戦記36「準備完了?」
アップするたび「喜んでもらえるかな…」とか「ブックマーク増えてるよ!」とか「どれくらいの人がみてくれたかなー?」てアクセス解析みたりとか、「感想がきた! どんなのかしら?」って不安と喜びの織り交ざる自分に気づいた時、『お前どこの中学生女子だ』、っていう思いに駆られたそんなモノカキの送るユウ王戦記、本日もスタート。
戦記36「準備完了?」
「武器に詳しい…間違いないな?」
「と、突然なんだ?」
「目利きも効くと思っていいか?」
「き、効く効かぬなら、効く方だ」
「防具もいけるか?」
「武器ほどではないが、効かぬというほどではない」
「なら、やはり頼む」
いって、袋を押し付ける。
腕に重みのしっかりと乗る、能力で出した袋に詰まっている、それは金貨。
「ほぼ有り金全部だ。これで、兵の装備を揃えてくれ」
「なっ…」
「正直誤解していた。すまない」
ソウ竜はもっと視野の狭い、姫のことしか考えてない竜だと思っていた。
でも違った。竜として、部下のことを考える頭を持ち、自分と使える姫の為に命を張る兵のことに痛める心を持つ竜だった。しかも武具に関して一定以上の知識と眼をもっている。
(―そうと分かっていれば、この交渉の間にこっちをお願いできたのに)
時間を無駄にした…と思わなくもないが、どちかといえばそういう奴だと瞬時に把握できなかった自分の落ち度だろう。
「俺も兵だったからわかる。良い武器や防具を揃えてくれる将は、それだけで支えになる」
剣姫が、そうだった。
自らきちんと兵たちの武器や防具を見定め、憂いがないよう配慮しくれていた。
「竜だったからわかる。経験値的には劣っていても、自分の為に戦ってくれる兵は、それだけでありがたい」
ボウや、死んでいった兵達がそうだ。
戦場で信頼がおける兵というのは、それだけで価値がある。
「あと」
「な、なんでも分かっているかのようにいうな!」
「まぁ、次で最後だ」
「くそ、なんだ!?」
「俺も…いや、これはいつかでいいか」
「なんなんだ貴様は!」
わざわざライバルになりそうな奴にいう必要もないだろう。
『俺も仕えるべき姫を好きになった竜の気持ちがわかる』などという戯言は。
「とにかく、これを頼む。兵と姫のために」
行動はしたい、だが俺のお願いというのが心底気に食わないのだろう。
人に好かれる方の人間でないとは思っているが、にしたってここまで嫌われるといっそ清々しい。こちらも変に気を遣わなくていい分、気は楽だ。
「ほれほれ、お前は自分のプライドのために、大事な兵と姫を裏切るというのか?」
「お、お前が自分でやればいいだろう!」
「他にやることがあるし、 どうしてもっていうなら、そりゃ俺がやるけど、お前の方が目利きが効くんだろ? それともそれも俺に負けるの? 適材適所って知ってる?」
目には目を、好意には好意を、悪感情には悪感情を。
まぁもちろん、ソウ竜が本当に感情だけで動くなら下手にもでるが…大丈夫だろ。
くぅぅぅと長く歯を食いしばった後ソウ竜はいってくれた。
「わかった…背に腹は代えられん」
「すまん、助かる」
「だが勘違いするな! これは貴様の為ではない! 兵と、ひいては姫のためだ! けして、けして貴様なんかの為ではない故、努々勘違いするでないぞ!」
袋を抱えて夜道をかけていくソウ竜。
こんな夜道を駆けたところで店は開いているの? とか、
なんなのお前ツンデレなの? とか、
後々女体化とかするの? とか、
どうでもいいようなことばかり考えているうちに、誰かが近づいてきた。
それは、舞姫様。
「みつけました!」
仄かに顔が赤いのは、酒のせい…と思ったが、どうも違うらしい。
姫は小走りにこちらに駆け寄ってくると、勢い余って俺に衝突…というよりは、胸に飛び込んでくるような形となった。
はて、交渉を終結させたご褒美にしては積極的に過ぎるな、などと探っていたら…弄っていたらではなく、探っていたらだ。響きが似てるけど大いに違うので勘違いの無いようお願いしたい、などと思っていたら、姫の肩口に見慣れない白い鳥…と思わしきものが乗っていた。
鳥と思わしき…といったのは、それが鳥の形をしているだけの別の何かだったから。少なくとも普通の鳥は、透けて反対側がうっすらと見えたりはしないはずである。
疑問に思っていると、姫は辺りを見渡し、酒場から更に離れた人気のない茂みまで俺を連れて行ってから、鳥の正体を教えてくれた。
「妹の…歌姫の鳥です!」
つい先ほど、酒場の窓から姫の所に飛び込んできたのだそうだ。
うっすら見える酒場の入り口から、イン竜とその配下らしき者達が辺りの警戒の為か散っていく。
これが舞姫の鳥だとしたら、誰か付けて来てる可能性もあるし、そのためだろう。
「ペット…じゃなくて、魔法的なものだよね、それ?」
「はい。国宝、神鳥の音で作った、伝書鳥です」
「なるほど。通信系の国宝だったか」
「あ、いえ、通信もできるだけです」
姫が解説してくれたことをまとめると、神鳥の音とはこうである。
一、使用者の気を元に、気でできた鳥を生み出す
二、鳥の効果は主に3つある。
言葉やイメージを伝える伝書の役割、
鳥に実態や破壊力を与える攻撃手段としての役割、
鳥を武器や体に宿すことによる強化の役割、
三、鳥の数や強さは使用者の気の現在量や質により、操作範囲や制度は使用者の操縦性による。
「神鳥の音は、気の出力に関与する道具だからです」
…だそうだ。
教科書丸暗記しましたみたいな解説なのは、たぶん姫様がそう誰かに聞いたからなんだろうな。やや誇らしげに胸を張る姫様の姿は愛らしいので、自重せねばならない。邪心を払う意味で、考える。
正直、『気』という概念に馴染みがないので合ってるか自信はないが…
仮に、水の溜まったタンク、蛇口、ホースがあるとする。
そのタンクがでかければたくさんの水を貯えられる。ただし、水が腐ってれば腐った水しか出せないし、どれだけタンクが大きくても保有している水が少なければそれ以上は出せない。
で、どれだけの水を一度に出せるかは、蛇口で決まる。タンクや残りの水に関わらず、蛇口で一度に出せる水の量は決まり、その調整が細やかにできるなら無駄な使用は避けるし、短い時間で一気に放出することもできる。なんなら、お湯と水の切り替えとかもできるのかもしれない。
そして、その水をどう撒くかがホースの仕事。短いホースでは遠くまで水をやれないし、かといって長すぎても邪魔かもしれない。ホースの先をつぶすような小技や、またはホースを踏みつけてから離すことで、蛇口の限界を超えて水を出す必殺技のようなこともできるかもしれない。
「という考え方であってる?」
「えーと…はい、だいたいあってると思います」
厳密には人それぞれ感覚が違うので、姫様のそれと俺とでは理解が異なるそうだが、逆に言えば、俺がそれで納得できればそれでいいそうだ。
なお、後日姫様に聞いたところによると、姫様は気を風船や空気のようなもので捕えているらしい。
「本当に、気を使えないのですか?」
「どうして?」
「いえ、ユウ様は、信じられないくらい大きくて複雑な気をもってるので…」
「俺が?」
「はい。その量だと、自然と使っていてもおかしくないほどなんです」
と、俺の方をまじまじと見つめる姫様。
そういえば最初会った時もなんかどこを見ているかわからないところを見られていたが…
「姫様、その気ってのが見えるの?」
「見える…というか、感じるというか…でも分かります」
ボウが魔力を見えるのと同じようなものなのだろうか? ボウ曰く、魔力の量を見るだけで、ある程度技量や熟練度が推察できるといってたが…
「あぁ、だから最初に会った時、いきなり歴戦のーみたいなこと、いってたのか」
「へ? あ…そうです。ふつう、それだけの気を蓄えよう思うと、何十年と修行する必要があるので、てっきり…しかもこんなに複雑な色をしてる人は、母様ぐらいしか会ったことがなかったので…」
「舞姫様の?」
「はい、巫女姫と呼ばれていた、前の神鳥の音の使い手でもありました」
気か…おもしろそうではある。残念ながら魔力の類は俺に備わってなかったらしく、この世界にきて最初の頃はがっかりしたものだ。攻撃でも回復でも補助でもなんでもいいから魔法ってのを使ってみたかったんだよなぁ…まぁ出し入れの能力が魔法といえば魔法のようなものなので、幾分気はまぎれたけど。道具とかもあったし。
「で、その気で作った鳥…歌姫はなんだって?」
「あ! え、えと、牢屋に捕まってるけど無事。次の満月の夜に、えと、妹曰くエ、エロオヤジ…たぶん、鈴星のリン王が神樹の根の儀式を行う。宮殿内の味方が城を抜け出して、私達の援軍となる準備をしていると」
姫がそれを言い終えた時、役目は終わったとばかりに白い鳥は光の粒のように別れ、溶けて消えていった。
「エロオヤジか…」
「どうしてしみじみ仰るのですか…」
「いや、なんか、こう、言葉のチョイスから、舞姫と違って活発そうな妹気味っぽいなと」
「えーと…元気な子です」
元気でやや口の悪そうな、おそらくは姫にて美少女であろう捕らわれの姫君か。
「…エロいことされてないといいけど」
「大丈夫…じゃないでしょうか。されてたら、たぶんもっと酷い言い方になると思うので」
向こうにいたころは、そういうシチュエーションを見るのも嫌いじゃなかったけど、いざ知り合いの身内がその立場にいるといわれると複雑なものがある。むしろ、それが現実化する可能性があると思うと、感じる責任も重くなる。
(―まぁ、それが戦争っちゃ戦争なんだけどさ)
兵が、将が、竜が、王が、捕えた相手の女をどうこうする話など枚挙に暇がない。話どころか目の当たりにさえしてきた。
殺しと、犯しと、略奪が、そこでは平然と生れる。
それが嫌なら、戦って守るしかない。
「時間は少ないけど…妹さんも無事。味方もいた。悪いことばかりじゃなかったな」
「はい…はい!」
今一度姫が抱きついてくる。
多少お酒の影響もあるのだろうが、それほどまでに嬉しい知らせであったということなのだろう。そりゃまぁ、妹心配のあまり単身引き返そうとしたぐらいだしね?
味方の兵がいたというのも心強いだろう。周りの国々から支援を受けられないという状況…味方がいない、自分を選んでくれる者がいないというのは、人数的にも心情的にも堪える。上の立場であれば尚更だ。
姫の背中をさするように叩くと、姫は自分が抱きついていることを今更ながら思い出したかのように、慌てて体を放して見せた。
おしい、もう少し行動は待つべきだったか。
うぅ…と自分の行動を顧みて顔に手を当ててる姫の気持ちを宥めるために、会話を振る。
「じゃぁこちらからも一つ朗報…ってほどじゃないけどご報告。兵士たちの装備のことだけど」
「はい、それもなんとかしないとですね!」
「うん。で、その件はソウ竜に頼んで用意してもらうよう伝えたから安心して」
「ぇへ? え、でも」
手から金貨を取り出し上に投げて、降りてきたところをまたしまう。
金貨に合わせて視線が上に降りて、下まで降りたところで、姫がいう。
「…お金持ちですね」
「さすがに残りは生活費程度で、大きな買い物はできないけどね」
急いで細かい美術品やらを換金しないとだな。まぁ、でも先に…
「次の満月か」
「…二日後、です」
「資金的にも、時間的にも、ここらへんが限界かな…」
進軍のことを考えると、猶予はない。
どうやら急いで進めて正解だったようだ。
まだ十分とは言えないが…ここはドラゴニアではない。勝てるだけの戦いにするためにいくらでも準備ができる環境ではない。
幸い、いくつかのカードは手に入れた。
あとは、勝てる戦いに運ぶことと、そのための情報収集と画策をするだけ。
「作戦会議だな。敵の竜達の特徴とそこから考えれる布陣に、どう戦力をふわり振って…」
と姫に相談しているつもりだったのだが、姫にその声は届いていなかったようだ。
ぼんやりと…とでもいおうか、心ここに非ずといった感じでこちらをみていた。
「ほんとに…ユウ様がいなかったら…もう、今頃…」
お酒の影響が未だに続いているのだろうか?
それともそれほどまでに張りつめていたのだろうか?
小さな声で泣き出す舞姫。
このまま泣かせてあげたい気もする。
女の子が泣いてる姿を見るのは、嫌いじゃない。
が、姫が姫である以上、それはもう少し先のはず。
「…これからでしょ?」
姫の頭に手を乗せると、姫は深く頷いた。
頷いて頷いて頷いて、地面にいくつかの粒が吸い込まれて、そして顔を上げる頃には、涙を抑え込んでいた。
勿論無理はしているだろうが、それでこそ…と思う。
それが、姫様が自分で選んだ『姫』っていう生き方なのだから。
お読みいただきありがとうございます。前にも書いたようなきもしますが、魔法とか気とかの仕組みとか概念を考えたりするの、すごく好きです。ハンターハンターの念とか、アルトネリコの歌魔法とか…
強さや上手さの理由がはっきりしてるのが好きなんでしょうね。同時に弱点みたいなの部分も生まれますし。あれは得意だけどこれはダメとか、この部分を補うことで戦況をどうにかすることができるとか…
読み手としては『単純に強い』とか『根性でどうにかなる』とか『主人公補正』とかも好きなのですが、どうも書くときにはそうでもないようです。
そんな感じなので、たぶんこれからもこの手の解説やらそれを利用した何かとか出ると思いますので、そのての理屈がお好きな方はぜひお付き合いください。苦手な人は飛ばしても大丈夫だと思います。なんか理屈はわからないけど主人公が勝った。それでもいいんです。
メインはかわいい女の子ですから。




