ありません…
せめてこのペースは守れるよう書いていきますので、今しばらくお付き合いのほどを…




