↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/104

戦記40「眠りの最中のダイジェスト」

今日、へたをしたら日本で一番過酷な戦場から投稿。みなさん、暑さには気をつけて下さいませ。

戦記40「眠りの最中のダイジェスト」


 その『能力』を使った後、ユウ竜は総じてそのような状態になる。

 まず、体も思考も、生理反応や生命維持に関する基本的なこと以外はそのほとんどが停止する時間が暫くある。

 その後の段階として、体はほとんど動かず、しかし耳や感触、体感などは戻ってくる期間があり、ここが一番長い。

 時折感覚が全てなくなる時もあるが、大きな音や大きな接触、なんらかの違和感があると、感覚のみ起き上がる。ただし、目は開かない。

 その深い沈黙と浅い沈黙を繰り返すうち、通常に戻る。

 要約すると睡眠…となるだろうか。


(―ただの睡眠とはちょっと違うんだけどな)


 夢の中で夢だと気づく明晰夢とも違う。通常の眠りがこの状態に混じる時もあるので常にそうではないが、能力によって生じた状態の特徴といえば、頭の中は自由に動かせること。

 この状態に陥ったのは、過去に数度ある。


(―はじめては、この世界に来た日だったな)


 それは他でもない、キョウ王の右腕を切り落としたあの時だ。

 あの時、すでにユウ竜は自分の能力が二つあることを自覚していた。

 ユウ竜はあの時、キョウ王の剣を奪うために『格納』の力を使い、キョウ王の腕を落とすためにもう一つ…ユウ竜が『覚醒』と呼んでいる能力を使用した。

 その時覚醒に使ったのは、そこらへんに転がってい鉱石だ。

 たまたま格納した中から堅そうなものを選んだだけで、基本的には宿しているモノならなんでも覚醒に用いることができる。そして発現する効果や効力はモノによって様々だ。

 傾向としては、良いものであるほど…例えば国宝級の道具や、古くから伝わる魔法具などの方が効力が高くなりやすい。

 だから、ユウ竜は宝具に詳しくなり、宝の眠ることが多いダンジョンや職人の情報をなどを日常的にボウに収集させていた。ドラゴニアを出る時に焼いてでてきたのは、その情報だ。

 話を腕を切った時に戻そう。

 良質だったとはいえただの鉱石ですら、瞬間的にユウ竜の力を跳ね上げ、それゆえキョウ王は見誤った。道具を取り出す能力だけではなく、強化があるとは思ってもみなかったのだ。

 なぜなら今日王は知りすぎていたから。己も積極的に戦いに赴き、特殊な力を持つ人間…つまり異世界の人間とも戦ってきたからこそ知っていたのだ。


 『異世界から来た者が有する特殊な力は、基本的には一人に一つ』


 だからユウ竜が二つの力を使ったことを…いや、もしかしたら二つで一つ…または、覚醒が本来の能力で、格納はそれを行うための副次的な能力なのかもしれないが、それが盲点となった。

 結果、国宝の威力とユウ竜の覚醒の力が合わさり、王の腕を斬るに至った。その後気絶したのは、何も王に殴られたからだけではなく、能力の限界が来て気を失ったのが主な原因だ。

 そしてこの状態…覚醒の反動から回復するまでの長さを左右する一番の要因は、覚醒を使用していた時間。

 瞬間瞬間で使うならば、ほとんど反動はなく、通常の睡眠と共に消化できる。

 ユウ竜が日常的に睡眠時間が長くなりがちなのは、そのせいだ。

 それを分かっているからこそ、攻撃の瞬間や回避の瞬間にだけ発動させ、すぐに治めるのを基本にしている。

 ユウ竜の力が強くなったり弱くなったりしているように思われている一番の理由はこれだ。

 そしてその力をなぜ戦争で使わなかったのか、いや使えなかったのか…それはもちろん、デメリットといえる反動のせいだ。一対一の戦いや回りに救出してくれる仲間がいるなら話は違うが、基本的に集団戦で使うものではない。

 そして今回の反動の長さだが…


(―これは、かなり長くなるな)


 経験則で、どの程度の反動の長さになるかユウ竜はなんとなくだが把握している。

 覚醒の長さの他に、覚醒中に追ったダメージの量、覚醒に使用したアイテム…こういったものにも左右される。それらからいうと、今回は最悪の組み合わせといえる。

 長い連続使用、

 ロウ竜の渾身の一撃くらうこと二回、

 覚醒に使用した『ナナシ』の重くなりがちな傾向、


(―ま、じたばたしたくてもできないし…考えますか)


 確認した現状に焦りそうになる気持ちを落ち着け、動かない身体で整理する。

 状況を整理しながら方法を探る。


(―まだ戦いは終わってないんだよね、これが)


 ロウ竜には負けたが、戦争には負けてない。

 まだ戦っている最中。


(―勝ちにいくぞ、ロウ竜…)


 人知れずユウ竜が戦いを続けている中、知ってか知らずか人々は代わる代わるユウ竜の眠るベッドへと集まっては話をしていった。

 ユウ竜が意識を取り戻した…というか、この状況になって初めて部屋に入ってきたのは、


「…お爺様とやり会うとは」


 ソウ竜。

 意外な奴がきたもんだと思いながら、ユウ竜は耳を傾ける。


「敵との力量も測れないバカめ。貴様のせいで部下に動揺が走ったであろう」


(―そら申し訳ない。フォローよろしく)


「…しかし、お爺様に…いやロウ竜に、初戦で必殺の陣まで使わせた者はそういない。姫も無傷だ。その点に関しては…認めよう。先に行って待っている。遅れず来い。よいな!」


 ソウ竜の声が聞こえたのはその一度きりだった。

 別の時には、兵士の声が聞こえた。


「今はただのユウ様!」


(―あいつだ! あの水ぶっかけて、尻を触って来たやつだ!)


 今まで何度もこの状態でもどかしい思いをしてきたユウ竜だが、この時ほど体を動かしたいと思ったことはなかった。


「…今なら触りたい放題」


(―誰か! 誰か! ソウ竜でもいい! 戻ってこい!)


「が、それは美学に反する! …もう、出なくてはいけません故、お顔だけみせて頂きました。ごちそうさまです」


(―語尾がおかしいだろお前!)


「戦が始まれば忙しくなる身…そしてお互い、再びお逢いできるか分からない身。お聞き頂けているかはわかりませんが、今この場において、言いたいことは一つだけ!」


(―やめろ、変なフラグを立てようとするな!)


「ユウ様! …ユウ様のお心遣い、兵士一同、しかと受け取りました」


 そういって名前も知らぬ兵は座し、手にした槍を水平にユウ竜の前に掲げた。

 その槍は研ぎ直されたばかりかのように日差しを反射し、

 その体は中古とはいえ、しっかりとした鎧に包まれていた。


「兵を代表し、ユウ様に感謝を…戦場で、あなたが揃えた武器と兵士の顔をご覧ください。その中に、僕もおります…では!」


 確かな足取りで、名前も分からぬ兵士が部屋をでていった。

 部屋の外では何人かの兵士たちの声が聞こえた。兵士達は、扉が閉まる前にちらりとユウ竜の姿を見ると、決意を固めたように去っていった。

 手にしている武器も、身に着けた鎧もまちまちであったが、その顔つきと足取りは一様。


(―揃えられたか)


 時間的にはギリギリだったが、ソウ竜は武器と防具を揃えて見せた。

 本人は恥だとして、後世になってもけして語らなかったが、ソウ竜は町にある武器屋に防具屋、鍛冶屋道具屋とありったけの扉を叩き、渋い顔をする店主一人一人に、頭を下げてみせたらしい。

 そこには、見事傭兵団を招き入れたユウ竜への対抗心があったのかもしれない。

 朝になりロウ竜襲撃の話を聞き、ソウ竜は心底己の無能さを恥じもした。

 だが、その対抗心と恥がなければ、昼までに兵士たちの装備が揃うことはなかっただろう。

 ユウ竜敗北の報に沈みかけた兵士達の前に武器が届くと、ソウ竜はいった。


「これは全て、ユウ竜が兵士を思い託したものである!」


 もしかしたらそれは、兵の士気を落とさぬためだったのかもしれない。

 兵の為に装備を揃え、姫を無傷でロウ竜から守り抜いたユウ竜のために奮戦せよ! …そういう意味合いのものだったのかもしれない。


(―自分の手柄にしてよかったのに)


 できない苦笑いをしていると、建物の外から、ソウ竜の檄と兵士たちの掛け声が聞こえた。

 決戦に備えて進軍したのだ。

 団体行動というのは単独に比べてはるかに時間がかかる。ここらへんがギリギリだ。むしろ遅いくらいだったかもしれない。本来なら、装備が揃った時点で出発をしてもよかったぐらいだ。だからユウ竜はその理由を考えてみた…


(―待っててくれたのかもな)


 貴重な時間を犠牲にしてでも待つ価値があると判断されたのだとしたら…


(―絶対間に合うように行くから、そん時はよろしくな)


 聞こえぬのを承知で頭の中で声をかけた。

 その後やってきたのはイン竜。


「あなた…早く起きて。ほら、ここにあなたと私の子が…うぅっ、ううっ…」


 部屋に入るやユウ竜の側にへたり込み、妙な子芝居をするイン竜。


(―こいつは何を言ってるんだ)


「…やーぱ、反応がないと面白くないですよね」


 ユウ竜の頬をつつきながらいうイン竜。


「本当ーはあと二、三回、大人の遊びしときたかったんだけど…まぁしょうがないか」


(―お前、どんだけ好きなの?)


「野外も虫に気を付ければ行けるかなー」


(―ねぇ、どんだけアグレッシブなの?)


「…ま、最悪今の力でなんとかするしかないか」


(―ねぇ何が? 無理やり? 無理やりなの?)


 などと聞こえもしない質問をしていると、イン竜はおもむろにユウ竜の口に吸いついた。

 それは口づけとかキスとか、そういう類の物ではなく、文字通り吸い付く、という言葉が似合うようなものだった。


(―お前、寝こみを襲うとかどういう神経だ!)


 勿論そのセリフが聞こえるはずもなく、軽く数分は吸われ続けるユウ竜。

 そしてようやくイン竜が口を放す。


「物足りないですけど、緊急時だしこんなもんですかねー…」


 そして唇から垂れた涎をふき取り、ユウ竜の口元も拭うと軽い足取りで去っていった。

 入れ違いに入ってきたのは、傭兵団の団長スワロ。


「おーおー、いい気に寝ていらっしゃる」


 顔面を七石刀で小突きながらいうスワロ。


「あたしたちもそろそろ行くわ。もう貰うもんは貰っちまってるし、約束だからね…だからあんたも約束果たせよ」


 スワロが立ち去ると、建物の外から傭兵団の威勢のいい掛け声が聞こえた。


(―よかった。約束は破棄されなかったか)


 自分が倒れたことで反故にされることも考えていたユウ竜は頭の中で胸をなでおろした。

 そして…ほとんどの人が宿からいなくなったからだろうか?

 辺りは不思議に思うほど静かになった。


(―考えないと)


 ただ倒れているわけにはいかない。


(―足りないモノはなんだ? 埋めるモノはなんだ? どう組み立てれば、エンディングにもってける?)


 現在地から目標とする結末を定め、足りないパーツを見出す作業。

 武で勝てない以上で『策』で…いや『作』で勝つしかない。

 どんな状況を『作り上げれば』繋がるか…


(―何が勝ちで、どれが負けで、どう収めれば次に繋がるか)


 動かぬ身体で必死に考えているうちに…誰かが入ってきた。


お読み頂きありがとうございます。いよいよ戦に向けて先発隊が出発。待ったなしの様相を呈して来ました。

果たして準備は足りているのか…いく末をお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。